金融政策分析

2017年03月23日

やっぱりマイナス金利は「毒薬」だった

日銀によりマイナス金利が導入されて、1年余りが経ちました。昨年2月1日の記事『マイナス金利は「劇薬」というより「毒薬」だ』では、銀行の収益悪化を招くことをはじめ、数々の副作用が起こるという予測を述べたうえで、経済の本質や流れをまったく理解できていない愚策であるという見解を述べさせていただきました。

実はその過去記事を書いた直後に、テレビ朝日の朝の情報番組のディレクターから、マイナス金利の特集をするので基礎的な知識を教えてほしいという依頼を受けました。そこで私はマイナス金利の弊害について、初心者でも理解できるように論理的かつ丁寧に、2時間くらいかけて記事の内容をかみ砕いて説明させていただきました。

ところが驚いたことに、実際の番組ではリフレ派の大学教授が解説役をしていて、「マイナス金利は正しい政策です」「銀行の収益は逆に増えます」といった、まったく理解不能なことを主張していたのです。コメンテーターの二人から「そんなわけがない」と突っ込まれても、論理的な理由をまったく示さずに、「とにかく、そうなのです」と押し切っていたところに、リフレ派の学者に共通する合理的思考力の欠如を見せつけられた気がいたしました。

この続きは、3月23日更新の『中原圭介の未来予想図』でどうぞ。

※連載コラムのタイトルは編集者の意向で変わるケースがございます。ご了承ください。


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2016年09月21日

日銀の「総括検証」は何の意味も持たない

みなさんもご存じのとおり、今の日銀の金融政策は「デフレを脱却する」という目標を掲げて行われています。学問的にも遅れている経済学の世界では、「デフレ=不況」が未だに常識として捉えられているからです。

ところが私は、そもそも「デフレを脱却する必要はないし、インフレを目指す必要もない」と考えています。なぜなら、インフレであるかデフレであるかは、歴史的に見て経済の好不況とはまったく関係がないからです。私がそういった考え方をできるのは、大学生のときに経済学ではなく歴史学を学んできた結果だろうと思います。
 
世界経済の歴史を検証すると、デフレ期では好況になっていることのほうが圧倒的に多く、デフレと不況に関係性が認められないという事実が明らかになっています。恐慌論で有名なベン・バーナンキは、世界大恐慌の時期だけを研究して「デフレ=不況」と結論付けましたが、むしろ世界大恐慌の時期だけが例外であり、歴史的な見地から判断すると、稚拙な結論としか言わざるをえなかったのです。

なぜ偉大な経済学者たちは、歴史をありのままに俯瞰することができないのでしょうか。たとえば近年の事例では、2014~2015年にドイツを大幅に凌ぐ経済成長を達成した英国では、その当時はデフレの状態にあったのです。原油安により実質賃金が上昇し、消費が拡大していたというわけです。景気が良いとされるドイツにしても、スウェーデンやスイスにしても、低インフレが定着している国々です。

歴史的な検証については私だけでなく、・・・

この続きは、9月21日更新の『中原圭介の未来予想図』でどうぞ。


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2016年05月18日

日銀は日本人の価値観を理解していない

私はこれまで3年以上、黒田日銀の金融政策は間違いなく失敗するだろうと様々な媒体で申し上げてきました。その主な理由としては、以下の4点にまとめることができるでしょう。

①円安により企業収益が増えたとしても、実質賃金が下がるため国内の消費は増えない
②円安が進んだ割には、企業は輸出単価を引き下げないので、Jカーブ効果は期待できない
③中小企業の労働分配率はすでに高水準にあるので、トリクルダウンなどという現象は起きようがない
④世界経済は2005年~2007年当時と比べると、2013年の時点で欧州や新興国を中心に低迷している

そもそも「インフレ期待」の失敗の底流には、以上の理由は別にして、その理論そのものが日本人の価値観と相いれない特徴を持っているということがあります。その点については、『経済はこう動く〔2016年版〕』の204~205ページの文章を引用したうえで、補足を加えさせていただきたいと思います。

(以下、『経済はこう動く〔2016年版〕』より引用)

私から言わせれば、とりわけ日本人に「インフレ期待」を求めるのは、そもそも大きな間違いであると思われます。米欧社会の価値観では、「インフレになるのであれば、預金していると目減りしてしまう。だから株式を買おう。お金を使ってしまおう」という考え方が、100歩譲ったとして、21世紀型のインフレ経済でまったく成り立つ可能性がないとはいいません。

しかし、それはイソップ童話の「アリとキリギリス」でいうところの、キリギリス的な発想です。平均的な日本人の価値観では、決してそう考えることはありません。日本人は「インフレになるのであれば、今から節約して生活防衛を心掛けよう」と考えるからです。いわば、アリ型の国民なのです。「インフレ期待」どころか、「インフレ失望」が働きやすいお国柄なわけです。

今では、アベノミクスの実質的な失敗により、インフレ期待がまがい物だったことが一般の人々にも理解できるようになってきています。おまけに、日本社会の高齢化が進み、貯蓄を取り崩す年金生活者が増えている中、穏やかなデフレのほうが暮らしやすいと考える人々が増え続けてきています。

