2016年01月

2016年01月26日

2016年の利上げは、できても1回だけだ

FRBは2016年に利上げを何回できるのでしょうか。この予測については、拙書『中原圭介の経済はこう動く(2016年版)』(2015年10月刊行)で述べていますので、その中の75~78ページの文章を引用したうえで、少しだけ補足を加えさせていただきたいと思います。

(以下、『中原圭介の経済はこう動く(2016年版)』より引用)

少なくともチャイナ・ショックが世界の金融市場を揺るがすことになるまでは、FRBのイエレン議長は2015年のうちに利上げをすると公言してきましたし、多くの米国民もそのようになるだろうと考えていたに違いありません。

当然のことながら、このことは米国民の消費に大きな影響を与えていると思われます。何が言いたいのかといいますと、米国では2015年に入ってから駆け込み消費が拡大している可能性が高いということです。

冷静に経済の歴史に照らし合わせてみれば、米国では近い将来の利上げが確実視されていたので、消費増税前の日本と同じように、利上げ前に米国民による駆け込み消費が起きていると考えるのが自然ではないでしょうか。

~中略~

しかし不思議なことに、私の指摘するような懸念が専門家の間ではまったく見られていません。実際に利上げが行われれば、その反動が来ることは十分に想定できるはずなのですが、なぜかそういった見解がまったく聞こえてこないのです。

~中略~

このような歴史を踏まえれば、FRBの利上げのペースは想定よりもずっと緩慢にならざるをえないでしょう。先にも述べたように、FRBはたった1回の利上げによって、自国の経済ばかりか世界の経済に予想以上の負の連鎖をもたらしたことを、利上げの半年後には認めざるをえなくなる可能性が高いからです。

ところが、7月までのFOMC(連邦公開市場委員会)議事録を見れば、FOMCメンバーの多くは、利上げを開始したのち、年4回のペースで0.25%ずつの利上げを考えていることがわかります。FOMCメンバーの金利見通しはかなり楽観的であるように思われるのです。そのような早いペースの利上げは、とても世界経済が消化しきれないのではないでしょうか。

最終的には、FRBがひとたび利上げに動いたとしても、FRB自らがその失敗に気付き、軌道修正を余儀なくさせられることでしょう。その場合、米国経済の回復を支える金融政策を決して転換するわけではないと、株価が暴落するような金融政策は避けるように配慮すると、FRBは強くアナウンスする必要性に迫られるかもしれません。

(引用終わり)

遅かれ早かれ、FRBは世界経済の減速に加えて自国の減速懸念も受けて、年4回としている追加利上げの見通しを修正せざるを得ないでしょう。

中国が経済の構造調整を終えるまでには、少なくとも5年単位の時間を要することとなります。そのような状況下において、利上げによる様々な副作用が複雑に絡み合い、2016年前半には米国の減速も避けられない見通しにあるのです。

ですから私は、「FRBは2016年に利上げができたとしても1回だけだろう。ひょっとしたら1回もできないかもしれない」と予測しているわけです。

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keizaiwoyomu at 09:14|この記事のURL金融政策分析 

2016年01月21日

株価下落の要因は「地政学リスク」ではない

さまざまな識者の方々の解説を聞いていると、年初からの株価暴落や円高進行の原因を「地政学リスク」の一言で片づけてしまっているようですが、これらの解説は昨年と今年の相場の質的な違いを認識していない後講釈にすぎません。

昨年8月中旬までの株式市場を見ていればわかるように、相場の地合いが良好で耐久力が強まっている時には、地政学リスクなどはものともしないものです。実際に昨年もギリシャ危機の再燃をはじめ、イエメンでの内戦、シリア・イラクの内戦泥沼化、パリでのテロなどが起こりましたが、これらが株式市場に大きなダメージを与えたということはありませんでした。

おまけに、日本のメディアではパリのテロばかりが盛んに報道されていましたが、アフリカや中東では毎日のようにテロが起こっていたのです。すなわち、昨年もさまざまな地政学リスクが起こっていたのであり、株式市場や円相場はチャイナ・ショック前までは大して悪影響を受けていなかったわけです。

ところが、チャイナ・ショック以降、相場の地合いが悪くなったうえに耐久力までも弱まったために、今年に入ってからの株式市場はちょっとした悪材料にも敏感に反応するようになっていました。
『日本株は、いよいよバブルの領域に入った』(2015年6月2日)
『原油価格、1バレル30ドル時代が来る』(8月11日)
『錬金術によるアメリカの株高は続かない』(10月7日)
『円安終焉のカウントダウンが始まった』(12月14日)
『やっぱり2016年は円高トレンドの1年になる』(12月30日)
などで述べた諸要因が複雑に絡み合いながら、株安・円高への圧力がマグマのように貯まっていたのです。

これらの記事をご覧になればご理解いただけるように、今年の本当のリスクとは、決して地政学リスクなどではなく、さまざまな「累積した過剰の清算」が始まったと見るべきなのではないでしょうか。そして、それらの過剰の清算が始まるという引き金を引いたのが、紛れもなく米国の利上げにあったのではないでしょうか。

