アメリカから発信! HRMトーク 人事管理ブログ

アメリカの人事管理に関する最新の話題を現地オレゴン州からお届けします


2019610


アメリカは6月ともなれば、高校も大学も卒業シーズンを向かえ、3ヶ月あまりにわたる長い夏休みがスタートします。その期間、大学のサマースクールに通って単位を取得する学生もいますが、3ヶ月間の休みを日本で言うアルバイトで過ごす学生がどちらかというと主流となります。その中には大学の専攻過程や卒業するための単位取得要件として実務経験を課せられる場合があり、その要件を満たすために「インターン」として企業の中で実地で業務を体験するというケースが出てまいります。日本でも最近は、このインターン制度は企業側でも大分認識されるようになってまいりました。

 

日系企業の間でも大学が夏休みになる6月の今頃からこのインターンを募集して、業務に就かせようとする動きが垣間見られるようです。しかしながら、日系企業がインターンを夏休みの期間だけでもと考えて採用する際に、気を付けていただきたい重要なポイントが2つほどありますので、今回はインターン採用について、以下のように皆様にシェアさせていただきたいと存じます。

 

まず、日系企業がインターンを望まれる学生として多くの場合、日本人留学生を念頭におかれているケースが多いのではないでしょうか。その場合、当然ながら留学生はF-1と呼ばれる留学生ビザでアメリカに入国し、アメリカの教育機関で学業に励んでいるわけです。つまり、F-1ビザは就労ビザではなく、あくまでもアメリカで勉強するために発行されている就学のためのビザだということです。ですので、F-1ビザでは基本的にアメリカで就労することはできません。ただし、例外があり、F-1ビザのスポンサー先である大学がCurriculum Practical TrainingCPT) という許可書を学生に発行することで、はじめてその学生は大学以外の場所での限定的な就労が可能となります。ですので、まずは応募してきた学生がこのCPTを持っているのかどうかを確認することが先決で、大学からのCRTがなければ採用の選考を進めるべきではありません。

 

 

そして2つ目のポイントとして、インターンという表現からくる一般常識上における誤解に基づくものなのですが、インターンだから無給で働いてもらって構わないだろうという間違った先入観がそこにはあります。たとえば、ちょうど夏場にかけてスタッフを急遽募集しなければならない、あるいは人が急に辞めるのでその人の穴埋めを早急にしなければならないという状況の中で、留学生をインターンで採用することにした、インターンであるから無給で3ヶ月間、会社業務の実地体験をしてもらうというような場面です。ここで問題となるのは、すでに会社で給与を支払って雇っている従業員の肩代わりとして無給でインターンを雇うということは基本的にしてはならないということです。そしてこのようなケースでインターンという言葉遣いをすること自体誤解を生み出しやすいので、あえてインターンという言葉は使うべきではないということを申し上げたいと存じます。

 

 

では何と呼んだらよいのかといいますと、やはり(職務期限限定の)パートタイム従業員の募集という呼称が適切です。もし、夏の間だけではない雇用で、週40時間の勤務であれば、それは立派な(職務期間無期限による)フルタイムポジションだということになります。留学生や学生を使って夏場だけの短期就業はやはりパートタイムであり、必ずしもインターンではないということです。ですがアメリカでもインターンとして募集をかけているアメリカ企業は確かに存在します。その場合、企業はあえて業務のための実務トレーニングを提供するために学生をインターンとして実地で業務を経験させてあげようという明確な意図がそこには存在しています。夏場の人手不足を解消するためにインターンを採用するということでは決してないということです。

 

会社としても学生に実務トレーニングを提供するためにはそれなりに人手もかかりますし、時間もかかります。会社の本来の業務以外にそのような学生のトレーニングに手を貸すのは、会社にとって手間のかかる、むしろ会社の生産性や収益に相反する行為に映るかもしれません。つまり会社は直接的で即効性のある実利としての何がしかの見返りを求めてインターンの募集や採用をかけるべきではないということです。ですが、会社はインターンで採用した学生の中に非常に優秀な人材でいて、卒業後にその人はインターンでを体験した同じ会社に入社を希望してくるかもしれません。そういう意味では会社側にとりましても、中長期的に見れば決して見返りゼロというわけでもないのです。

 

ですので、日系企業として明確な意図を持ってインターンの募集や採用をかけるのでしたら大いに結構なことなのですが、現在あるポジションを無給でインターンに肩代わりしてもらおうという意向なのであれば、即刻そのお考えは正していただかなければなりません。アメリカの長い夏休み期間中、短期就労を希望する学生は沢山いますし、従業員の休暇シーズンにあたる夏場の時期に代替要員としての切実な会社側ニーズもあるわけですが、ことインターンという言葉遣い、そしてその意図や目的には十分な配慮や注意が必要だということになります。それを履き違えて学生にタダ働きを強いて会社があとから訴えられたという事例は過去いくつも起きています。”Free Lunch” (タダ飯)というのは、雇用においては基本的にありえないという認識が会社側では欠かせない所以です。

