2013年12月

2013年12月26日

2014年はリフレ政策の試練の年となる

2013年の5月14日および5月31日の記事でも述べましたように、日銀の大規模な量的緩和は間違いなく失敗すると、私は断言しました。経済の予測においては「間違いなく」という言葉は滅多に使うことはないのですが、世界経済や企業経営の実態を考えれば、どうしてもそういう結論に達してしまいます。

リフレ派の理論では、大きな柱が二つあります。ひとつめの柱は、「量的緩和で低金利を促すことにより、企業の設備投資が増える」というものです。ところが、この考え方は現場の経営感覚とは大きく乖離しています。経営の現場感覚をまったく知らないといってもよい空論なのです。思えば、リフレ派の学者たちに企業経営の経験がある者は、皆無ではないでしょうか。

経営者は需要が見込めるときに設備投資をするのであって、低金利だから設備投資をするわけではありません。企業は自社の存続がかかっているので、事業採算の見込みが立たなければ新たに投資をしないのが当然です。 

実際、量的緩和を粘り強く続けているアメリカでも、名目金利と実質金利の双方が大きく下がりましたが、設備投資はFRBが想定した通りには増えていません。アメリカの企業は史上最高益を更新しているのにもかかわらず、その利益の行き先は自社株買いや配当増に回っているのが実態であります。

需要が見込めない中で設備投資を行うことは、企業としては愚かな行為というしかありません。その実例が、中国政府がリーマン・ショック後に行った4兆元の投資です。需要が伸びない中で国有企業の多くが設備投資を増やしたために、今や供給過剰に苦しみ赤字企業が続出しているのです。

こうなってしまうと、増やした設備投資を次々と削減していくしかなく、4兆元投資の大半は無駄に終わってしまったと言えるでしょう。需要がないところに設備投資をやっても、中国の国有企業の二の舞になるだけである。リフレ派の学者は、なぜそんな簡単なことがわからないのでしょうか。不思議で仕方がありません。

リフレ派のもうひとつの柱となる考え方に、「量的緩和がもたらす円安により、輸出が増えて国民所得が上がる」というものがあります。この考え方も間違っているのは、2000年以降のエネルギー価格の高騰によって、日本の企業は賃上げを簡単にできなくなってしまっているからです。

とくに日本では、企業が売上げや利益を大きく回復したとしても、エネルギー価格の高騰分や輸入インフレによるコスト増加分をできるだけ価格に転嫁しようとはしないので、その分、売上増に見合った賃上げをすることが非常に難しくなっています。

経営側にいる人間は、コスト高をなった分を価格に転嫁した時に、消費者が逃げてしまうことをいちばん恐れています。冷静に考えれば考えるほど、そういう判断になるのは当然でしょう。値上げをすれば、多くの人々が財布の紐を締めるようになるから、顧客が価格に敏感な層である業態ではとくに値上げには慎重にならざるをえません。ギリギリまで値上げをしないというのが、一般的の経営感覚と言えます。

さらに、「世界経済は過去30年で最もよい状態である」と言われた2005~2007年のときと比べて、今の世界経済はアメリカの消費だけが底堅く、欧州各国やBRICs諸国を中心に全体的に悪い状況にあるので、かつてほど日本からの輸出を受け入れる余裕がなくなっています。

ですから、日本企業は思ったほどの輸出増は見込めないでしょう。それを裏付けるように、2013年の貿易統計の推移を見てみると、円安によって日本企業の競争力が強化されたと言っても、輸出数量はあまり増えていないのです。

ほぼすべての経済学者が、円安がもたらす「Jカーブ効果」という理論を支持しています。「Jカーブ効果」とは、円安により輸入価格が上昇し一時的に貿易赤字が拡大するとしても、円安による輸出価格低下で輸出数量が徐々に増加し、最終的に貿易収支も改善するという理論のことを言います。この理論も経営や企業活動の現場をまったく無視しています。