(※以上の記事は、東洋経済オンライン1月19日の記事『本質を読み解けば、市場は予想できる』の一部を抜粋したものです。全文をご覧なりたい方は、上記のリンクからお越しください。)

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keizaiwoyomu at 08:58|この記事のURL市場分析 

2016年01月18日

中国の株価対策が失敗したわけとは

中国政府はなぜ株価対策に失敗したのでしょうか。この理由については拙書『中原圭介の経済はこう動く(2016年版)』(2015年10月刊行)で述べていますので、その中の154~155ページの文章を引用したうえで、少し補足を加えさせていただきたいと思います。

(以下、『中原圭介の経済はこう動く(2016年版)』より引用)

もちろん、国民の不満がこれ以上高まらないように、政府は株価の維持に政策を総動員して対応しているようです。中国国内の大手証券による株式投資額の拡大、年金基金による株式投資比率の拡大、大量の空売りをした業者の摘発、株式投資への税制上の優遇など、さまざまな対策を講じてきています。

しかし問題なのは、中国政府が株価を維持しようとする水準がどう見ても割高な水準にあったということです。実際のところ、さまざまな対策が実施されたのは、上海総合指数が3500を超えた水準にある時でした。株価を下支えするには巨額の資金が必要となりますが、その資金は適正な水準に下限を設定する時にこそ有効性を発揮するのです。

ですから私は、上海株価指数がもっと低い水準、たとえば2500ポイントなどに下限を設定しない限りは、最終的には政府の株価への介入は成功するかどうか疑わしいし、政府の出口戦略はいっそう厳しいものとなるだろうと考えています。

(引用終わり)

中国政府はサーキットブレーカーの導入により、株価の暴落は防ぐことができると安易に考えていたのでしょう。ところが、歴史は繰り返すというように、有効な下限を設定しない官制相場とは結果的にこうなるものなのです。それは、同じ官制相場を進めてきた日本株にもいえることでしょう。

ですから私は、上海株価指数が2500程度に落ちた時を想定して、株価対策を講じるべきだったと考えています。中国政府は新しい対策として、上場企業の大株主による保有株売却に制限を設けるというルールや、かえって株安の要因となると批判を浴びたサーキットブレーカーの運用停止を決定しました。

しかしながら、中国株の現状を見ていると、中国政府の新しい株価対策が成功するのかどうかはわかりません。

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keizaiwoyomu at 11:50|この記事のURL市場分析 

2016年01月14日

市場の質が変わったことを認識すべき

もともとこのブログは拙書の読者の方々の一助になればと始めたものです。そこでしばらくの間(年前半くらい)は初心に帰って、拙書に補足が必要な場合のみ、更新していきたいと思います。

さて、年初から株価が暴落しています。この状況についてはすでに拙書で述べていますが、昨年の10月を起点に相場全体の質が変わってしまいました。よって、拙書『中原圭介の経済はこう動く(2016年版)』(2015年10月刊行)の228~230ページの文章を引用したうえで、少し補足を加えさせていただきたいと思います。

(以下、『中原圭介の経済はこう動く(2016年版)』より引用)

チャイナ・ショックが起こった後でも、野村証券は2015年末の日経平均株価の見通しを、企業業績の拡大基調に変化はないという判断から、従来の2万1500円で維持するというレポートを顧客に送っているそうです。大和証券も2015年末の日経平均株価の見通しを、野村証券と同じ理由から2万2000円に据え置いています。

もちろん、両社の株価見通しの前提には、日銀の追加緩和という株価刺激策が入っておりません。果たして、本当に株価が2万1500円や2万2000円に達するということはありえるのでしょうか。

米国で利上げが2015年12月に行われれば、株価は2万円の回復どころか1万9000円の回復も難しくなりかねないですし、利上げが2016年に先送りになったとしても、米国や中国の経済減速がじわじわと世界の経済や株価にダメージを与えていくことになるでしょう。

そのうえ、ドル円相場が円高基調に転換するのであれば、株価は2015年9月の暴落時の安値1万6901円を下回ることも考えられるでしょう。株価収益率が14倍~15倍に下がったからといって、株価が割安になったという判断は、所詮は、過去を基準にしたものにすぎないのです。米国と中国の経済減速の前では、現時点の株価収益率などは当てにしてはいけないのです。

そういった意味において、過度な円安の水準訂正が起こると予想する2015年10月~2016年3月のうちに、日経平均株価は下降トレンド入りが鮮明になる可能性が高いといえるでしょう。

日本株が再浮上するために残された唯一の手段は、日銀の追加緩和をおいて他にはありません。その証左として、株式関係者の間では日銀の追加緩和に対する期待感が非常に高まってきています。

しかし、事態はそんなに単純ではないように思われます。日銀の追加緩和に対して、政府内では否定的な見方が増えつつあるからです。

かつては「リフレ万歳」だった政府が、物価上昇に賃金上昇が追い付かず、消費の拡大を妨げているという現実を直視するようになったのは、大いに評価できることだと思います。しかしそれは、投資家にとってはリスク管理をいっそう強めなければならない結果となりそうです。

(引用終わり)

