当初、「便秘」の項目は予定になかった。しかし、玄米の「特によい」ことのひとつは「便秘しない」ことである。そこで、その体験を伝えたいと思い書くことにした。 玄米を食べるとほとんど便秘しなくなる。これは、玄米を食べて健康になった人の体験談に、しばしば書かれていることである。

 私も便秘の悩みはない。トイレにいる時間も短い。ただ、旅行のときは別である。出張に玄米弁当をもっていっても便秘する。緊張のせいだろう。しかし、ふだんは苦労はほとんどない。とにかく玄米食は楽である。

 むかしの人は便秘で悩んでいたのだろうか。ぜんぼうを知るのはむずかしいが、たまたまひとつの例に出あったので紹介しておこう。

 『人間の原点をここにみる』(農文協文化部著、1977年)という本がある。これは、日本の長寿村の生活を記録したものであるが、このなかに「便通」を語ったところがある。岩手県の有芸村(うげいむら、今は岩泉町有芸、日本第二位の長寿村)の老人たちが、「長寿の秘密はどこにあるか」という質問に答えた一節の中にある。

 ある老人はこう言う。
「昔しゃ、秋田椀とゆうて、いまの茶碗の倍ぐれえのやつで二〜三杯たいらげてしまう。カヤ屋根のふきかえを手伝いに行くと、麦や粟(あわ)に小豆の入ったごはんが、その秋田椀に和尚さんの頭みてえに盛り上げて出されるんでやす。大根おろしをおかずに二杯は食わねば、力が出んのでやすな。きたねい話だども、そんだけ食うと返しも早よう、それも余計に来やす。とにかく通じがようて、腹の具合もええ」

 また、別の老人はつぎのように言う。
「稗(ひえ)・麦ばかりでなく、ドングリはじめここでとれるものを何でも食べたのがよかったのでは?毒になるものも、毒にならないものもいっしょに食う。それも大量に食べて大糞をたれて、通じがよかったのが健康のもとだ」

 食べる量が多かったのは、いろいろ理由があるようだが、おどろくほど通じがよかったようだ。これなら長生きするのも当然だと思えてくる。便秘で悩んでいる人は、玄米など未精白穀物を食べ、自分の体で、そのよさを体験してもらいたい。