市場分析

2016年12月26日

大博打に勝利したヘッジファンド

トランプ次期米国大統領が本当に「できること」と「できないこと」が明らかになってくるのは、来年の1月20日の政権発足以降の話になります。さらには、具体的なことが決まってくるのは、春先になるだろうと考えられます。

今のところ、トランプ次期政権の人事を見ていると、共和党主流派の取り込みに成功しているとはいえない状況にあります。その意味では、米国の長期金利の急騰をもたらす契機となっている「巨額のインフラ投資」と「大型減税」の実現性については、どちらも米議会で満額回答を得るのは極めて難しいだろうと見ています。(そもそも、米国では建設労働者が今でも不足していて、海外から労働者を引っ張ってこなければ、1兆ドル規模のインフラ投資は無理です)。

共和党主流派の基本的な考えを大枠でいえば、主に「親ビジネス」と「財政再建」の2つが挙げられます。トランプ氏は「親ビジネス」の面では共和党とある程度はうまくやっていくことができるかもしれませんが、1兆ドルのインフラ投資はもちろん、大型減税などは「財政再建」の面から懸念が強く、共和党とどの程度のところで妥協点を見出すかが焦点になってくるのではないでしょうか。

この続きは、12月23日更新の『中原圭介の未来予想図』でどうぞ。

※連載コラムのタイトルは編集者の意向で変わるケースがございます。ご了承ください。


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2016年12月15日

想定外の相場に冷静に対処する方法

拙書やブログではこの4年あまり、大きな誤りもなく無難に経済や市場の予測を述べてきたつもりですが、米大統領選におけるトランプ氏の勝利とその後の「トランプ・ラリー」と呼ばれる相場はまったく予測するこができませんでした。

どこで間違ったのか自分なりに反省点を探してみたのですが、とりわけ「トランプ・ラリー」については反省点が1つも見つからない状況にあります。実際のところ、ヘッジファンドの面々は大統領選前に買いと売りの両建てで結果を見守っていた過程で、彼らのほぼすべてはトランプ氏が勝利したら株価は下がるだろうと予想していたのです。

おまけに、2000年以降の市場を見てきて、これほど短期間で米国の長期金利が急騰したことを見たことがありません。さらには、長期金利の急騰によって、米ドルは主要通貨(通貨バスケット単位)に対して歴史に残るほどの急激な上昇をしてきています。要するに、私の今の見識では、「トランプ・ラリー」は100%予想不可能だったということです。

そういったわけで、拙書「経済はこう動く(2017年版)」では、早い段階で市場の予想を外してしまっています。発売時期が決められた1年に1回の単行本では、今回のような事態が起きた時に、臨機応変に対応することが非常に難しいと感じている次第です。「経済展望レポート」と同じ内容をすぐにブログに書くこともできませんし、悩ましい状況が続いております。

それでも、基本的な方針は、11月18日の記事「想定外の相場にどう対処したらいいのか」で述べさせていただきました。日経平均株価がボックス圏の上限である17905円を超えるとすれば、それは想定外の領域に入るというわけですから、そういった読めない相場になった時こそ、敢えて売買をしないのが賢明であると訴えたかったのです。読めない相場に手を出すのは、上がるか下がるかの博打になってしまうからです。

捕捉を加えるとすれば、私は昨年の12月初めの段階では、「来年は上値と下値を切り下げてのボックス圏相場に入るのではないか」と申し上げましたが、現時点の局面では、「来年は上値と下値が今年よりも少し切り上がったボックス圏相場になるのではないか」というイメージを持って見ています。

今回の上昇相場に乗れていない国内の日本株運用者たちはかなり焦っているといいます。「押し目待ちに押し目なし」の状態が続き、指数の上昇に比べると運用成績の悪化が顕著になっているからです。ですから、12月に入ってからは、こういった国内の運用者たちが積極的に上値に買いを入れているということです。

そういった意味では、個人投資家にはノルマ上の制約がなく、時間軸を長めに取って市場に接することができるので、機関投資家よりも有利な状況にあるといえます。バフェットも「自分にわからないものには手を出さない」という方針を貫いていますが、その考え方を個人投資家も取り入れるべきだと思います。

