kenji47
【ライブドア】証券取引等監視委員会の役割強化について【ショック】
- author: kenji47
- 2006年01月26日
今回の東京地検特捜部によるライブドア強制捜査は、本来、株式市場の構成保持の役割を担うべき証券取引等監視委員会の頭越しに行われたものです。
役割を果たすことができなかった証券取引等監視委員会(以下、証取委)ですが、どのような調査権限があるのか、証券取引法の規定を見てみたいと思います。
犯則事件の調査等について次の規定があります。
証券取引法210条【質問・検査・領置等】
�‐攘�取引等監視委員会(…)の職員(…)は、犯則事件(…)を調査するため必要があるときは、犯則嫌疑者若しくは参考人(…)に対して出頭を求め、犯則嫌疑者に対して質問し、犯則嫌疑者が所持し若しくは置き去った物件を検査し、又は、犯則嫌疑者等が任意に提出し若しくは置き去った物件を領地することができる。
��委員会職員は、犯則事件の調査について、官公署又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることができる。
この後211条以下には強制調査の規定があります。
このように任意の調査権限があるのですから、これを今回のライブドア事件に活用することはできなかったのでしょうか?
もちろん検察には独自の捜査権限がありますから、証取委の調査にかかわらず捜査を行うことはできます。相互の意思疎通も求められてはいません。
しかし、今回の被疑事実が確実に違法なものか、あるいは違法性が重大なものかは確かなものではありません。それに対して、捜索・差押え、さらには逮捕という手段が適切なものだったのかは疑問があります。取締ろうという目的に対して手段が均衡していないように思われるのです。
国家による警察権の行使に関しては、「警察比例の原則」という制約があるとされます。これは、
「警察権の行使が許容される場合、選択可能な複数の手段が考えられるならば、相手方にとって「最も侵害的でない手段」「必要最小限度の手段」を選択しなければならない」
という考えをその一内容とします。この考え方は、検察による捜査にも生かされるべきものと思われます。
これを今回の事件についてみると、相手方の株式価値を急落させ、それどころか株式市場に大混乱を引き起こす方法で行われました。これが法治国家において認容されるべき方法だったのでしょうか?
こういった意見を述べると「そんなことしているうちに証拠隠滅される」といった反論があるのではないかと予想されます。
しかし、証券取引法が守ろうとしている利益は、犯則行為を犯した者を検挙することではなく、より大きな目的に向けられたものです。証券取引法1条には次のように定められています。
証券取引法1条【目的】
この法律は、国民経済の適切な運営及び投資家の保護に資するため、有価証券の発行及び売買その他の取引を公正ならしめ、且つ、有価証券の流通を円滑ならしめることを目的とする。
特捜部の強制捜査の結果、長期的には国民経済の適切な運営及び投資家の保護図られるかもしれませんが、短期的には株式市場の乱高下を引き起こし個人投資家に多大なダメージを与えることとなってしまいました。
理想としては、長期的な目的と短期的な目的とがうまく調整された形で実現されることが望ましいと思われます。
この目的のためには、犯罪者の検挙を使命とする検察が相応しいかは疑問です。検察という組織はその役割上、犯人を逮捕し、処罰することが自己目的化しやすいと思われます。「正義」のためなら、市場に与える悪影響などは省みないといった短絡的な思考に陥りやすいのではないでしょうか?
私は、現在のような特捜部のあり方には大きな疑問を感じます。
今後の方向性としては、証券取引等監視委員会の権限を強化し、証券市場の公正保持の役割をほぼ専権的に行う権限を与えるといった改革が必要なのではないかと思われます。
証取委にこのような権限を付与すれば、証券市場にも配慮した上で市場の公正を図る措置が取れるのではないでしょうか。
[ライブドア・ショック]
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初めてこのブログを拝見させていただきました。本件によって、株が乱高下が引き起こされ、個人投資家が多大なダメージを負った旨の記述がありましたが、これに違和感があります。
株が下落したのはたった２日間です。しかもたった１０００円弱の下落です。株価の調整局面ではこれ位の下落幅はよくあること。昨日は大幅高でしたし、今後の捜査が株式市場に与える影響は少ないものと考えます。
ライブドアは実体のないスカスカの会社にも係わらず、高株価だった方が問題ですよ。私としては、今後もライブドアのような会社（例えば、・・・書きたいが書けない）特捜部（ＳＥＣでもいいけど）ガンガン摘発し、健全な市場にしてもらいたいと願っています。それが市場にとって一番好ましい姿だと考えます。
それと本件捜査は特捜部とＳＥＣの合同捜査です。マスコミはあまりそのことを報道していませんが、証券業界では皆知っていることですよ。
コメントありがとうございます。
>ライブドアは実体のないスカスカの会社にも係わらず、高株価だった方が問題ですよ。私としては、今後もライブドアのような会社（例えば、・・・書きたいが書けない）特捜部（ＳＥＣでもいいけど）ガンガン摘発し、健全な市場にしてもらいたいと願っています。それが市場にとって一番好ましい姿だと考えます。
実体のないスカスカの会社であることと刑事責任を負うべきなのかは直結することではありません。
犯罪が成立するには構成要件を満たすことが必要です。