政策分析

2013年04月22日

「財政危機」と「財政破綻」は分けて考えなければならない

私は今まで「日本で財政危機は起こる可能性があるが、財政破綻は絶対に起きない」という主張をしてきました。その理由は、日本国債の利回りが急騰して財政危機が起こったとしても、日本には海外に比べて増税余地が多分にあるからです。

その意味では、「財政危機」と「財政破綻」はきっちりと分けて考える必要があります。「国債暴落=国家破綻」と短絡的に考えていると、事態の推移を大きく見誤ってしまいます。おまけに、日本の破綻など、海外の国々はもちろん、日本国民が認めるはずがないのです。

そのことについて、拙書「2013年 大暴落後の日本経済」(2011年出版)からの引用になりますが、象徴する文章をご紹介したいと思います。

(以下、拙書第5章の「日本は財政破綻しない」より引用)

最近、書店に行くと、「日本は財政破綻する」といった内容の本が目につくようになりました。欧州の財政危機が日本のメディアでも繰り返し報道されるようになり、国民の間にも危機感が広まりつつある証拠であるのかもしれません。

しかし私は、日本が財政破綻することはないと考えています。なぜなら、日本は大増税と歳出削減をセットで行えば、財政危機の難局を乗り越えることができるからです。他の国々に比べ、日本にはまだ消費税増税の余地が多分にあります。

OECD加盟国で見ると、欧州を中心に大半の国々では、日本の消費税に当たる付加価値税が15%~25%の水準で課せられています。税率が高い順番に並べてみると、アイスランドの25・5%を筆頭に、スウェーデン、ノルウェー、デンマーク、ハンガリーの25%、ギリシャ、ポルトガル、フィンランド、ポーランドの23%と続きます。

ここで興味深いのは、財政危機にある南欧諸国のギリシャやポルトガルが23%と上位にあるのに加え、イタリアが20%、一番低いスペインでも18%の税率を課せられていることです。南欧諸国では増税の余地があまり残されていないのです。これは、財政再建が極めて難しいことを浮き彫りにしています。

これに対して、日本の消費税率は最下位の5%です。日本が投機マネーの攻撃を受けて財政危機に直面したとしても、消費税の税率を15%~20%に引き上げれば、瞬時にして財政危機を回避することができます。

それと同時に、社会保障制度改革に伴う歳出削減策も行えば、早期の財政健全化の目途がつき、巨額の債務を少しずつでも減らすことが可能になります。

日本人は愚かではありません。実際、2010年にギリシャ危機が話題になって以降、世論調査では増税容認派が目立って増えてきています。問題なのは、この国民の危機感がまったく政治に届いていないことです。せっかく世論が背中を押しているのに、消費税引き上げは選挙にマイナスだという理由で、政治家は決断の先延ばしをしようとしています。

~中略~

国民は財政再建を受け入れざるをえません。このまま社会保障費の膨張を放置し、国家が破綻する道を選ぶのか、それとも、自分たちの生活が苦しくなっても、財政再建で国が生き残る道を選ぶのか。残された道が2つに1つしかないのなら、国民は後者を選ぶしかありません。

なぜなら、もし財政再建を受け入れなければ、手厚い社会保障を失う以上の苦難に直面することを、私たち自身が本能的に理解しているからです。

国家破産で得をするのは、借金が帳消しになる人だけです。ところが、日本人の1世帯あたり平均貯蓄額は、負債を差し引いても1100万円を超えています。コツコツ貯めてきた貯蓄がゼロになることを望む人は、おそらく1人もいないでしょう。

政府から「国家破産か、財政再建か」という2つの選択肢を示されれば、大多数の国民はやむなく財政再建を選ばざるをえず、消費税による大増税と社会保障費の大幅な削減を受け入れるしかないのです。

(引用終わり)

4月15日の記事でも述べたように、その後、野田政権が消費税増税法案を成立させたことで財政危機は遠のいたように見えましたが、黒田日銀の誕生により再び危機への懸念が高まってきているように思われます。

もちろん、増税はしないにこしたことはありませんが、「増税をしなくても大丈夫だ」と言い放つ政治家や評論家がいるとすれば、それは国民に媚びているだけで、無責任極まりない発言であると思います。

彼らは「名目成長率が3%~4%になれば、増税の必要はない」と主張しています。確かにその通りですが、その成長率を達成するのは夢物語としか言いようがないからです。世界経済が過去30年間でいちばん良い時期だと言われていた2004年~2007年の時期であっても、日本の名目成長率は平均してわずかに1.0%だったのです。

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keizaiwoyomu at 12:19|この記事のURL
レポート配信履歴
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