2015年02月

2015年02月27日

安倍首相は本当に運がいい人だ

1月14日の記事の終わりに、『私は「安倍首相は本当に運がいい人だ」と思っています。この件については、また別の機会にでもお話したいと思います』と述べたままでしたが、本日はこの件について触れることにいたします。(なお、今回の記事が他のメディアに過去に掲載した記事や新刊の内容と重なるのは、ご容赦いただきたいと思います。)

2014年10月末時点、すなわち日銀の追加緩和が決定した時点の私の考えでは、2015年の円相場がおおよそ120円~130円で推移すると仮定したら、アベノミクスは2015年のうちに実質賃金の下落に耐えきれずに、失敗の烙印を押されることになるだろうというシナリオが思い浮かんでいました。

ところが、それからわずか2カ月しか経っていない12月末時点において、私の考えは、アベノミクスがひょっとしたら2017年までは何とか持ちこたえることができるかもしれないというものに変わっていました。というのも、10月末から12月末の2カ月のあいだに、国際的な原油価格が私の想定していた時間軸よりもずっと速いペースで下落していったからです。

私は拙書『シェール革命後の世界勢力図』(2013年6月刊行)で、早ければ2016年には、WTI、北海ブレント、中東産ドバイの3つの原油価格が当時の100ドル超の価格の半値以下である50ドルを割り込んでもおかしくないと予想していましたが、それは価格が30 ドル程度ずつ下がる過程において、OPECが減産で対応してくるという前提に基づいて、私なりに計算した結果でありました。

具体的には、世界的な供給過剰を背景にして、原油価格が100~110ドルから70~80ドルまで下落すれば、OPEC加盟国が協力して減産を進めるようになり、価格は半値戻しの85~95ドルまで戻していく。しかしその後も供給過剰が解消されず、価格がさらに55~65ドルまで下落していけば、OPECは追加の減産を進めざるを得ない。このようにして、原油市場とOPECのせめぎ合いのなかで、時間をかけて原油価格が下落していくというシナリオを描いていたのです。

なぜOPECが減産すると読んでいたのかというと、中東産油国は2010年末に始まった「アラブの春」という民主化運動の影響が自国に及ぶのを避けるために、低所得層の住宅建設や失業給付の拡充、社会保障費の増額など、国民の不満が爆発しないように莫大な財政出動を行ったからでした。その結果、財政支出が大きく膨らみ、財政上の損益分岐点となる原油価格はもっとも裕福なサウジアラビアでさえ、80~90ドル程度にまで上昇してしまったわけです。

しかし予想外にも、原油価格が80ドルを割り込むとOPEC加盟国のすべてが財政赤字に陥ってしまうにもかかわらず、OPECの盟主であるサウジアラビアは減産に同意しなかったのです。その結果として、原油価格は大暴落とも言える50ドル割れまで売り込まれることになったわけなのです。

私は「安倍首相は本当に運がいい人だ」と思っています。原油価格の急落はアベノミクスによる景気低迷や国民生活の痛みを緩和してくれるだけでなく、アベノミクスの失敗から政権が退陣に追い込まれるリスクまでも軽減してくれるからです。

円安インフレに苦しむ日本の人々にとっては、今回の原油価格の急落によって悪性インフレがある程度は抑え込むことができるので、下がり続けてきた実質賃金がある程度は浮上する可能性が高まってきています。ガソリン価格や電気料金、ガス価格、灯油価格などが安くなり、物価を押し下げる効果を発揮できる状況になってきているからです。

要するに、安倍首相はいろいろな場で「デフレを脱却しなければならない」と口が酸っぱくなるくらい言っていますが、皮肉ながらも、インフレからデフレへの若干の巻き戻しによって、自らの経済的失策という窮地から救われることになったわけです。

ですから、原油価格がこれからも50ドル台~60ドル台という低位で安定してくれるのであれば、アベノミクスは失敗というレッテルを貼られずに、何とか延命していくことができる可能性が高まっていくでしょう。

ただし決して誤解してはいけないのは、安倍政権があるうちに景気が力強い回復をすることはないということです。あくまで、失敗の烙印を押されないで済みそうだというレベルの話に過ぎないのです。

最後に、念のため断わっておきますが、私は安倍政権の経済政策をすべて否定しているわけではありません。「過度な金融緩和は国民を苦しめるので、早くやめたほうがいい」と言っているだけなのです。

私の安倍政権誕生前から一貫している持論は、アメリカの景気回復と世界的なエネルギー価格の下落を待ちながら、地道に成長戦略を進めていけばいいというものです。過度な金融緩和に頼らなくても、3年くらい待っていればアメリカの景気回復と世界的なエネルギー価格の下落によって日本人の暮らし向きは良くなると予想していたからです。