ところで、東洋経済新報社の「経済はこう動く」については当初から、「私が予測を大きく外すことがあれば、その次の年からは出さない」と心に決めておりました。それが3年後になるのか、4年後になるのか、5年後になるのか、私なりに覚悟はしていたつもりですが、それが米大統領選の結果で訪れるとは思っておりませんでした。

まだ出版社には申し上げておりませんが、「経済はこう動く」の2018年版は出すつもりはありません。また、拙書やブログ、オンラインでは来年の1月以降、経済の予測だけに限定し、市場の予想については述べないようにするつもりです。それが、アナリストとしての矜持であると考えております。


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2016年03月18日

海外投資家が3月第2週に史上最高額を売り越せたわけ

投資部門別売買状況によれば、海外投資家は3月第2週に1兆1932億円を売り越し、統計開始以来、史上最高の売り越し額を記録しました。

日経平均株価は2月の安値14865円から3月には17000円まで戻してきていたため、海外の長期投資家から見れば、絶好のポジション調整の機会が再び訪れたと映ったことでしょう。

私も3月初めからの株価上昇の局面で、海外投資家の売り越し基調は変わっていないと見ておりました。しかし想定外だったのは、たった1週間で1兆円を超える金額を売り越していたということです。

普通に考えれば、日本株の売買代金シェアの7割を占める海外投資家がわずか1週間で1兆円超も売り越すようなことがあれば、日経平均株価は少なく見積もっても1000円超は下落しているはずです。ところが、3月第2週の日経平均株価は300円弱しか下落しませんでした。

これは一体、どうしてなのでしょうか。

この続きは、3月18日更新の『ヤフーファイナンスのコラム』でどうぞ。

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2016年02月25日

海外投資家は今の日本株をどう見ているのか

海外投資家は株式の売り買いの判断をする際に、市場の大きな流れを決定づける可能性がある「投資アイデア」を重要視しています。実のところ、欧米の海外投資家は想定される投資アイデアに基づき戦略を構築すると同時に、その戦略を発動するタイミングをあらかじめ決めている場合が多いのです。要するに、彼らの投資パターンは非常に単純なものが多いというわけです。

ですから、欧米の投資家にとって2015年初めにおける前向きな投資アイデアには、主に「ECBの量的緩和」や「日銀の追加緩和」の二つがあり、それらのアイデアがひとつずつ現実化するたびに、先進国の株式市場を買い進む動機づけになるだろうと考えられていました。とりわけ先進国のなかで2015年の日本株の上昇率が際立っていたのは、それらの投資アイデアに加え、「GPIFによる買い需要」や「成長戦略でのROE重視」、「円安による企業収益拡大への期待」など、積極的に買い進むいくつものアイデアが重なっていたためといえるでしょう。

この続きは、2月25日更新の『中原圭介の未来予想図』でどうぞ。

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2016年01月21日

株価下落の要因は「地政学リスク」ではない

さまざまな識者の方々の解説を聞いていると、年初からの株価暴落や円高進行の原因を「地政学リスク」の一言で片づけてしまっているようですが、これらの解説は昨年と今年の相場の質的な違いを認識していない後講釈にすぎません。

昨年8月中旬までの株式市場を見ていればわかるように、相場の地合いが良好で耐久力が強まっている時には、地政学リスクなどはものともしないものです。実際に昨年もギリシャ危機の再燃をはじめ、イエメンでの内戦、シリア・イラクの内戦泥沼化、パリでのテロなどが起こりましたが、これらが株式市場に大きなダメージを与えたということはありませんでした。

おまけに、日本のメディアではパリのテロばかりが盛んに報道されていましたが、アフリカや中東では毎日のようにテロが起こっていたのです。すなわち、昨年もさまざまな地政学リスクが起こっていたのであり、株式市場や円相場はチャイナ・ショック前までは大して悪影響を受けていなかったわけです。

ところが、チャイナ・ショック以降、相場の地合いが悪くなったうえに耐久力までも弱まったために、今年に入ってからの株式市場はちょっとした悪材料にも敏感に反応するようになっていました。
『日本株は、いよいよバブルの領域に入った』(2015年6月2日)
『原油価格、1バレル30ドル時代が来る』(8月11日)
『錬金術によるアメリカの株高は続かない』(10月7日)
『円安終焉のカウントダウンが始まった』(12月14日)
『やっぱり2016年は円高トレンドの1年になる』(12月30日)
などで述べた諸要因が複雑に絡み合いながら、株安・円高への圧力がマグマのように貯まっていたのです。