そんなわけで、原油安によってデフレになるのは、国民経済にとって好ましい状況であるというのは、新しい経済の捉え方として常識になっていくでしょう。「原油安が誤算だった」と説明する日銀の目指すインフレには、いったい何の意味があるのか、私にはまったく理解しようがありません。日銀の黒田総裁は意固地にならずに、いい加減に日本人の価値観を理解する必要があるのではないでしょうか。

(以上、引用終わり)

企業がグローバル化に成功するための秘訣は、進出した先での徹底した現地化にあります。徹底した現地化においては、進出先の国の歴史、宗教、哲学、文化、価値観、ライフスタイル・・・そういったものすべてをそのまま、ありのままに受け入れるということが前提となります。たとえ自分の価値観とは相いれないものがあったとしても、すべてをありのままに受け入れる努力こそが、今のグローバル競争には欠かせないわけなのです。

実体経済を動かしているビジネスの現場では、こういったことが当たり前であるのに対して、経済学の理論では、すべての国々の人々が同じように行動するはずだという幻想が未だに信じられているようです。クルーグマンは自分の誤りを認め、「金融政策ではほとんど効果が認められない」と襟を正しましたが、クルーグマンの持論を最大の根拠にしたリフレ派の学者たちは意固地になりすぎて、軌道修正をできないままでいます。

日銀の金融政策は破綻に向けて、一歩一歩近づいているといえるでしょう。マイナス金利は経済全体で見れば副作用のほうが多く、愚策以外の何物でもありません。現代の経済システムでは、金利は必ずプラスになるという前提で構築されています。マイナス金利はまったく想定されていないため、これから数々の副作用が経済を脆弱な状態へと貶めてしまうリスクが高いのではないでしょうか。

※多忙につきまして、久しぶりの更新になりました。ご理解いただければ幸いです。

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2016年02月01日

マイナス金利で起こること

日銀が銀行の当座預金にマイナス金利を導入することで、決して避けられない事態があります。それは、銀行の収益基盤が悪化するということです。銀行は量的・質的金融緩和の影響もあって、巨額の資金を日銀の当座預金に預けています。マイナス金利を導入したら、日本の銀行への打撃は欧州の銀行とは比べ物にならないといえるでしょう。

実際のところ、超低金利が長期化する状況下で、これまでの銀行は日銀の当座預金にお金を預けて金利収入を稼いできました。それは、日銀の当座預金の金利が0.1%という高めの水準にあったからです。逆説的ながらも銀行にとっては、異次元緩和を進める日銀の当座預金がもっとも有望な運用先のひとつになってしまっていたのです。銀行から見れば、突然のマイナス金利の採用は、梯子を外されたといっても過言ではないでしょう。

さらに深刻に懸念されるのは、日銀が当座預金の金利をマイナスにする影響は、金融市場でのいっそうの金利の低下にもつながっていくということです。実は、当座預金にマイナス金利が採用されることよりも、金利の低下で融資の利ザヤが縮小することのほうが、銀行の収益基盤にとっては大きな痛手となってしまうのです。

この続きは、2月1日更新の『中原圭介の未来予想図』でどうぞ。


(お知らせ)3月12日に『投資戦略フェア EXPO2016』において、久しぶりに一般向けのセミナーをいたします。興味がございましたら、ご覧いただければと思います。http://www.tradersshop.com/topics/expo2016/

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2016年01月26日

2016年の利上げは、できても1回だけだ

FRBは2016年に利上げを何回できるのでしょうか。この予測については、拙書『中原圭介の経済はこう動く(2016年版)』(2015年10月刊行)で述べていますので、その中の75~78ページの文章を引用したうえで、少しだけ補足を加えさせていただきたいと思います。

(以下、『中原圭介の経済はこう動く(2016年版)』より引用)

少なくともチャイナ・ショックが世界の金融市場を揺るがすことになるまでは、FRBのイエレン議長は2015年のうちに利上げをすると公言してきましたし、多くの米国民もそのようになるだろうと考えていたに違いありません。

当然のことながら、このことは米国民の消費に大きな影響を与えていると思われます。何が言いたいのかといいますと、米国では2015年に入ってから駆け込み消費が拡大している可能性が高いということです。

冷静に経済の歴史に照らし合わせてみれば、米国では近い将来の利上げが確実視されていたので、消費増税前の日本と同じように、利上げ前に米国民による駆け込み消費が起きていると考えるのが自然ではないでしょうか。

~中略~

しかし不思議なことに、私の指摘するような懸念が専門家の間ではまったく見られていません。実際に利上げが行われれば、その反動が来ることは十分に想定できるはずなのですが、なぜかそういった見解がまったく聞こえてこないのです。

~中略~

このような歴史を踏まえれば、FRBの利上げのペースは想定よりもずっと緩慢にならざるをえないでしょう。先にも述べたように、FRBはたった1回の利上げによって、自国の経済ばかりか世界の経済に予想以上の負の連鎖をもたらしたことを、利上げの半年後には認めざるをえなくなる可能性が高いからです。

ところが、7月までのFOMC(連邦公開市場委員会)議事録を見れば、FOMCメンバーの多くは、利上げを開始したのち、年4回のペースで0.25%ずつの利上げを考えていることがわかります。FOMCメンバーの金利見通しはかなり楽観的であるように思われるのです。そのような早いペースの利上げは、とても世界経済が消化しきれないのではないでしょうか。

