2014年12月

2014年12月24日

ロシアの行く末

ここのところ、ロシアに関する報道が目立ってきましたが、今後のロシアはどのようになっていくのでしょうか。それについては、拙書『新興国経済総崩れ~日米は支えきれるか?』(2013年9月発行)の112~120ページの文章を引用したうえで、少し補足を加えさせていただきたいと思います。

(以下、『新興国経済総崩れ~日米は支えきれるか?』より引用)

国際エネルギー機関(IEA)の見通しによれば、アメリカが2015年までには世界一のガス産出国に、2017年までには世界一の産油国になるようです。

そしてアメリカのシェール革命による資源価格の国際的な下落で、大きなダメージを受ける代表格であると思われるのがロシアなのです。

ロシアは原油、天然ガスの生産量で世界1位、2位を争う資源大国で、GDPの約3割、輸出の約7割を石油ガス産業が稼ぎ出しています。国家の歳入の約5割がエネルギー収入によって賄われているのです。

その重要な天然ガスの輸出が、2012年には前年より8%も減少しています。背景には主な輸出先である欧州の景気低迷があると説明されていますが、それだけではありません。

前述した、資源輸出の玉突き現象の影響です。アメリカにおける急速なシェールガス開発で行き場を失ったカタールなど中東産油国の天然ガスが欧州に向かい、欧州で割高なロシア産のガスが余るようになったからなのです。

さらにロシアに逆風が吹きます。通常、天然ガスの取引は安定供給を優先することから長期契約になることが多いのですが、取引方法にも異変が生じています。欧州市場へのカタールなど中東勢の参入で、売買契約と同時に現物の受け渡しをするスポット取引が増えてきたのです。

こうして長らく強気で売られてきたロシア産ガスは、徐々に欧州市場における主導権を失っていくものと思われます。

ロシア国民が2000年から続くプーチン体制を消極的であれ支持してきたのは、1998年に起きたルーブル暴落と国債デフォルトでロシア経済がどん底まで落ちたトラウマから逃れられないからでしょう。

当時の貧乏な生活を耐えた苦しみを考えれば、国民の自由が強権で抑圧されるような政治でも、経済さえうまくいけばそれでいいと我慢してきたのです。

しかしながら、ここまで記してきたように、資源輸出に頼るロシア経済に暗雲が立ちこめてきています。実質GDPの成長率を見ると、2012年と2013年(推計値)はともに4%を割り込んでいる状況です。

国内の景気を見るうえで重要な目安となる自動車販売も低迷しています。ロシア国内の自動車販売は2010年から前年同月比で平均10%超の伸びをみせていたのですが、天然ガスの輸出が鈍り始めた2012年夏頃から急ブレーキがかかりました。2013年3月以降は、ずっと前年同月比でマイナス続きとなっています。

シェール革命に端を発するエネルギー価格の低下が続き、このままなし崩し的に経済が失速するならば、抑圧された国民の不満は一気にプーチン体制に向かう可能性があるのです。大都市の中間層が起こした反プーチン運動が再燃し、それが広範な大衆を巻き込んで全国規模の民主化デモへと発展するならば、プーチンの政権基盤は一気に揺らいでしまうでしょう。

(中略)

従来のロシアは資源外交を展開し、とくに中東欧諸国に対して政治的圧力を加えてきたのですが、シェール革命の余波により、その影響力は明らかに弱まってきています。

中東欧での影響力の低下を補うため、このところロシアが急接近しているのが中東、中南米諸国です。

2013年7月にモスクワで開催された「ガス輸出国サミット」には反米の立場をとるベネズエラ、ボリビア、イラン、イラクなどの首脳が集まりました。プーチン大統領はここで外交攻勢をかけ、資源開発や武器輸出についていっそうの関係強化を確認し合ったということです。この4ヵ国を橋頭堡として、反米意識くすぶる中南米、中東諸国に接近し、ロシア側に取り込む狙いがあるのです。

こうしたプーチン大統領の外交攻勢は一見したたかに見えるのですが、私にはとても成功するようには思えません。これらの国々もまた、ロシアと同じ境遇にある資源輸出国であり、世界で競争力を持つ産業を育てることができていないという点で共通しているからです。

ロシアがいかに策を講じようと、シェール革命が進むにつれ、世界におけるエネルギー資源の勢力地図の趨勢は徐々に塗り変わっていきます。

ここで言えるのは、ロシアの世界に対する政治的かつ経済的影響力が確実にフェードアウトしていく方向にあるということです。

(以上、引用終わり)

