2010年05月25日

青木美稚子コンサート 3

映画『プライド』のオペラコンクールのシーンで、ステファニーや満島ひかりちゃんの振り付けを指導してくれたメゾソプラノ歌手・青木美稚子さんのコンサートに行ってきた。先週の金曜、「青木美稚子と楽しむ日本の歌・世界の歌」と題して練馬文化センターで開かれた。

ピアノ、あるいはチェロの伴奏で〈日本歌曲〉は馴染み深い〈この道〉〈城ヶ島の雨〉、初めて聞く石川啄木作詞の〈初恋〉、池澤夏樹の母である原條あき子作詞の〈髪〉など、彼女の歌は前にもオペラ歌曲を聞いたことはあるが、日本語の歌もいいもんだ。
〈イタリア歌曲とアリア〉では〈愛の喜びは〉〈ガンジスに陽は輝き〉〈私は泣き、呻き〉などが歌われたが、こういう機会がなければ、全く耳にせずに人生終わる歌だと思う。

チェロ独奏はフォーレ作曲の〈夢のあとに〉。この曲は『風の又三郎―ガラスのマント』で又三郎のお父さんが弾いていた曲だ。あのカットは草刈正雄が弾く弦のアップから始まり、カメラは天窓を突き抜け、森の上の月まで行くという伊藤俊也監督の要求で、どうやって撮ればいいか、散々頭を捻った難しいカットだった。
音楽に疎い僕は、あの心地良い曲が何という曲なのか、20年間ずっと知りたかったのだが、それが〈夢のあとに〉だとは、このコンサートに来なかったら、更に数十年、悩み続けていただろう。

休憩を挟んで〈スペイン歌曲〉がいくつか。最後に〈フランスオペラ〉となって〈ウェルテル〉より〈私に涙を流させて〉、そしておなじみ〈カルメン〉より〈ハバネラ〜恋は野の鳥〉。これは僕でも知っているポピュラーな曲だけれど、日本語で歌われたのは初めて聞いた気がする。やはり日本語だと、意味が直接わかるだけに、カルメンがぐっと身近に迫ってくるのである。続けて原語で「アモーレ、アモーレ…」と聞くと、なぜか感動で涙が出てくるのである。なぜだろう。上野中学の教室に立っていたあの青木道子が、40数年の時を飛び越えて青木美稚子となって、ここに立っている。そんな感傷もあったのかもしれない。

終わってロビーで挨拶をすると、打ち上げに参加するように言われ、一足先に練馬駅の地下のイタリアンレストランに行った。するとそこには既に10人ほどの妙齢のオバサンが待ち構えていた。彼女らは青木さんの御茶ノ水高校時代の同級生なんだそうだ。でも、どう贔屓目に見ても青木さんより10コくらい先輩に見える。
で、黙っていても間が持てないので、「どんなご関係?」「青木さんって中学ではどうでした?」「お仕事は?」なんていう会話から
「映画のカメラマンなんです。明日公開される『春との旅』という映画を撮りました」と言うと
「ワッ!それ見ました、試写会で。仲代達矢がラジオで口角泡を飛ばす勢いで、自分の映画人生で3本の指に入るいい映画だって言っていたので、応募したんです」というオバサンが3人もいたのである。

で、翌日土曜日はバルト9で『春との旅』の舞台挨拶。壇上には恥ずかしそうな小林政広監督はじめ、国宝級の俳優、仲代達矢、淡島千景、徳永えり、柄本明、美保純が並んだ。満員の観客の満足そうな顔。拍手も多かった。
「初日にこんなに多くのお客さんが入ったのは初めてです」と監督がしみじみ言った。嬉しそうだった。
2010年05月05日

ベッドシーンも最高! 4

今日の深夜は『アザミ嬢のララバイ』第3話、『しろへびの涙』のオンエア。残念ながら、東京地区はやはり見ることができず、7月21日のDVDレンタル・販売開始を待たなければならない。

先月24日、紀尾井町の映広というポスプロスタジオで『しろへびの涙』のMA(マルチ・オーディオ=映画で言うダビング)があったので顔を出した。

雪山のセットは、前日の手塚眞監督『赤い靴』で使用した工事用のイントレを組み合わせた焼け跡のビルを組み替え、それに白布を被せたものだ。それだけでもクリムトの芸術を思わせるものがあるが、そこにスモークをなびかせ、半逆光のライティングをすると、本当に雪山に思えてくる。更にCGで降る雪を加え、MAで吹雪の音を加えると、扇風機の風で白布がフワフワ動いているにもかかわらず、まぎれも無く雪山なのだ!
小市慢太郎と中村ゆりが登って行くのを仰角で撮影すると、当然のこと、東映東京撮影所第2スタジオの天井とキャットウォークが映ってしまうのだが、逆にそれが不思議な感じを与えるのだ。「空に天井がある!」という不思議な感じ…。

雪山に登る前、ホテルでのベッドシーンがある。このホテルも、ダブルベッドとサイドテーブル、スタンドライト、コートハンガーだけで表現されている。壁は無く、ステージの周囲に下がっている暗幕だけ。
結びのカットで、ベッドからクレーンアップすると、照明が落とされた撮り終えたセットが今までの歴史のように見え、その奥にこれから行く雪山の夜景が見える。それが同ポジで朝の雪山にディゾルブして、前述のシーンになるわけだ。この、深ーい意味のある大スペクタクル・クレーンカット、我ながら素晴しいアイデアであった(エッヘン!)。

しかーし、更に素晴しいのは、中村ゆりのあのときの表情!ラブシーンで、こんなにリアルで美しい顔!ウワーッ、日本映画では見たことが無い!撮影、オールラッシュ、編集、MAと、何度も何度も見ているうちに、これは確信に変わった。中村ゆりは絶対に伸びる!

東京の人、残念ですね。7月まで待ってね。
    • 3 Comment |
    • 0 Trackback |