政治分析

2017年05月18日

安倍首相が歴史に名を残すには

私も一人の国民として2020年の東京オリンピックは是非とも成功させてほしいのですが、その後の日本には厳しい道のりが待ち受けているので、浮れている余裕はないように思われます。このままでは、国民の暮らしや老後を守る社会保障費が賄いきれなくなり、現行の社会システムが危機に陥ってしまうからです。

日本は高齢化の進展により、今現在でも年金や医療、介護にかかる費用が増え続けています。さらには、1947年~49年生まれの団塊の世代がすべて75歳を迎える2025年以降、社会保障費の増加が加速することが避けられない情勢となっています。とりわけ医療費と介護費の伸びが大きく、厚生労働省の試算によれば、健康保険が負担する医療費は2015年度の39.5兆円から2025年度には54兆円に、介護費は10.5兆円から19.8兆円に増えるということです。厚生労働省の保守的な試算ですから、実際には医療や介護にかかる費用はもっと膨らむことになることも想定しなければならないでしょう。

この続きは、5月18日更新の『中原圭介の未来予想図』でどうぞ。

※連載コラムのタイトルは編集者の意向で変わるケースがございます。ご了承ください。


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2017年04月25日

欧州の政治リスクが後退したわけとは

フランス大統領選の第1回目の投票では、中道系独立候補のエマニュエル・マクロン前経済相と国民戦線のルペン党首が決選投票に進む結果となりました。直前の世論調査によれば、マクロン氏がルペン氏を逆転して僅差でトップに立ちましたが、実際の投票も同じような結果となっています。

少し前の3月に行われたオランダ下院選挙では、与党である自由民主党が第1党を維持し、極右政党の自由党に競り勝ちました。「自由党が第1党に躍進する勢い」という事前の世論調査もあっただけに、このときは「やっぱり欧米の選挙では世論調査があまり当てにならない」ということが証明されていたわけです。

この続きは、4月24日更新の『中原圭介の未来予想図』でどうぞ。

※連載コラムのタイトルは編集者の意向で変わるケースがございます。ご了承ください。


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2017年03月30日

英国のEU離脱は失敗する

いよいよ英国がEUに離脱を通知し、原則2年間の交渉が始まります。スケジュール通りになれば、英国は2019年3月末にもEUを離脱するといわれています。英国のメイ首相は最近、「2年以内に交渉を終えることができると楽観している」と述べましたが、本当にそのようになるのでしょうか。

私はそのようになるはずがないと考えています。現実を直視すればするほど、交渉期間はわずか2年しかないという苦境が浮き彫りになってくるからです。まず真っ先に、英国はEUとの新しい貿易協定を結ぶ必要に迫られていますが、それ以前に、現在EUが英国に適用している農業や環境などの規制を英国独自の規制に作り替えなければ、EUとの新しい貿易協定を結ぶための交渉さえ始めることができないのです。

この続きは、3月30日更新の『中原圭介の未来予想図』でどうぞ。

※連載コラムのタイトルは編集者の意向で変わるケースがございます。ご了承ください。


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2016年10月06日

2017年、欧州は本当の正念場を迎える

欧州では今なお、極右政党や急進左派政党の躍進が続いています。フランスの「国民戦線」やスペインの「ポデモス」などは既存の二大政党制をすでに揺るがしていますし、ドイツの「ドイツのための選択肢」やイタリアの「五つ星運動」、英国の「独立党」なども勢力を伸ばしてきています。欧州経済の長期低迷や失業率の高さは、移民や難民を排斥する運動と結び付き、とりわけ極右政党にとって強い追い風として吹いています。

私は2017年が欧州の政治的なリスクの正念場になると考えています。4月~5月にフランスの大統領選挙、6月にはフランスの国民議会選挙、9月にはドイツの連邦議会選挙と、欧州統合を推進してきた二大国の選挙結果が、政治的なリスクとして非常に心配されているからです。

中東からの難民流入がコントロールできないうえに、これからもテロが繰り返し起こるようなことがあれば、フランスやドイツの国民には極右政党や極右政党候補者に投票する人々が増えてくるでしょう。そのようなことになれば、EUまたはユーロ圏の崩壊というシナリオが現実的になってくるというわけなのです。

