一澤帆布お家騒動 過去の経緯と今後の展開

  • author: kenji47
  • 2006年03月23日

しばらく前に取り上げた話ですが、
訴訟関係の記述がうろ覚えでテキトーだったので、それを再確認するとともに、今後の動きについて法律的な見解、プラス私の個人的見解を交えて述べてみたいと思います。

今までの事件の流れは次のとおりです(ソースが2ちゃんというのもどうかという気もしますが)。
487 名前:名刺は切らしておりまして[sage] 投稿日:2006/02/23(木) 06:21:15 ID:edFyUwEt
時系列概略
1998/09/25 一澤帆布工業株式会社商標出願
1999/10/08 一澤帆布工業株式会社商標登録
2001/03/15 一澤信夫氏死去
2001/ /  四十九日を過ぎて、三男が遺言書提出
2001/07/  その直後に長男が遺言書提出
2001/09/  三男氏が京都地裁に無効確認を求めて提訴
2003/08/29 一澤帆布加工所商標出願
2004/09/17 一澤帆布加工所商標登録
2005/12/  最高裁で長男勝訴、三男敗訴が確定する
2005/12/16 三男信三郎一澤帆布工業代表取締役を解任される

これに続いて、
工房明け渡しの仮処分が認められました。
長男の信太郎氏は「弟で前社長の一澤信三郎氏が職権を乱用して事実上支配する加工所を設立した」と訴えており、本訴では、前社長の一澤帆布工業設立と社員の移籍や設備等を移転した行為が職権乱用に当たるかが争われることになります。

信三郎氏が別会社の一澤帆布加工所を設立し機械設備等を移転した行為については、取締役の自己取引、忠実義務違反あるいは営業妨害による不法行為で敗訴する可能性は否定できません。
しかし仮に敗訴したとしても、機械設備を返却し損害賠償を支払えば解決できるので、信三郎氏側にとって決定的なダメージとまではいえないと思われます。
従業員の移籍についても、よくあるパターンは自らが退職するのに伴って従業員を大量に引き抜いたりすると不法行為にあたるとされる場合がありますが、本件では信三郎氏は取締役を解任させられたのであり、それに従業員がついていったという図式です。この点、不法行為が成立する可能性は低いかと思われます。
もし従業員の引き抜き行為について不法行為が認められた場合は、損害賠償の支払義務が生じることになります。
結局のところ、信三郎氏が敗訴した場合は損害賠償の支払というお金の問題に帰着します。
信三郎氏は土地・工場・店舗といった不動産を失って信用力が低下しているので銀行借り入れという形で事業資金を賄うことが難しくなっているのが弱点と思われます。
この問題については、私募債をつのったり、例の「応援する会」の活動によって資金を賄えるかが今後のポイントとなってくるでしょう。

ここに来て、信太郎氏は信三郎氏を社長に戻し一緒に経営しようという提案をしているようです。
私には、実の兄弟だから元の鞘に戻る可能性があるのか、あるいは兄弟だからこそ難しいのかは判断つきません。
しかし、信三郎氏が社長に戻るとしても、株式がある程度譲渡される(例えば3分の1強の持分とか)など自らの地位を担保する譲歩が得られない限りは和解は難しいのではないでしょうか。
戻ったのはいいものの、いつまた解任されるかわからないという状態は受け入れ難いでしょうから。
この場合の株式数や資産の割合などについては、会社法等の法規を検討しつつ妥当なところを探ることになると思われます。