補足を加えると、プーチンは会見を開いては「原油急落はアメリカとサウジアラビアの陰謀だ」としきりに訴えていますが、この発言はいわゆるデタラメな陰謀論に過ぎません。そういう陰謀論をつくりあげて国民に信じ込ませないと、プーチン政権の基盤が揺らぎかねないという危機感の表れなのでしょう。

OPECの減産見送りという決断は、サウジアラビアとアメリカのロシアに対する共闘などというものではなく、反対に、石油をめぐる両国の暗闘が始まったという見方が正しいでしょう。

数年前にある企業から「ロシアに進出したい」という相談を受けた時に、「そう遠くない将来に、資源エネルギー価格は下落するから、とくにロシアやブラジルはやめたほうがいい」と助言しましたが、その助言が結果的に生きてきたので本当に良かったと思っております。

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keizaiwoyomu at 09:56|この記事のURL経済分析 

2014年12月16日

アメリカはデフレによって復活する

前回の記事の続きです。

将来の原油価格が50ドル前後で安定してくると、先進国経済には何が起こるのでしょうか。

この答えについては、模範的な回答が拙書『新興国経済総くずれ~日米は支えきれるか?』(2013年9月発売)の172~174ページに書かれていますので、その部分をそのまま引用し、少しパンチの効いた補足を加えさせていただきたいと思います。

(以下、『新興国経済総くずれ~日米は支えきれるか?』より引用)

これまで本書のなかでは、5年単位のスパンで考えれば、シェール革命によってエネルギー価格が大きく下落していくだろうということ、エネルギー価格の下落がドミノ倒しのように波及して、鉱物資源価格、穀物価格、食肉価格と相次いで下落傾向になるだろうということを繰り返し述べてきました。

いよいよ2000年代から始まった原油価格の高騰を発端としたエネルギー資源バブルが終焉を迎えようとしています。原油価格が高止まりしているのは、せいぜいあと1年~2年といったところでしょう。このことは、インフレに苦しむアメリカ国民にとって福音となるはずです。

移動距離が日本とは比べものにならない自動車社会のアメリカでは、原油価格に連動してガソリン価格が下落していくと、生活コストもかなり下がるので、国民はそれだけでも生活が楽になるはずです。

そのうえ、原油価格の下落に連動してトウモロコシや大豆などの穀物価格の下落が進めば、それを餌にしている鶏・豚・牛などの肉の価格も下落していきます。穀物価格の下落の進行が、食料品全体の価格下落につながっていくのです。

さらに、世界でいちばん安い天然ガス価格があらゆる製品価格の下落を促すのであれば、アメリカ人の生活費は著しく下がっていくことになります。

もちろん、それはアメリカ人の賃金が下がっていくことにもつながっていきますが、賃金の下落率よりもガソリン、食料品、製品の価格下落率のほうが大きくなるので、名目の賃金が下落しても実質的な賃金は上がっていることになり、生活は苦しくなるどころか、むしろ余裕が出てくるようになるはずです。

世界的に好景気を謳歌した2005年以降の消費者物価指数を分解して調べてみると、「インフレの国」と言われるアメリカであっても、自動車や電化製品などの製品価格はぜんぜん上がっていません。むしろ電化製品などは日本と同じように下落傾向をたどってきています。

それでもアメリカがこれまでインフレであったのは、国民の生活コストに直結するガソリン価格や電気料金、食料価格などが日本とは異なり大幅に上昇してきたからです。2005年以降の8年間でガソリン価格は約2.8倍、電気料金は約1.6倍、食料価格は約1.5倍にも高騰しているのですから、アメリカがインフレになるのは当然でしょう。

ほぼ同じ期間に、フードスタンプの配給対象者が2倍以上に膨れ上がっていることは、決して偶然ではないのです。

しかし、エネルギー価格が下落の傾向をたどり、すべてのモノの価格が安くなっていくのであれば、アメリカが「インフレの国」であり続けることはできなくなります。つまり、アメリカは「デフレの国」になっていくのです。

シェールガス革命とそれに伴うあらゆるモノの価格の下落は、アメリカ経済を健全なデフレに導くだけでなく、アメリカ経済の復活を主導することは容易に想像できるでしょう。こうして、アメリカを起点として世界的にデフレが広がっていくことになるのです。

(引用終わり)

