ミッドナイト・ホームレス・ブルーについて
日本で最初の現役ホームレスブロガー(現在はただの人)、武州無宿・健次郎の公式ブログ。ホームレス問題の対策と支援をはじめ、ネットカフェ難民、ワーキングプア、貧困、ニート、フリーター、ひきこもり、格差社会……ネコ、愛、果ては人生についてまで、現役ホームレスが路上からエッセイとコラムでつづる本音の日記。ホームレスとはいったいなんなのか、その答えがここにある。
ホームレスの河 〜あいさつに代えて〜
ホームレスと非ホームレスとの境にはとても大きな河が流れていて、ぼくはいつもその河を泳いで渡り、非ホームレスであるみなさんの眼の前に現れて話をする。ぼくはそのときみなさんの世界にいて、ぼくが体験し、そして見てきたホームレスの世界をみなさんに語る。
それは、みなさんへ贈る、ぼくがホームレスの世界から持ち帰ったプレゼントだ。ぼくはそれを身振り手振りでときに熱く、ときに怒り、ときに泣き叫びながらみなさんに話す。そして話を終えると、ぼくは再び泳いで遠い河の向こう岸へと帰らねばならない。このブログではそれを繰り返した。
ホームレスの世界を非ホームレスに語るホームレスはたくさんいるが、実は彼らはもはや河を渡ってはこない。はるかかなたの向こう岸から、豆粒のようにしか見えない姿でみなさんに話しかけるしかない。したがって、みなさんはその姿、その表情、うかがい知ることはできない。彼らが顔をゆがめながら話していても、みなさんにはその表情がわからない。彼らがのたうち回りながら叫んでいても、みなさんはその姿を見ることができない。彼らはホームレスの岸におり、そこからホームレスを語るよりほかないのだ。
彼らはちがう世界から別の世界へと語りかける。だから、その語りかけは常識の枠を超えず、良識の範囲に収まるのだ。ぼくはちがう世界のことを別の世界に持ち帰って話す。だから、それは激しく枠を超え、良識を大きくはみ出すのである。
ぼくが泳ぐのをやめ、向こう岸から話すようになったらどうなるのか。
どうもみなさんこんにちは。お元気ですか? ここのところめっきり寒くなってきましたね。ぼくらホームレスはすでにすっかり冬じたく。準備万端抜かりなし、でありますが、みなさんはいかがお過ごしでしょうか? 風邪などめしませんよう、充分にお気をつけくださいませ。
さて、本日は「ホームレスが伝授する徹底節約術ッ!」の第3弾をお届けしてまいります。誰にとっても余計な出費は悩みのタネ。節約したいが思うようには……というみなさまに、ぼくらホームレスが毎日の生活から得た知恵、極上の節約術をご伝授差し上げようという、おかげさまをもちまして大好評のこの企画。はてさて、本日はどんな節約術となりますことやら、それではご開帳……
一見すると日常的なお役立ち情報に見えるが、これは実際にはホームレスがホームレスの世界からみなさんに語るホームレスの話なのである。両者のあいだには、すでにちがう世界の住人としての合意ができあがっているのだ。ぼくはホームレスとしてはるかかなたから語り、それをみなさんはホームレスの話として聞いているのである。
その結果、みなさんはホームレスに知らず知らず、あるいはさりげなく、見下しと侮蔑を受け容れることを求めてゆくだろう。むろん、反発者には制裁が待っている。ホームレスは意識するしないに関わらず怒りと憎しみを内在させつつ、しかし圧倒的な諦念によって、結局のところみなさんの前にひざまずかざるを得ない。ひしゃげた笑みを浮かべながら、
「すべておっしゃるとおりでございます。仰せのままに」
ホームレスがそのドロリとした心情を吐露したり、取り乱して世間の良識を踏み外すことは決してないだろう。みなさんもその表情の下に流れる複雑な心理を読み取りはしないだろう。そして、両者のあいだには、途方もなく大きな河が永遠に流れつづける。
そう、こうなった時点ですべては終わりなのである。ふたつの世界は諦めと怒りと侮蔑によって分断されたまま、再び接合することは決してない。ちがう世界がちがう世界のまま、交わることなく存在しつづけるのだ。
みなさんはこのブログを読んで、眉をしかめ呪いのことばを吐き激しく動揺するかも知れない。このような世界が眼前で語られることに耐えられず、楽しく愉快な世界へと逃げ出してゆくかも知れない。しかし、それはぼくがホームレスの河を渡ってみなさんに語りかけているからだ。ふたつの世界が分断しないことのために。
このブログは、その分断にちいさな橋を架けようとする、ささやかな抵抗なのである。
晩秋の日に 武州無宿・健次郎
路上のワーキングプア・ホームレスが薦める映画
東京ゴッドファーザーズ今敏 江守徹 梅垣義明/ソニー・ピクチャーズエンタテインメント/2004-04-28 |
3人のホームレスが捨て子の母親を探して歩くアニメ。映画らしいご都合主義もないわけではないが、ホームレスの生活環境や心理描写などが実に的確で、ホームレスを知るひとつの手がかりとなるほどに、非常によくできた映画である。 |
路上のワーキングプア・ホームレスが薦める本
反貧困―「すべり台社会」からの脱出NPO法人自立生活サポートセンター「もやい」事務局長・湯浅誠の手になる反貧困の書 |
ホームレス中学生べつにどうでもよい本だけれど、「ホームレス」の名を冠したベストセラーなので…… |
山谷崖っぷち日記山谷の日雇労働者として働く作者がその生活を淡々とつづる。開高健賞受賞作 |
失踪日記失踪してホームレスになった漫画家の実話マンガ。評判高し |
貧困と社会的排除―福祉社会を蝕むもの社会福祉の問題点をホームレスと絡めて浮き彫りにする問題の書 |
ホームレスと住まいの権利―住宅白書〈2004‐2005〉ホームレス問題を住宅の視点で縦横無尽に斬り捨てた良書 |









