2015年06月

2015年06月26日

海外投資家はいつ日本株を売ってくるのか

前回の記事で予告したとおり今回は、海外投資家はいつ日本株を売ってくるのかについて、拙書『これから日本で起こること』(2015年1月出版)の224~227ページの文章をそのまま引用したうえで、詳しい補足を加えさせていただきたいと思います。

(以下、拙書『これから日本で起こること』より引用)

2015年における世界の情勢を俯瞰すると、ヨーロッパの政治が混迷を深めるリスク、アメリカの利上げや原油価格急落が金融市場に悪影響を及ぼすリスク、新興国経済が減速感を強めるリスク、中東での紛争が長期化するリスクなど、不安材料を挙げたら次々と出てくるので、世界的に株式市場が一本調子に上昇し続けるというのは、とても考えられないことです。もちろん、日本の株式市場もそれらの材料によって調整を強いられる局面は出て来るでしょう。

しかしながら、2015年の日本国内だけの状況を見渡してみると、日本の株式市場にとって、当面のあいだは大きな不安材料が見当たらないように思われます。よって、株価が年前半に調整したとしても、年後半には盛り返して、2014年の高値を抜いてくる可能性は十分にあるでしょう。

ところが、2016年~2017年までのスパンで見ると、株式市場には深刻な問題が待ち構えているというのも事実です。少なくとも、いまの株高を支えている第一と第二の要因については、2016年~2017年には一転してマイナス要因になってしまうリスクがあるからです。

株高を支える第一の要因については、日銀による緩和が現行のペースで続いていくとすると、日銀の国債保有額が2014年末の200兆円から2015年末には280兆円、2016年末には360兆円に膨らんでいく見通しになります。実に日銀の国債保有額は、国債発行額の4割をも超える規模になってしまうのです。そうなっては、日銀が公的債務を支えていると言っても過言ではなくなってしまうのではないしょうか。普通に考えれば2017年には、日銀は出口戦略として緩和縮小への転換を迫られる可能性が高まっていくわけです。

第二の要因についても、GPIFによる日本株買いの需要は、2016年末にはすでに終了している可能性が高いということがあります。GPIF自体が資産構成の変更がいつ頃までに完了するとは決して言うことはありませんが、GPIFに近い関係者によると、早くて1年半くらい、遅くても2年くらいで資産構成の目安に近付いていく見通しにあるというのです。そうなると、2017年以降はGPIFの買い特需がまったくなくなってしまうばかりか、むしろポジション調整の売りが株価を押し下げていく可能性のほうが高まっていくわけです。

さらに新しいマイナス要因として意識しなければならないのが、2017年4月に控えている消費税増税のことです。安倍首相は消費増税の再延期はしないと明言しているものの、消費増税が本当にスケジュール通りに行われるのであれば、2017年には消費増税と緩和縮小という最悪の組み合わせが実現してしまうリスクが顕在化していくことになるのです。

しかし現実的には、安倍政権と黒田日銀の双方とも、財政と金融の両面から景気を悪化させるような愚かな選択をできるはずがありません。結局のところ、政府の消費増税を再び先延ばしにするのか、日銀の緩和縮小を先送りにするのか、二者択一の選択を迫られることになるわけです。

この選択に関する議論については、世論を巻き込んで侃々諤々と行われることになるでしょうが、最終的には安倍首相と黒田総裁が話し合いによって、消費増税が実施されて、日銀の緩和縮小が先送りになるのではないかと考えています。そして、その後の日本の景気はどうなるのかというと、やはり厳しいものとならざるをえないでしょう。

それでは、外国人投資家はいつ日本株を売ってくるのでしょうか。あるいは、売り始めてくるのでしょうか。

私の視点からすれば、そのようなスケジュールが大まかながらも決まっていて、2017年には日本経済が混迷化する可能性が十分に考えられるので、GPIFや日銀の買い需要がある2016年のうちに日本株を売り始めるというのが、セオリーとしては妥当であると思っています。

おそらくは、アメリカでも目利きの速いヘッジファンドや、ウォール街の戦略を考えるシンクタンクなどでも、同じようなことをすでにシミュレーションしているのではないでしょうか。GPIFや日銀がせっかく日本株を高いところで買ってくれるのに、そのタイミングで売りをぶつけないというのは、外国人の投資スタイルとしてはとても考えることができないからなのです。

