2015年05月

2015年05月25日

最近よく聞かれること(2)

前回の記事の続編です。

最近、メディアの取材でよく聞かれることで、「アメリカの景気動向」に次いで多いのが、「FRBの利上げの時期」についてです。この質問の答えは、アメリカ経済の動向と深くかかわっており、そのことを理解することなしに考えることはできません。

4月7日の記事『アメリカの経済成長鈍化は既定路線』では、2015年のアメリカ経済は原油安によって個人消費は増加するものの、ドル高の進行が経済を牽引してきた企業部門の収益を悪化させるために、1-3月期と4-6月期のGDPはそれほど伸びが期待できないという見通しを述べさせていただきました。

4月29日のGDP速報値ではそのことが明らかになったわけですが、市場関係者の間では依然として、年後半に2%台の成長を取り戻すと予想する向きが多いということです。

そのような楽観的な予想を立てているのは、何も市場関係者だけではありません。FRBは同じ4月29日に公表したFOMCの声明の中で、成長の減速は一時的としたうえで、緩やかなペースの拡大(2%程度を想定)が続くという従来の見通しを堅持しているのです。

しかし私は、前回の記事でも申し上げましたように、現在のドル高の水準が続く限りは、2015年を通して1%程度の成長が妥当なところではないかと考えています。FRBが想定している成長の達成は、ここからある程度のドル安が進行しなければ、極めて難しいのではないでしょうか。

だからこそ、FRBはなかなか利上げに踏み切ることができないでしょう。市場の予想に反して1-3月期のGDPが急減速したのですから、FRBは4-6月期のGDPを見ただけでは景気拡大の持続性に自信を持つことができないでしょうし、そうであるならば、7-9月期のGDPも見たいと考えるのは当然のことでしょう。

私が昨年からアメリカの利上げは早くて2015年秋頃とし、2016年に先延ばしになるかもしれないと申し上げ続けているのには、経済の大きな流れから見れば、FRBと市場の双方の経済見通しが外れるだろうという前提に立っているからなのです。

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keizaiwoyomu at 08:20|この記事のURL金融政策分析 

2015年05月20日

最近よく聞かれること(1)

5月に入ってから、メディアの取材でよく「これから、アメリカの景気はどうなっていきますか?」という質問をされるようになりました。

アメリカ商務省が4月29日に発表した2015年1-3月期のGDP(速報値)が、年率換算でわずか0.2%増にとどまり、2014年10-12月期の2.2%増に比べて大幅に減速したからなのでしょう。

私の申し上げていることは年初から一貫しておりますが、ポイントは以下の2点に集約されると思います。

①ドル高や原油安のおかげで、アメリカ国民の実質賃金は上がり、家計の消費は伸びる。
②ドル高の悪影響によって、企業収益が鈍化(輸出が減少)し、GDPの伸びは期待できない。

詳しくは、4月7日の記事『アメリカの経済成長鈍化は既定路線』、および
3月16日の記事『投資戦略フェアEXPO2015の講演資料(1)』をご覧いただければ、改めてアメリカの現状が確認できると思われます。

1-3月期のGDP減速の最大の要因は、ドル高に伴う輸出の減少にあります。GDPの内訳を見ると、輸出が7.2%減、民間設備投資が3.4%減となる一方で、個人消費支出は1.9%増、民間住宅投資は1.3%増となっております。輸出のマイナスが突出していて、GDPの足を引っ張っているわけです。

現在のドル高の水準が続く限りは、2015年を通して1%程度の成長が妥当なところではないでしょうか。市場の予想は楽観的すぎるのです。

次回は、今回の記事の続編として、アメリカの利上げの時期について述べる予定でおります。

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keizaiwoyomu at 14:53|この記事のURL経済分析 

2015年05月07日

「デフレ=不況」は歴史的事実を無視している(2)

前回の記事ではアンドリュー・アトキンソンとパトリック・J・キホーが2004年1月に発表した論文「デフレと不況は実証的に関連するのか?(原題 Deflation and depression:Is there and empirical link?)」を紹介しながら、歴史的な視点から「デフレと不況の関連性はない」ことを明らかにしました。