商標権や意匠権などの権利を侵害しているとして、信太郎氏側が提訴することも検討されているようです。
しかし、これらの問題は知的財産権に詳しい弁護士や弁理士の先生と相談すればクリアできると思われます。
商標権については、信三郎氏側は「信三郎帆布」というブランドを立ち上げたとのことですが、まず常識的に考えてこれが「一澤帆布」の商標権を侵害しているとはいえないでしょう(もちろんロゴマーク等が類似してないことが必要ですが)。
意匠権についても、例えば一澤帆布の商品としてはトートバッグが有名ですが、「トートバッグ」自体は他のメーカーでも一般に製造しているデザインであり、「一澤帆布のトートバッグ」のデザインが保護される範囲は限られてきます。極端に類似していたらまずいですが、若干のデザイン変更で対応可能だと思われます。
私は以前に文具メーカー、サンリオのキャラクター「けろけろけろっぴ」とデザインが似ているとして意匠権侵害が争われた地裁判決を見たことがあるのですが、判決理由の中で裁判所は「このキャラクターの目の丸さが…」とか「この曲線が…」などいちいち事実判断しているので「裁判官もアホらしくてやってられんだろな(失礼!)」と思ったことがあります。
結局のところ、通常の感覚を持った常識人が見て「似すぎていない」ということが求められるようです。

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法律は万能ではない。[一澤帆布お家騒動]

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  • [ 刻々是雑感 ] 2006年03月27日 02:01

この記事へのコメント

「別会社を設立し」というところが、突っ込まれる可能性あるかなと思ってました。しかし、お金とミシンを取っても、肝心の作業する人は、どうなんでしょう。
職人を探している、と長男氏はテレビカメラの前で語っていましたが、経緯を知っていたら、そこで働こうという人が出てくるかどうか、疑問です。

新店舗のHP上の告知を見ましたら、「仮店舗」と書いてありました。

今後どうなるか心配ではありますが、またあの素敵に頑丈なカバンが買いたい、それが望みです。

1. Posted by 丹後ちまき 2006年03月25日 11:43

うーんさすがタイトルどおり。
法律的な話からは逃げているので、ここを読みますと目からうろこが落ちまくりです。

でもWBCの方も面白くてそっちっばっかり見てしまいます。

と言うことでこれからも見させていただきます。

2. Posted by zukunashi 2006年03月25日 16:32 5

丹後ちまきさん、こんにちは。

>経緯を知っていたら、そこで働こうという人が出てくるかどうか、疑問です。

お金積めば出てくるでしょうが、以前と違う人が作ったものが一澤帆布の製品といえるのかが疑問ですよね。

zukunashiさん、こんにちは。

野球好きですか。
それは素晴らしい!
野球好きがうきうきする季節がやってきましたね。

3. Posted by kenji47 2006年03月26日 01:10

こんばんは!
2回目のTB、ありがとうございます。

25日の土曜日、いい天気だったので、
一澤帆布さんの近くまで行ってまいりました。

「一澤帆布工業」本店の、20mほど北に「一澤帆布加工所」があり、
職人さんが一生懸命作業をしておられました。

見えたバッグのデザインは、私の知る限り、
手持ちの本などで確認しても見たことのない
新しいものでした。

その写真をブログなどでUPしてよいものか
どうか迷っております。
どのように思われますか?

4. Posted by @くみ 2006年03月27日 20:23

@くみさん、こんにちは。

>その写真をブログなどでUPしてよいものか
どうか迷っております。
どのように思われますか?

たぶん大丈夫です。
ちょっと無責任な言い方ですけど。
実際上問題になる可能性は少ないと思います。
御自身で撮られた写真なら著作権はご自身にありますし、バッグに肖像権といのもないと思うんですけど…私の現在の知識ではここまでしかわかりません。
私も厳密にいえばこのブログで著作権や肖像権を侵してますけど、権利者から注意されるまではまあいいかなwと思っています。
法律学んでてそんなんでいいのかとお叱り受けそうですが。

5. Posted by kenji47 2006年03月27日 21:44

ありがとうございます。

新しいデザインをばらしてしまっても
よいものか、ちょっと迷ってしまったので…。

考えてみれば、バレて困るなら、
カーテン閉めておきますよね。

作業の様子を皆さんにお知らせしたいなと思ったので。
もし、中止を求められれば、すぐ辞めることにします。

6. Posted by @くみ 2006年03月28日 09:15

たぶん問題ないです。

職人さんとかの姿は写ってないほうがよいとは思いますが。

7. Posted by kenji47 2006年03月29日 00:44

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