これらの記事をご覧になればご理解いただけるように、今年の本当のリスクとは、決して地政学リスクなどではなく、さまざまな「累積した過剰の清算」が始まったと見るべきなのではないでしょうか。そして、それらの過剰の清算が始まるという引き金を引いたのが、紛れもなく米国の利上げにあったのではないでしょうか。

(※以上の記事は、東洋経済オンライン1月19日の記事『本質を読み解けば、市場は予想できる』の一部を抜粋したものです。全文をご覧なりたい方は、上記のリンクからお越しください。)

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2016年01月18日

中国の株価対策が失敗したわけとは

中国政府はなぜ株価対策に失敗したのでしょうか。この理由については拙書『中原圭介の経済はこう動く(2016年版)』(2015年10月刊行)で述べていますので、その中の154~155ページの文章を引用したうえで、少し補足を加えさせていただきたいと思います。

(以下、『中原圭介の経済はこう動く(2016年版)』より引用)

もちろん、国民の不満がこれ以上高まらないように、政府は株価の維持に政策を総動員して対応しているようです。中国国内の大手証券による株式投資額の拡大、年金基金による株式投資比率の拡大、大量の空売りをした業者の摘発、株式投資への税制上の優遇など、さまざまな対策を講じてきています。

しかし問題なのは、中国政府が株価を維持しようとする水準がどう見ても割高な水準にあったということです。実際のところ、さまざまな対策が実施されたのは、上海総合指数が3500を超えた水準にある時でした。株価を下支えするには巨額の資金が必要となりますが、その資金は適正な水準に下限を設定する時にこそ有効性を発揮するのです。

ですから私は、上海株価指数がもっと低い水準、たとえば2500ポイントなどに下限を設定しない限りは、最終的には政府の株価への介入は成功するかどうか疑わしいし、政府の出口戦略はいっそう厳しいものとなるだろうと考えています。

(引用終わり)

中国政府はサーキットブレーカーの導入により、株価の暴落は防ぐことができると安易に考えていたのでしょう。ところが、歴史は繰り返すというように、有効な下限を設定しない官制相場とは結果的にこうなるものなのです。それは、同じ官制相場を進めてきた日本株にもいえることでしょう。

ですから私は、上海株価指数が2500程度に落ちた時を想定して、株価対策を講じるべきだったと考えています。中国政府は新しい対策として、上場企業の大株主による保有株売却に制限を設けるというルールや、かえって株安の要因となると批判を浴びたサーキットブレーカーの運用停止を決定しました。

しかしながら、中国株の現状を見ていると、中国政府の新しい株価対策が成功するのかどうかはわかりません。

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2016年01月14日

市場の質が変わったことを認識すべき

もともとこのブログは拙書の読者の方々の一助になればと始めたものです。そこでしばらくの間(年前半くらい)は初心に帰って、拙書に補足が必要な場合のみ、更新していきたいと思います。

さて、年初から株価が暴落しています。この状況についてはすでに拙書で述べていますが、昨年の10月を起点に相場全体の質が変わってしまいました。よって、拙書『中原圭介の経済はこう動く(2016年版)』(2015年10月刊行)の228~230ページの文章を引用したうえで、少し補足を加えさせていただきたいと思います。

(以下、『中原圭介の経済はこう動く(2016年版)』より引用)

チャイナ・ショックが起こった後でも、野村証券は2015年末の日経平均株価の見通しを、企業業績の拡大基調に変化はないという判断から、従来の2万1500円で維持するというレポートを顧客に送っているそうです。大和証券も2015年末の日経平均株価の見通しを、野村証券と同じ理由から2万2000円に据え置いています。

もちろん、両社の株価見通しの前提には、日銀の追加緩和という株価刺激策が入っておりません。果たして、本当に株価が2万1500円や2万2000円に達するということはありえるのでしょうか。

米国で利上げが2015年12月に行われれば、株価は2万円の回復どころか1万9000円の回復も難しくなりかねないですし、利上げが2016年に先送りになったとしても、米国や中国の経済減速がじわじわと世界の経済や株価にダメージを与えていくことになるでしょう。

そのうえ、ドル円相場が円高基調に転換するのであれば、株価は2015年9月の暴落時の安値1万6901円を下回ることも考えられるでしょう。株価収益率が14倍~15倍に下がったからといって、株価が割安になったという判断は、所詮は、過去を基準にしたものにすぎないのです。米国と中国の経済減速の前では、現時点の株価収益率などは当てにしてはいけないのです。

