2021年02月13日

魚は痛みを感じるか?

解禁を間近に控え、本来はフライを巻き貯める時期なのですが・・なんとも大層な 記事タイトルを付けてしまったもので・・どう纏まるのか、先が思いやられます。

きっかけは昨年放送されたNHKのテレビ番組「又吉直樹のヘウレーカ」でした、タイトルは「釣りは科学でうまくなる?」です。この番組の中で魚の痛みに触れる場面があり、広島大学の教授は
「魚は痛みを受け取る仕組みを持っていて、それを伝える神経も持っている。更にそれを処理する脳も持っているので、魚は痛みを感じると考えていいでのはないか」
というのです。その根拠となる説明はなくて・・・調べます(^-^)


日本の食文化である鯛や鯵の生け作りや、ルアー&フライフィッシング等で行っているキャッチ&リリース(C&R)の釣りは魚が痛みを感じないことを前提として成り立っているのだろう。

そうでないとC&Rの釣りは同じ魚を何度も釣り、痛がる魚をもて遊んでいることになる。魚が人と同じ痛みを感じるのであれば、私としてはC&Rの釣りは出来ない。真相は魚に聞かないと解らないけど・・。

しかし魚(溪魚)はリリースを繰り返すと学習し、フライを避けるようになる。このことから魚にとって釣られることは不快なことは確かなようだ。


以前読んだことのある、ビクトリア・ブレスウェイト著「魚は痛みを感じるか?」を思い出しました。著者は動物行動学でオックスフォード大学院の博士号を取得した後、魚類の認知や行動の研究を行い「鱒の痛みの知覚」の研究はイギリスで大きな話題を呼びました。そんな訳で、再び借りてきました。

s20210214_1

この本、以前読んだことがあり、その時は内容が学術的過ぎて挫折しました。
実験の目的と結果、考察を端的に記載すれば良いのですが、余計なことが多すぎる感がしたのです。まず魚が痛みを感じると言うなら、表紙にこの画像はないだろ。

今回も半分くらいで読むのを止めました。私の知能では・・この本は無理(^_^;。

この「魚は痛みを感じるか?」を独断と偏見で解説します。まぁ中途半端な読書感想文だということで・・(この本を正しく理解したい方はご購読をお勧めします)

<1>痛みとは
人はどのように痛みを感じているのか、熱いヤカンの蓋を触った場合を例にして、流れを示すと。左が人の行動、右が神経的な説明です。
’いやかんの蓋を触る
       ↓←⊆蠅糧乕罎亮容体が刺激を受け、電気信号が発生
       ↓ E典た号が神経を通じて脊椎に伝わる
       ↓ ぜ動的に反射反応が発生し蓋を放すように指令する
ソ峇崚に無意識に手を放し蓋を落す
       ↓ ε典た号が脳に届く
Ъ蠅不快で焼けるようにズキズキし「痛い」と感じる
      ↓
痛いと叫ぶ。手の様子を見て火傷と知り、手当等を行う
      ↓
教訓として記憶し次回からはタオル等で手を保護して触ろうとする

この痛みを感じる一連のプロセスの中の◆銑イ蓮嵜害受容」と呼ばれ、損傷やダメージを受ける神経系の無意識的な検知であり、この過程ではまだ痛みは感じない。
ここでは侵害受容を感知する場所は皮膚でこれを侵害受容体と言う。

しかしプロセスのΑ銑Г稜召悗療礎と意識的な痛み、何がどの位の強さで痛むのかを認知する過程は解明されていない。


<2>「魚は痛いと感じるか?」この問題を解くには
ゝに「侵害受容体」が存在する
痛みを伴うと思われる刺激を受けて「侵害受容体」が活性状態になる
D砲澆鯣爾刺激が魚の行動に影響を与えること
を明らかにしなければならない。


<3>検証
 嵜害受容体」が存在するか
哺乳類、鳥類の顔周辺には三叉神経があり、それはAδ繊維(一次痛伝達)とC繊維(二次痛伝達)で構成されている。鱒を麻酔で眠らせて口や目の周囲の繊維を採取し、顕微鏡で調べ、三叉神経があることを確認できた。つまり鱒にも「侵害受容体」は存在する。


◆嵜害受容体」が活性状態になるか
鱒に麻酔をかけ頭部の84ヶ所の神経に各種刺激(接触、熱、化学物質)を与え22ヶ所で電気信号を検出した。刺激性の化学物質は弱酢酸の水滴を皮膚に落して実験し、唯の水溶液では電気信号は発生しない。つまり神経線維(侵害受容体)は活動状態になる


