わが国の実質賃金は、OECD(経済協力開発機構)の統計で424万円となっている。1990年代から30年間、ほとんど伸びていない。同期間にアメリカはおよそ340万円も増えたのに対して、日本は18万円だとか。2015年からはお隣の韓国にも追い越され、OECD加盟国中で22位の下位に転落した。
なぜ賃金が増えないのか。原因は非正規雇用の拡大と、長時間労働だ。パート、派遣など非正規で働く人は勤労者の4割近くに増え、平均年収は200万円を大きく下回る。また、正規で働く人もサービス超勤が多く時間当たり賃金は目減りする一方だ。「お客のために献身的に」という美徳が、わが国の労働生産性を限りなく低下させている。
さて、長時間労働は労働者の精神と肉体を破壊するだけでなく、地球環境にも悪影響を与える。コンビニやオフィスの照明、動き続ける物流、24時間稼働する工場などから、疲労とともに「CO2」が排出される。勤労現場の美徳は、じつは気候変動の元凶になっている。
資本主義の暴走が、労働者と地球環境を蝕んでいる。個人より「法人」の利益が優先される風潮に対して憲法は警鐘を鳴らす。法人の権利は「公共の福祉に反しない限り」認められるのであって、野放図な活動は許されない。そのような憲法の「エコロジー」を考える。