そういった意味において、過度な円安の水準訂正が起こると予想する2015年10月~2016年3月のうちに、日経平均株価は下降トレンド入りが鮮明になる可能性が高いといえるでしょう。

日本株が再浮上するために残された唯一の手段は、日銀の追加緩和をおいて他にはありません。その証左として、株式関係者の間では日銀の追加緩和に対する期待感が非常に高まってきています。

しかし、事態はそんなに単純ではないように思われます。日銀の追加緩和に対して、政府内では否定的な見方が増えつつあるからです。

かつては「リフレ万歳」だった政府が、物価上昇に賃金上昇が追い付かず、消費の拡大を妨げているという現実を直視するようになったのは、大いに評価できることだと思います。しかしそれは、投資家にとってはリスク管理をいっそう強めなければならない結果となりそうです。

(引用終わり)

実際にこの文章を書いたのは2015年9月になりますが、それ以降の数か月の市場を見ていて、考えが変わったところがあります。それは、東洋経済オンラインの連載(1月7日の記事)でも述べましたように、市場の構造が変質してしまったことにより、日銀の追加緩和を完全に織り込んだとしても、日経平均株価が20000円を回復するのは難しいということです。

「昨年3月のECBの量的緩和以降の株価上昇」と「昨年10月以降のECBの追加緩和観測による株価上昇」のあいだで明らかに異なるところがあります。それは、昨年3月の量的緩和開始後では長期および短期の双方の投資家が株式の買い増しを進めていたのに対して、10月以降の追加緩和観測では短期の投資家しか積極的に株式を買い進んでいなかったということです。

株高が生命線の安倍政権は、今のような株価があと2カ月も続くようなことがあれば、追加緩和への否定的な見解を撤回して、再び日銀に追加緩和の催促を打診する可能性が高まっていくでしょう。しかし、昨年10月のECBの追加緩和を教訓にするならば、日銀の追加緩和が決定したとしても、日経平均株価は1000円~2000円しか上昇しない可能性が高まっているわけです。

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2016年01月04日

2016年の海外投資家の動向について

「2016年の海外投資家の動向について」ですが、長期的に腰の据わった資金を扱っている投資家ほど、世界の株式市場の先行きを慎重に見ている向きが多いようです。7月28日のレポートでは、ウォール街の早耳筋の銀行投資家たちがすでに米国株の上昇は望めないと考えていたことを取り上げましたが、8月のチャイナ・ショック以降は米国株だけでなく、日本株や欧州株の上昇余地も乏しいと考える欧米投資家が増えてきているのです。すなわち、長期的な視点に立つ投資家ほど、中国リスクがいつ蒸し返されるのかを警戒しているわけです。

さらに欧米の経済メディアでは、10月頃からアベノミクスは失敗したと見始めているところが増えてきています。当然のことながら、3年近く経っても経済の好循環は実現していないですし、大企業の高収益ばかりが際立ち、消費が一向に増えてきていないという事実を客観的に評価しているからです。安倍政権が経団連に対して、2015年度以上の賃上げと設備投資額にノルマを課そうとしているのを見て、欧米メディアには安倍政権が自らの経済失政を認めているのと変わらないと映ったのではないでしょうか。そのように考えると、欧米投資家にとって2016年に日本株が力強く上昇する投資アイデアは、今のところ存在しないように思われます。

欧米の投資家にとって・・・

この続きは、12月29日配信の『経済展望レポート』でご覧になれます。

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2015年12月22日

利上げが金融市場に与える影響について

私の現時点の見立てでは、株式市場や為替市場は米国の利上げを「ある程度」は織り込みに行っているように感じられます。なぜ「ある程度」なのかというと、短期的には市場がほぼ織り込んだとしても、中期的には米国経済や世界経済の減速をまだ織り込んでいるとはいえないからです。おそらく、イエレンFRB議長も利上げによって米国経済が幾分減速することは覚悟の上であるのでしょう。