フランスで4月~5月に行われる大統領選挙は・・・

この続きは、10月6日更新の『中原圭介の未来予想図』でどうぞ。

(お知らせ)
10月15日(土)に、『投資戦略フェア2016大阪』で講演会を行います。興味がございましたら、こちらからどうぞ


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2015年11月24日

フォルクス・ワーゲンの不正問題が明るみに出た本当の理由とは

「フォルクス・ワーゲンの不正問題が明るみに出た本当の理由とは」についてですが、あくまでこれは私の推測の域ですが、米国が中国に擦り寄る欧州にダメージを与えるために、以前から把握していた事実を公表したのだと考えています。中国が米国の覇権に挑戦する姿勢を強めつつある状況下において、欧州各国が米国の制止を聞かずにAIIBにこぞって参加したことへの報復ともいえるかもしれません。

EUはすでに2年も前から、フォルクス・ワーゲンの不正に関する事実を掴んでいたといわれています。それを敢えて公表しなかったのは、欧州経済を引っ張るドイツ経済を支えるためです。米国も1年前くらいにはフォルクス・ワーゲンの不正を把握していたと考えられますが、米国が何故それを黙認していたのかは定かではありません。ただし、何故あのタイミングで米国が不正の公表に踏み切ったのかは、容易に想像がつきます。

米国の世界戦略では、TPPを完成させた後に、・・・

この続きは、11月15日配信の『経済展望レポート』でご覧になれます。

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2015年11月20日

欧州リスクの高まりが広がっていく理由とは

「欧州リスクの高まりが広がっていく理由とは」については、先日のポーランドの総選挙において、反緊縮を掲げる野党「法と正義」が勝利したことが大きな意味を持っているといえるでしょう。この選挙の結果は、ポーランドで構造改革が後退することを決定的にし、ユーロは導入していないものの、欧州の政治経済の新たなリスクとなりうるからです。

「法と正義」は中東からの難民の受け入れだけでなく、欧州統合に関しても懐疑的であり、EUが今後の政策を実行するにあたり、大きな障害になってくる可能性が高いと考えられます。これまでの構造改革や財政再建を改めて、年金制度の拡充、法人税および付加価値税の減税など、バラマキ型の経済政策を実行するというのですから、第2のギリシャを生みかねない状況をつくりだしているといえるのかもしれません。

加えて欧州政治のリスクを大いに高めるきっかけになるかもしれないのが、昨日フランスで起こったイスラム過激派による大規模なテロです。・・・

この続きは、11月15日配信の『経済展望レポート』でご覧になれます。

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2015年11月18日

消費増税が再延期になる理由とは

「消費増税が再延期になる理由とは」についてですが、安保法案を強行採決した時点から、安倍首相の頭の中では来年の参議院選挙が最重要事項となっています。それは安倍首相の悲願が、参議院選挙に大勝して、堂々と憲法改正を行うということだからです。

目下のところ、安倍首相が参議院選挙で争点にしようとしている公約は、「消費増税の再延期」がいちばん有力であると思われます。この公約の本質は、国民の視線を「安保法制」や「憲法改正」から逸らさせるだけでなく、野党も反対できないずる賢い代物であります。今の内紛が絶えない体たらくな野党では、この公約を出されたら勝てる術はなくなるでしょう。

だからこそ、安倍首相と黒田総裁のあいだでは、・・・

この続きは、11月15日配信の『経済展望レポート』でご覧になれます。

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2015年10月13日

ロシアは世界平和を望んでいない

ロシアがシリアの内戦に介入し、中東情勢が混迷を深めてきました。ロシアが本当は何を考えているのかについては、拙書『石油とマネーの新・世界覇権図』(2015年8月出版)の148~150ページに適当な文章がありましたので、まずはその中の文章を一部引用し、少し補足を加えたいと思います。

(以下、『石油とマネーの新・世界覇権図』より引用)