 

HRMTalk

 

Ken Sakai

President & CEO

Pacific Dreams, Inc.

kenfsakai@pacificdreams.org

www.pacificdreams.org


日本では見つかれば即刻逮捕されるという違法薬物の大麻、別名マリファナ、英語での俗称はWeedPotあるいはGrassなど多数。日本では大麻取締法という厳格な国の法律があるからで、アメリカでも連邦法上では非合法でやはり見つかれば逮捕の対象になります。ですが、1996年にカリフォルニア州で医療用(Medical Use)マリファナが解禁され、今年現在(20194月)33の州で医療用としてのマリファナ使用が合法化されています。さらに2014年からコロラド州とワシントン州が州レベルで娯楽用(Recreational Use)マリファナの解禁を州民投票のよって可決され、事実上マリファナは解禁状態となりました。州レベルで解禁されている州は毎年増え続け、現在は10州プラスワシントンDCとなっています。今後、ニューヨーク、ニュージャージー、コネティカット、デラウェア、そしてイリノイの各州でも年内に娯楽用マリファナの使用が合法化されることがほぼ決まっています。

 

このようにアメリカの各州は、マリファナ合法化に完全にシフトをしてきており、米ギャラップ社が行った最近の全米世論調査でもアメリカ国民の61%はマリファナ合法化を支持しているという数字が出ています。隣国のカナダでは昨年10月に国としてマリファナを合法化する法律が制定されました。それでは、会社としてそこで働く従業員がマリファナを娯楽のために吸うことに対して、もはや何の介入もできなくなるのでしょうか。さすがに答えとしてはノーで、業種や職種によっては他の法律のもとに会社が介入をして、マリファナの使用を禁止することができます。たとえば運送業や製造業など、自動車や機械を操縦する職務にある従業員に対しては、マリファナの使用を一切認めないという会社ポリシーを課すことができます。

 

それらのポリシーは皆さんの会社にある従業員ハンドブックの中にマリファナを含む薬物禁止ポリシーという項目の中で通常記述が書かれてあるのではないでしょうか。もしそのような薬物に関する記述がハンドブックに書かれていないようでしたら、やはり次回のハンドブック改定時には、薬物禁止ポリシーをあらたに付け加えるべきでしょう。ここで注意するべきことは、もはやマリファナはいくつかの州レベルにおいては違法薬物ではないということです。違法ではないものを禁止するということですから、会社としてはそれなりの覚悟と従業員が納得できる理由とが必要であると思います。職場での事故をなくし、従業員の安全を守るというのは誰もが納得できる正当な理由です。マリファナ使用者は、非使用者と比べて業務上での事故や怪我による労災(Workers’Comp)申請率が5倍も高いという数字が出ています。また遅刻率は3倍、欠勤率も2.5倍高いという数字も出されています。

 

今年合法化をするであろうニューヨーク市では、雇用前におけるドラッグテストの検査禁止条例を賛成多数で市議会は可決したところです。デブラシオ市長も条例へ署名することをすでに表明していますので、市長署名後1年にこの検査禁止条例は施行になることはほぼ間違いありません。ですが、この条例ができるまでは雇用前のドラッグテストは依然合法ですので、続けるべきであり、もしまだテストをやっていないのであれば、新たに開始してもよいとさえ考えます。ドラッグテストをやっている会社はドラッグ使用者からは雇用上で敬遠される傾向があるからです。

 

マリファナのドラッグテストは通常尿検査で行われ、会社で指定した検査機関(ラボ)に応募者が直接行ってもらって、そこで検査を受けてもらいます。検査結果は翌日には出ます。検査費用は比較的安価で検査結果も精度が高く信頼できるのですが、中には尿検査中に中和剤を尿に混ぜて検査を改ざんする受験者もいて、最近ではコストはまだ高いのですが、唾液によるテストも普及するようになりました。また、会社のドラッグテストポリシーの規定に従って、就業後における抜き打ち検査も行うことができます。娯楽用マリファナの解禁にともなって、職場における事故とそれによる労災申請は間違いなく増えるであろうと思われます。またマリファナ使用に関する職場での訴訟もおそらく今後増えることが予想されます。


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Ken Sakai
President & CEO
Pacific Dreams, Inc.
kenfsakai@pacificdreams.org


201948

 