今の米国経済は自動車の売り上げが突出していて、GDPが堅調に推移している割には、他の耐久消費財はそれほど売り上げが伸びていません。先日始まったクリスマス商戦においても、消費が拡大基調にある割には、小売りの現場では思ったほど売り上げが伸びていないという話が聞かれます。これまでこのレポートでも指摘してきましたように、駆け込み消費がすでにピークアウトした可能性が高く、その反動が2016年には顕著になってくるだろうと考えられます。

ところが、FRBの経済の先行きの判断には、駆け込み消費という概念がまったく存在していないばかりか、米国の消費がすでにピークアウトしたという意見もまったく聞かれません。FOMCメンバーの中で慎重派であるイエレン議長ですら、・・・

この続きは、12月15日配信の『経済展望レポート』でご覧になれます。

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2015年12月07日

原油価格30ドル時代に突入

先週末に開かれたOPEC総会では、各国の利害が対立し、減産が見送りとなりました。OPECの現状と2016年前半までの見通しについては、拙書『石油とマネーの新・世界覇権図』(2015年8月発行)の121ページの文章を引用したうえで、少し補足を加えさせていただきたいと思います。

(以下、『石油とマネーの新・世界覇権図』より引用)

「アメリカとサウジアラビアが結託して原油価格を暴落させ、ロシアとイランの弱体化を目指している」という陰謀論を唱える人々もいますが、それはプーチン政権が事実を歪めてつくりだした見解です。

確かにロシアにしてもイランにしても、サウジアラビアに比べ、原油価格の下落に対して財政上でも国内経済の面でも脆弱です。ロシアから見れば、OPECの生産維持方針のおかげで原油価格が大きく下がってしまった結果、自国の経済がガタガタになっているわけですから、サウジアラビアが腹立たしくてしかたがないでしょう。

さらにイランへの経済制裁が解けることで、今度はサウジアラビアがいくら減産したとしても、1バレル100ドルに達することはもうないでしょう。

イランはサウジアラビアやイラク、ベネズエラなどとともに、OPECの創設メンバーでもあります。イランが日量100万バレルもの増産を開始したときに、OPEC内でそれについてのコンセンサスがとれるかどうかは疑問です。ペルシア湾岸以外のOPECメンバーは「イランの原油輸出量が増加した場合には、OPECは国別の生産枠を復活すべきだ」と主張し始めているのです。

しかし、イランで100万バレル生産が増えたとき、その代わりにOPECのどこかで生産を減らそうとしても、どの国も減らせないでしょう。私はOPECは、おそらく一度は加盟国に対して生産枠でキャップをはめようとするけれども、最終的には、なし崩し的に、各国の超過生産を黙認することになると予想しています。

(以上、引用終わり)

今回のOPEC総会で最も争点となったのが、イランが増産を開始した時、その分を各国で減産対応することができないということです。サウジアラビアが減産での協調を働きかけたものの、財政事情が苦しい各国をまとめきることはできませんでした。

OPECが原油の生産目標枠を棚上げしたことにより、さらに供給過剰の傾向が強まることになるでしょう。まさに原油価格30ドル時代がやって来たといえるのです。このままでは、ベネズエラあたりが2016年には財政破綻に追い込まれるかもしれません。

なお、併せて 『原油価格、1バレル30ドル時代が来る』(東洋経済オンライン8月11日) や 『アメリカとイランの和解は、シェール革命並みの衝撃がある』(本ブログ8月11日) をご覧いただければ、今の原油市場に対する理解がいっそう深まることになると思われます。

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2015年11月16日

現在の日米の株価をどのように見たらいいのか

「現在の日米の株価動向をどのように見たらいいのか」について、NYダウ平均株価が先週17800ドル台を付けたことも、日経平均株価が19700円台を付けたことも、私はよくここまで戻してきたものだと思って眺めておりました。

世界的な金融緩和を背景にして、相場は常に行き過ぎるものという認識はあるものの、米国の企業業績の伸び悩みや世界経済の停滞感を見ていると、日米双方の株価の割高感は拭いきれない水準まで戻してきていると考えております。

ECBの追加緩和観測が台頭してから3週間あまりが経ちましたが、海外投資家はこの間、日本株においては現物株と先物の両方の買い越しを続けてきています。彼らが再び日本株に資金を入れ続けているのは、米国の利上げが無難に消化できるだろうという楽観した考え方が優勢になると同時に、中国経済への悲観的な見方が後退してきているという認識を持っているからです。

海外投資家が本当にそう考えているのであれば、腰の入った長期的な投資になるはずでしょうし、買い越し額も1週間平均で2000~3000億円で収まるはずがないでしょう。しかし実際には、彼らはいつでも逃げだせるような短期的な資金を振り向けているにすぎないのです。要するに、過去3週間あまりで買っているのは、海外投資家の中でも短期筋といわれる投資家であり、もとより楽観的な見通しなど持っていないわけです。

では、何故そのような解説が流布されるのかというと、短期筋のファンド運用者やディーラーにとって特有の事情があるからです。・・・

この続きは、11月15日配信の『経済展望レポート』でご覧になれます。

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2015年07月29日

アメリカ株は天井を打ったのか?