(引用終わり)

ところが私にも、ひとつだけ大きな誤算がありました。上記の文章は2014年12月に書いたものですが、その時すでにGPIFの日本株買いが思った以上にかなり速いペースで進んでいたのです。先日明らかになったGPIFの2014年末時点の資産配分を見てみると、国内株はすでに19.8%、海外株は19.6%にも達してしまっていたわけです。

新しい資産構成の目安は、国内株25%、海外株25%でありますから、いくら国内株で乖離許容幅が±9%、海外株で±8%あるといっても、資産配分の変化があまりに速く進んでいるという印象を持たざるをえません。これでは現時点ですでに、国内外の株式は25%を超えていると言っていいでしょう。

GPIFの三谷理事長によれば、新たな資産構成の目安から乖離できる幅も広げたということですが、それでもこのペースでは遅くとも秋くらいには、国内株比率が乖離幅の上限34%に達してしまう可能性が高いと考えられます。

おまけにGPIFの方針では、株価上昇により国内株比率が目安より高まったとしても売り急がないということですので、これでは外国人投資家に売ってくれと言わんばかりではないでしょうか。

ですから私は、外国人投資家は日本株の売り時を前倒しして、2015年の9月~12月のどこかで売ってくるのではないかと予想しております。おまけに、この時期はFRBの利上げが重なる可能性が高いので、細心の注意が必要であろうと思われます。

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keizaiwoyomu at 11:43|この記事のURL市場予測 

2015年06月17日

これからの円相場はどうなるのか

今週はFOMCと日銀金融政策決定会合が重なるため、市場関係者はもちろん、多くの投資家がそれらの結果に注目しています。

そこで今回は、投資家が気になる円相場の行方について、拙書『これから日本で起こること』(2015年1月30日出版)の211~214ページ、および『経済展望レポート』(1月5日特別号)の文章をそのまま引用したうえで、少し補足を加えさせていただきたいと思います。

(以下、拙書『これから日本で起こること』、『経済展望レポート』より引用)

2015年の円相場はどのように動いていくのでしょうか。大きな流れがわかっている経済の予想とは異なり、相場の予想は殊のほか難しいので、私は拙書のなかではできる限り相場の予想を述べないことにしているのですが、2015年の円相場については、少なくとも次のようなことだけは言えると思います。

それは、黒田日銀が物価上昇率2%の目標を達成できない状況が明らかになった時に、さらなる追加緩和を行って円安インフレに誘導しようとするか否かにかかっています。

仮に2014年10月の追加緩和を最後にして、日銀がもう追加緩和を二度と行わないというのであれば、2015年の円相場は110円~130円のレンジで収まるのではないかと予想しています。すなわち、追加緩和がない場合は、安倍政権誕生以降に始まった円安トレンドの終焉は近いということになります。

追加緩和がないにもかかわらず、円安が現状の120円から130円まで進むと考えるのは、2015年はアメリカ経済が原油安により力強い成長を持続するのに加えて、年後半にはFRBによる利上げが控えているからです。ドル円相場はアメリカと日本のそれぞれの経済動向や金融政策にも影響されますから、アメリカの方向性も考慮に入れておかねばならないのです。

いずれにしても、日銀が無謀な追加緩和を行わなければ、2015年のどこかで円安の流れは止まり、国民生活を脅かしていた悪性インフレにも歯止めがかかることになるでしょう。そのような動きになれば、日本経済が本当に回復するための初めの一歩となりうるのではないでしょうか。

ところが、そういった流れとは逆に、日銀が物価上昇にこだわるあまりに、2015年のどこかで再び追加緩和を行うようなことがあれば、円安の流れがさらに加速することは避けられないのかもしれません。その場合には、円相場は次なるステージに入り、130円~150円のレンジに突入することもありうるかもしれないのです。

欧米の投資家にとって2015年における大きな投資アイデアは、アメリカにはもはやFRBによる利上げしか残っておりませんし、FRBの利上げについてはこれまでさんざん投資アイデアとして使って来ています。しかしその一方で、日銀によるさらなる追加緩和については新しい投資アイデアであり、欧米の投資家はECBによる量的緩和と同じくらいに、2015年の目玉として日銀のさらなる追加緩和に期待しているわけです。