最終的には、FRBがひとたび利上げに動いたとしても、FRB自らがその失敗に気付き、軌道修正を余儀なくさせられることでしょう。その場合、米国経済の回復を支える金融政策を決して転換するわけではないと、株価が暴落するような金融政策は避けるように配慮すると、FRBは強くアナウンスする必要性に迫られるかもしれません。

(引用終わり)

遅かれ早かれ、FRBは世界経済の減速に加えて自国の減速懸念も受けて、年4回としている追加利上げの見通しを修正せざるを得ないでしょう。

中国が経済の構造調整を終えるまでには、少なくとも5年単位の時間を要することとなります。そのような状況下において、利上げによる様々な副作用が複雑に絡み合い、2016年前半には米国の減速も避けられない見通しにあるのです。

ですから私は、「FRBは2016年に利上げができたとしても1回だけだろう。ひょっとしたら1回もできないかもしれない」と予測しているわけです。

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2015年11月27日

FRBの利上げは本当に12月になるのか

「FRBの利上げは本当に12月になるのか」についてですが、イエレンFRB議長は11月4日の議会公聴会で「データ次第だが、次回のFOMCで利上げする可能性はある」と言明しました。米議会で債務上限の引き上げが合意されたことで、大きな不透明要素がなくなったせいか、これを機にイエレン議長をはじめ、フィッシャ―副議長やニューヨーク連銀のダドリー総裁も同じ趣旨の発言をしています。

ここで、新刊「経済はこう動く」の79ページの文章を引用させていただくと、FRBの金融政策を先読みするには、ニューヨーク連銀のダドリー総裁の発言に注目するだけで十分です。ニューヨーク連銀はFRBの金融調節を実施する組織であり、その総裁はFOMCの副議長を兼ねていますが、金融実務でダドリー総裁の右に出る人物はいないといわれているからです。FOMCでは議論の行方を調整しながら、落としどころを探るという役割を担っているのです。

実のところ、イエレン議長の就任以来、FRBは・・・

この続きは、11月15日配信の『経済展望レポート』でご覧になれます。

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2015年11月06日

FRBの金融政策の簡単な読み方とは

FRBがひとたび利上げに動いたとしても、FRB自らがその失敗に気付き、軌道修正を余儀なくさせられることでしょう。その場合、米国経済の回復を支える金融政策を決して転換するわけではないと、株価が暴落するような金融政策は避けるように配慮すると、FRBは強くアナウンスする必要性に迫られるかもしれません。

それは、FRBの金融政策が極度の緩和状態から通常の状態へと戻るのではなく、極度の緩和状態から非常に緩和的な状態へと変わるにすぎないということを意味しています。

FRBが経済動向に細心の注意を払い、極めて緩やかな利上げにとどめるかぎり、金融市場は冷静に対応することができます。長期金利の過度な上昇を抑え、米国経済への悪影響とその先にある世界経済への悪影響を緩和することができるのです。

その結果として、米国経済は利上げ後の減速傾向から何とか抜け出し、一進一退の小康状態を保つことができるようになるでしょう。詰まるところ、米国が深刻な景気後退にまで陥ることはないだろうというわけです。

これまでの金融市場では、イエレン議長やその他のFOMCメンバーが何らかの発言するたびに、投資家たちが右往左往することが頻繁に見られてきました。その一方で私は、FOMCメンバーの発言はほとんど無視して問題ないだろうと考えています。すべてのメンバーの見解をいちいち真面目に受け取っていたら、惑わされるだけだからです。

FRBの金融政策を先読みするには、・・・

この続きは、新刊『中原圭介の経済はこう動く〔2016年版〕』でご覧いただけます。

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2015年05月25日

最近よく聞かれること(2)

前回の記事の続編です。

最近、メディアの取材でよく聞かれることで、「アメリカの景気動向」に次いで多いのが、「FRBの利上げの時期」についてです。この質問の答えは、アメリカ経済の動向と深くかかわっており、そのことを理解することなしに考えることはできません。

4月7日の記事『アメリカの経済成長鈍化は既定路線』では、2015年のアメリカ経済は原油安によって個人消費は増加するものの、ドル高の進行が経済を牽引してきた企業部門の収益を悪化させるために、1-3月期と4-6月期のGDPはそれほど伸びが期待できないという見通しを述べさせていただきました。

4月29日のGDP速報値ではそのことが明らかになったわけですが、市場関係者の間では依然として、年後半に2%台の成長を取り戻すと予想する向きが多いということです。

そのような楽観的な予想を立てているのは、何も市場関係者だけではありません。FRBは同じ4月29日に公表したFOMCの声明の中で、成長の減速は一時的としたうえで、緩やかなペースの拡大(2%程度を想定)が続くという従来の見通しを堅持しているのです。

しかし私は、前回の記事でも申し上げましたように、現在のドル高の水準が続く限りは、2015年を通して1%程度の成長が妥当なところではないかと考えています。FRBが想定している成長の達成は、ここからある程度のドル安が進行しなければ、極めて難しいのではないでしょうか。

だからこそ、FRBはなかなか利上げに踏み切ることができないでしょう。市場の予想に反して1-3月期のGDPが急減速したのですから、FRBは4-6月期のGDPを見ただけでは景気拡大の持続性に自信を持つことができないでしょうし、そうであるならば、7-9月期のGDPも見たいと考えるのは当然のことでしょう。

私が昨年からアメリカの利上げは早くて2015年秋頃とし、2016年に先延ばしになるかもしれないと申し上げ続けているのには、経済の大きな流れから見れば、FRBと市場の双方の経済見通しが外れるだろうという前提に立っているからなのです。

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2015年04月21日

浜田宏一氏、リフレ政策の旗を下げる?