最近のロシアの行動を見ていると、あえて平和を望む世界の流れに逆らい、エネルギー価格高騰につながる地政学的事件を引き起こそうとしているように思われます。

2015年4月から5月にかけてアメリカ・ニューヨークの国連本部で行われた、核兵器不拡散条約(NPT)の再検討会議でも、ロシアは冷戦終結以降に進められていた核軍縮の流れを無視して、核兵器削減の確約を拒否しました。

核兵器不拡散条約は、核兵器の拡散防止と核の平和利用を目的として1970年に発効したもので、5年ごとに実行状況が確認されています。

今回の再検討会議では、議論の結果をまとめた最終文書を採択できず、会議は決裂したまま終了となりました。直接の原因は、「中東を非核地域とする」という構想について、西欧諸国と中東諸国が対立したためとされますが、同じ席ではロシアも求められた核兵器削減要求を無視したのです。

プーチン大統領はロシア国営テレビ局が放映したドキュメンタリー番組の中で、「クリミア半島編入の際、必要があれば核兵器部隊に戦闘態勢を取らせる用意があった」と述べています。

アメリカ国務省は2015年1月「わが国が大陸間弾道ミサイル(ICBM)などに配備された戦略核弾頭の数を、1年前の1688発から1642発へと減らす一方、ロシアは1400発から1643発と、2割近くも増やしている」という調査結果を発表しています。ロシア政府は2015年3月、戦車や戦闘機など重火器の保有数を定める「欧州通常戦力(CFE)条約」からの離脱を宣言し、「中距離核戦力(INF)廃棄条約」に違反する形で新型ミサイルの開発を続けているとされます。

ロシアは2007年、イランから8億ドルでミサイルS300を受注したものの、対イラン制裁中であり、アメリカとイスラエルが強く反対したため、当時のメドベージェフ大統領が契約を履行しなかったという経緯があります。ところが2015年に入ってから、プーチン大統領が、一度は止めたイランへのミサイル輸出を再開する命令にサインしたりしています。

これはもうアメリカとサウジアラビアへのあてつけと言うしかありません。シーア派の大国イランにミサイルを持たせて、スンニ派のサウジアラビア、そしてイスラエルあたりを刺激したいと思っているのです。イスラエルがイランを空爆でもしてくれたら大喜びで、むしろ中東で大きな戦争が起こることを望んでいる節があります。

平和に背を向けてナショナリズムに走るロシアは、他の西欧諸国から見れば完全に異質な国に戻ってしまいました。

しかしこうした虚勢も、経済の弱体化の下ではいつまでも続けられません。結局は新冷戦も、かつての冷戦と同じように、ロシアが経済的に疲弊することで終わることになるでしょう。

(以上、引用終わり)

多くのメディアでは、ロシアのシリアへの軍事介入は欧米の経済制裁に譲歩を迫るためと解説していますが、私はそれがすべて正しいとは考えておりません。ロシアにとって、たとえ欧米の譲歩が得られなかったとしても、中東地域での地政学的リスクが高まれば目標は半ば達成したことになるからです。

要するに、ロシアの最重要な目標は原油価格を上昇させることにあり、中東地域で争いが長く続いてくれたほうが好ましいわけです。最終的には、中東地域で大きな戦争が起こり、産油各国の原油生産設備が破壊される状況を望んでいるのかもしれません。

ロシアによるシリアでの空爆を認めたオバマ大統領が、そのようなロシアの意図を読めなかったのは、本当に残念でなりません。

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2015年07月21日

安保関連法案の本質とは

私はこのブログやその他の連載において、いつもは経済や金融、グローバル人材などに関する記事を書いておりますが、今回に限っては、この国の行く末を憂える国民の一人として、「安保関連法案の本質」についてはっきりと申し上げたいと思います。

まずは、安倍首相の安保関連法案に関する説明では、
「違憲ではない」
「自衛隊のリスクは高まらない」
「戦争の抑止力が高まる」

ということですが、これらが全部ウソなのは、普通の教養をお持ちの方にはすぐにわかることです。国民の反対が多いのは、まさに日本人全体の教養のレベルが高いということなのです。

