今回戸田を巡るにあたり、どうしても取り上げたい店があった。店というかリヤカーの焼き芋屋さんである。縁あってこの阿佐美やを知ることになったのだが、事前に公式サイトをみてみると、焼き芋の定番紅あずまの他、幾つか聞きなれない種類の芋を扱っているようだ。焼き芋自体食べるのが子供の時分以来だったので、とても楽しみに足取り軽く戸田公園駅そばのこどもの国へ向かった。
※冬は日が暮れるのが早く、写真を補正しても粒子が飛んでしまった。申し訳ない。

焼きいも 阿佐美や
最寄駅:戸田公園
料理:ポテト料理
採点:★★★★★
一人当たりの支払額(税込み):1,000円以下
用途:おやつ
公式サイト:http://048.jp/asamiya/k/


リヤカーはすぐに見つかったのだが、その佇まいに驚きを禁じえなかった。焼き芋屋台というと薪を積んで煙突から煙がモーモー立ち込めて♪焼き芋ぉ〜い〜しやぁぁぁき・いもぉぉぉ!とかって音の割れたスピーカーから聞こえるオヤジなサウンドのイメージしかないのだが、ここではそのサウンドはもちろん、♪聖子ちゃんも百恵ちゃんも三浦友和くんも食べてるお芋ですよ〜なんて嘘八百のオヤジギャグ(これ実話)なんて聞こえるはずもない。
リヤカーもバラックみたいなものではなく昭和レトロという言葉が似合うキッチュで可愛らしいもの。それもそのはず、リヤカーを引く店主いも子さん、そのうら若い佇まいをみればご納得いただけるだろう。
値段も驚きでS¥150・M¥250・L¥400。安っ! 大きめのものだと1つ平気で500円位するもんだという頭があったが、ここでは子供がお小遣いで買えるようにと価格しているとのこと。場所柄こどもが集まるところではあるのだが、明るいうちだとリヤカーの周りを子供が取り囲むほどだという。
さてそろそろ焼き芋をいただこうかと思った時、自称店長という小学生がやってきていも子さんに代わって自分に焼き芋を売ってくれた。ガキ大将的なキャラでそれまではいも子さんとタメ口でトークしていて地元密着してるなぁと関心していたが、いざ接客となるとちゃんとした敬語が使えてビックリした。地域の目が行き届いていて街ぐるみで子供を見守っている視点を感じて嬉しくなった。まぁ子供の服がブランドもんとかじゃなくて、イトーヨーカ堂で買った様な英字のトレーナーだってのが一番ホッとさせてくれたのだが(最近ブランドもん着てるガキばかり目に付いてたもんで)。
まずは定番の紅あずまMをいただいた。サイズは片手に余るほどでこの値段にしては十分すぎる。中身はぎっちり詰まっていて甘く瑞々しい。これは食べ手がある。食べてる間も親子連れの客を多く見かけたが、これ食べたら晩ご飯に響くだろうなぁという量である。
それにしても次から次に客が来る。こんなに繁盛している焼き芋屋は初めてみる。しかしこの値段ではそれでも大変だろう。この紅あずまだって大栄町の指定農家のものだというのだから。その点、客はわかっていて、常連があれこれ力になってくれているようだ。スタンプカードのハンコから、リヤカーにつけられた電工掲示パネルまで常連作だという!

と、どこからともなく歌が聞こえてきた。♪焼き芋・焼き芋・お腹がグー!! 駅方面から軽トラがやってきた。これも同じ阿佐美やのもので、機動力を活かし広範囲で営業をし、配達までこなすという。歌のお兄さんが歌うような元気なこの歌もつくってもらったものとのこと。これは旧来の焼き芋屋とはまったく違う印象が植えつけられることだろう。
軽トラで営業するお兄さんに話を窺うことが出来た。現在軽トラ含め複数人で営業していて、リヤカーは基本いもこさん+ヘルプで、軽トラは朝晩の2交替制でちょうどこの後交替するという。昼前から配達しながら方々回るには朝8時から仕込みをしなければならず(焼き芋が売れる状態になるまで準備に2時間は掛かるそうだ)、交替した後も夜遅くまで営業とのことだから重労働である。軽トラは石焼芋の設備で、リヤカーの方ははツボ焼きになっている。リヤカーは改造してツボが2つセットできるようにしたが、以前は1つしかなくやりくりに苦労したという。2つでも焼ける芋の数は限られ、連携をとって軽トラから補充している。
阿佐美やのマスコットキャラクターがあるのだが、その縫いぐるみが軽トラに掛けられていた。これもお客さんの手づくりだそうだ。