日本企業の経営者は多くの場合、円相場が大きく変動しても価格を引き下げたりなどしません。円高が進んだ時も価格を引き上げずに耐えたのですから、円安の時だけ価格を引き下げるというのは考えにくい話です。ですから、「Jカーブ効果」で想定される円安による輸出価格の低下という理論自体が、少なくとも日本企業には当てはまらなくなっているのです。

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keizaiwoyomu at 12:57|この記事のURL金融政策分析 

2013年12月19日

量的緩和の縮小開始

QE3の縮小が2014年1月から始まります。重要な局面であるのに新しく文章を書く余裕がないため、今後の流れについては『新興国経済総くずれ~日米は支えきれるか?』(2014年9月発売)の165~169ページをそのまま引用し、解説に代えさせていただきたいと思います。

(以下、『新興国経済総くずれ~日米は支えきれるか?』より引用)

FRBがこれから迎えようとしている最大の試練は、2008年の金融危機以降に実施した量的緩和の縮小・停止を市場の混乱を招かずにどう進めるかということです。

FRBがこれから行う出口戦略は、大きく分けて3段階になります。

第1段階は、現在のQE3、すなわち、毎月850億ドルの資産購入を縮小することです。購入額を徐々に減らしていき、最後にゼロにするという作業です。ここで初めて、FRBの資産拡大は止まります。

続く第2段階では、3兆ドル超に膨らんだFRBの資産規模を縮小し、第3段階ではゼロ金利政策の解除に伴う政策金利の引き上げが待っています。

当面、金融市場の注目を集めている第1段階は、長い出口戦略の始まりにすぎません。それでもバーナンキ議長が慎重を期しているのは、量的緩和縮小の初めの一歩であっても、市場が過剰に反応するリスクを段階ごとに和らげていく必要があるからだと考えているからです。

この第1段階については、比較的ハードルが低いと思われます。拙速に2013年中には行わず、雇用情勢を注意深く見ながら2014年前半に取りかかれば、大きな混乱は起きないのではないでしょうか。

問題は第2段階からです。FRBが市場に供給した巨額のマネーをいかにして混乱なく吸収していくか。これは非常に難しい問題であると思われます。

第2段階が第1段階のQE3の縮小と明らかに違うのは、FRBが市場に供給する資金の総量がリーマンショック後に初めて減少するということです。

これまでは、歴史的な低金利で資金を調達したヘッジファンドがレバレッジを利かして、リスクの高い金融商品に強気で勝負をしてきた。ところが、FRBがひとたび資金を吸収し始めると、ヘッジファンドはレバレッジを引き下げるために金融商品のポジションを半ば強制的に縮小しなければならなくなるのです。

FRBでQE1、QE2、QE3と量的緩和を行うたびに、アメリカの株価は上昇し、他の先進国や新興国の株式市場にもずいぶん投資資金が流れ込みました。世界のヘッジファンドの運用資産の残高も増加の一途をたどってきました。

FRBが資産規模を縮小するということは、世界のヘッジファンドの運用資産の残高が減少することにつながります。FRBの資産規模が減らないQE3縮小(第1段階)の観測が流れただけで、5月~8月に世界の株式市場は伸び悩み、多くの新興国の通貨が大きく売られたのです。

したがって、資産規模の縮小(第2段階)はきわめて慎重にやっていかないと、金融市場のみならず、世界的に経済が動揺する恐れがあります。

ただし、FRBの救いとしては、日銀が新たに大規模な量的緩和を始めたことで、FRBの資産規模の縮小分をすべてではないにしても日銀が補ってくれるということです。FRBの本音としては、日銀が2014年末まで量的緩和を続けている間に、資産規模の縮小を何としても始めたいのではないでしょうか。

しかしそれでも私は、資産規模の縮小は3年くらい時間をかけてゆっくりとやるのが妥当であると考えています。新興国を中心として、資産バブルと借金経済が同時進行で大きく膨らんでしまっているからです。

ですから、第3段階の政策金利の引き上げについては、かなり先の話になると思います。

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keizaiwoyomu at 10:17|この記事のURL金融政策分析 

