2013年06月

2013年06月26日

中国の経済・金融の真相(その1)

経済メディア等ではここのところ、中国の「影の銀行」問題が連日で取り上げられるようになってきています。そこで、新刊『シェール革命後の世界勢力図』からの引用になりますが、今の中国経済・金融の実態について述べたいと思います。

中国共産党の幹部たちが、家族と財産を国外に避難させているのは有名な話です。彼らは何を恐れているのでしょうか。これまで国民に隠してきた数々の「不都合な真実」を隠しきれなくなり、万が一の事態が生じた際には、身一つで逃げ出せるようにしているのではないでしょうか。

共産党政権が隠してきた真実の中でも最大級なのは、GDPに関するものです。

現首相の李克強氏が遼寧省書記だった2007年頃、在中国のアメリカ大使にこう洩らしたことがあるそうです。「信用していいのは電力消費量、貨物輸送量、それに銀行融資の3つのデータだ。GDP統計は信用できず、割り引いて見なければいけない」と。

GDP統計が信用できないというのには、次のような事情があります。

中国の地方政府のトップは各地区の共産党委員会書記が務めます。書記が共産党中央指導部入りするためには、地方政府で「実績」を挙げなければなりません。「実績」とは域内総生産(GDP)の成長率を上げることに尽きます。したがって、地方政府間で成長率を競う事態に陥りやすく、地方別のGDPデータはどうしても水増しされがちになるのです。こうした傾向はとくに景気後退期に顕著になるようです。

ここで李克強氏が信用する電力消費量と貨物輸送量に注目してみましょう。中国のGDPが9.5%の伸びを示していた2011年1~3月期や4~6月期の電力消費量は10~15%、貨物輸送量は15~20%の伸びでした。これに対して、2013年1~3月期の電力消費量の伸びは4.3%、貨物輸送量はマイナス0.8%と大きく落ち込んでいます。それにもかかわらず、中国政府は同期間のGDPの伸び率を7.7%と発表しています。
 
電力消費量が3分の1以下に落ち込んでいるだけでなく、貨物輸送量はマイナスに転落しているのに、GDPの伸び率の低下がこの程度で済むはずはありません。実際には、おそらく5%を割り込むところまで落ち込んでいたはずです。
 
中国では四半期ごとのGDPをはじめ、各種の統計を発表していますが、それらのデータへの信頼はまったく高くはありません。毎月公表される消費者物価指数も、景気の実感とは異なるとの批判を浴びています。失業率に至っては、GDPや消費者物価指数のデータ以上に評判が悪い有様です。

しかし、中国政府がGDPや失業率の統計を粉飾せずに正直に公表していたとしたら、おそらくは民衆による暴動を抑え込むことができなくなり、共産党一党独裁体制を打倒する革命に発展していたのではないでしょうか。だから、中国政府は決して本当のことは公表できないのです。

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keizaiwoyomu at 13:00|この記事のURL経済の分析・予測 

2013年06月17日

「デフレ=不況」という説が信じられる訳

なぜ「デフレ=不況」という誤解が広く常識として普及しているのかというと、FRBのバーナンキ議長の考え方が強く反映されているからです。リーマンショック後の彼の政策目標は、デフレを回避することにありました。彼は恐慌の研究で有名ですが、アメリカの恐慌だけを見て「デフレ=不況」と決めつけてしまったのです。

本来、アメリカの大恐慌だけでなく、少なくとも他の国々の不況とデフレの関連性を調べる必要がありました。歴史を通じてその関連性を調べるという基本的な姿勢を欠いていた点で、学者としてお粗末といわざるをえません。

しかし、権威ある人間が間違ったことをいってしまっても、学問の世界ではそれが広く認知されてしまう傾向があります。「権威」の前では多くの学者が思考停止に陥ってしまうのです。経済学の分野でも、「権威」を前にしたときに同じことが起こりました。

さらに悪いことに、その間違った研究を推し進めようという学者も数多く出てきました。それに対して、権威ある人の大前提を検証しようという者はごく少数派に過ぎません。

デフレは悪いといっている経済学者は、いまさらデフレと不況はまったく関係ないなどとは口が裂けてもいえないでしょう。自らの過去の研究をすべて否定されるからです。経済学は経済学で飯を食う人間のためにある学問だと、私が思うのはそういうところです。

