2008年11月30日

●最近のゲノムシーケンサー事情

 最近のゲノムシーケンサーの事情について、まとめてみたくなったので、備忘録的に書く。時間をかけてじっくりと書きたいのだけど、それほど時間がかけられないので、雑多な更新になるかもしれないけれど、許してください。



1. Pyrosequencing法

 まず、最初に書くべきなのは、ゲノムシーケンサーの先駆けとも言え、現在主流のemulsion PCRとPyrosequencingを組み合わせた方法だね。注目を集めたのは、1998年にScienceに掲載された以下の論文だと思う。宣伝だと思うけど、この方法はJames D . Watsonのゲノムを読むのにも使われた。


 → DNA SEQUENCING: A Sequencing Method Based on Real-Time Pyrophosphate -- Ronaghi et al. 281 (5375): 363 -- Science

 → Access : James Watson's genome sequenced at high speed : Nature News


 このタイプのゲノムシーケンサーの開発はおもに454 Life Sciencesという会社(現在はRocheの傘下)が行っていて、またこの会社は、Watsonの件のようになにかと積極的に研究に関わることでも知られてる。例えば、つい最近Natureに出たマンモスのゲノム解析論文もこの454 Life SciencesのPyrosequencing法が用いられてた。


 → Sequencing the nuclear genome of the extinct woolly mammoth : Abstract : Nature


 ゲノムシーケンサーが従来のsequencing手法と異なっているのは、PCRの部分です。DNAの配列解読を行う場合、単一の分子からシーケンスを読むことは難しいため、サンプルをPCRで増幅します(後述の通り、最近はその問題も解決しつつあるけど)。これは、従来のSanger法でもおなじみ。一度、DNA sequencingをやったことのある人ならば、分かるはず。

 これまでDNAをPCRで増やす場合、1つの試験管に1つのサンプルを分けなければならなかった。この場合、どうしても人出がボトルネックになってしまう。

 そこで、454 Life Sciencesは、エマルジョンPCRという方法を用いて、サンプルを分けることなくPCRすることを可能にしました。この方法では、まずポリスチレンの小さなビーズにDNA分子を1分子ずつ固定し、ビーズ上でPCRを行うことでビーズが目的断片だけに囲まれた構造になるようにしている。このときに疎水性溶液と混ぜるという方法を使うことで、反応区画を分離し、効率化を図っている。


 一方、シーケンスをチェックするためのPyrosequencing法は、従来の電気泳動法とは違い、相補鎖合成を段階的に行います。反応の副産物であるピロリン酸(PPi)をATP sulfurylaseによってATPに変え、ルシフェラーゼ存在下でルシフェリンと反応させ、化学発光を観測・定量する。発光の有無とその強度から配列情報を知り、配列決定をしていくという方法です。

 文章で説明しても、わかりにくいだろうから、以下の動画を見てください。分かりやすいよ。



 1塩基を読むのにかかるのは30秒から1分程度と、それほど時間がかかりません。

 ただ、この方法の難点は、読める配列の長さが短いこと。1サンプルごと最大でも300-500塩基程度、大抵の場合は100-200塩基しか読めないとされてます。ゲノムシーケンスの場合は短い配列を複数読み、アセンブルするという手法をとっている。普通のショットガンシーケンスと一緒だね。

 454 Life Sciencesが売り出しているGS FLXという機種では、約1億ヌクレオチドを7時間で読むらしく、次の機種では読める量がさらに5-10倍に跳ね上がるらしい。1回機械を動かすのにかかる費用が5000-7000ドル(Wikipediaに記載)なので、だいぶ手を出しやすくなってきたかな。


参考
 → Pyrosequencing - Wikipedia, the free encyclopedia


2. Solexa

 これは俺もそこまで詳しくないのだけど、最近よく見るようになってきた。

 Solexaではbridge PCRという方法を用いて、目的断片を増幅している。DNAを固定する断片としてビーズではなく、基盤を用いている。まず、ターゲットのDNAの5末端と3末端にアダプター配列を結合する。5末端側のアダプターは基盤と結合することができる。さらに基盤には3末端側のアダプターと相補的配列が結合してあり、基盤に結合した断片は橋渡ししたようになる。この状態でPCRを行うと、二本鎖DNAが生成されるけれど、この後加熱すると相補的な結合をした部分は外れ、二つのDNA鎖になる。

 これについても、説明は文章よりも図で見た方が圧倒的に分かりやすい。俺自身、書いててよくわからない。

ピクチャ 1



 → Solexaの分かりやすい図(PDF注意)


 シーケンスの方法は合成時解読(sequencing by synthesis)という方法を用いている。この方法は、4つの塩基に別々の蛍光標識をつけておいて、結合した塩基の場所を特定することで、配列を読んでいくという手法。具体的にどんな蛍光標識を使っているかはちょっと分からない。この点も上にリンクを貼ったPDFに詳しく書いてあるので、参照してください。ただし、この方法には欠点があって、読める配列が50-100塩基と短い。その分、アセンブラーの負担が大きくなってしまうので、実用化は難しいか?