昨年9月22日の記事『幻想から目を覚ましつつある浜田氏と岩田氏』では、「金融政策だけで景気は回復できる」という立場の浜田宏一氏・岩田規久男氏の両名の変節ぶりを指摘したうえで、日本がアメリカのインフレ目標を模倣すると、国家は借金を減価し、富裕層はさらに豊かになる一方で、大多数の国民は生活がいっそう苦しくなってしまうということを説明いたしました。

このことが歴史的に証明されているのは、アメリカ国民の実質賃金の推移を見れば一目瞭然なのですが、それについては次回に述べるとして、4月14日の日経新聞には「浜田内閣官房参与に聞く」という驚くべき内容のインタビュー記事が掲載されていました。その記事の中では、浜田氏の変節ぶりがさらに加速しているのが見て取れましたので、日経新聞の記事を以下に転載させていただきます。

(以下、日経新聞4月14日の記事の前半部を転載)

――物価上昇率を2年で2%にするとした日銀の目標をどうみますか。

「インフレ目標はそんなに重要ではない。インフレを起こすのは国民に対する課税だからできるだけ避けたい。日銀も我々も2~3年前に石油価格が半分以下になるとは思っていなかった。その責任を日銀がとる必要はないから(エネルギー価格の影響などを含んだ)消費者物価指数を目標とするのは合理的ではない。(デフレの主因である)需給ギャップが狭まっていることは間違いない。2%というのはどちらかといえばインフレの上限と見るべきだ」

「雇用の方を目標にするのが正攻法だ。(安定雇用のための)手段として中間目標の物価目標がある。完全雇用で成長率が良ければ(2%目標に)こだわる必要はないといってもよい。ただ、今の状態ではインフレにしない限りそういう事態にはできない」

(転載終わり)

私はこれまでの拙書において、インフレ目標への批判として「2000年以降の先進国では、インフレは税金と変わらないので、インフレ目標を採用すると実質賃金が低下していくのは必然である」、「今後数年以内にエネルギー価格は大幅に下がる見通しにあるので、無理にインフレにしなければ日本国民の生活水準は向上するだろう」、「日本に必要なのは、金融緩和ではなく良質な雇用である」などと強く訴えてきました。

その一方で、浜田氏はこれまで、「インフレにすれば、景気は回復する」、「インフレにすれば、庶民生活は向上する」、「4%くらいのインフレを目指してもいい」という類の主張を繰り返し、アベノミクスを理論的に支えてきました。

その結果として、日本国民の実質賃金(2013年~2014年の2年間)がリーマンショック時と匹敵するくらい下がったことは、このブログや拙書をご覧になっている方々はご存知のことでしょう。(正確に言うと、実質賃金の下落の半分は円安インフレ、半分は消費増税によるものです。)

いずれにしても、日経新聞のインタビューで浜田氏が言っていることは、反インフレ目標の立場を取る私の主張にかなり近付いて来ているように思えるのですが、みなさんはどのようにお考えになるでしょうか。

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2014年09月22日

幻想から目を覚ましつつある浜田氏と岩田氏

リフレ政策導入の原動力となった浜田宏一氏と岩田規久男氏の両名が、ここのところは「成長戦略が大事である」と言い出し始めています。両名の持論は、「金融政策で景気は回復できる」というものであったはずなのですが、どうして変節してしまったのでしょうか。

私の安倍政権発足前からの持論は、「量的緩和よりも成長戦略のほうがずっと大事である」ということです。その理由は、過去のブログでも繰り返し述べてきておりますが、ここで改めて拙書『日本経済大消失~生き残りと復活の新戦略』(2012年12月出版)の149~156ページを引用し、補足を加えさせていただきたいと思います。

以下の引用文章は、安倍政権が発足する数カ月前に書いた文章ですが、今でもその考えにまったく変わりはありません。

(以下『日本経済大消失~生き残りと復活の新戦略』の149~156ページから引用)

ここまでは、国民の所得が下がり続ける原因について、3つの出来事を挙げながら考えてきました。1997年の金融システム危機を契機に、薄利多売による競争激化、金融緩和の長期化、経済のグローバル化による雇用喪失という出来事が複雑に絡み合って、国民の所得を押し下げることにより、デフレ脱却を極めて困難にしているのです。

日本政府はデフレ脱却のために、日銀に対して大規模な金融緩和を求めています。日銀も物価上昇率が1%になるまで、金融緩和を進めていく方針を示しています。

しかしながら、日本経済が長いデフレの状態にあるからといって、現状で物価上昇を目指す金融政策が本当に正しいと言えるのでしょうか。

すでに述べているように、何よりも重要なのは、デフレの本質的な原因を見誤ってはならないということです。本質を見誤ってしまうと、間違った対応策を行い、デフレは解消されたとしても、国民生活をいっそう苦しくしてしまいかねないからです。

デフレの本質は、国民の所得が下がり続けていることです。デフレを克服するためには、間違った対応策を取らないように、この本質を多くの国民が認識する必要があるのです。

経済が上昇に向かう正しい道筋は、「所得の増加→消費の拡大→物価の上昇」というプロセスで生じなければなりません。物価が上昇すれば、所得も増加するだろうという見方は、非常に短絡的だと言わざるをえません。