リヤカーに戻ると新たな品種の芋が補充されていた。安納もみじといって見た目にも5〜10cm程度と小さく違いが一目瞭然。1つ150円とのことで、2つ目にはちょうどいい量と早速頂いてみた。皮が薄く身に纏わりつくよう。色は黄色が強く、かなりキメが細かい。水気も多く、とにかく甘い。嫌なベタ〜っとした甘さではないのだが、ナチュラルな甘みが強烈に口中に広がる。食感もネットリとして濃いという言葉が似合う。サイトによると糖度が高い以外に、いわゆるサツマイモよりもベータカロテンが豊富なのだという。
自分の話で申し訳ない。仕事で珈琲豆を扱っているのだが、一口に珈琲豆といっても様々の種類がある。ブラジルとかブルーマウンテンといった原産国の違いではない。野菜や肉にしても高級ブランド物から畜産用のエサやお菓子やカップメンの材料になるものまであるように、未熟豆の含有した様々な品種の豆が同じ地区の豆として一緒くたにされるものから単一農園の単一品種で一定の大きさ以上の豆だけを選りすぐったものまで、使用されるシーンに合わせて当然価格差が生じる。いろんな農園のいろんな品種の豆が同じブラジルとして流通しているが、単一農園の単一品種だとその土地で育った豆のキャラクタというものがはっきりしてくる。どこのダレが作ってどの時期にどれだけ出来たものなのか、それによって味が変わってくるというのは、お米やお茶のように農作物であれば当然のこと。サツマイモだって当然そうであるはずなのには全くそういう目を向けていなかった自分に驚いてしまった。当たり前のことに気づいたときこそ衝撃は大きなものだ。
そういったサツマイモを如何に探してくるのか。いも子さんのお話を聞くことができた。焼き芋のシーズンである冬以外のオフシーズンには全国のサツマイモから探しているという。時には鹿児島は種子島に赴き、農家の農作業を手伝うなどしてサツマイモと直接ふれあい、納得のいくものだけを指定農家から取り寄せているのだ。そういたサツマイモを栽培する農家側も品質のよいものに対して思い入れが強く、いつもサツマイモ談義に熱が入るそうだ。
品質の良さを自分で判断するというのはそれなりのトレーニングが必要だろうし、人一倍の思い入れがないと無理だろう。よく有機栽培や無農薬というとこだわりという言葉に安易に結びつくが、本当に有機栽培されたものが食べてみて優れていると自ずからどこまで判断できるだろう。農薬の使用されているものから様々の産地や栽培方法のものまで比べてみて初めていいと思えるのであって、もしかしたら農薬使用のものの方がおいしいと感じるかもしれない。私見で申し訳ないが、なにか情報だけが飛び交ってイメージで無農薬=いいもののように扱われ、内実が伴っていない気がしてならないのだ。もちろん無農薬であるに越したことはないのだが、現状難しい農作物だってあるだろうし、つくり手の考え方の違いで、少量使用した方がいい場合だってあるだろう。大事なのは、現代の人間が口にできる環境で、可能な限り素材そのものの持つ味をなるべく自然な形で摂取できれば…それが自然な姿だろう。そういたものが多く広く流通するまでには、我々が判断できなければならないし、そうなるためにもいも子さんのような提供する側が発信して、より良いものを広めていく必要があるのだろう。最後にいもこさんからいただいた、より安全なものをこどもたちの口へ運びたいという言葉には、そういた思いが込められていると感じた。

他にもなると金時やまな娘といった品種もあるようで、いろいろと食べ比べてみたいものだ。衝撃的おいしさ!ごちそうさまでした〜

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