実際にこの文章を書いたのは2015年9月になりますが、それ以降の数か月の市場を見ていて、考えが変わったところがあります。それは、東洋経済オンラインの連載(1月7日の記事)でも述べましたように、市場の構造が変質してしまったことにより、日銀の追加緩和を完全に織り込んだとしても、日経平均株価が20000円を回復するのは難しいということです。

「昨年3月のECBの量的緩和以降の株価上昇」と「昨年10月以降のECBの追加緩和観測による株価上昇」のあいだで明らかに異なるところがあります。それは、昨年3月の量的緩和開始後では長期および短期の双方の投資家が株式の買い増しを進めていたのに対して、10月以降の追加緩和観測では短期の投資家しか積極的に株式を買い進んでいなかったということです。

株高が生命線の安倍政権は、今のような株価があと2カ月も続くようなことがあれば、追加緩和への否定的な見解を撤回して、再び日銀に追加緩和の催促を打診する可能性が高まっていくでしょう。しかし、昨年10月のECBの追加緩和を教訓にするならば、日銀の追加緩和が決定したとしても、日経平均株価は1000円~2000円しか上昇しない可能性が高まっているわけです。

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keizaiwoyomu at 08:36|この記事のURL市場分析 

2016年01月07日

大手の予想は当てにしてはいけない

『週刊朝日』(1月4日発売号)において、「真っ二つに割れた専門家の予想、日本株は買いか売りか」という記事の取材を受けました。その記事の後半部分を転載し、補足を加えさせていただきたいと思います。

(以下、記事の後半部分を転載)

一方、経済評論家の中原圭介氏の見方はまったくの正反対だ。

「確かに大企業を中心に業績は好調ですが、売り上げが大幅に増えているのではなく、円安効果で利益が上がっているだけ。この円安トレンドも16年には終了する可能性が高い」

一般的に、利上げをした国の通貨は買われて上昇するというのが定説だが、現実には教科書どおりにはいかないと指摘する。

「120円超えという現状のドル円相場は、経常黒字の大幅増や物価の釣り合いを表す購買力平価からみても、行き過ぎた円安です。すでに利上げも織り込みつつある水準なので、利上げ後はむしろ『材料出尽くし』となり、円高への巻き戻しが始まるでしょう」(中原氏)

16年には110円割れも考えられ、そうなれば株式市場への影響は避けられないという。

「原油安でオイルマネーはすでに市場から撤退し、外国人投資家による長期の新規資金の流入も止まってしまった。15年の安値水準である1万7千円を割り込むことも考えられます」(同)

これまで日本株を買い支えてきたGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の資金もいよいよ尽きかけるという。

「市場に残っている買い手は短期の投機筋だけで、不安定な値動きは避けられそうもない」(同)

真っ二つに割れた16年の日本株予想。果たしてどうなるのか。

(転載終わり)

昨年末の 『週刊現代』 や 『週刊朝日』 でも同じ受け答えをいたしましたが、要は今年の株式市場は短期筋の動向によって下方向に振れるだけでなく、振れ幅が激しくなるということです。株価が下落した後の講釈は、いくらでも後付けできるのです。

毎年恒例の日経による「経営者の株価予想」では、20人の名だたる経営者のうち、すでに18人が株価の下値予想を外してしまっています。彼らの良くないのは、大手シンクタンクの予測に依存しすぎているところです。

昨年の10月以降、市場の構造が変質したことを自覚したうえで、野村や大和の予想など当てにはせず、私たちは自分のあたまで考えて結論を出さなければならない時期に入ってしまっているわけです。

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keizaiwoyomu at 10:46|この記事のURL市場予測 

2016年01月04日

2016年の海外投資家の動向について

「2016年の海外投資家の動向について」ですが、長期的に腰の据わった資金を扱っている投資家ほど、世界の株式市場の先行きを慎重に見ている向きが多いようです。7月28日のレポートでは、ウォール街の早耳筋の銀行投資家たちがすでに米国株の上昇は望めないと考えていたことを取り上げましたが、8月のチャイナ・ショック以降は米国株だけでなく、日本株や欧州株の上昇余地も乏しいと考える欧米投資家が増えてきているのです。すなわち、長期的な視点に立つ投資家ほど、中国リスクがいつ蒸し返されるのかを警戒しているわけです。

さらに欧米の経済メディアでは、10月頃からアベノミクスは失敗したと見始めているところが増えてきています。当然のことながら、3年近く経っても経済の好循環は実現していないですし、大企業の高収益ばかりが際立ち、消費が一向に増えてきていないという事実を客観的に評価しているからです。安倍政権が経団連に対して、2015年度以上の賃上げと設備投資額にノルマを課そうとしているのを見て、欧米メディアには安倍政権が自らの経済失政を認めているのと変わらないと映ったのではないでしょうか。そのように考えると、欧米投資家にとって2016年に日本株が力強く上昇する投資アイデアは、今のところ存在しないように思われます。

欧米の投資家にとって・・・

この続きは、12月29日配信の『経済展望レポート』でご覧になれます。

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keizaiwoyomu at 09:42|この記事のURL市場分析 
レポート配信履歴
10/14・10/25

11/13

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