そのことは、これまで政治に関心がなかった10代~20代の若い世代が強く反発していることでも、十分に納得できることでしょう。彼らは学校教育で憲法について学んできたばかりなので、安保関連法案が憲法違反であることを、私たちの世代よりも強く意識することができるのです。国会での首相のデタラメな答弁を見るまでもないわけです。

それでは、ここまで国民の反対が多い「安保関連法案の本質」は、いったいどこにあるというのでしょうか。

この続きは、7月20日更新の『中原圭介の未来予想図』でご覧になれます。

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2013年10月09日

債務上限問題の結末

アメリカの連邦債務の上限引き上げ問題が、オバマ政権・民主党と共和党との政局の駆け引きに使われ、混迷を深めています。

ルー財務長官によれば、債務上限を引き上げなければ、10月17日に政府の手元資金がほぼ底をつき、事実上の債務不履行(デフォルト)に陥る恐れがあるということです。議会の中立機関である議会予算局でも、緊急措置を講じたとしても10月22日~31日に限界が来るという見通しを示しています。

政府機関が一部閉鎖される事態になっても、議会では民主・共和両党が互いを非難しあう状態が続いています。オバマ大統領がアジア歴訪を取りやめたというのに、今のところ何の進展も見られていません。

CNNの世論調査では、「今回の問題は誰に責任があるのか」(複数回答可)という質問に対して、共和党が63%、民主党が57%、オバマ大統領が53%と、政治への信認が著しく低下している事態を表しています。

実は与野党対立で財政が窮地に追い込まれるのは、今年ですでに3回目になります。アメリカ国民には「もういい加減にしろ」という風潮が定着しています。

仮に債務不履行を起こし、世界の金融市場が大暴落するようなことがあれば、アメリカ議会は自国民だけでなく世界中から非難されることは間違いありません。それだけでなく、アメリカ国民が全議員に対して辞職するよう迫る大運動が起こってもおかしくないでしょう。

金融市場と世論の圧力に逆らうことはできず、結局は妥協案として、債務上限の引き上げが決定されるでしょう。要は「いつ決まるのか」であり、決まった途端に円高が止まり、株価がある程度は再上昇することが予想されます。

もちろん、債務上限額の引き上げは過去の事例よりは小幅なものにとどまるでしょう。近い将来を考えると、決して楽観できない状況が続くのです。

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2012年10月19日

米国の大統領選挙の後

米国の大統領選挙が近づいてきました。私の大統領選挙後のビジョンは、『2015年までは通貨と株で資産を守れ!』(2012年3月刊行)に書いておりますので、その中の文章を引用した上で、補足を加えたいと思います。

(以下、引用)

大統領選で共和党候補が勝利し、上院の改選でも民主党が敗れ、上下両院ともに共和党が多数を握った場合、米国経済はどう変わるのでしょうか?この場合、議会のねじれは解消されるため、共和党政権は選挙で掲げた公約の実現を容易に達成できるものと思います。

 
先に述べたように、茶会党など多くの共和党支持層は「小さな政府」を望んでいることから、新政権はすぐに財政再建に向けて舵を切ることになるでしょう。格付け会社のS&Pは、新しい政権が財政再建を実行できると評価し、米国債の格付けを「最上級」に引き上げることも予想されます。余程のことがない限り、米国は欧州のような債務危機問題に脅かされる事態にはならないと思います。

ただし、第2章で説明したように、財政再建と経済成長は両立できません。したがって、欧州に続き、米国も財政再建路線を打ち出せば、世界経済を牽引してきた新興国経済も急減速し、世界経済が本格的な低成長時代に突入することは避けられないでしょう。

最新のOECDの予測では、2012年の世界全体の成長率は3.6%との見通しですが、新政権が本格的に始動する2013年以降は3%以下の低成長に陥る可能性が高まるだろうと予想されます。

また、米国社会で懸案の格差問題は、共和党政権が誕生することで、今まで以上に拡大する恐れもあるでしょう。現時点で大統領選に名乗りを上げた共和党候補たちは、こぞってキャピタルゲイン課税の廃止を公約にしています。これは、所得の大半が投資による売却益である富裕層を優遇するもので、国民の不満が一段と高まる事態も考えられます。