D砲澆鯣爾刺激が行動に影響を与えるか
人は痛みを感じると心拍や呼吸が早くなる。このことを踏まえ以下の実験を行う
鱒を4つのグループに分け、全てを麻酔液で眠らせる。
それぞれのグループに「蜂の毒」「酢酸」「塩水」を注射、最後のグループには注射しない。麻酔から回復した後、一定時間毎に1分間のエラの開閉数をカウントしグループ間の相違を見る。
蜂の毒は炎症を起こす毒素であり、酢酸は傷口に落すと酸性イオンが神経を刺激する。どちらも痛みを感じ、塩水は体液に近く影響は少ないはず。但し、実験は麻酔をかけたり人が触る為、そのことのストレスは感じるだろう。

因みに通常の安静状態では1分間のエラの開閉数は50回。
塩水や注射無の場合、実験開始直後は70回だが1時間で平常の呼吸数(50回)に戻る。
痛みを伴うと思われる、蜂の毒、酢酸を注射された鱒は90回で3時間半経過しないと平常の呼吸数50回に戻らない。

痛みを伴う刺激を与え呼吸数や飢餓レベルが変わることは確認出来たが、この生理的な状態の変化だけで鱒が痛みを感じているとするのは不十分。


より高次元の行動が影響を受けることを示す為に・・以下の実験を行う
鱒は未知の物に敏感で、それが脅威でないと解るまで、回避行動を示す。
「酢酸の水溶液」と「塩水」を注射した鱒に対して未知の物体に対する回避行動を比較する。(酢酸は神経に痛みを与え、塩水は与えないことが前提)
結果は「塩水」を注射した鱒は未知の物体に近寄らず回避行動を示す。しかし「酢の水溶液」の鱒は回避行動を取ることが少ない。つまり注意力が損なわれたことを示す。


更に、両方の鱒に痛みを緩和させる「モルヒネ」を注射して実験すると、どちらも未知の物に回避行動を示す。
つまり、酢を注射された鱒は痛みの為、未知の物に対する回避が疎かになったことになる。痛みを伴う刺激を与えることで、魚の行動に影響を与えることが得られた。

<4>結論
以上のことから「鱒は痛みを感じているだろう」というのが筆者の結論。

ここまでの説明は本書の半分まで。残りは訳分からないので、割愛します。



私の感想としては・・
魚を釣って寄せようとすると魚は体力の続く限り抵抗する。しかし途中で引く力を緩めると、魚は何も無かったかのように泳ぎ続ける。このことから、私は人が体感する程、魚は痛みを感じていない。抵抗するのは自由に泳げないことの反応だと思っている。


しかし、魚に痛みを伴うと予想される刺激を与え、注意力が損なわれる現象が見られるのであれば、魚は痛みを感じていることを認めなければならない。ただこの本の実験では魚がどれほどの痛みを感じているかの解明には至らない。


今後、魚の痛みに関する研究がすすみ、魚の痛覚が明確にされた時、他の動物と同じように魚の気持ちも尊重するか、それともこれまで通りの対応を続けるか・・。
動物愛護協会の意見もあるだろうし、痛がる魚を何度も釣るC&R派の釣り人は境地に立たされる可能性はあるかもしれない。

それでもレジャーとしての魚釣りが無くなることないだろう。種の保存や環境問題に対する釣り人の功績が大きいことは疑う余地はないのだから・・
結局、釣り人ができることは、今まで通りバーブレスフックや魚に優しいネットを使い、魚に触る時は手を濡らし火傷させないように、魚を大切にすることだろう。

sIMG_1253

現状・・
「魚はある程度痛みを感じている」
ということで、全てが上手く収まるように思い鱒。


kenn_3 at 22:57コメント(6)FF_2021 | FF_2020 この記事をクリップ!

コメント一覧

1. Posted by リコプテラ   2021年02月15日 13:06
こんにちは。
とても興味深い内容です。
こんな本が出版されているとは。中身はかなり難解そうですね。
フライフィッシング発祥の地で、こういう研究がなされているということが素晴らしいと思います。

今はバーブレスフックを使っていてさっとリリースできますが(たまにオートリリースで悔しい思いをすることもあります笑)、私は渓流釣りを始めた頃(当時は餌釣りでした)はカエシのあるハリを使っていました。
そして、カエシを口から外そうとする時にバシャバシャ暴れるのは、当然痛いからだろうと思っていました。スレ掛かりで体にハリが刺さた場合も暴れるのは痛いからだと。
でも、それは反射的なものであって(侵害受容)、脳に伝わって痛いと感じているかどうかは別問題で、そこが論点ということですよね。
動物は全て(少なくとも脊椎動物は)、当然痛みは感じるものだと思っていたので、痛みを感じるかどうかを研究しているということ自体にビックリしました。