先週の初めには、NYダウ平均株価は再び過去最高値を伺うような値動きをしていましたが、それが一転して下落基調に陥ったのは、7月下旬から始まった主要企業の決算が今のところ低調な結果で推移しているからです。もちろん、「中国景気の減速」や「商品価格の下落」なども下落の要因として考えられるのですが、あくまで主たる要因は「アメリカ企業の業績悪化」にあります。

これまでも「1-3月期よりも4-6月期のほうがドル高が進んでいるので、アメリカの主要企業の業績は悪化するだろう」と申し上げてきましたように、キャタピラーやIBM、マイクロソフトなどは減益決算となり、金融や一部の IT企業を除いては総じて振るわない結果となっております。その象徴的な事例として、23日に減益決算を発表したキャタピラーは、過去1年間の安値を更新するまでに株価が下落してしまっているのです。

アメリカの主要企業が海外で稼ぐ売上げ比率は30%程度になり、金融を除く幅広い業種でドル高による収益悪化の悪影響が強まってきています。今回の主要企業の決算が始まる前のトムソン・ロイターの集計によると、主要500社の4-6月期の1株当たり利益は、前年同期から3%減るという見通しにあります。1-3月期の2.2%増から一転して、減益に沈むというのです。実際に、主要企業が全体で減益に陥ると、金融危機後の2009年7-9月期以来となるため、株式市場への影響は大きいと見るべきでしょう。

もっとも、ここ数年のアメリカ企業は日本企業と同じく、業績見通しを控えめに出す傾向があります。そのため、当初は1-3月期も3%弱の減益が予想されていましたが、最終的な結果は2%台の増益に転じたのです。モルガン・スタンレーの著名なアナリストなどはこの点を指摘し、「市場の予想は低すぎる。結果は予想を上回るだろう」という予測を立てています。

この続きは、7月28日配信の『経済展望レポート』でご覧になれます。

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2015年07月10日

今回の暴落は個人投資家にとって好機となる

今回は特別に、昨日の早朝にお送りした『経済展望レポート』の一部分を引用したうえで、詳しい解説を加え、読者の皆さまの日頃からのご愛顧に報いたいと思います。

(以下、『経済展望レポート』より一部引用)

日本の株式市場を見渡してみると、個人投資家には前向きな見方をしている人が多いように感じられます。株価がパニック的な売りから下落したところを、滞留している個人投資家の資金が待ち構えているからです。

早々に売ってしまった個人投資家にとっては、ひょっとしたら最後の買い場になるかもしれないという考え方が浮上しているのです。確かに、上海総合指数が3000ポイントまで下落してもいいように(現在は3500ポイント)、これから3回くらいに分けて日本株を買っていくのは、一つの有効な方法であると思われます。

(引用終わり)

個人投資家は2013年の上昇相場スタート時から一貫して売り主体となっており、日経平均株価が20000円を超えた段階では、上昇相場の蚊帳の外にいる投資家が多いと言われています。

東証が発表する投資主体別の売買動向を集計してみると、2013年、2014年、2015年(1月~5月)の海外投資家の買い越し額が15兆1196億円、8526億円、2兆7749億円であるのに対して、個人投資家の売り越し額は8兆7508億円、3兆6323億円、4兆1994億円となっています。

取り立てて大きな押し目がなく高値を更新し続けている相場では、空売りで失敗している個人投資家が多いと聞いていますし、買いしかやらない個人投資家の口座には現金が貯まり続けているということです。2015年の売り越し額だけでもすでに2014年の売り越し額を超えているのですから、現時点の個人投資家の買い余力は凄まじい金額となっているに違いありません。