とくに、農業の成長産業化については、これまで拙書で何回も書いてきたことですし、このブログでも取り上げてきたことです。その意味では、安倍政権の農協改革に対する実行力は評価していますし、ぜひ農業を成長産業化してほしいと願っています。

  ←応援クリックお願いします!

keizaiwoyomu at 08:35|この記事のURL経済分析 

2015年02月20日

経済を予測するポイントなど

新刊 『これから日本で起こること』 の出版を記念して、「美人すぎる金融アナリスト」として評判の三井智映子さんからインタビューを受けました。経済を予測するポイントや今後の日本の経済動向について、東洋経済オンラインで3回にわたって述べていますので、興味がございましたらご覧いただければと思います。

第1回 「これから日本で起こること」とは何か?
第2回 なぜ21世紀型インフレは人を不幸にするのか
第3回 なぜインフレよりもデフレがいいのか

  ←応援クリックお願いします!

keizaiwoyomu at 09:11|この記事のURLその他 

2015年02月12日

ギリシャ問題はどうなるのか

今回は、『本質を見極める勉強法』(昨年11月出版)のキャンペーンにお申込みいただいた方々に1月22日にお送りした『経済展望レポート』から一部分を引用し、その上で補足を加えたいと思います。

(以下、『経済展望レポート』より一部引用)

目下のところ、経済や市場にとって大きなリスクとして意識されるのは、25日のギリシャの総選挙についてです。急進左派連合が選挙に勝利し政権を担うようになれば、急進左派はEUとの緊縮財政を破棄すると明言していたからです。これは、ギリシャのユーロ圏離脱を現実のものとして感じさせる発言でありました。

しかし、今年に入ってだいぶ事情が変わってきています。もとからドイツはギリシャのユーロ離脱を容認する姿勢を示してきましたが、大きな流れの変化としては、年が明けてからフランスまでもがギリシャ離脱について容認姿勢に転じてきていることがあります。

ユーロ圏の2大国がギリシャを見限ってもいいという姿勢に転じたことで、ギリシャの総選挙で勝利すると見られる急進左派連合も態度を軟化させてきています。当初は緊縮財政をEUとの再交渉によって破棄すると表明していましたが、ここのところはユーロを離脱するつもりはないと妥協案の模索に転じてきています。通貨をドラクマに戻したとしても、その通貨を買う投資家がいるはずもなく、ドラクマが暴落することは目に見えているのでしょう。

こういった経緯を踏まえて着地点として考えられるのは、「ギリシャ新政権は財政再建を続けることになるのは変わりないが、緊縮の度合いは弱めることにする。その代わりに、EUはギリシャの支援を続け、ユーロ圏離脱や財政破綻を回避する」といったシナリオではないでしょうか。要するに、ギリシャの総選挙が市場に悪い影響をもたらすのはごく短期的なもので、さほど心配する必要はないというスタンスで見ていればいいわけです。

(引用終わり)

私の読みでは、ギリシャ新政権は有権者の手前、ぎりぎりまで粘ってEUとの合意に抵抗するのではないかと思います。よって、2月末か3月初旬が合意の目安になるのではないでしょうか。

ただし、政治の世界では、本当に先のことがわかりません。普通に考えればありえないことがポピュリズムの政治では起こりうるので、テールリスクは常に意識しておく必要があるでしょう。

  ←応援クリックお願いします!

keizaiwoyomu at 11:58|この記事のURL経済分析 

2015年02月02日

この国は今、重大な岐路に立っている

私はこのブログでこれまで経済について語ってきましたが、今回に限っては鳥越俊太郎氏の文章を紹介し、日本が今、重大な岐路に立っていることを強く訴えたいと思っております。

(以下、鳥越俊太郎氏の文章より引用、原文のまま)