痛みを感じる感じないとは別に、バーブレスフックを使って口の硬い部分にフッキングすれば、魚に与えるダメージは最低限に抑えられるような気がします。
突き詰めれば、「遊びで魚を釣るな」ってことになってしまうのかもしれませんが(笑)
2. Posted by ken   2021年02月16日 17:23
リコプテラさん。コメントありがとうございます。
はい。私にこの本は難解でした(^-^)。後半は魚の福祉やC&Rのことにも触れられていて、「魚は痛みを感じる?」を知りたいだけなので・・流しました。「痛みを感じる」は色々主張があり「魚は痛み中枢を持たない」という学者もいます。

私は根本では魚は痛みを感じないと思っています。釣られることで暴れるのは突然、自由に動けなくなり、パニックになるのかと・・
でも、釣り針が刺さり、人が乾いた手で触ることでダメージを受けることは確かで、それが原因で死んでしまうこともあります。

C&Rで釣りをするなら、魚は少しは痛みを感じていると思った方が、魚に対して優しくなれるのかと思い、この本の主張を受け入れることにしました。

>口の硬い部分にフッキングすれば、魚に与えるダメージは最低限に・・
人で言えば爪先に針がかりした感じかな(^-^)、そこならダメージも少なく傷口も広がりそうもありませんね。口の硬い部分にフッキング出来るように精進します。

実際には不可能だと思いますが、もし魚が人と同じような痛みを感じていることが証明されれば、スポーツフィッシングの立場は悪くなりそうですね。

そうなれば、私は以前のように、お持ち帰りの釣り師に戻り、自然の恵みに感謝し命を頂こうかと・・。
4. Posted by 考える愚者   2021年02月18日 00:12
5 考えさせられる内容ですが、確かヨーロッパ辺りで「エビは痛覚がある」として「活きた状態での調理は違法」とした国があります。
序でに「氷水で活かすのも禁止」なんだそうです。
そして、日本の活き造りを批判、更には止めるよう働き掛けています。

私見ですが、これらは非常識だと思います。
々坦摸爐斑などは死ぬと、即座に自壊が始まり鮮度が急激に落ちるのです。
これは冷蔵冷凍しても防げないそうです。

氷で冷やさないと活動が活発になり、エサをあげなければ組織は疲弊して味が落ち、エサをあげればコストが格段に上がります。

B捷颪凌文化にイチャモンを着けるのは、その国の文化を破壊する事です。

け身損にエビを疲弊させ、一撃で死なせた後に調理するのは料理を不味くするだけで、人間の糧となるエビを冒涜していると私は思います。

実は植物でも、葉や枝を傷付けると電気的な反応をするそうです。
そもそも、植物だって命があります。
人間は他の動植物の命を奪わなければ、生きていけないのです。

極端な事を言えば、ウィルスや菌だって生きているのです。
過剰な思い込みは、本質を遠ざけます。

日本人が食事前に言う「いただきます」は「命をありがたく戴く」と云う意味だと祖母から聴かされました。

気に掛けていたら、何も出来なくなりますよ。
5. Posted by 生卵   2021年02月18日 02:33
腹わたも身が無くても?頭と骨だけで泳ぐ魚、身だけピクピク動く魚肉。魚って、他の生き物とは違いますよ。痛みがあるならば、動けませんからね。
6. Posted by ken   2021年02月18日 23:21
考える愚者さん。コメントありがとうございます。
ウィキペディアの「食のタブー」を参照すると・・
・・オーストラリアでは「食物を苦しませずに殺す法律」があるので、ロブスターやエビといった甲殻類でも調理する時には、即死するように脊髄からさばくことが定められている。生きているそれらをそのまま焼いたり茹でたりするのは厳禁とされている。とあります。
オーストラリアでは少なくとも甲殻類は痛みを感じるという認識なのでしょうね。

日本では「動物愛護法」により動物の殺傷や苦痛を与えることが禁止されています。
「愛護動物」の対象から除外されるのは、脊椎動物では「魚類」「両生類」「無脊椎動物はすべて」です。日本の法律は「魚は痛みを感じない」が前提のようです。

どんな種であっても生き物を食べるなら、痛みを感じる感じないに関わらず、自然の恵みに感謝して命を頂くことになりますね。

私は釣った魚を食べる時、直ぐに締めて氷付けにすると美味しく食べれます。
7. Posted by ken   2021年02月18日 23:22
生卵さん。
魚は痛みを感じない派ですね。
私もかって、喉元からお尻まで裂いた岩魚が普通の岩魚のように平然と逃げて行った経験があります。このことからも魚は痛みを感じないと思っていました。

痛みを感じるのは脳なので、脳への神経が切断されている魚肉がピクピク動くのは筋肉の痙攣(けいれん)のようなものだと思います。

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