しかし本当に最悪なのは、オバマ大統領が再選し、上院選にも民主党が勝利した場合なのかもしれません。この場合は「大きな政府」が続くので、財政再建は思うように進まず、米国発の債務危機を引き起こす可能性が高まっていきます。

議会のねじれ状態も続き、オバマ政権は政治的な指導力を発揮することもできません。こういった政治的な危機が、ただでさえ足腰がしっかりしていない米国経済を非常に不安定な状態におとしめてしまうリスクも考えなければならないでしょう。

(引用終わり)

私の誤算は、共和党の選んだ大統領候補がモルモン教徒のロムニー氏であったことです。米国での大統領選挙では、宗教はとても重要な要素となります。失業率が8%前後と悪い状況を考えると、共和党がいつものようにプロテスタントの候補者を選んでいれば、かなり優位に立ったはずなのです。

オバマとロムニーのどちらが勝つのか、予想のしようがありません。しかしながら、どちらの候補が勝つにしても、米国経済は袋小路にはまっていくことになるでしょう。目先の懸案は「財政の崖」にどう対処していくのかになりますが、この崖を乗り越えたとしても、あと数年は辛抱の必要があるように思われます。

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2012年07月31日

欧州の政治が重い腰を上げ始めた

26日に、ECBのドラギ総裁が「どんなことをしてもユーロを守る」と発言したことで、ECBによる南欧国債の買い取り再開、または、ESMによる南欧の国債購入への期待が高まりました。

さらに27日には、メルケル首相とオランド大統領がスペインの危機を巡り、緊急の電話協議を行い、協議後の共同声明では、「ユーロ圏を守るためにあらゆることをする」と表明しました。

連日の要人たちの発言により、スペインの利回りは6%台まで低下し、欧米の株式市場は大幅に上昇しました。ひとまずは、危機を沈静化できた状態にあります。

たとえ欧州の首脳が休暇中であっても、危機が深刻化すれば、何らかの政治的アクションが出て来ることは確認できました。

29日には、ユンケル議長が独仏の新聞取材に応じ、「スペインの国債利回りの上昇を防ぐために、数日内の対策を決定する」「ECBと連携を強化していく」「ドラギ総裁の言うとおり結果を出して行く」と発言しています。

ここまで大風呂敷を広げておいて、今回は中途半端なことはさすがにできないのでは、と考えております。恐らくは、ESMで南欧国債を購入できるようにするか、ECBが南欧国債の買い取り再開をできるようにするか、どちらかの対策が有力であろうと思われます。「ESMで国債購入・ECBで利下げ」というセットでの対策も考えられます。

ただし、どのような対策が取られるにしても、今回も「時間稼ぎ」であることは認識しておかなければなりません。スペインの銀行に注入される資金は10兆円規模ですが、本当のところは20兆円~30兆円が必要であることは、関係当局の間では周知の事実であるからです。

スペインの銀行は住宅価格の値下がりに応じて、住宅ローンの減損処理を行っていない状況にあります。本来ならば30%近い簿価の縮小が必要なところ、直近で2%しか縮小していないのです。

それに加えて、ESMの発足は9月頃になると見られ、発足前に再び危機が蒸し返される可能性すらあります。

遅かれ早かれ、スペインの銀行の財務の深刻さが顕在化して、スペイン危機が蒸し返されるのは避けられないでしょう。その時に、欧州の政治がいよいよ抜本的な解決策に踏み込めるのかが、重要なポイントになるものと思われます。

(お知らせ1)
かつて拙書でも述べていたように、スペインの国債利回りが急騰する緊急事態となったため、間隔が短くてもがんばって更新しています。事態が沈静化すれば、また間隔が空くと思いますのでご了承ください。

(お知らせ2)
8月9日に新刊『これから世界で起こること』(東洋経済新報社)が発売されます。詳細については、以下のURLをご覧ください。
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2012年06月20日

ドイツはスペインを絶対に助ける

拙書『2013年大暴落後の日本経済』(2011年11月刊行)の中から、「欧州の財政危機はこう解決する!」の文章をそのまま引用しますのでご覧ください。

(以下、引用)