たとえ大規模な金融緩和により物価を上昇させることができたとしても、今の日本では所得の増加はとても見込めないのではないでしょうか。所得の増加が伴わない物価の上昇は、大多数の国民生活を苦しくさせてしまうだけなのです。

現に、米国では大規模な金融緩和を行った結果、さらなる金利低下が銀行の貸し渋りを強め、苦境に陥る中小企業を増加させましたし、ガソリン価格の高騰に代表される物価高は生活コストを上昇させ、国民の生活をいっそう苦しくしました。

日本にいるとあまり実感できないかもしれませんが、国土の広い米国では、いちばん近くにあるスーパーまで50キロ、100キロ離れていることも珍しくありません。それゆえ、ガソリン価格の高騰は国民の生活を直撃してしまうのです。

当然、雇用の中核を担っている中小企業が苦しんでいるので、国民の所得も思うように増えるわけがありません。2011年の米国民の平均所得は前年比で1%ほどの微増で、物価上昇率の3.14%を大きく下回るものとなっています。

「物価の上昇→所得の増加→消費の拡大」という順序立てが成り立たないのは、ここまで読んでいただければ分かると思います。日本でインフレが起こるとすれば、それは、国民の所得が伸びない中での悪いインフレしかないだろうと思うのです。金融緩和に過度に依存しようとしている日本政府には、この当たり前の考えが抜け落ちてしまっています。

ユニクロの服やソフトバンクの携帯、HISの旅行、大手スーパー・コンビニエンスストアのプライベートブランドなど、これらの商品やサービスが繁盛している限り、デフレから脱却し、健全なインフレが起きるわけがありません。

それでも、消費者が好んでより安い商品やサービスを求めているのですから、今のうちはそれで良いのではないでしょうか。国民の所得が上がらない中でインフレになるくらいなら、まだデフレのほうがマシだと言えるでしょう。

デフレから抜け出せずに健全なインフレが起きないのは、日銀の努力不足を示しているのではありません。国民の所得が右肩上がりに増え続けて、国民が将来に明るい展望を描けるようになるには、金融緩和に過度に頼るのではなく、所得の底上げを含めた成長戦略が必要なのは明らかなのです。つまり、日銀ではなく、政府の出番であると言えるのです。

(~中略~)

そこで、日銀による金融緩和ではなく、政府による成長戦略こそが必要となっていきます。まず、政府がデフレ克服の対応策としてやらなければならないのは、生産性の低い産業や企業を法律や補助金によって延命させることではなく、そういう産業や企業に働いている人々のために新しい雇用を生み出すこと、すなわち、生産性の高い成長産業をつくりだすことであるのです。

もちろん、新しい成長産業には、工場の海外移転が進む製造業や賃金が低いサービス業などからの雇用の受け皿になってもらいます。

そのために政府は、国内外で潜在的な需要が見込まれる分野に、積極的に投資をしていかなければなりません。幸い日本には、成長産業になりうる分野がまだたくさん残されています。

私が将来有望だと考えるのは、「農業」「医療」「観光」の3分野です。詳しくは第4章で触れますが、現状では、「農業」と「医療」は国の規制でがんじがらめになっていますし、「観光」は国の経済規模で見ると、諸外国に比べ圧倒的に予算が少ないというハンデを背負っています。

しかし政府が、新しい成長産業をつくり、国民の所得を増やそうと本気で考えることができれば、このような閉塞した状況は打ち破ることができるはずです。

ところが呆れたことに、新しい首相が誕生するたびに、新しい成長戦略が一応はそれなりに策定されてはいるのです。しかし、結局は実行されることなく、その成長戦略は忘れ去られていく運命にあるようです。

なぜ、そのようなことが繰り返されているのでしょうか。

それは、政府が成長戦略をやる気はまったくないからなのです。新しい成長産業をつくるにしても、その成果が目に見えるかたちで現れるには、早くて5年、普通は10年の年月を要すると言われています。

政治にとって優先されるのは、成果が出るのが先になる政策ではなくて、目先の選挙で投票してもらえる政策を実行することです。したがって、政府は成長戦略において総花的な政策を掲げて賛成しているような素振りを見せますが、結局は真剣に取り組もうとはしないのです。

国民は本当の政治を求めています。政治が国民に本気で明るい未来を見せたいのであれば、政府が優先してやるべきことは決まっています。それは、いくつもの新しい成長産業をつくりだし、国民の所得を増加させ、デフレ脱却と経済成長につなげていくことなのです。

(引用終わり)

補足を加えると、アメリカの主流派経済学が唱えるインフレ推進策では、国家は借金を減価し、富裕層はさらに豊かになる一方で、大多数の国民は生活がいっそう苦しくなっています。これは、歴史的にも証明されています。

実際に、過去30年間でダウ平均株価は15倍超になったものの、物価を考慮に入れたアメリカ国民の実質賃金は20%ほど下がってしまっています。実質最低賃金も1970年代の水準を下回っているくらいなのです。

その一方で日本はどうかというと、安倍政権誕生以降の実質賃金の推移を見ると、消費税増税の3%分を差し引いても、デフレの時よりも早いペースで実質賃金が下がってしまっているのです。