今後の大きなイベントのスケジュールを考えると、個人投資家にとって今回の暴落は、最後の買い場としての好機になるのかもしれません。

(7.12 追記) 『経済展望レポート』の読者への配慮から、この記事の内容を当初の「全文掲載」から「一部引用」に改めさせていただきました。ご了承いただければ幸いです。

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2015年03月09日

原油価格反転の鍵を握るのは

今回は、『本質を見極める勉強法』(昨年11月出版)のキャンペーンにお申込みいただいた方々に昨年12月16日にお送りした『経済展望レポート』から一部分を引用し、その上で補足を加えたいと思います。

(以下、『経済展望レポート』より一部引用)

確かに、今回の原油安を受けて、アメリカのシェールオイル開発に減速感が出てきているのは事実です。アメリカ全土でリグと呼ばれる石油掘削設備の稼働数が今月に入って減少幅を拡大しているからです。少なくとも原油の増産ペースが今後数カ月は鈍化するのは、避けられないことになるでしょう。

ただ見誤ってはいけないのは、「増産のペースが減少する」のと「生産量自体が減少する」のでは、明らかに意味合いが違うということです。アメリカの原油生産量はペースが鈍っても、原油価格が長い期間において50ドルを割り込まない限りは、増え続けることになるのは変わらないだろうと考えられるのです。

もちろん、シェールの井戸は1年~2年で生産量のピークを迎えるので、新規のリグ数が増えなければいずれは生産量の減少が避けられなくなります。とはいっても、技術革新が日進月歩で進んでいて、1つのリグ当たりの生産量が増加しているため、しばらくの間は生産量が減少するという事態は想定できないわけです。

(引用終わり)

直近のさまざまな経済関係の記事などを見ていても、私の当時の見解が裏付けられる結果が出て来ています。米エネルギー情報局によれば、アメリカの原油生産量は2月末時点で日量932万バレルと、前年比で15%も増えているといいます。シェールオイルの増産基調は衰えていないわけです。

原油価格が今後も現在の価格帯で推移すると仮定すれば、少なくともアメリカの2015年の原油生産量が減少するとは、とても考えることができません。すなわち、原油価格反転の鍵を握っているのは、サウジアラビアしかいないということになります。

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2012年08月07日

8月の混乱は避けられそうだ

予想外にも、大きなニュースが入ってきました。メルケル政権のストレイター報道官が「ドラギ総裁の発言に懸念はない」として、ドイツ政府としてECBの南欧国債購入の計画を支持すると発言しました。

メルケル政権はドイツ連銀の反対を押し切る姿勢を固めた模様です。これでEFSFが南欧国債を購入できる可能性が高まりました。スペインのラホイ首相もEUに支援を依頼すると見られており、これでドラギ総裁が先日示した国債購入の前提条件が揃いそうです。

早ければ、今月中にECBとEFSFによる南欧国債の購入が始まるという観測があり、欧州の金融市場では安心感が広がって来ています。とりあえずは、8月の欧州発の混乱が避けられる見通しが立てられるようになりました。

これまでの欧州の危機対応は、市場に催促されるたびに、ドイツ政府の反対のより先送りの合意を繰り返してきましたが、ストレイター報道官の発言が信頼できるとすれば、欧州にとってはユーロ共同債の創設に向けて一歩前進したと言えるでしょう。

ただし、ドイツがユーロ共同債に難色を示し続けた場合、ギリシャはいずれユーロ圏を離脱せざるをえなくなるでしょう。3月にEUの救済策によって、民間債務の約75%を削減できたとはいえ、国債利回りが20%を超える水準では借金返済ができるわけがありません。

スペインが今まさに陥っている状況にある国債利回りが6%~7%であっても、10年間で元利金支払いが1.8倍~2倍になるのですから、いくらスペインが緊縮財政を行ったとしても、国債利回りがこのままでは焼け石に水といわざるを得ません。

欧州が当面の「時間稼ぎ」ができる環境が整った中で、ユーロ共同債の議論が深まってくれればと期待しています。

(お知らせ1)
欧州市場が落ち着く見通しが立ったため、更新の頻度を元に戻したいと思います。ご了承ください。

(お知らせ2)
8月9日に新刊『これから世界で起こること』(東洋経済新報社)が発売されます。詳細については、以下のURLをご覧ください。
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keizaiwoyomu at 10:17|この記事のURL
レポート配信履歴
7/13・7/30

8/14

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