仮に2015年に日銀の追加緩和が行われて、円安が130円を超えた水準まで進んだとしたら、当然ながら、先に述べたような原油急落のメリットは帳消しになってしまうでしょう。そうなれば、エネルギー価格と食料価格の上昇が主導する物価高が激しくなり、国民の実質賃金は今よりも下落していくでしょう。要するに、アベノミクスは延命装置を外されて、終わりに向かっていくことになるのです。

(引用終わり)

もう少しで2015年も折り返し地点に近づいてきていますが、それでも私の円相場についての基本的な考えは変わっておりません。敢えて修正点をあげるとすれば、仮に日銀が追加緩和をしたとしても、円相場の最終的なステージは130円~150円のレンジから10円縮めて、130円~140円に収まるのではないかというところです。

多くのFX投資家が120円前後でドルの売りポジションを取って損失を被ったと聞いていますが、そのタイミングはもう少し先であり、「あるひとつのこと」を注視しているだけで十分であると、私は考えております。(これに関連する記事は、いずれかの機会で述べたいと思っております。)

なお、拙書『これから日本で起こること』の218~227ページでは、「外国人はいつ日本株を売ってくるのか?」についても述べています。次回の記事では、この点について詳しい補足と少しの修正を加えさせていただく予定でおります。

元々このブログは、拙書をご覧いただいている方々が、大事な点をその都度思い出してもらうために、あるいは拙書の内容に修正が必要な時にお知らせするために、存在するものと考えております。今後もその視点を失わずにブログの更新にあたっていきますので、みなさまの温かいご支援がいただければ幸いです。

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keizaiwoyomu at 11:19|この記事のURL市場予測 

2015年06月01日

2015年の日本の経済成長率はどれくらいになるか

2015年の日本の経済成長率はどれくらいになるのでしょうか。

5月20日に総務省が発表した2015年1-3月期のGDP(速報値)は、年率換算で2.4%増となり、2期連続のプラス成長を達成しました。経済識者のあいだでは4月以降も景気回復は続くとの見方が多いようです。

私が年初から申し上げているポイントは、以下の3点にまとめることができると思います。

①原油安のおかげで国民の実質賃金は上がったので、それだけで1.0%~1.5%の成長が期待できる。
②株価が19000円超の水準を維持できれば、2.0%の成長は達成できるかもしれない。
③年前半の成長率は高めになる一方で、年後半は外部要因で弱含みになる可能性が高い。

つまり、2015年の成長については、大手シンクタンクの予想とあまり大きな違いはありません。違いがあるとすれば、ポイントの③くらいではないでしょうか。

2014年の予想では大きな違いを見せていたので、読者の方々の中には「中原さん、シンクタンクと同じ予想ではつまらないよ」とおっしゃる方がいるかもしれません。(2014年3月6日の『2014年のGDP見通しは理解不能』または2014年8月22日の『「大手証券3社の日本経済の見通し」は理解できない』を参照)

しかし、経済の大きな流れではそのように予想せざるを得ないので、ご了承いただければ幸いです。

また、2015年の成長率については、3月25日の『実質賃金を冷静に分析すると』、または3月18日の『投資戦略フェアEXPO2015の講演資料(2)』でも言及していますので、改めて日本の現状を整理したい方はご覧いただければと思います。

最後に、私が拙書『シェール革命後の世界勢力図』(2013年6月出版)で示した内容(原油価格が半値になると、世界経済はどのようになるのか)が世界経済の地殻変動の第1弾と捉えるとすれば、第2弾の地殻変動が早ければ2016年にも起ころうとしています。

この地殻変動は世界経済だけでなく、国際政治のパワーバランスをも大きく変える出来事なのですが、何故かメディアではあまり取り上げられることがありません。このことについては、すでに『経済展望レポート』では取り上げさせていただきましたが、次の新刊のテーマとして取り上げる予定でおります。ご期待いただければと思います。

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keizaiwoyomu at 09:11|この記事のURL経済分析 
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