元々、欧米の経済学にはプロテスタントの宗教観や道徳観が入っています。経済学の祖とされるアダム・スミスは『道徳感情論』という本も書いていますし、「神の見えざる手」とは、神の前では人間は無力だというプロテスタントの精神が反映されていることは間違いありません。

欧米の人々が「みんなでインフレになると信じれば、実際にインフレになる」というリフレ派の宗教的な考え方をすんなりと受け入れられるのは理解できますが、日本人でプロテスタントでもない学者が違和感なく受け入れられているのは、やはり権威の前には思考停止に陥っていると考えざるをえません。

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keizaiwoyomu at 15:52|この記事のURLその他 

2013年06月10日

シェール革命後の世界勢力図

6月21日(金)に新刊『シェール革命後の世界勢力図』(ダイヤモンド社)が発売になります。目次は以下の通りです。

第1章 ひとり勝ちするアメリカ経済
第2章 これからの産業はがらりと変わる
第3章 復活のカギはデフレにある
第4章 デフレと不況はまったく関係がない
第5章 シェール革命で苦境に立つ資源国
第6章 世界経済はシェール革命で二極化する
第7章 日本はデフレでも景気回復できる

私はアメリカで住宅バブルが崩壊して以降、自らの著者の中で、「日米欧の経済は少なくとも2015年までは復活できない。欧州にいたってはさらに10年は低迷する可能性が高い」と一貫して主張してきました。

その根拠は、バブルが崩壊してバランスシート不況に陥ると、バランスシートを改善するためには少なくとも10年単位の長い時間が必要になるからです。

日本では1991年にバブルが崩壊した後、企業は土地を担保に巨額の借金をしていたために深刻なバランスシート不況に陥りましたが、地道に借金を返済しバランスシートが改善するまでにおおよそ10年の期間を要しました。

アメリカでは2007年に住宅価格の暴落が始まり、家計のバランスシートが著しく悪化しました。家計が地道に借金を返済し、バランスシートを正常に戻すには2016年までかかるだろうと考えるのが当然だったのです。

しかしながら、アメリカではシェール革命が2010年頃から本格化し、2012年以降、シェール関連の大規模な設備投資が次々と明らかになってきました。設備投資が完了すれば、次は雇用が増加していきます。

すなわち、アメリカは家計のバランスシートが改善する前に、シェール革命によって経済の復活が1年~2年前倒しになる可能性が高まって来ています。早ければ2014年にも本格的な回復をすることができるのではないでしょうか。

ですから、私はアメリカについてだけは少しだけ予想の軌道修正をする必要が生じました。(この点は、前著でも詳しく解説しています。)

一方で、欧州はアメリカに1年遅れて2008年に金融バブルが崩壊し、銀行のバランスシートが急激に悪化しました。次いで、2010年にはギリシャ危機を発端として、南欧諸国を中心に国家のバランスシートまでもが著しく悪化し、二重のバランスシート不況に陥りました。

さらに欧州では2012年にもう一つのバランスシート不況が表面化し、三重のバランスシート不況に陥りつつあるのです。この点については、後に本文で詳しく述べたいと思います。 

単一のバランスシート不況でも正常化するまでに10年の時間を必要とするのですから、欧州は10年どころか20年もの長い低迷に入ったと見るのが自然でしょう。

日本でも企業がバランスシートを改善している途上の1997年に金融システム危機が起こり、銀行までもがバランスシート不況に陥り、二重のバランスシート不況に陥りました。時の小泉政権が銀行の不良債権処理を強硬に推し進めたので、銀行のバランスシートの改善には10年もかかりませんでしたが、日本経済はその後遺症に今も悩まされ続けています。

そのような状況にある日本が復活できるか否かは、アメリカのシェール革命の波にいかに上手く乗ることができるかどうかにかかっているように思われます。ただし、仮に復活できたとしても、それは2016年以降の話になるということは頭に入れておかなければなりません。(以上、プロローグより抜粋)

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keizaiwoyomu at 16:15|この記事のURL拙書の紹介 
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