2015年01月

2015年01月26日

これから日本で起こること

(東洋経済新報社)2015/1/30発売


経済政策とは誰のために存在するのでしょうか。その答えはもちろん、普通の暮らしをしている人々のために存在しています。

ケインズの師匠でもあるケンブリッジ大学のアルフレッド・マーシャル教授は、学生たちをロンドンの貧民街に連れて行き、そこで暮らす人々の様子を見せながら、「経済学者になるには冷徹な頭脳と暖かい心の両方が必要である」と教え諭したといわれています。

本書では「経済政策とはいったい誰のために存在するのか」という視点に基づいて日本の現状を分析したうえで、2015年~2017年の日本の経済、社会、雇用、賃金、消費、マーケットはどうなっていくのかを予想しております。

興味がございましたら、ぜひご覧いただきたいと思っております。

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keizaiwoyomu at 18:54|この記事のURL拙書の紹介 

2015年01月14日

アベノミクスの失敗は消費増税のせいではない(2)

前回のお話の続きになります。

リフレ派の経済識者たちがけっして口に出さない不都合な真実は、実のところ、消費税を増税する前にすでに実質賃金が大きく下落していたということです。

前回の記事でも述べたことですが、実質賃金の推移をもう一度だけ振り返ってみると、円安によるインフレが顕在化し始めた2013年の7~9月が1.5%減、10~12月が1.4%減、2014年1~3月が1.7%減と、すでに実質賃金は大きく下落していました。

消費税の増税が行われた2014年4月以前の数字をありのままに受け止めると、そこで明らかになるのは、デフレの時よりもインフレの時のほうが実質賃金は大きく落ち込んでしまっているという事実です。

「もしアベノミクスが失敗したら、それは消費税を増税したからである」と、リフレ派の経済識者たちがそろって保険をかける発言を繰り返していますが、そのような発言は実質賃金の推移を見れば真実ではないことが、誰の目から見ても明らかなのです。

確かに、消費税増税前の2014年1~3月期のGDP成長率がプラス6.0%であったのに対して、4~6月期がマイナス7.1%に落ち込んだのですから、そういう理由付けをしたくなるのは分からないでもないですが、実のところ、高成長を達成した1~3月期においても実質賃金は1.7%減となっていたわけです。

リフレ派の言い分としては、個々のニュアンスの違いはあれ、「2013年度のGDP成長率はプラス2.3%を記録し、民主党政権下にあった2011年度のマイナス0.3%、2012年度のプラス0.7%に比べても大きく伸ばすことができた。消費税増税がなければ、2014年度も同じ程度のプラスを続けていたはずだ」というものです。

ところが、この見解が間違っているのは、消費税増税があったからこそ、駆け込み消費により2014年1-3月期はプラス6.0%という高い成長率を達成できたのであり、この1-3月期の高成長が2013年度の成長率をおよそ2倍超に引き上げているということです。つまり、消費税増税がなかったら2013年度のプラス2.3%という成長は半分以下になっていた可能性が高いのです。

さらには、2014年1-3月期に続く4-6月期や7-9月期の成長率も、たとえ消費税が上がらなかったとしても、円安インフレによる実質賃金の低下が悪影響として徐々に表れてきて、プラス成長を継続するのはほとんど不可能ではなかったのではないでしょうか。

要するに、消費増税があろうとなかろうと、アベノミクスは上手く行ってなかったというわけです。

ただし、私は「安倍首相は本当に運がいい人だ」と思っています。この件については、また別の機会にでもお話したいと思います。

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keizaiwoyomu at 10:04|この記事のURL経済分析 

2015年01月07日

アベノミクスの失敗は消費増税のせいではない(1)

みなさんもご存知のように、私は日銀が史上空前の量的緩和を始めた当初から、悪性インフレをもたらすような愚行は絶対にやってはいけないと言い続けてきました。量的緩和をやりすぎてしまうと、たとえ物価を上昇させることができたとしても、国民の実質的な賃金は上がるどころか、むしろ下がってしまうだろうと確信していたからです。

国民にとって大事なのは、名目賃金が上がったかどうかではありません。物価変動を考慮に入れた実質賃金が上がったかどうかであるのです。このことは、アメリカの2000年以降の通貨安に伴うインフレの歴史が証明しています。

アメリカの2000年の名目賃金、実質賃金、消費者物価指数のそれぞれを100とした場合、2013年の名目平均賃金は97.5と下がっているのに対して、消費者物価指数は135.3と上がってしまっています。名目賃金はまったく伸びていないのに、インフレ政策によって物価が伸び続けたために、実質賃金が72.4まで下がり続け、アメリカ国民の暮らし向きは悪化していく一方であったのです。

それでは、安倍政権が誕生してアベノミクスが始動したあとの日本では、国民の実質賃金はいったいどのようになっているのでしょうか。

厚生労働省の毎月勤労統計によると、名目賃金指数を消費者物価指数で割って算出する実質賃金指数(=実質賃金/2010年平均=100)は、2013年7月から直近の2014年11月分まで、驚くべきことに17カ月も連続して減少しています。2013年前半に名目賃金が少しだけ上がったところで、円安によるインフレが進み、実質賃金を大幅に引き下げてしまっているのです。

実質的にアベノミクスが始まった2013年以降の実質賃金がどのように推移しているのかを見てみると、2013年1~6月は2.7増になりましたが、円安による輸入インフレの影響を受け始めた7~12月には1.4%減、2014年1~6月は2.5%減、7~11月は3.0%減と、減少傾向に歯止めがからなくなっています。

とりわけ特徴的なのは、2014年4月に消費税率が5%から8%に引き上げられたことで、実質賃金が同年1~3月の1.7%減から4~6月には3.4%減と減少幅が2倍にも拡大してしまったことです。安倍首相は名目賃金が上がったのは大きな成果であると言い張っていますが、国民にとって大事なのは、名目賃金ではなく実質賃金であるのです。実質賃金が大幅に下がってしまっては、国民の生活は疲弊するばかりなのです。

ですから、マスメディアではいい加減な情報が跋扈しているなかで、本当にアベノミクスが成功しているのか否かを見極めるためには、アベノミクスが本格的に始動した2013年以降の実質賃金と、それ以前の実質賃金の推移を比べるのが、いちばん正しい方法であると考えられます。

そこで、アベノミクスが始まる前の2010年~2012年の3年間、すなわち民主党政権時代の実質賃金はどうだったのかというと、2010年が1.3%増、2011年が0.1%増、2012年が0.7%減となり、結果的には実質賃金は0.6%増となっています。

正直言って、民主党政権時代の経済政策は目も当てられないほどひどかったのですが、それでも安倍政権下での2013年の実質賃金が0.5%減、2014年が2.7%減(1月~11月の数字)となり、暫定的ながら2年間の成果が3.1%減となっていることを考えると、アベノミクスがあまりにも筋が悪すぎる政策であったことが露見してしまったのです。

次回は、今回の続きについてお話いたします。

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keizaiwoyomu at 12:15|この記事のURL経済分析 
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