2019年01月03日

書評:「生きがいについて(神谷美恵子)」

 アメリカにやってきた時、スーツケース1つにバッグ1つという身軽な格好でやってきたが、そんな小さな荷物と一緒に持ってきた、たった一冊の本がある。「自省録」という本だ。古代ローマ皇帝であり、ストア派の哲学者でもあるマルクス・アウレリウスによって書かれた、皇帝として東奔西走する苦悩と自身の考えを綴った本だ。おそらく著者のことを、つい数年前に流行った「テルマエ・ロマエ」という漫画に出てきた真面目な少年として覚えている人もいるのではないだろうか。この「自省録」は自分にとっては事あるごとに読み返す、愛読書のひとつだ。2000年前に書かれた本でありながら、人が向き合うべき規範が記されている。

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 古代ギリシャ語という難解な言語で書かれている、素晴らしい本を今こうして私達が読むことができるのは、1人の訳者のおかげだ。その訳者の名前は神谷美恵子。この記事で紹介する「生きがいについて」の著者でもある。

 神谷美恵子氏は1914年生まれ、ハンセン病患者の施設で働く精神科医であった。若かりし頃から語学の天才であって、結核に罹り死の恐怖と戦っていた療養中に「死ぬまでに古典文学を読みたい」との思いから独学でイタリア語、ドイツ語、古代ギリシャ語などを習得し、ダンテの神曲や新約聖書などを原典で読んでいたらしい(参考)。このときの経験が「自省録」の翻訳にもつながる。

 そんな神谷美恵子氏は治療の甲斐あって、結核を克服して死の淵から生還する。このあたりの話は「生きがいについて」のあとがきでも触れられている。そんな死の淵から生還した経験が「生きがいについて」を執筆する契機になったらしい。

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2018年12月17日

コミュニケーションでつらい思いを感じるとき

 小さい頃から人とコミュニケーションをとるのが苦手だった。親もよく「一人遊びばかりしてた」と言っていた。それは今でも変わらないか。
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2018年09月02日

書評:「白と黒のとびら(川添愛)」

 オートマトン(参考)やチューリングマシン(参考)については、大学教養時代の頃、なぜか計算機科学に興味を持っていた時期に授業を履修し勉強したことがあったので、ある程度理解しているつもりではあったが、こんなにわかりやすく説明できるものなんだというのが本書を読んで、まず思ったことだった。学部生の当時にこの本があったら良かったのに、と思いつつ、難解なものをここまでわかりやすく説明する術は多くの人にとって学ぶべきところがあるようにも思った。

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2018年08月13日

映画評:「東京物語」

 東京物語のことを知ったのはいつだっただろう。父が若かりし頃、映画が好きで名画座などに通い、小津安二郎の映画を見まくっていたという逸話を聞いた頃だろうか。はてまた、ネットで時折話題になる名作映画ランキングで、この「東京物語」が上位に入るのを幾度となく見てからだろうか。名作と評価され、ずっと気にはなっていたものの、なぜか今まで一度も見ることのなかったのが、この「東京物語」だった。

東京物語
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2018年04月02日

[アニメ]「宇宙よりも遠い場所」

 地球上で行ってみたい場所の一つに南極がある。この話を周りにする度、一部の友人は「行っても何もないよ」と言ってくる。何もないのが良いんじゃないか、と思うんだけど、大概は言い返すこともなく、そうだねとしてやり過ごす。でも、生きているうちに一度は行ってみたいと思う。南極に行けるような分野の研究者になればよかったか、と時折考えるくらいだ。

 このアニメが始まる前だったか、日本テレビの番組の企画でお笑い芸人のイモトアヤコが南極に行って、南極大陸最高峰のヴィンソン・マシフに登山しているということを知り、南極への憧れを刺激されてもいた。ちょうどそんな折に始まったのが、このアニメ「宇宙よりも遠い場所」である。どうやら女子高生が南極に行くという話らしい。またどうせ女の子がキャッキャワイワイしているだけのアニメかな、と思いつつも、南極への興味に惹かれ、見始めた。


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