浜田氏と岩田氏が成長戦略を語り出したのは、「お金の量を調整すれば、経済が思うように操れる」といった幻想から目覚めつつある証拠であります。私はそう思うのですが、みなさんはいかがお考えでしょうか。

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2013年12月26日

2014年はリフレ政策の試練の年となる

2013年の5月14日および5月31日の記事でも述べましたように、日銀の大規模な量的緩和は間違いなく失敗すると、私は断言しました。経済の予測においては「間違いなく」という言葉は滅多に使うことはないのですが、世界経済や企業経営の実態を考えれば、どうしてもそういう結論に達してしまいます。

リフレ派の理論では、大きな柱が二つあります。ひとつめの柱は、「量的緩和で低金利を促すことにより、企業の設備投資が増える」というものです。ところが、この考え方は現場の経営感覚とは大きく乖離しています。経営の現場感覚をまったく知らないといってもよい空論なのです。思えば、リフレ派の学者たちに企業経営の経験がある者は、皆無ではないでしょうか。

経営者は需要が見込めるときに設備投資をするのであって、低金利だから設備投資をするわけではありません。企業は自社の存続がかかっているので、事業採算の見込みが立たなければ新たに投資をしないのが当然です。 

実際、量的緩和を粘り強く続けているアメリカでも、名目金利と実質金利の双方が大きく下がりましたが、設備投資はFRBが想定した通りには増えていません。アメリカの企業は史上最高益を更新しているのにもかかわらず、その利益の行き先は自社株買いや配当増に回っているのが実態であります。

需要が見込めない中で設備投資を行うことは、企業としては愚かな行為というしかありません。その実例が、中国政府がリーマン・ショック後に行った4兆元の投資です。需要が伸びない中で国有企業の多くが設備投資を増やしたために、今や供給過剰に苦しみ赤字企業が続出しているのです。

こうなってしまうと、増やした設備投資を次々と削減していくしかなく、4兆元投資の大半は無駄に終わってしまったと言えるでしょう。需要がないところに設備投資をやっても、中国の国有企業の二の舞になるだけである。リフレ派の学者は、なぜそんな簡単なことがわからないのでしょうか。不思議で仕方がありません。

リフレ派のもうひとつの柱となる考え方に、「量的緩和がもたらす円安により、輸出が増えて国民所得が上がる」というものがあります。この考え方も間違っているのは、2000年以降のエネルギー価格の高騰によって、日本の企業は賃上げを簡単にできなくなってしまっているからです。

とくに日本では、企業が売上げや利益を大きく回復したとしても、エネルギー価格の高騰分や輸入インフレによるコスト増加分をできるだけ価格に転嫁しようとはしないので、その分、売上増に見合った賃上げをすることが非常に難しくなっています。

経営側にいる人間は、コスト高をなった分を価格に転嫁した時に、消費者が逃げてしまうことをいちばん恐れています。冷静に考えれば考えるほど、そういう判断になるのは当然でしょう。値上げをすれば、多くの人々が財布の紐を締めるようになるから、顧客が価格に敏感な層である業態ではとくに値上げには慎重にならざるをえません。ギリギリまで値上げをしないというのが、一般的の経営感覚と言えます。

さらに、「世界経済は過去30年で最もよい状態である」と言われた2005~2007年のときと比べて、今の世界経済はアメリカの消費だけが底堅く、欧州各国やBRICs諸国を中心に全体的に悪い状況にあるので、かつてほど日本からの輸出を受け入れる余裕がなくなっています。

ですから、日本企業は思ったほどの輸出増は見込めないでしょう。それを裏付けるように、2013年の貿易統計の推移を見てみると、円安によって日本企業の競争力が強化されたと言っても、輸出数量はあまり増えていないのです。

ほぼすべての経済学者が、円安がもたらす「Jカーブ効果」という理論を支持しています。「Jカーブ効果」とは、円安により輸入価格が上昇し一時的に貿易赤字が拡大するとしても、円安による輸出価格低下で輸出数量が徐々に増加し、最終的に貿易収支も改善するという理論のことを言います。この理論も経営や企業活動の現場をまったく無視しています。

日本企業の経営者は多くの場合、円相場が大きく変動しても価格を引き下げたりなどしません。円高が進んだ時も価格を引き上げずに耐えたのですから、円安の時だけ価格を引き下げるというのは考えにくい話です。ですから、「Jカーブ効果」で想定される円安による輸出価格の低下という理論自体が、少なくとも日本企業には当てはまらなくなっているのです。

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2013年12月19日

量的緩和の縮小開始

QE3の縮小が2014年1月から始まります。重要な局面であるのに新しく文章を書く余裕がないため、今後の流れについては『新興国経済総くずれ~日米は支えきれるか?』(2014年9月発売)の165~169ページをそのまま引用し、解説に代えさせていただきたいと思います。

(以下、『新興国経済総くずれ~日米は支えきれるか?』より引用)

FRBがこれから迎えようとしている最大の試練は、2008年の金融危機以降に実施した量的緩和の縮小・停止を市場の混乱を招かずにどう進めるかということです。

FRBがこれから行う出口戦略は、大きく分けて3段階になります。

第1段階は、現在のQE3、すなわち、毎月850億ドルの資産購入を縮小することです。購入額を徐々に減らしていき、最後にゼロにするという作業です。ここで初めて、FRBの資産拡大は止まります。

