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June 01, 2013

『言の葉の庭』 2013年本36目 フォーラム仙台5

雷神の 少し響みて さし曇り 雨も降らぬか 君を留めむ

(なるかみの すこしとよみて さしくもり あめもふらぬか きみをとどめん)

雷神の 少し響みて 降らずとも われは留らん 妹し留めば

(なるかみの すこしとよみて ふらずとも われはとどらん いもしとどめば)

『言の葉の庭』

新海誠監督の最新作です。
待ちに待ちました。
やはり新海誠監督は短編に限りますね。

デビュー作の『ほしのこえ』は、所謂「セカイ系」(女子高生又は女子中学生が世界の運命、命運を握っていて、彼女に思いを寄せるありふれた平凡な男子との恋愛話)の走りでしたが、設定やキャラクターが奇をてらわずに等身大の、身の丈にあった日常を描いていました。
一言で云うなら「切ない」。これに尽きる。

2作目の『雲の向こう、約束の場所』は長編で、現実世界とは微妙に違う日本を舞台にしていました(北海道がソビエトに占領されて、日本が分断国家になっている)。
世界設定が独特なせいか、話やキャラクターもそれに引きずられていました。
映画としては良かったのですが、新海誠監督の新たな一面なのか? と正直迷いました。

3作目は連作短編の『秒速5センチメートル』
号泣して涙が止まらなかった…「切ない」どころじゃなくて、切なさ炸裂。
最後の最後で、女子の方は大人の女性になってお嫁に行くのに、男子の方が(悪く云えば)未だに引きずってる未練がましさに「男女の差」を感じたりと、とても素晴らしい作品です。

4作目は長編で『星を追う子供』
何処をどう見てもジ○リにしか見えませんでした。

トータルで云うと、

1作目 短編○
2作目 長編△
3作目 短編◎
4作目 長編×

で、順番で云うと今回の5作目は短編で○なのですが、◎でした。

冒頭の和歌は万葉集で、万葉仮名が今回の作品の雰囲気に非常に大きく影響しています。
万葉集に収められている和歌の多くは「恋の歌」で、冒頭の和歌は作中で大人の女性が男子高校生へ投げかける歌です。
二首一対の歌で、最初の歌は女性から男性に、

「雷が鳴って、雲が広がり、雨が降ってくれたら、貴方をここに留められるのに」

と、「離れたくない。ここに居て」と云う思いをおくゆかしく歌った歌です。

この歌を受けた男性から女性への返しの歌が、

「雷が鳴って、雨が降らなくても、ここに留まるよ。貴女が引き留めるなら」

と、「素直になりなよ」とこれまた少し捻った返しです。

こんな「素直にならない」「素直に云わない」やり取りで、昔の日本の男女は恋を語っていた訳で、それこそ、

「忍ぶれど、色にでりけり我が恋は。物や思うと人の問うまで」

な世界の話です。
更に、万葉仮名からも新海誠監督はインスピレーションを受けたらしく、万葉の時代は「あて字」を多用していて「恋」を「孤悲/こい」と書いていた時代。
同じ言葉遊びでも現代の、

「恋(来い)って言うから、愛(会い)に来た」

とは違う時代の感覚が溢れていました。

そう、大江千里は「おおえせんり」ではなく、「おおえのちさと」なのです。

てな冗談はおいといて、「雷神/なるかみ」の二首一対の歌と、「孤悲/こい」の話です。

奔放な母のせいで年よりも大人びた高校生が主人公。
靴職人になろうと独学で勉強を続け、雨の日は公園で学校をサボる。
ある日も雨が降り、公園でサボっていると昼からビールをあおる女性が。
少年の制服を見て、
「雷神の、少し響みて、 さし曇り。 雨も降らぬか、君を留めむ」
と歌い…

いきなりの和歌には戸惑いましたが、街の描写の細かさは流石です。

リアルとしか云いようのない緻密な描写。
新宿がメインなのですが、新宿がそのままに再現されていました。
雨が重要な要素なだけあって、雨の描写も細かく、相変わらずの色使いの鮮やかさは文字通り新海誠カラーです。

話の方も相変わらず切なさ炸裂で、「恋」ではなく、「孤悲/こい」そのものなのですが、最後の最後にお互いがはっきりと気持ちをぶつけたのは若さを感じました。
『秒速5センチメートル』と比べると、男女の年齢差があるんだけれど、そのせいでしょうか?

『言の葉の庭』の感想で『秒速5センチメートル』と比べるのはよろしくないのですが、「男女の年齢差」が上手く出ていたと思います。

万葉の時代は「恋人」は「妹/いも」と書きました。
「恋人が妹」とは色んな意味で大変ですが、「愛しい年下の女性」なわけで、それが『言の葉の庭』では女性の方が年上なのが万葉の時代との違い、「恋」が「孤悲/こい」ではなく、「恋(来い)って言うから、愛(会い)に来た」の時代の話なのかな?
と個人的に思いました。

切なさに溢れているし、やるせなさも感じるんだけれど、最後の最後に小さいけれども「希望」を感じたのが、『言の葉の庭』だと思う。

今年のベスト確定です。


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ken_taro at 16:21│Comments(2)TrackBack(1)mixiチェック 2013年劇場観賞 

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1. 『言の葉の庭』  [ 映画大陸 ]   February 15, 2014 15:14
 僕は晴れ渡った日よりも、どちらかというと雨の日の方が好き。  多くの荷物を抱えて仕事に出かけようと思った瞬間、雨に降られて「鬱陶しいな」と思う事は確かにあります。し ...

この記事へのコメント

1. Posted by 蔵六   February 15, 2014 15:28
 こんにちは!

 新海監督の映画はこれが初めてでした。健太郎さんは全作ご覧になっているのですね。なるほど、短編が良いですか。僕はこれと『秒速』の二本を借りて併せて観ました。偶然、短編二本。チョイスとしては正しかったのかもしれませんね。
 DVDに収録されていた予告編集を見ても、僕が好きそうな日本を上手くチョイスできたなって感じでしたし。

「恋」を「孤悲」と書くって、なんとなく雰囲気が良いですね。一人でいると悲しくなる。それが恋なのでしょうか?
 確かにこの映画で描かれている二人の関係もそんな感じでしたね。だからこそ、雨を待つ。
 それぞれが自分の足で自分の道を歩いていく終わり方も良いと思いました。
2. Posted by 健太郎   February 15, 2014 23:34
5 こんばんは。
お久しぶりです。

蔵六さん
初新海監督でこれを選ぶなんて流石ですね。
やはり新海監督は短編に限ります。

自然が画として美しいんだけど、今回は男女の切なさが和歌で表わされていて、切なさ炸裂ですね。

大好きです。

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