今日は本当に心重たい思いでこの原稿を書き始めなくてはならない。
イスラム国(ISIL) に囚われの身になっていた後藤健二さんがとうとう殺害されてしまったのだ。私は後藤さんには何としてでも生きて帰って紛争地の実情を他のメディアの伝えない市民や子供目線できちっと伝えて欲しかったのだ。
今朝からテレビを見ていると政府関係者の「このような行為は人間が行えるとは到底思えない残虐非道な行為です」(岸田外務大臣)「卑劣きわまりない行為に心から憤りを覚えます」(安倍総理大臣)などというコメントがテレビ上で次々と流されている。
私もイスラム国のやった行為には怒りを覚えるし、後藤さんのような他の戦場取材者とは基本的に違った視点で取材をしていた人物の喪失を心から悲しい,残念だと思う。
そうした点を強調した上で一連のテレビメディアが伝えない重要なポイントをここで指摘しておきたい。
私たちは後藤さんと言う具体的な1人の人物の死を悼んでいるが、あのシリアやイラクの戦場では戦闘で勿論多くの命が失われていることをもきちんと抑えておきたい。更に言えば後藤さんの取材した映像の中にも出て来るが、米、英など所謂有志連合の空爆で多くの市民も巻き添えになって家や財産だけではなく命もまた多くが失われている事実だ。その点ではイスラム国の戦闘員からすれば米、英国などの有志連合国は敵である。これはどちらに味方するのではなく客観的に見れば、テロリスト集団とされるイスラム国と有志連合は戦争中なのだ。
これが昨年来かの地で続いている現実なのだ。
そこに今年1月17日日本の安倍総理大臣は公然と割って入った。 「ISILと闘っている周辺諸国に2億ドルの支援をしたい」エジプト・カイロでの安倍総理の世界に向けてのスピーチだった。
このスピーチは日本とイスラム過激派との関係を根本から変える歴史的転換点だったと思っている。日本はこれまでイラクのサマワヘの自衛隊派遣やアフガン戦争でのインド洋上での給油など危険な綱渡りをして来たが、一国の総理が相手を名指しで発言することは無かった。今回ははっきりとISIL(イスラム国)と名指しをした。これが三日後に公表された湯川さん,後藤さんの捕虜になっている姿の映像でその意味するところがあきらかになった。映像に付けられたコメントにはハッキリと安倍総理の2億ドル支援発言を踏まえて身代金を要求していた。これはイスラム過激派が日本の首相の名前を挙げて非難する初めての出来事だった。
僕はこのとき「これはちょっとヤバいことになったなぁ!」と正直思った。
そして今日その僕の不安は現実のものとなった。
イスラム国のテロリストのコメントにはこうあった。
「安倍よ、お前の無謀な決断のために健二の命は失われ,今後お前の国民はいつ,どこでも殺戮の対象になるだろう」
テロリストが日本国に対し,あるいは日本国民に対しここ迄明瞭に殺害予告を出すのは初めてなのではないだろうか?
1月17日の安倍カイロスピーチを境に日本はアメリカやイギリス並みのテロ対象国になった瞬間だった。これが後藤さん殺害事件の裏にある重大なテーマだ。
そのことをテレビはどこも,誰も言及しようとはしない。
はっきりと言うと日本の地下鉄の中で自爆テロがいつか起こるかもしれない事態に日本人の環境は移行した、これこそが私たちが本当に警戒しなければならない現実なのだ。
https://www.facebook.com/shuntarou.torigoe.5/posts/785958718153794?fref=nf&pnref=story

(以上、引用終わり)

私も鳥越氏とまったく同じ考えです。

国際情勢が少しでも理解できていれば、この時期にイスラエルをはじめとした中東訪問などできるわけがないからです。今回の一連の事件を誘発したのは、明らかに首相の中東訪問とあの無神経なスピーチによるものです。

官邸は昨年11月には人質について知っていたというのですから、尚更、なぜこの時期に中東訪問を強行したのか、普通の教育を受けてきた私にはまったく理解ができません。

この事件を受けて、テレビや新聞のメディアとしての真価が問われていると思います。ここのところ、とくにテレビでは言論の自由が制限されていると感じているのは、私だけではないでしょう。

というのも、さまざまな政策に対して真っ当な意見を述べるコメンテーターほど、政府の要請を受けるかたちで排除される傾向が強まっているからです。もちろん、鳥越俊太郎氏もその一人ですし、経済の分野では五十嵐敬喜氏や上野泰也氏などもこれに該当するでしょう。

格差拡大をもたらすアベノミクスという経済政策だけでなく、国民の生命・財産を守るという観点からも、私は首相や政府に対して大いに失望しているところです。

政治とはいったい誰のために存在するのでしょうか?経済政策とは誰のために存在するのでしょうか?

戦争の悲惨さと深刻な格差をリアルタイムで知らない我々日本人の多くは、今一度、これらについて真剣に考え直す時期に来ているのではないでしょうか。

  ←応援クリックお願いします!

keizaiwoyomu at 11:33|この記事のURLその他 
レポート配信履歴
10/14・10/25

11/13・11/30

12/10(本年最終号)

※レポートが届いていない場合、ゴミ箱または迷惑メールBOXをご確認ください。