2010年以降、金融市場の関心は欧州の財政危機に向けられてきましたが、その危機もいよいよ最終段階に近づいてきているような気がしています。なぜなら、ヘッジファンドの最終目標であるイタリアとスペインの国債利回りが、2012年中にはデッドゾーンと言われる7%~8%を超えてもおかしくない状況にあるからです。

「イタリアやスペインが破綻するのか、それとも破綻しないのか」「ヘッジファンドが勝利するのか、EUの政治が逆転で勝利するのか」それはわかりませんが、恐らく2012年のうちには、欧州の財政危機にひとつの区切りがつくだろうと考えています。

欧州金融安定基金(EFSF)の現行の規模は4400億ユーロしかありません。イタリアやスペインなどの大国の信用不安に対応するには、最低でも2兆ユーロ~2.5兆ユーロの規模が必要になります。両国が破綻をすれば、ユーロやEUの崩壊は避けられない状況です。

しかし欧州金融安定基金の規模を云々する前に、EUが本質的に問題を解決するためには、経常黒字国が経常赤字国に財政負担をする仕組みをつくるしかありません。

そもそも、経済構造も生産性も国民の勤労意欲も異なる国々が、同じ為替レートを使うということ自体がどう考えてもおかしいのです。経常黒字国と経常赤字国が同じ為替レートを使うということは、株式市場で言えば、黒字企業と赤字企業が市場で同じ評価を受け、同等の株価をつけているようなものです。まったく市場原理にそぐうものではありません。

経常黒字国であるドイツなどの国民は「経常赤字国はユーロ圏から出て行け」と言うかもしれませんが、ドイツもユーロによって多大な恩恵を受けてきたことを忘れてはいけません。ドイツほど経済が強い国であれば、本来はもっと通貨高になるはずです。

しかし、ユーロが統一通貨であるために、ドイツは常に割安な為替レートで外貨を稼ぎ続けることができました。富む国はさらに富み、貧しい国はさらに貧しくなる。そのような矛盾を抱えたままでは、統一通貨など成り立ち続けるはずがありません。

ドイツはユーロ最大の受益者であることを自覚し、近い将来には、財政危機の再発防止策として、経常黒字国が経常赤字国に財政上の補填をする仕組みをつくる責任があると思います。

ドイツがその責任を放棄すれば、イタリアやスペインの国債利回りが自力消化できない水準まで上昇し、ユーロ圏ひいてはEUが本当に崩壊してしまいます。

仮にイタリアやスペインが債務リストラに踏み切るようなことがあれば、リーマンショックを大きく上回るほどの金融クラッシュが欧州で起こり、金融機関はバタバタと破綻していくことになるでしょう。そして、この金融クラッシュは米国や日本はもちろん、世界中の金融市場を大混乱に陥れ、世界大恐慌を引き起こしてしまうでしょう。

そのようなことは、ドイツも十分にわかっているはずです。だから、イタリアやスペインがデフォルト寸前に追い込まれれば、世界経済を守るためにも欧州全体が一致協力して、経常黒字国から経常赤字国へ財政の補填を行う仕組みをつくろうと、ギリギリで決断してほしいと思います。

(引用終わり)

補足を加えると、ドイツはギリシャを切り捨てることができても、スペインとイタリアを切り捨てることは絶対にできません。メルケル首相は国民の反対を押し切ってでも、国際社会の圧力も手伝って、スペイン救済に大きな妥協をせざるをえないでしょう。

6月中にドイツは何らかの妥協をするでしょうし、今年中には財政補填を行う仕組みの前段階としての「ユーロ共同債」に合意する可能性は十分にあると思われます。


(お知らせ)これまでずっと2人分~3人分の仕事をこなしてきたせいか、過労のため、体に無理が利かなくなってきました。たいへん申し訳ないのですが、今後は更新の間隔が1カ月くらいになることもあるかもしれません。ご了承ください。