2013年12月10日

トップリーダーが学んでいる「5年後の世界経済」入門

(日本実業出版社)2013/12/19発売


経済のグローバル化や情報技術の進化を背景に、経済やビジネスのサイクルが非常に短く、かつ早くなってきています。

数年前には絶好調だったある国の経済が、今や景気悪化に苦しんでいる。あるいは、数年前にはもの凄い利益が出たビジネスモデルが、もはや赤字に陥っている。そんな状況が当たり前のようになってきました。

特にビジネスの世界では、強力な競争相手が国内外の同業他社だけでなく、異業種から参入してきた企業から誕生しているという事例が多くなってきています。

最近の代表的な商品でいえば、それはスマートフォンになるでしょう。スマートフォンは電話機能のほかに、パソコン、音楽プレーヤー、デジタルカメラ、カーナビ、ゲーム機など、複数の商品の役割を担うことができます。

そのために、別々の業種で発展してきた多くの商品がスマートフォンと競合し、市場規模の縮小を余儀なくさせられています。例えば、NECや富士通などはスマートフォンやタブレット型端末にパソコンの市場を奪われていますし、オリンパスやニコンはスマートフォンにデジカメのシェアを奪われ、業績が芳しくありません。

また、医薬品の業界では、タカラバイオという宝酒造の子会社が、副作用がない抗がん剤を開発しようとしています。これまでのガン治療薬といえば、製薬会社が開発するのが当然だったのですが、今はそういう時代ではありません。

異業種からの参入組は、その業界の伝統、慣習に縛られない自由な発想で参入してきますから、既存の業界からすれば大いなる脅威となりうるのです。

ここ数年で、あらゆる業界の境界線がなくなりつつあります。これまで競ってきた企業とはまったく違うタイプの企業との競争に巻き込まれることは、経営者にとってどう対処したらいいのか、わからないことばかりでしょう。非常に恐い時代がやってきたと言えるのです。

こうした恐い時代を生き抜くためには、経営者は幅広い知識を持って、広い視野から経営の判断をしなければなりませんし、一歩先のビジネスの流れを常に予測していかなければなりません。

そして、さらに経営者に求められるのが、世界経済の大きな流れを的確に理解していることです。昨今は海外市場を目指す企業も増えていますが、進出先の国の将来が見えていなければ、多額の投資をムダにすることになるからです。

私は、経営コンサルタントとしての仕事をする一方で、経済アナリストとしても活動しています。私は「経営と経済は一体である」と常日頃から考えていますが、本書では「これから5年~10年スパンの世界経済の見通しを述べながら、経営者は今、何をしておくべきなのか」をご提案させていただいています。

業績を上げている企業の経営者の方々とお話をするとわかるのは、皆さん、世界経済に強い関心を持ちながら、先の見通しまで考えてビジネスを進めているということです。

今後、経営で大きな失敗をしないためには、あるいは成功を続けるためには、世界経済の趨勢を学ぶのは決して欠かせないと思います。

本書が、皆さんのビジネスにお役に立てれば幸いです。

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keizaiwoyomu at 12:54|この記事のURL拙書の紹介 

2013年12月05日

2014年以降の新興国経済

ここまでは、米国経済が回復傾向を辿る一方で、欧州経済は低迷が続くという見解を述べてきました。それでは、新興国と呼ばれる国々の経済はどうなっていくのでしょうか。

まず、新興国の雄である中国は、リーマン危機後に行った巨額な財政出動の後遺症に苦しんでいます。国有企業が需要を無視した設備投資を行った結果、供給過剰によりモノの価格が大幅に下落しているのです。そのために国有企業の業績が悪化し、その煽りを受けて中小企業は倒産ラッシュに見舞われています。失業者の数は1億人を超えているとも言われています。

中国のGDP成長率は7%台を保っていますし、その他の経済統計を見ても中国の深刻な状況は伝わってきませんが、実際のところ、GDPは5%も成長していないと見るのが妥当でしょう。中国に詳しい香港のエコノミストは、GDPや貿易統計などについて、信頼のおける周辺国の統計やヒアリング調査などと突き合わせて、公表数字の割引率を算出しているほどなのです。

