2013年11月

2013年11月25日

2014年以降の欧州経済

欧州経済は2014年以降も低迷が続くでしょう。その根拠は、欧州では三重のバランスシート不況に苦しんでいるからです。

かつて日本では、1990年代初めのバブル崩壊後、企業のバランスシートが急速に悪化しました。そのために、企業は設備投資を控えて、借金の返済を優先するようになりました。これが、日本の長い不況の始まりでした。その後、1997年の金融システム危機後には、銀行のバランスシートも悪化したために、銀行は財務体質を改善させる手段として貸し渋りを行い、日本は2000年代半ばまで深刻な不況を経験することとなります。 

米国では2007年に住宅バブルが崩壊し、家計のバランスシートがひどく傷みました。家計のバランスシート不況はすでに最悪期は過ぎ去りましたが、日本とこの米国の例は、バランスシート不況を克服するためには、10年単位の時間が必要なことを教えてくれます。

米国の家計でバランスシートが大幅に悪化したときに、欧州の家計は米国ほど重症ではなく、欧州の人々は米国の住宅バブル崩壊やそれに伴うサブプライム問題に対して、借金に依存しすぎだと非難していました。

しかし、事態は大きく変わりつつあります。IMFの2013年5月の報告書によると、米国の可処分所得に対する家計債務比率は2007年の130%から2012年には105%まで下がっている一方で、ユーロ圏の家計債務比率は同じ期間で100%から110%まで上昇してしまっているのです。 

つまり、日本が企業と銀行の二重のバランスシート不況、米国が家計の単一のバランスシート不況を経験したのに対し、いまや欧州は国家と銀行のバランスシート不況に加え、家計のバランスシート不況にまで陥ってしまっているということです。三重のバランスシート不況を克服するためには、とても10年単位の時間では難しく、15年あるいは20年の長期低迷も覚悟しなければならないでしょう。

EUの見通しによれば、2013年のユーロ圏の実質経済成長率はマイナス0.4%と2年連続のマイナス成長になりますが、2014年にはプラス1.2%に浮上するとのことです。しかし、この見通しは楽観的すぎると思います。ユーロ圏の失業率は2013年10月現在で12%台と過去最悪の水準にあり、改善の兆しはまったく見えていません。今のところ、欧州経済では内需がしばらくの間は期待できない状況にあるのです。

それならば、米国や中国などの外需に期待したいところですが、債務危機が落ち着きを見せていることもあり、主要通貨に対するユーロ相場は2012年半ばを起点に大幅に上昇しています。実体経済は悪化し続けているのに、ユーロ高により域内の輸出競争力は下がってしまっているのです。

現在、ユーロ圏のフランスをはじめ中軸国では、財政再建が思うように進んでいません。ドイツが主導して財政規律を厳しくする新しい条約をつくったにもかかわらず、ドイツを除いた中軸国でルールを守れないケースが続出しているのです。各国が2014年も財政規律を緩和しようとすれば、金融市場で再び債務危機が蒸し返されることになるでしょうし、財政規律を厳格に守ろうとすれば、景気の悪化に拍車がかかることになってしまうでしょう。

こうなってしまうと、財政出動や金融政策では期待できる効果を生みだすことはできません。長い時間をかけて、国家と家計は地道に債務を返済し、銀行は不良債権を処理していくしかないのです。とくに国家は財政を再建するために、少なく見てもこれから10年単位の時間を必要とするでしょう。その間、欧州経済は長い低迷の時期を迎えるでしょう。

2014年単年の懸念材料としては、ECBにより約130の大手銀行の資産査定が始まることです。ECBの査定が甘くなっても厳しくなっても、どちらのケースでも欧州にとっては厳しい結果が予想されるからです。査定が甘くなれば、金融市場からの納得が得られず、銀行株が急落するリスクが高まりますし、査定が厳しくなれば、南欧の大手銀行を中心に深刻な貸し渋りが起きるでしょう。

おまけに、銀行が資本不足の場合の穴埋め処理については、EUでは具体的な方策をまだ決定していないのです。先が見えない見切り発車の資産査定では、欧州の政治・経済だけでなく、世界の金融市場が動揺することも想定しなければならないでしょう。

