おわりに

 本書に取り組みながら、私は多くの人と話す機会を得た。私が、「ホワイトカラーが会社を離れる日にどう準備すべきかについて書いている」というと、多くの人が「自分も考えなければ」といっていた。しかし、なかなか考える糸口がみえないようだ。
 私は本書で多くの著書から引用した。「サラリーマンの生き方を書いた本は掃いて捨てるほどある」とある人からいわれた。しかし、手にしてみると、なかなか実態にあったものがない。それでも、丹念に探し多くにふれると良書はあるものだ。
 会社から離れるための準備の糸口は、自分のいる会社から離れた先輩、同僚が、その後、どのような人生を歩んでいるかを調べればみつかるのではないか。満足している人もいれば、不満たらたらの人もいる。また、同じ境遇でも、満足の人もいれば、不満の人もいる。その違いを考えてみるだけで十分なものが得られよう。そして、何をすべきを考えることもできよう。
 親切な人がいて、迷っているなどというと、「応援する」といってくれる。しかし、彼らも、何の準備もない人には応援しようもないだろう。「こう考えるがどうか」「こんな方向に進みたいがどうか」などといえば、彼らも相談に乗りやすい。
 本書を書くための資料集めは、三年ほど前から開始した。その間、多くのことを勉強してきたが、今、書きおえて、特に心に残ることを並べてみよう。
⑴一般にサラリーマンは会社から離れる準備が不足していること
⑵準備をするには自立精神が必要であるが、これを身につけることは精神的な飛躍が必要であること。そして、飛躍の過程で一時的には苦しむこと。
⑶ホワイトカラーの勉強はノウハウに片寄っている。自分で理論を作りだす方法を身につけるべきだということ。
⑷ホワイトカラーの力の弱さは身分制度に安住しているためである。
 なかでも、⑵の自立精神の問題が一番気にかかる。というのは、自立精神の獲得といったことを、ノウハウとして示すことはむずかしいからだ。サラリーマンを長く続けながら、しかも、最後まで自立精神をつらぬいた先人の遍歴を調べて書くのがひとつの方法のようにも感じられる。しかし、それは簡単なことでもなく、また、私の実力を超えることでもある。しかし、大事な問題なので、私の今後の課題として心の隅においておくことにしたい。