続く第2段階では、3兆ドル超に膨らんだFRBの資産規模を縮小し、第3段階ではゼロ金利政策の解除に伴う政策金利の引き上げが待っています。

当面、金融市場の注目を集めている第1段階は、長い出口戦略の始まりにすぎません。それでもバーナンキ議長が慎重を期しているのは、量的緩和縮小の初めの一歩であっても、市場が過剰に反応するリスクを段階ごとに和らげていく必要があるからだと考えているからです。

この第1段階については、比較的ハードルが低いと思われます。拙速に2013年中には行わず、雇用情勢を注意深く見ながら2014年前半に取りかかれば、大きな混乱は起きないのではないでしょうか。

問題は第2段階からです。FRBが市場に供給した巨額のマネーをいかにして混乱なく吸収していくか。これは非常に難しい問題であると思われます。

第2段階が第1段階のQE3の縮小と明らかに違うのは、FRBが市場に供給する資金の総量がリーマンショック後に初めて減少するということです。

これまでは、歴史的な低金利で資金を調達したヘッジファンドがレバレッジを利かして、リスクの高い金融商品に強気で勝負をしてきた。ところが、FRBがひとたび資金を吸収し始めると、ヘッジファンドはレバレッジを引き下げるために金融商品のポジションを半ば強制的に縮小しなければならなくなるのです。

FRBでQE1、QE2、QE3と量的緩和を行うたびに、アメリカの株価は上昇し、他の先進国や新興国の株式市場にもずいぶん投資資金が流れ込みました。世界のヘッジファンドの運用資産の残高も増加の一途をたどってきました。

FRBが資産規模を縮小するということは、世界のヘッジファンドの運用資産の残高が減少することにつながります。FRBの資産規模が減らないQE3縮小(第1段階)の観測が流れただけで、5月~8月に世界の株式市場は伸び悩み、多くの新興国の通貨が大きく売られたのです。

したがって、資産規模の縮小(第2段階)はきわめて慎重にやっていかないと、金融市場のみならず、世界的に経済が動揺する恐れがあります。

ただし、FRBの救いとしては、日銀が新たに大規模な量的緩和を始めたことで、FRBの資産規模の縮小分をすべてではないにしても日銀が補ってくれるということです。FRBの本音としては、日銀が2014年末まで量的緩和を続けている間に、資産規模の縮小を何としても始めたいのではないでしょうか。

しかしそれでも私は、資産規模の縮小は3年くらい時間をかけてゆっくりとやるのが妥当であると考えています。新興国を中心として、資産バブルと借金経済が同時進行で大きく膨らんでしまっているからです。

ですから、第3段階の政策金利の引き上げについては、かなり先の話になると思います。

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keizaiwoyomu at 10:17|この記事のURL

2013年08月19日

QE3縮小は来年だ

このブログでは基本的には金融政策の予測をしないのですが、今回は敢えてQE3の縮小時期について、私がどう見ているのかを簡潔に述べたいと思います。

アメリカの金融関係者の間では「9月末にもQE3の縮小が始まる」と、まことしやかに言われています。しかし私は、「QE3の縮小は早くても来年前半である」と考えております。

FRBがこれから迎えようとしている最大の試練は、2008年の金融危機以降に実施した量的緩和の縮小・停止を市場の混乱を招かずにどう進めるかということです。議長はかつて、市場に混乱を与えない対策を最優先で検討することを明らかにしています。

FRBの出口戦略は大きく分けて3段階になります。第1段階は、毎月850億ドルの資産購入を縮小することです。購入額を徐々に減らしていき、最後にゼロにするという作業です。ここで初めて、FRBの資産拡大は止まります。

続く第2段階では、3兆ドル超に膨らんだFRBの資産規模を縮小し、第3段階ではゼロ金利政策の解除に伴う政策金利の引き上げが待っています。

当面の注目を集めている資産買い入れの縮小(第1段階)は、長い出口戦略の始まりにすぎません。それでも議長が慎重を期しているのは、量的緩和縮小の初めの一歩であっても、市場が過剰に反応するリスクを段階ごとに和らげていく必要があるからだと思います。

議長は緩和縮小の前提条件を「雇用の持続的な回復が維持できれば」としていますが、現時点の米国の失業率の問題は見かけ上低下していることです。16歳以上の人口のうち働いているか、積極的に職探しする人々の比率を示す「労働参加率」は63%半ばで、34年ぶりの低水準に落ち込んでいます。

本来であれば、景気回復の局面では職探しをする人々が増え労働参加率は上向くはずなのですが、技能不足の若者などの構造的な失業者が職探しを断念してしまっているのです。

フルタイムの定職がない全米の25歳以下の若者の数1000万人、高卒の失業率は30%に迫っている状況です。あるシンクタンクの調査では、やむなくパートに就くなどの事例も合わせた就職難の若者の比率は50%を超えるということです。

低水準の労働参加率は失業率の計算の分母になる労働力人口を減らすため、実態では雇用情勢が改善していないのに、見かけ上の失業率だけが低下してしまいます。バーナンキ議長もこのことは十分に認識しているので、見かけ上の失業率低下だけでは緩和縮小を決定しないでしょう。

よって、今年中に緩和を縮小するのは難しいと考えています。

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keizaiwoyomu at 10:01|この記事のURL

2013年08月05日

アメリカの金融政策は本当に成功しているのか?