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keizaiwoyomu at 11:15|この記事のURL経済分析 

2013年11月19日

2014年以降の米国経済

書店に行くと、2014年の経済予想本が数多く並んでいます。そこで、2014年以降の米国経済、欧州経済、新興国経済について、過去の拙書と重なる内容になるかもしれませんが、このブログ上で3回にわたって改めて整理し、大きな流れを再確認したいと思います。まず1回目は、2014年以降の米国経済についてです。

米国経済は2014年にも本格的に回復傾向を強めると、私は考えています。シェール革命と呼ばれる、かつての産業革命に匹敵する大変革が進行中だからです。シェール革命が進むと、米国は再び「世界の工場」として復活し、膨大な雇用を生むことが期待されているのです。

米国の製造業は原油から安価なガスへとエネルギー転換を進めており、圧倒的なコスト競争力を手に入れようとしています。製造業にとって生産拠点の決定には、人件費と並んで、エネルギーコストが重要であるのはいうまでもありません。元々、米国南部と中国沿海部の賃金差が縮小する中で、シェール革命に伴うエネルギーコストの低下が重なり、自動車、電機、機械などの製造分野から始まった米国企業の国内回帰は、化学、鉄鋼、非鉄金属など広範な業種に広がりつつあるのです。

素材や部品など周辺産業の厚みをとっても、世界最大の消費地を抱える点でも、生産拠点としての米国の魅力が再評価されています。もはや中国は「世界の工場」としての地位を失いつつあります。いまやかつてとは逆に、中国では人や生産設備を外に「押し出す力」が働き、対する米国にはそれらを国内に「引きつける力」が作用していると言えるでしょう。

その証左として、昨年あたりから米国に対して国内外から多くの投資が行われています。米国や欧州、日本などの先進国の企業ばかりではなく、中国や南アフリカ、韓国、台湾など世界中の新興国の企業までもが生産コストを下げるために、米国に工場を建設しようとしています。

このような動きは、米国経済を復活させます。国内外から米国への設備投資が増え続け、多くの工場建設によって、国内では新たな雇用が創出されていくのです。大規模な工場が次々と建設される2015年以降には、良質な雇用が急増する見通しにあります。

残念ながら、2013年11月時点での米国の雇用を見ると、実態はあまり良いとは言えません。というのも、リーマンショック後に米国で失われた雇用900万人のうち4分の3が豊かな中間所得層だったのに対して、回復した雇用700万人の半分が賃金の安い非正規雇用だからです。したがって、失われた中間所得層の雇用回復は芳しくなく、実際には低所得者層が
増加していることになります。

しかし、米国の雇用の実態が良くないからこそ、シェール革命が重要になっていきます。2013年の失業率の傾向を見ると、全米平均が7%台半ばで推移しているのに対し、失業率が最も低い州はノースダコタ州の3%台前半、次いでサウスダコタ州の3%台後半、ネブラスカ州4%台前半となっています。こうした失業率の低い州は、例外なく、シェールオイルが豊富な油田地帯を擁している北部の州です。シェールオイルはシェールガスよりも利益率がはるかに高いので、シェールオイル生産が急増しているこれらの州では、失業率が低いだけでなく、所得のほうも急伸しているのです。

その一方で、シェールガスが潤沢に採れるガス田を擁しているテキサス州やルイジアナ州、ニューメキシコ州などの南部の州では、失業率が際立って低いわけではありませんが、世界一安い安価なガスが世界中の企業を引き寄せています。これらの州でもシェール革命が進めば進むほど、失業率が低下し、所得も増える可能性が高いと思われます。よって、2014年以降の米国経済は明るいでしょう。

ただし、最大の懸念材料は、債務上限の引き上げのリミットが2014年2月に再び迫っていることです。前回のブログでは、米国経済は2013年末に向けて踊り場を迎えると書きましたが、債務上限の問題が混迷を深めるようなことになれば、2014年春先くらいまでは米国の経済指標が悪化する可能性も否定できません。そうなれば、QE3の縮小時期が2014年前半から後半へと先送りされることもあるかもしれません。

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keizaiwoyomu at 13:16|この記事のURL経済分析 
レポート配信履歴
9/14・9/29

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