そういった状況のなかで、中国がこれまでと同様に資源を買い続けることが難しくなってきています。その上で、米国でシェール革命が進むことによって、長期的に見て資源価格が下落傾向になる可能性が高まっています。2000年以降のエネルギー・鉱物資源の値上がりは、低成長で本当はデフレでもいいはずの先進国にインフレをもたらし、先進国の人々の生活水準の低下を徐々にもたらしていきました。その分、莫大な利益を得ていたのが資源国でした。

しかし、将来的に原油価格や天然ガスの価格が下がることにより、資源大国と言われているロシアやブラジル、インドネシアといった新興国の経済を下押しすることにつながります。

原油価格や天然ガス価格が下落すれば、はじめにロシアが苦境に立たされます。ロシアは原油、天然ガスの生産量で世界1位・2位を争う資源大国であり、国家歳入の約50%を原油や天然ガスに依存しており、また輸出の面においても約70%を原油や天然ガスといったエネルギー関連品に依存しています。

そのため、シェールガス革命によってこれらの資源価格が大きく下落することになれば、ロシアは国家財政が大きな打撃を受けるばかりか、経済成長の大きな押し下げ要因にもなってしまいます。昨年まではロシアの天然ガスは欧州市場をほぼ独占していたのですが、今や米国市場で競争力を失ったカタールなどの天然ガスが欧州に流れ込み、割高なロシア産のガスを追い出しつつあるのです。よって、ロシア経済は2014年も伸び悩むでしょう。

ブラジルも資源価格の高騰によって、経済が潤ってきた国のひとつです。海外からの潤沢な投資資金の流入や、政府による巨額なインフラ投資も重なり、高い経済成長を実現してきました。そのために、国内で過剰な信用拡大をもたらし、それにマヒしたかのように、金融機関の融資基準がすっかり甘くなってしまっています。

今のブラジルでは空前のクレジットブームが起こっています。つまり、かつてのアメリカでの住宅バブルと同じように、過度な借金で回す経済に陥ってしまっているのです。この借金経済は鉄鉱石などの資源価格が高止まりしているうちは回すことができるのですが、ひとたび価格が下落傾向を強めれば回らなくなってしまうでしょう。2014年のブラジル経済はその瀬戸際に立たされるかもしれません。

東南アジアの盟主であるインドネシアも、原油のほかにも石炭、パーム油などの資源が豊富で、中国はじめとした新興国向けに輸出し、これまでは順調に経済が推移してきました。ところが、中国の需要減少や資源価格の上昇一服により、今は一転して資源輸出がふるわなくなり、貿易収支、経常収支ともに赤字転落の憂き目をみています。

BRICsと言われる国々の成長が減速するなか、代わって成長エンジン役を担うであろうと期待されているのが人口6億人を擁する東南アジア諸国です。しかし、その東南アジア諸国も最大の人口を誇るインドネシアが減速傾向にあり、その他の国々にも家計の債務の大幅な増加という足枷が表面化してきています。

家計債務の膨張については、東南アジア諸国の政府と中央銀行も警戒感を強めています。リーマンショック後、世界各国が金融緩和に舵を切るなか、東南アジア諸国でも歴史的な低金利と融資基準の緩和を追い風に、住宅ローンや自動車ローンの利用が拡大しました。その結果、個人消費が主導する高い経済成長を達成できたのです。

しかし、個人消費の拡大に比例して家計の債務残高も右肩上がりで増加してきたため、ここのところの景気減速によりローン返済に窮する家計が急増しています。そうした状況下で、各国は家計の債務膨張に歯止めをかけるために、新たな融資規制の導入に動き始めています。

これは、東南アジア諸国の旺盛な消費を冷え込ませ、経済成長を減速させる大きな要因となりえます。よって、新興国経済はフィリピンなどの例外もありますが、全体として明るい見通しは持てない状況にあるとみております。

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keizaiwoyomu at 09:33|この記事のURL経済分析 
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