今朝、Media Patrol Japanのサイトに行ったら、大変なものを発見した。TBSの津波情報で表示されていた日本の地図に対馬が入っていなかったらしい!!!
http://rocketnews24.com/?page_id=26233
昨日は2チャンネルは大騒ぎだったみたいだし、このことを取り上げるブログも、すでにちらほら見られるようだ。これから2,3日は、このネタで盛り上がるのだろう。まあTBSの不祥事は珍しいことではない。特にネット上ではある意味常識の域に入っているため、今更という感じなのだが、これは、とても重要な問題であるし、これを気に地図や領土について議論することはいいことだと思っている。特に軽視されがちな地図というものの暴力性や政治性というものは、これを機に議論されていくべきだろうと思う。

さて、この問題は実は笑い事ではない。そもそも地図というのは領土を示すもので、国家の主権にかかわる問題である。さらに地図に潜む政治性なども地理学では議論されてきた。例えば一番有名な話としては、次のような事例が地理学の授業では語られる。世界地図としてよく使われるメルカトル図法の地図は誰もが一度は目にしたことがあると思う。横長の長方形の枠の中に世界の国々がきれいに納まっている、旅行会社などによく貼ってある、あの世界地図だ。実は、この地図は、赤道直下の国々の大きさが実際よりも小さく見え、北極(または南極)に行くほど実際よりも大きく見えるという欠陥を持っている。なんでこのような事が起きるかというと、もともと球体の地球上を平面状に広げるため、どこかに何らかの歪みが出てしまう。それは仕方のないことなのだが、メルカトル図法では赤道直下の面積と極付近の面積が等しくない。だから、メルカトル図法では南極は馬鹿でかい大陸になってしまっているし、アイスランドなども極めて大きく描かれてしまっている。このような地図に慣れ親しんだ子供たちは、おそらく赤道直下の国々は北部に集中する先進国よりも小さい国だと認識していくだろう。そうして、無意識のうちに北部の先進国の国々の優越性を受け入れてしまうことになる。そして、そのような優越性を正当化してしまうことに地図が利用されているということになる。つまり南北問題の一端は、地図から送られてくるメッセージ性に起因していると考えられる。もちろん、これは故意に行ってきたのではない。ただ見やすい地図を製作する過程で作られた地図が、たまたま赤道直下の国々の大きさを実際よりも小さく描くことになってしまったのである。作為はなかったが、このような影響が議論されるようになってきたのだ。以前は、その影響について無知だっただけだが、現在では、知らなかったでは済まされない。そして、この問題はメルカトル図法だけの問題ではないと思う。地図の問題は、その一見客観的な点にある。客観的に見えてしまうから、むしろ問題が見えづらくなる。地図とは地図上のすべての情報が客観的で正確な情報ではなく、実は、ある程度の歪みをかかえたものである。この点に関しては、地理学者など一部の専門家を除けばあまり認知されていないだろう。漠然と客観的情報を与えられていると信じてしまう。そこに地図の暴力性が潜んでいるのである。つまり地図というものは、客観性を装って、政治的に利用されることが多々あるということだ。領土問題やそれを記述した地図というのは、とかく軽視されがちである。特に領土拡張のための侵略戦争などが表面上はなくなった現代、人命にかかわらない地図上の諍いなどは、問題ではないと思う人も多いかもしれない。しかし、それは違うのだ。

さて、今回のTBSのような事例は、このような、さりげない、もしくは無意識的に送られてくる政治的メッセージというよりも、もっと悪質な作為を感じる。例えば日本の地図が映し出されて沖縄がなかったら、沖縄の人たちはどのような反応をするだろうか?沖縄基地問題のためにがんばっている進歩的知識人の人たちはどのような印象を持つのだろう。もしも北海道が抜けていたら、その地図に違和感を覚えないだろうか?アイヌの人たちは、怒りを感じないだろうか?それと同じことである。島が大きいとか小さいというレベルの話ではない。対馬の人たちにとってはかけがえのない島なのである。その島自体を否定したともとれる行為に怒りを覚えるのはごく自然な感情だろう。そして自分の島ではなくても、日本人として怒りの声をあげていくべきだと思う。それは自分の土地が地図上から抹殺されたのと同じ苦しみを、他の日本人が受けているのだから。

それでは、この対馬が抜け落ちている地図は果たして単なるミスだったのか、それとも故意にしたことなのかということが問題になってくると思う。もちろん、ミスであったとしても、重大な問題であるし、すぐにでも謝罪すべき事案であると思うのだが、デジタル地図の作成にも使われるコンピューター・ソフトの地理情報システム(GIS)を使ったことのある人だったらすぐにわかると思うが、これは単なるミスとは到底思えない。