2、3年前から拙書等でたびたび訴えてきたことですが、アメリカの金融政策は格差を拡大させる副作用が大きく、国民生活の視点から見ると失敗するだろうという懸念が現実のものとなりつつあります。

金融危機後にFRBのバーナンキ議長はデフレ経済への転落を払拭するために、量的緩和を通じて何が何でもインフレにしようと考えました。それが、その後のQE1、QE2、QE3とつながっていきます。

その結果、アメリカの株価は右肩上がりに上昇を続けています。もともとアメリカは日本と違い、国民が金融資産の半分以上を株式で持っている国ですから、株が上がることはそのまま国民の資産が増えることを意味しています。

しかし、それは見かけ上の話です。国民が金融資産の半分以上を株式で持っているといっても、一握りの富裕層が平均値を押し上げているだけであって、実際には金融資産を持っていない国民が大半なのです。

その証拠に、富裕層が主たる顧客であるメイシーズなどの高級百貨店の売上げは2ケタのペースで増え続けていますが、一般国民が顧客であるウォルマートの売上げは横ばいで増えていないのです。

アメリカ国民の平均所得は2006年から大きく下がっている一方で、物価は量的緩和の効果もあって年2%程度の上昇をしています。これは、名目以上に実質的な所得が減っていき、国民生活が徐々に苦しくなっていくということに他なりません。

アメリカでは現在、6人に1人が貧困層、3人に1人が貧困層および貧困予備軍と言われるまでに格差の拡大が進んでいます。アメリカはまさに「貧困大国」と言っても差し支えないかもしれません。

大規模な量的緩和は、所得の再分配を引き起こします。最も恩恵を受けるのは富裕層、恩恵を全く受けないのが一般国民ということになります。

アメリカの事例を見ると、仮に日本でインフレが起こるようなことがあれば、大多数の国民が望んでいない未来がやってくることが考えられるのです。

だから、日本は本気で成長戦略を実行し、潜在成長率を引き上げなければなりません。潜在成長率を引き上げることができる前にインフレになってしまったら、日本はアメリカ型の社会に一歩踏み出してしまうことになってしまうでしょう。

次回は、「QE3はいつ終わるのか」について述べる予定です。

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keizaiwoyomu at 13:51|この記事のURL

2013年07月18日

インフレ目標政策は宗教のようなものだ

過去の著書の中でも指摘させていただいたことですが、インフレ目標政策の眼目は「インフレになるぞ!」「物価が上がるぞ!」と国民全体に信じ込ませることです。

信じ込ませることができれば、消費者はモノを安いうちに買おうと思うに違いない。消費が増えれば、企業の利益が増えるに違いない。企業の利益が増えれば、労働者の給料も上がるに違いない。

これがリフレ派の人々の根拠のひとつでもある「インフレ期待」というもので、要するに「信じる者は救われる」というような宗教みたいな学説なのです。

少しきつい言い方に換えれば、「早くしないとインフレになるぞ!」「現金を持っていても物価が上がれば目減りするぞ!」「今のうちに株を買ってしまえ!」「家も買ってしまえ!」と国民を脅しているだけです。

しかしそれだけで、本当に経済がよくなるのでしょうか?

確かに、金融市場は「思惑」で動くことが多いです。為替にしたって株価にしたって、実体経済とはまったく違う思惑で乱高下することが多すぎると言ってもいいかもしれません。

というのも、欧米の金融機関やヘッジファンドの運用担当者は、上がるにしろ、下がるにしろ、市場が大きく動くことを望んでいるからです。彼らは市場が大きく動かないことには、大きく儲けることができないのです。

ですから、彼らは相場が大きく動く材料にアンテナを張っていますし、ひとたび市場が大きく動き始めれば、強気でガンガン攻めてきます。ユーロ危機以降、大きく動き、かつ流動性が高い市場がなかったために、アベノミクスによる金融緩和は彼らにとって絶好の投資材料と映ったことでしょう。

しかし、国民の消費行動が「思惑」だけで動くことはごく稀なことです。資産のほとんどを株式で持っているような人には別の話となりますが、大多数の国民は株に投資などしていませんし、投資していたとしても何千万も株式を保有している人は10%もいないのが実情です。

リフレ派の人々はインフレになれば賃金が上がると言います。確かに、賃金が上がれば消費は増えるでしょう。

しかし、今の先進国では構造的に賃金が上がりにくい状況になっています。大きな原因のひとつが、2000年以降の資源エネルギー価格の高騰にあります。これによって、先進国の企業および国民の所得は新興国に流出し、その額は拡大し続けてきました。例えば日本の場合、2012年には所得の流出額が18.9兆円と過去最大となっています。

エネルギーは高くなっても輸入せざるを得ないわけですから、国全体での損失が大きくなるのはもちろん、エネルギーを使う企業にとっても負担が厳しくなっていきます。企業の売り上げが伸びても、エネルギー価格のコストが上がることによって、人件費に回す利益が削られてしまうのです。

リフレ派の人々は「何としてもインフレにするのだ」と言いますが、仮にインフレを起こすことができたとしても、大多数の労働者の賃金が上がることはありません。物価だけが上がり、賃金が上がらない社会がやってくるだけのことです。デフレ以上にひどい時代がやってくるのです。

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keizaiwoyomu at 13:55|この記事のURL
レポート配信履歴
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