前回記事の鎌倉に行く前にお昼を大森で下車して、布恒更科へ。
ラーメンには遠く及ばないまでも、訪問軒数ではカレー屋と並ぶ程には食べている蕎麦屋(ラーメンはサイトをやってる関係上カウントしているが、蕎麦屋は把握していない。50軒強かな?)。数少ない中ながら好みの店はいくつかあり、中でも許されるなら何度でも行きたいと思うのが、安曇野の大梅とココ布恒更科。
昭和38年創業のまぁ有名店ではあるのでいろいろいう人も多いが(最近多いな、このフレーズ)、好みなのだから仕方ない。田舎ほど太くないので喉越しもよく、粉の主張がはっきりとある蕎麦。濃ゆ〜い汁、トロトロが沈殿している濃いめの蕎麦湯と、好みにドンピシャ。隙がないというか、最初オレのためにつくったんじゃないかとすら錯覚してしまったほどだった。そして、あまり飲食店では望まないのだが、それでも有り余るほど、接客がスバラシイ。付かず離れず。過剰にならず、程よい物腰。一朝一夕にはできません。。。ここと菜の大塚さんは接客の心の師。

というわけで、半ば強引でも近くに赴いた際は立ち寄ることにしている。
本来は逗子の港の定食屋で食べたいとも思ったが、バスも用いることになり、スケジュール的にパツンパツンになる、という言い訳をつけて、昼時で路上の弁当屋に溢れるサラリーマンを掻き分け、布恒へ。

布恒の外観布恒更科【livedoorグルメ】
住所:品川区南大井3-18-8
採点:★★★★★★★★★★ 蕎麦屋の理想形



初めての平日昼。ちょうど昼休みに被ってしまったので、スーツ姿の客も相当数居て、9割方埋まっていた(会社の昼休憩に布恒とは贅沢極まりない)。センターのテーブルに通されて、品書きを拝見。そして熟考。。。
決まらない。ココはいつ来ても決まらない。更科系はなんといっても、蕎麦の実の中心部のみを用いた真っ白な更科。いわゆる挽きぐるみなんかで強烈に感じる蕎麦っぽさは皆無に等しいのだけど、ゆずとか季節の素材をその更科をベースにして蕎麦にして提供している。
季節の変わりそばにすべきか、更科そのものを味わうべきか、せいろもいいし、お酒を飲むから肴は名物の掻揚げか、蕎麦がきか、お酒はなににするか。前はコレにしたし。。。

あうっ、決まらん!! ここはお酒の品書きが別にあるので、ともかくそれを拝見させてもらおうということに。すると、先ほど窓際の席が空いたのだが、「お酒を召し上がるならこちらの方がごゆっくりできますでしょ」と、促してくれるではないか!? まるでこちらがこの店でどういう時間を過そうとしてきたのか見透かされているような対応。
特段いまの席が悪い席ではないので、ちょっと気の利いた店でもこういう対応はまずない。いやはや、まいった。

布恒の湯葉恐縮しつつもそそくさと席移動。この日頂いたのは「岩の井〜純米吟醸」。蕎麦も好みにあうなら、酒も好みのものばかり。前回おすすめいただいたものも相当によかったが、後日名前を忘れてしまったので、今回はちゃんとメモリーせねばっ!と意気込んだ甲斐あって、憶えていた。岩の井。
千葉は御宿のお酒で、そんな遠いところでないところでこんな地酒をつくっている蔵があんのか!? こりゃ震撼モノ。それこそ、お酒は日本酒、地酒の類を少し嗜む程度で、ちっとも詳しくないが、色、香り、口当たり、飲後感、どれもが突出している。モニタによってうまく色が出るかわからないが、琥珀色に輝いている。香りからして甘いなという感じで、実際ベタ甘といわれそうなほどに甘いが、それは口当たりがあまりにソフトなんで、余計感じるのだろう。口に含んだときに一瞬にして、しかもフワッと広がる香味。種類は全然ちがうが、スペシャリティ珈琲のイルガチェフェの、なんというかテロワールのような、土地独特のフローラルにすら感じる香味がある。すっごく多層的で複雑な香味。
無知を承知で言っているのだけど、いわゆる酒の味、アルコール飲料(醗酵といったほうがいいのかな)の持つ、キツイとか甘いとか辛いとか、そういったファースト・インプレッションのみを以て感じられる以上の、香味の多層性があるんだなぁと。こういうのを感じたことがあるのはこれと、前にここでいただいたものと、福島いわきの又兵衛と、森下の京金でオススメしてもらったもの(また名前忘れてるし^_^;)だけかなぁ。全然経験値ないんで比較のしようもないが、他のアルコールでは感じたことがない。