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2012年06月05日

ドイツの本音~ギリシャ離脱でユーロ圏の結束は高まる

ドイツ当局では、6月17日の再選挙の結果によっては、ギリシャがユーロ圏から離脱してもいいと本気で思い始めているようです。

そもそも民間債務については、ギリシャは今年の3月にその約75%を削減することに成功しています。たとえギリシャがこれから無秩序なデフォルトをしたとしても、EUやIMFなどの国際機関は損失を被るものの、民間の金融機関が破綻するような影響はないと考えているのでしょう。

前回の記事でも申し上げましたように、ギリシャがユーロから離脱すれば、新通貨ドラクマは暴落し、ギリシャ国民の生活は今とは比べ物にならないほど苦境に追い込まれます。大企業や富裕層は国外に逃げ出し、ドラクマで支給される公務員給与や年金は実質的に半分以下の価値になってしまう可能性もあるのです。

ですから、ギリシャ国民の困窮ぶりを見たら、ポルトガルやアイルランドが後に続くという選択肢はなくなるでしょう。ドイツの主張する財政規律を守ったほうがマシだと、財政危機国や他のユーロ圏各国の国民も再認識するはずです。

ギリシャをユーロ圏から離脱させ、スケープゴートにすることによって、かえってユーロ圏の結束を固められるというシナリオを、ドイツが描き始めていても不思議ではありません。

しかしながら、ギリシャの切り捨てはアイルランド、ポルトガル、スペイン、イタリアなどの債務不履行リスクを高め、これらの国々の国債利回りがさらに上昇することは避けられそうもありません。

ドイツはこのような事態を乗り切ることができると考えているのでしょうが、結局はスペインやイタリアが国債市場でぎりぎりまで追い込まれ、ドイツは重い腰を上げざるを得ないのではないでしょうか。

すなわち、ユーロ共同債の導入が現実化するということです。そうなれば、欧州の債務危機は一気に沈静化の方向に向かうでしょう。

逆に、再選挙の後に、ギリシャがEUと約束した緊縮財政策を守ることができたとしても、それは危機が先送りされたに過ぎません。近い将来、これまでと同じようにギリシャが計画を達成できないことが明らかになり、再び欧州の債務危機が深刻化することは避けられなくなるでしょう。

なお、海外の主要メディアの多くでは、ギリシャは通貨急落により輸出競争力が高まり、経済が回復するだろうという見方を示していますが、ギリシャに限っては通貨安による経済回復は当てはまらないと思われます。ギリシャでは輸出産業がGDPの約1割にとどまり、通貨安のメリットを生かし輸出を増やすのにも限界があるからです。

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2012年05月16日

欧州の政治リスクは続く

「5月6日は今年最大の山場になる」としていましたが、まさにその後の事態は悪い方向に進んでいます。

ギリシャの再選挙が決定し、欧州の政治リスクが混迷を深めています。最新の世論調査では、再選挙を行った場合、第2党の急進左派連合が第1党に躍進する勢いだということです。

そうなれば、ギリシャがEUの緊縮策を受け入れる可能性はなくなり、ユーロ離脱も視野に入ってくることが避けられません。

しかしながら、現時点の世論調査は当てにはならないと思います。5月6日の選挙前の世論調査では、連立与党が過半数を大きく上回る議席を獲得するという結果が出ていたからです。

ユーロから離脱すれば、新通貨ドラクマは暴落し、ギリシャ国民の生活は今とは比べ物にならないほど苦境に追い込まれます。公務員の給与も支払いが止まる可能性が高いのです。

そのことは、ギリシャ国民もよく理解しているはずです。その現実を認識しているからこそ、再選挙までの約1カ月のあいだに、ギリシャ国民がギリギリで良識ある判断ができるよう変わる可能性は残されています。

ギリシャ国民にとって6月の再選挙は、かつてのアルゼンチンやロシアのように厳しい状況に追い込まれるのか否かの最後の選択になるでしょう。

ギリシャ再選挙の前の5月31日には、アイルランドでEUの財政条約への参加の是非を問う国民投票が実施される予定です。参加が否決されるという見通しも出ているため、これもリスク要因のひとつとなりえます。

欧州の政治リスクは、しばらく続きそうです。しかし私は、ギリシャがユーロ離脱となれば、それが欧州の政治リスクの最終章になると考えています。その理由は次回に述べたいと思います。

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