3.AB SOLiD

 これは、ABIが売り出しているゲノムシーケンサーだけど、上述の454 Life Sciencesが使用しているエマルジョンPCRを用いて目的配列を増幅し、さらにligationによってsequenceを読むという手法を用いているが、詳しい原理はフォローできていない。

 他のゲノムシーケンサーに比べて、安価なのが特徴だけど、読める配列が非常に短く(35bp程度)、あまり普及していない(ような気がする)。電気泳動タイプのシーケンサーではABIが業界を握ったが、次世代ゲノムシーケンサーは難しかったか。


 → SOLiD™ System Sequencing



4.HeliScope

 Helicos社が売り出しているHeliScopeでは、true single molecule sequencing(tSMS)法という上述のSolexaと同じSequence by Synthesis法によるシーケンス決定法を用いた手法を使用しているけど、この手法がSolexaと大きく異なる点は、シーケンス前のDNAの増幅がいらないこと。その名の通り、1分子からのsequencingになる。


 論文は、今年4月にScienceに掲載された。


Single-Molecule DNA Sequencing of a Viral Genome -- Harris et al. 320 (5872): 106 -- Science


 詳しい原理については、以下の動画が分かりやすい。




 この手法だと大量の断片を同時に処理できるのだけど、たった25塩基を読むのに100回も反応させなければいけない。精度はPyrosequencingよりはるかに良いけれど、その一方で効率が悪いので、大量のデータを取得しないといけない。したがって、配列のアセンブルでの負担が大きくなってしまうのが欠点。難しいところだね。


参考
 → True Single Molecule Sequencing : Helicos BioSciences



 なお、上述の1-4については、Nature Biotechnologyに良いまとめ記事が掲載されているので、リンクを貼っておきます。


 → Next-generation DNA sequencing : Article : Nature Biotechnology



5.SMRT法

 今年の1月に発表された目玉が飛び出るぐらい驚いた衝撃的な方法。なんと、数時間で1000億塩基を読むというありえないハイスループットさ。幻影随想の黒影さんも取り上げていた。


 → Selective aluminum passivation for targeted immobilization of single DNA polymerase molecules in zero-mode waveguide nanostructures ? PNAS

 → 幻影随想: 1時間で1000億塩基解読可能な次世代シーケンサー


 Sequence手法は、前項のHelicosと同じsequence by synthesis法なのだけど、違うのは基盤に固定するのが、DNAではなくポリメラーゼの方だということ。以下のPDFに詳しい解説が載っている。


 → Pacific BiosciencesによるSMRTの解説(PDF注意)


 この方法では、まず4つの塩基(ATGC)に蛍光標識を付加しておく。これらの蛍光標識がポリメラーゼによる伸長反応でリン酸基とともに切断されると、蛍光が観察されるようになる。この蛍光を観察することで配列を決定していく。しかも、ポリメラーゼを基盤に固定しているので、蛍光が観察される部分は動かないので連続した、しかもポリメラーゼによる伸長反応という安定した反応を観察することができる。

 しかし、この方法では観測するときに隣り合ったポリメラーゼの蛍光が入らないようにしなくてはいけない。そこで、ポリメラーゼやDNA鎖が一分子しか入らない直径数十nm,容量10^-21リットルのzero-mode waveguides (ZMW)を作成し、実現したらしい。詳しいことはよくわからないが、何やらすごいということだけは分かる。


 この手法を用いると、一度に約1000塩基×1億サンプルというとてつもない量が読めるらしい。1000億塩基となるとデータ量が半端ないことになるな。

 このSMRT法を用いたシーケンサーは2013年の製品実用化に向けて、現在開発中らしい。今回ゲノムシーケンサーを総括的に調べてみたが、おそらくSMRT法が次世代ゲノムシーケンサーの決定版ではないかなと考えている。製品版を見て、費用がどれぐらいになるかを検討しないとわからないが、このシーケンサーが生命科学研究の世界を大きく変えるのだろうと考えている。


 すごいぞ、ゲノムシーケンサー!!!

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