この地図を見る限り、データには日本の都道府県の境界線だけをトレースしたポリゴンデータが使われていたと思われる。津波の被害が予想される地域の境界線を、おそらくGISで計算処理し(海抜の低い地域の海岸線を選択したか、警戒警報が発令されている都道府県の海岸線を選択したかなどの操作を加えただけのごく単純な計算処理だけだと思われるが。。。)、その計算結果として得られた被害が予想される境界線を日本の都道府県の境界線が表された地図のレイヤーの上に重ねてつくられたのがテレビに表示された地図ということになる。まあ操作的には大した地図ではなくて、GISの基礎を1時間程度学んだぐらいの素人さんレベルですぐに作れる初歩的な地図だ。

さて、ここで問題なのは、なぜ対馬が抜けていたかということだ。まず操作上のミスという線を、とりあえず考えてみたい。使われた地図のポリゴンデータがどのようになっていたのかはわからないが、都道府県の境界線を表すデータというのは、普通、県単位でしか、表示したり消したりは出来ないと思う。ただ北海道の内部にさらに境界線が入っていることから、このポリゴンデータは市町村レベルのデータも入っているのかもしれない。通常、そのようなデータは都道府県という大きなまとまりで整理されているはずなので、特別な操作をしなければ都道府県の中の一部地域の境界線だけを間違って表示していなかったというミスは考えられないと思う。もちろん、都道府県レイヤーの下部に入っているサブレイヤーを開いて、対馬だけ表示をオフにするという操作は可能かもしれない。ただ、そのような操作を、ついうっかりとしてしまうというのは考えづらい。大量のデータを入力して高度な空間分析などがGISではよくある。そのような時は確かにミスも多発する。しかしながら、このTBSの地図を作成するために必要な全工程は極端に少ないと思われる。素人同然のGISユーザーでも、この程度の地図は10分もあれば作れてしまうだろう。さっきも行ったように使用するデータは多くても2つである。酒を飲みながら操作していても、ミスなど生じようがないのである。

また、もし万が一ミスをしてしまって、対馬を表示しないように設定してしまっていたとしても、完成された地図をアウトプットする前に、普通は出来上がった地図を何度も確認するはずだ。それがプロの仕事である。大学のレポートですら、表示されるべき部分が表示されていなかったら、それだけでアウト。0点だ。気が付かなかったなどという言い訳はできない。その最終的な部分をチェックして、初めて地図を完成したといえるのである。さっきの例のように北海道や沖縄が抜け落ちていたら、すぐに気が付くだろう。もちろん、ごく小さな島(例えば沖縄諸島のドットに近い島のひとつ)が間違って抜け落ちていたら、確かに気が付かないかもしれない。まあ、そのような小さな島だけを表示しないようにする操作を、気づかずに間違えてするということは、ほとんどありえないのだが、もしも誰かの誤操作で抜け落ちてしまったら、指摘されるまで、それに気が付かないということはあり得るかもしれない。しかし対馬は比較的大きな島であり、しかも地図から壱岐・対馬をとってしまうと九州の上に何もない空間が現れえてしまうから、気づかないふりをしても、ほとんど無理である。

なお、参考までに言っておくと、GISの操作画面は、テレビに映し出されているような小さな地図ではない。画像作成ソフトのように拡大縮小もできるし、通常はコンピュータースクリーンの画面をすべて使って作業しているはずだ。テレビ画面の小さな地図でさえ、多くの人が違和感を持つほどの間違いを、画面全体に地図を表示して操作をしていた専門家が気が付かないはずがない。つまりミスだったという言い訳や、気が付かなかったという言い訳は成り立たないのだ。

なお、もしも万が一何かの手違いで、対馬の境界線の表示をオフにしてしまっていたとしても、修正はごく簡単である。表示をオンにするだけなのだ。どんな素人でも30秒もあればすぐに修正できたはずだ。それを、何らかのデータ形式にして出力し、テレビ画面に重ね合わせるだけなのだから、クレームが来ても10分もあればすぐに修正できたはずだ。ネットを見ていると、何人かの人たちがTBSに電凸したようだ。もしそうならTBSはクレームを受けても地図を修正しなかったことになる。これはどういうことなのか。私にはその真意はわからないが、TBSは対馬をどうしても表示したくなかった理由でもあったのだろうか?

TBSがどのような意図をもってこのような行為にでたのかはわからない。ただ対馬はれっきとした日本領であるのだが、最近はことあるごとに国会で取り上げられるほど、対馬の事例が注目されはじめている。対馬は韓国領だというくだらないことをいう人間まで現れ始めているようだ。このような言説は取るに足らない戯言(例えばこの中央日報の記事とか)であるのだが、それでも日本としては、そのような寝言に対しても毅然とした態度を示していくべきだろう。そのような矢先に、このような冗談を通り越して日本人としては怒りさえ覚えるような地図をずっと放映し続けたTBSの罪は重い。クレームを受けても修正しなかったということは、十分作為的であったと考えていいだろう。

(訂正 イザの記事などを見ていたら、TBSはクレームが来た後、一部地域の放送では地図を差し替えたようである。ただし、クレームが来る以前に地図を作成している時点で、普通の人だったら気が付くはずである。少なくともこの地図の作成者は故意に対馬を表示しないようにしたとしか考えられない)