ついお酒の話が長引いたが、肴は汲み上げ湯葉。実は湯葉初体験。
映像ではホワイトチョコの板切れのようなものと、豆乳の上澄を掬うヤツしかみたことないが、これは汲み上げ済みのもの。
トロトロで掴みづらいが、口に含むと粘質系ではなく、くどさがなく、大豆の甘みが口いっぱいに広がり、香りが鼻に抜ける。ここのおろしたてのわさびと一緒に食べると、違う甘さのわさびの香りと重なって、多層的な香りが鼻を抜けて面白い。

布恒の生粉打ちと更科
その間にタイミングを見越して蕎麦を注文。ちびちびダラダラ酒と湯葉をつまむ。客の多くは食事利用だったので、店内はほぼ貸切状態となっていた。
予想通り、湯葉がなくなる頃にそば到着。生粉打ち(きこうち。10割)と更科にした。
どちらも以前食べているが、祝日でワサワサした中で食べたので、今ひとつ消化不良だったので、特に更科はリベンジの意味合いで。
更科はインパクトがない分、ここの濃いつゆに負けてしまう。いや、負けてはいないのだけど、どうにも混んでいる時に食べると、こちらも落ち着いて食べられないので、蕎麦の風味を感じ損ね、つゆのインパクトばかりが記憶に残るし、つくり手もお弟子総動員でゆとりのないそばが出てきている気がするのだ。数年前の大晦日のときにも感じたが、空いてるときの方が確実に美味しい。気のせいかもしれないけど、その“気”って特に蕎麦みたいな食べ物には影響が大きいんじゃなかろうかと。
で、この日は予想通り、バッチシの更科が来た。ポキポキと音さえ聞こえてきそうな食感の蕎麦。ちょびっとつゆをつけて、ズバババッと頂くと、スパイスのような甘さの中の辛さがピリッときく汁の味の後に、蕎麦粉のふんわりとした甘みがじわ〜っと広がってくる。そして微かに香りが鼻を抜ける。そばだけ食べても感じるが、この濃い汁にちょっとつけると、濃い分余計に蕎麦の甘さが感じられる。
反面生粉打ちはメリハリの世界。いわゆる田舎や挽きぐるみなどと比べると暴力的なまでの蕎麦粉の甘みや風味はなく、色見も白っぽいのかもしれないが、隣が更科なのでそんな気は微塵もなしない。しかしそこは生粉打ちだけあって、雑なよさではなく、いわゆる蕎麦の風わい以外の雑みのない、でもそれのみをもっての直球勝負の世界。ストレートに蕎麦粉って味わいと風味がガツンとくる。ズバババッと啜ると濃い汁とタッグで口の中にガーッと蕎麦の甘みと汁の辛みが押し寄せ、一気にはっきりとした蕎麦らしい風味が鼻を抜ける。布恒で食ってるなぁという感慨が一番感じられる瞬間。

ここは蕎麦を食べている途中に蕎麦湯が置かれる。
この蕎麦湯が実にいい臭いで、蕎麦食ってる感を助長させる。蕎麦を食べ終わって汁に割ると、蕎麦と汁の口中でのバランスとは異質の、甘みとスパイシーな辛みのコントラストが楽しめる。割るごとに、蕎麦湯が濃くなり、最後は、たとえが悪いがコンクリートみたいに灰色にドロッドロになる。ざらつきも出てきて、甘みも最高潮。この粘質系の甘みも〆に欠かせない。

もう腑抜けになって暖簾をくぐるわけだが、この蕎麦屋のフルコースともいうべき王道の(ベタな?)ダラダラ快楽を記すと、以上のように実に冗長なブログが出来上がる。入店から退店まで実に1時間半弱。・・・もっといられるぞ!
というわけで、腰抜けになるまで堪能させていただいましたと。ご馳走様、美味しゅうございました。

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