最近のドル高・原油安による勝ち組はアメリカの庶民であることは間違いないでしょう。そうは言っても、アメリカの大多数の庶民が依然として、日本の国民よりもはるかに悲惨な生活を強いられています。

リーマン・ショック後のアメリカでは、企業の解雇や賃金カットによって国民の所得が下がり続けているなかで、量的緩和に依存する通貨安によって物価が上昇し続けて、国民の生活が年々苦しくなってきていたからです。名目賃金が多少は伸びても、それが物価高に追い付くことができずに、実質賃金が下がり続けていたのです。

アメリカのこの事例は、通貨安・物価高よりも通貨高・物価安の組み合わせのほうが、国民の生活水準の向上に寄与しているという事実を見事に示しています。本当の景気回復とは、大多数の庶民と呼ばれる人々の生活が豊かになることであり、決して一部の大企業や富裕層たちに富が集中することではないのです。

つまり、FRBのバーナンキ前議長は大規模な金融緩和により「アメリカ経済をデフレから救った」と一般的には評価されていますが、その認識自体が大きく間違っています。リフレ派が取り上げるアメリカの成功事例は、国民生活の視点から見ると、まったくデタラメな作り話にすぎないのです。

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keizaiwoyomu at 15:34|この記事のURL経済分析 

2014年12月01日

今後の原油価格について

世界的に原油価格の下落が続いておりますが、今後の展開については拙書『シェール革命後の世界勢力図』(2013年6月発行)の84~86ページをそのまま引用し、少し補足を加えさせていただきたいと思います。

(以下、『シェール革命後の世界勢力図』より引用)

アメリカの天然ガスの輸出が拡大するにつれて、安価な天然ガスの需要が増加の一途を辿ると同時に、原油の需要が思うように伸びないという現象が世界的に広がっていくでしょう。原油の需要が減少するとまでいえないのは、人口が増えない先進国では需要が減少しても、人口が増加する新興国や途上国では需要が確実に増加していくからです。

いまのところ、アメリカ国内の需要減少だけを反映して、WTI原油価格のみが世界の他地域に比べて安い状況にありますが、過去数年の天然ガス同様に、今後、アメリカでは原油の生産量が急増しますので、これから数年以内に原油の需要が減少する一方で供給のほうが大きく増えることになるのは間違いありません。

その結果、WTI原油価格はさらに大きく下落し、それによって欧州の北海ブレント原油価格やアジアの中東産ドバイ原油価格にも大きな下落圧力が働いていくことになるでしょう(図表3-4)。天然ガス価格と同じように3~5年の期間で考えれば、3つの原油価格のいずれもがいまの半値以下の1バレルあたり50ドルを割り込んでもおかしくはないのです。

アメリカは世界最大の石油・ガス消費国であり、ピーク時には石油の消費量の67%、天然ガスは16%を海外からの輸入に頼っていました。それが、シェール資源の採掘技術の目覚ましい進歩により、2011年には石油は消費量の53%、天然ガスは8%、2012年には石油は47%、天然ガスは6%と、その輸入比率は減少する傾向にあります。今後もそれぞれの輸入比率は1年に3~5%程度下がっていくだろうと見られています。

図表3-3と図表3-4では、世界における天然ガスと原油の指標価格の推移を過去から未来にわたって示しています。天然ガスにしても原油にしても、アメリカの指標価格を後追いするように全体的に価格が下がっていくのが、需要と供給の関係からも、あるいは経済的合理性から考えても、自然な流れであるといえるでしょう。

(引用終わり)

補足を加えると、私の以上の予測は拙書『アメリカの世界戦略に乗って、日本経済は大復活する』(2013年3月発行)でも述べておりますが、それから1年6カ月~1年9カ月経過して、おおよそ原油価格は想定していたように下落が進んできているようです。もっとも直近の数カ月の下落のペースが速かったので、どこかで多少戻しがあってから、再びじりじりと下落が始まると予想しています。

多くのメディアでは、「アメリカのシェールオイルの採算コストは70ドル前後だから、70ドルより下がり続けることはない」という意見もありますが、それは大いに間違った認識です。拙書でも指摘しているように、技術革新によって採算コストは大きく下がっていくからです。おそらくは、ここ数年以内に採算コストは40ドル前後まで下がってくるでしょう。

そして、数年以内に原油価格が50ドルまで下がると、先進国経済には何が起こるのでしょうか。それについては、次回にまたお話をしたいと思います。

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keizaiwoyomu at 06:30|この記事のURL市場予測 
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