日本代表をワールドカップベスト16へ導いた名将「岡田監督」について書かれた本。とはいってもマスコミの変わりようはひどいものである。ワールドカップ前は日本代表の監督を変えろ変えろとうるさかったが、最近は岡田監督を持ち上げる記事が多くなっている。とはいっても私も日本代表がベスト16まで進むとは思っていなかったが。
この本は岡田監督がどのようにチーム作りをしているのか、どのように選手と接しているのかが書かれた本である。スポーツ心理学の先生が書いているものなので、岡田監督自身が書いているわけではない。しかしスポーツのコーチをしている人、会社の上司、学校や塾の先生など幅広い人に役立つ内容となっている。
私が一番岡田監督の言葉で印象に残ったのは次の言葉である。
「横着せずに『コーンの外側を回るような空気を作る』という小さなことから積み重ねることで、チーム内のモラルが出来上がる。そうやって小さなことを一つ一つきちんとやる雰囲気を作ったことが、今のマリノスの強さにつながっているのではないかと思います」(p48)
これは岡田監督が横浜Fマリノスの監督だった時の話である。走り込みのメニューの時に、コーンの外側を回るはずが、軽いショートカットをしてコーンの内側を回った選手がいた。距離にしてはほとんど変わらないが、岡田監督はこれを許さなかった。なぜならこの小さな気の緩みが勝負に関わってくると考えていたからである。サッカーは一瞬の気の緩みでゴールが生まれるスポーツであるから、それは確かにそうなのかもしれないと思う。
インタビューなどを読むとわかるが、岡田監督は細かいところにとても気を配っている監督である。講演などで「勝負の神様は細部に宿る」とたびたび言っているように、細かいところを徹底することで、勝負に対する真剣さも増すと考えているのである。
「例えば1対0で負けている試合で、残り時間があと10分という状況でも、監督に言われた通りのプレーを淡々とこなしているだけのヤツばかりだったら、サッカーなんて勝てるわけないんですよ」(p108)
これは特に日本人選手が言われることである。本当かどうかはわからないが、日本の選手は言われたことしかやらない(らしい)。監督に言われたことはしっかりこなすが、それ以上のこと、工夫などを行うことが少ないのである。しかし勝負の世界ではそれでは勝てない。監督の期待を超えてこそ勝負に勝てるのである。これはビジネスにおいても同じだろう。上司に言われたことだけをやっていては成長しない。上司に言われたこと+αで何ができるかが大事なのである。しかし岡田監督は次のようにも言っている。
「『日本人は言われたことしかできない』と言われるけど、いいじゃないか、言われたことをきちんとできるんだから」(P166)
確かにこれも一理ある。外国のサッカーチームでは監督に言われたことを守らないことがある。つまり監督の意向を無視して自分のプレーをするのである。これはもちろん良い結果を生む場合もある。しかしそれがひどくなりすぎるとチームに悪影響を及ぼす。いわゆるエゴイスティックなプレーである。それに対して日本人は言われたことをしっかりできるのだからそれだけでも良いんじゃないかと言っているのである。
つまりスポーツやビジネスにおいては、言われたことをただやるだけではダメである。逆に言われたことを無視して自分勝手なプレーをするのもダメである。一番良いのは言われたことをすべてこなし、それ以上に何か自分の工夫をすることである。おそらく岡田監督はそのことを言っているのだと思う。