アメリカで行う採用面接でよく耳にすることは、例えば年齢を聞いてはいけない、結婚や子供の有無を尋ねてはいけないということはアメリカにある日系企業で働く日本人駐在員や管理職クラスの方々はもうすでに十分わきまえているものだと察します。ところが、面接で尋ねる質問内容はそう単純なことでもなく、年齢を聞かなければそれですむ、あるいは結婚や家族のことも触れていなければ大丈夫だということだけでは必ずしもないところがあり、どこまでが尋ねてよいことなのかどうかという線引きをするのは実はそう簡単ではないところがあります。そこで今回の記事では、もう少し深堀りをしたところでの採用面接に関する注意点を3つほど挙げ、採用上での要諦としてみたいと思います。

 

1.      年齢に関する質問

 

先にも書いたとおり、年齢を直接面接で尋ねる面接官の方はまずいないものと想定します。ただ、次のような面接官からの言葉が面接中に発せられたらどうでしょうか。「弊社は現在組織の若返りを目指して、新たに人材の募集に踏み切ったところです。」

 

もしこのような言葉を聞いたのなら、「この会社はある年齢に達すると雇用が打ち切られ、中高年層は解雇され、より若い層の採用に走る会社なのではないのか」といった憶測や偏見を生むリスクが出てまいります。中には、そのような発言を年齢差別だとみなして、州や市の労働局にクレームを出す応募者の人が出てくるかもしれません。クレームがあれば、州または市の労働局は何らかの調査に乗り出してきます。会社にとっては誠に面倒で厄介な事態にもつながりかねません。

 

ということで、年齢に関して間接的にであってもそれを示唆するような質問および発言は面接では、厳に慎まなければなりません。「組織の若返り」などという言い方は日本では「あり」なのかも知れませんが、ここアメリカでは禁句であるということを肝に銘じてください。

 
 

2.      健康に関する質問

 

恐らく日本では採用面接で「あなたは健康ですか?」という質問は、一般的に許容されている質問ではないかと思われます。しかし、アメリカでは一部の例外を除けば、やはり聞くべき質問ではありません。健康でなければ職務を全うできないのであるから、尋ねるのは当然であると考えている方がいたら、それはそのような考え方はアメリカでは一度リセットしていただく必要があります。

なぜなら、個人の健康状態というのは、まぎれもなく個人情報であり、そこには法的にも堅固なプロテクションがかけられています。ですので、現在健康であるかどうかという質問も含めて、過去に大病を患ったことがあるかとか、持病を持っていないかとか、入院や手術をしたことがなかったかというのもすべて面接ではご法度の質問になります。日本の感覚でいくと、ついこのような健康に関する質問をしてしまいがちですが、いずれもアメリカでは個人情報に深く関係する法律で守られた領域に立ち入る質問になりますので、細心の注意が必要です。

 

3.      Employment At-Will

 

最後に取り上げたいのは、アメリカの雇用における大原則となっているEmployment At-Will についてです。この原則は日本やヨーロッパにはない、アメリカ独特のものでCommonLaw (判例法)と呼ばれる英米法で法的にも認められている原則となっています。あえて日本語で意訳を行うと、「離職自由・解雇自由の原則」となります。従業員は会社をいつでも退職することができるし、同様に会社も従業員をいつでも解雇することができる雇用形態」であるということを意味しています。このEmploymentAt-Will の原則に従ってアメリカでは採用するに際していちいち雇用契約書を本人との間で結ぶということは一般的には行っていません。つまり、雇用契約書の存在しない、雇用期間を定めない雇用関係に入るというのががまさにEmploymentAt-Will の真意だといえます。

そのために採用面接の中で、「弊社は長期にわたって働いてくれる人材を求めています。あなたは長期間、弊社で働くことができますか?」というような質問はアメリカのこのEmploymentAt-Will の原則から鑑みるとやはり適切な質問ではありません。もしこのような質問をして、「はい、御社で長期間働くつもりです」と答えた応募者を採用して、その後、しばらくしてアメリカでの会社経営が芳しくなくなり、日本の本社決定でアメリカ現地法人を閉鎖するということにでもなった場合、会社は面接で長期雇用を約束してくれていたではないかといって、当人からクレームや訴訟につながる恐れが出てくることが十分考えられるのです。

もちろん、どの会社であっても、それはアメリカも日本もよい人材にはいつまでも長く働いてもらいたいし、その意味で採用時に長期雇用を言及したいのはやまやまなのですが、アメリカのEmploymentAt-Will の原則には残念ながらそぐわないというのが現実です。日本ではまったく問題にもならないまっとうな質問なのですが、アメリカでは尋ねるべき質問ではないということになります。

 

以上、日系企業の採用時の現場で実際に起こった今までの事例などからもヒントを得て今回の記事にしてみました。アメリカで尋ねてはならない質問の多くは、日本とアメリカとの間で存在する、応募者を含む従業員への法的保護の違いがそこには大きく横たわっているということを採用上での要諦として、社内で採用面接をする方々へ十分な注意を喚起していただければと幸甚です。


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Ken Sakai
President & CEO
Pacific Dreams, Inc.
kenfsakai@pacificdreams.org

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