大恐慌以外のその他の時代をきちんと検証すれば、デフレと不況の関連性はまったくなく、デフレ期の89%は好況と重なっていたという事実が確認できますし、むしろ、インフレと不況の関連性のほうが高いという事実も明らかになっています。

アトキンソンとキホーの統計学的な研究に限らず、世界経済の歴史をもっと長い時間軸でさかのぼれば、デフレの時代のほうがインフレの時代よりもずっと長く、インフレのほうがマイナーな経済現象であったことがわかります。インフレになるのは戦争や財政難といった非常時であって、それ以外の平和な時代はデフレが通常の経済状態だったのです。

なかでもイギリスで産業革命が隆盛を極めた18世紀後半からの100年間は、技術革新による供給能力の飛躍的な進展が世界的なデフレをもたらしました。とりわけ19世紀後半の大デフレ期には、当時の主要なエネルギーであった石炭の生産が飛躍的に伸びました。いわゆるエネルギー革命が起きたからです。

そのため石炭価格は大暴落しましたが、逆に1人当たりの実質GDPや実質賃金は大きく伸びていきます。しかも、こうしたデフレの時代に平均寿命が大きく伸びるなど、人々の生活はそれまでより非常に豊かになったのです。人々は労働一辺倒の生活ではなく、生活を楽しむ余裕が生まれました。イギリスで大衆相手のエンタテインメント産業が育ち、全盛期を迎えたのもこの時代のことです。

アメリカでも1870年代~1890年代にかけてデフレの状態にありましたが、当時は活気に満ち溢れた時代であったと言われています。蓄音機や白熱電球、キネスコープなど新たな技術や発明が生まれ、工業の発展や資本の増大がもたらされたのです。石油王のジョン・ロックフェラーや鉄鋼王のアンドリュー・カーネギーが事業を拡大し、現代のアメリカ経済の基礎を築いたのも、この時期のことでした。

デフレが強まることによって、景気回復を見事に達成した事例もあります。第一次世界大戦後の1919年~1921年のアメリカでは、戦争特需の反動で不況になり、デフレと不況が同時に起こります。失業率が15%を超える都市が出現するほどの大不況であったのですが、1921年にウォレン・ハーディングが大統領に就くと、大規模な財政支出の削減を行ない、物価下落はさらに進んだのです。しかし、物価の下落と連動するように失業率は半減し、景気は急速に回復に向かったわけです。

インフレ礼賛のアメリカにおいてすら、こうしたデフレ期の歴史と経験を備えているにもかかわらず、デフレを悪いことのように言い立てる経済学者は歴史を知らないのでしょうか。知らないとすれば勉強不足だし、知っていて隠しているのであれば、学問的態度をあまりにも逸脱しています。

「デフレ=不況」という誤解が広く常識として普及しているのは、バーナンキの考え方が色濃く反映されているからです。彼はアメリカの大恐慌の時期だけを見て、「デフレ=不況」と決めつけてしまったのです。大恐慌の時期だけでなく、少なくとも他の国々の不況時とデフレの関連性を調べる必要があったのではないでしょうか。

実のところ、これらの記事を書いた後に知ったことなのですが、私は国際決済銀行(BIS)が3月18日に公表した論文「デフレのコスト:歴史的な展望(原題 The costs of deflations : a historical perspective」の内容を知って、経済学の世界の古い体質が徐々に壊れつつあるという事実を実感することができました。この論文の中では、長い経済の歴史を検証したうえで、「デフレと経済成長率の関連性が低い」と、私の主張と同じ結論を導き出しているからです。

この論文をきっかけにして、アメリカ主流派経済学の唱える「デフレ=不況」という間違った学説について、正しい分析に基づく議論がされることを切に望んでいるところです。というのも、間違った常識を信じ込んでいた人々もそのような状況になれば、無理にインフレを起こすことがいかに愚かな政策であるのか、理解できるようになっていくと思うからです。

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keizaiwoyomu at 09:51|この記事のURLその他 
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