全文紹介すると、当日参加の意欲がそがれますので、ぜひ聞きたいという意欲が増すように、一部割愛し紹介します。
2017 年5月4日(木)
憲法施行70 年の「現実」――内側から破壊される憲法秩序――
高作正博(関西大学)
序――「軍事の論理」の優先
(1)安倍政権による軍国化
①法律レベル;特定秘密保護法、安保法制
②政策レベル;武器輸出3原則から防衛装備移転3原則へ(2014 年4月)
(2)さらなる軍国化志向
①トランプ大統領誕生の影響;国際環境の不安定化、日本の防衛費大幅増の可能性
②大学による軍事研究解禁?;防衛装備庁「安全保障技術研究推進制度」
・3億円(2015 年度) → 6億円(2016 年度) → 110 億円!(2017 年度)
・軍学の連携重視の政府方針;国家安全保障戦略・防衛計画の大綱・中期防衛力整備計画(2013 年12
月閣議決定)、第5期科学技術基本計画(2016 年1月)、自民党国防部会提言(同年5月)
・2015 年度4大学、2016 年度5大学が採択
・米空軍が2010 年度から2016 年度までに大学研究者に研究資金提供
・日本学術会議での方針
*「戦争を目的とする科学研究には絶対従わない決意の声明」(1950 年)
*「軍事目的のための科学研究を行わない声明」(1967 年)
*「軍事的安全保障研究に関する声明」(2017 年3月24 日)
③米軍基地問題の行方
・駐留米軍経費の負担増
*「日本が対価を払わなければ、数百万台もの車を我々に売りつける日本を守ることはできない」(2016 年9月26 日)
・米軍基地維持の負担増;沖縄の基地機能強化、辺野古新基地の早期実現
(3)緊迫化する東アジア情勢
①アメリカによるシリアへのミサイル攻撃
②北朝鮮に対する武力行使のおそれ
1 安倍政権下で進む「憲法秩序」の破壊
(1)内心の強制と精神的自由の破壊――教師に対する強制
①不起立訴訟における最高裁の人権論
・「歴史観ないし世界観から生ずる社会生活上ないし教育上の信念等」といいうる
・「個人の思想及び良心の自由を直ちに制約するものと認めることはできない」
・起立斉唱命令は、「思想及び良心の自由についての間接的な制約となる」
・起立斉唱命令は、「慣例上の儀礼的な所作」求めるもの、「教育上の行事にふさわ
しい秩序の確保とともに当該式典の円滑な進行を図るもの」
・「制約を許容し得る程度の必要性及び合理性が認められる」
②不起立訴訟における最高裁の裁量論(最高裁2012 年1月16 日判決)
・「過去に入学式の際の服装等に係る職務命令違反による戒告1回の処分歴があるこ
とのみを理由に‥‥減給処分を選択した都教委の判断は、‥‥違法」である
③大阪の実態;「内藤判決」(大阪地裁2015 年12 月21 日判決)の問題性(項目のみ)
(2)「教育勅語」のある日常へ!?――児童・生徒に対する強制
①「森友学園」問題で発覚した「戦後体制」破壊計画
・多くの問題点;小学校設置認可、国有地売却問題、政治家・首相夫人と関係
・中心となるべき問題点;国家転覆を企図する安倍内閣・日本会議
*「教育勅語」を暗記・唱和する幼稚園児
「日本を悪者として扱っている、中国、韓国が、心改め、歴史教科書でうそを教えないよう、お願いいたします」
*「一旦緩急アレハ義勇公ニ奉シ以テ天壤無窮ノ皇運ヲ扶翼スヘシ」(非常事態の場合には国家に奉仕して、皇室の繁栄を助けなさい)
②「森友学園」問題を梃子にさらなる教育破壊へ
・道徳の教科化;教科書検定を通じた国家主義思想の教え込み
・「教育勅語」の正当化
*「憲法や教育基本法に反しない形で教育勅語を学校で教材として用いることは否定しない」(2017 年3月31 日閣議決定)
(一部省略)
*教育勅語を教材として使うことについて、憲法や教育基本法に反するかどうかの判断は都道府県などに委ねるとしたうえで「政府として教育の場における活用を促す考えはない」(4月21 日閣議決定)
2 「憲法秩序」破壊のための権力強化
(1)政府方針に反する思想・活動の「監視」「規制」
①共謀罪の必要性
・「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律」(平成11 年8月)
・【理由①】「国際組織犯罪防止条約」(2002 年国連総会で採択)締結のために必要?
*テロ対策のための立法については、既に対応してきている
*本条約自体、マフィアなどの国境を越える国際的犯罪集団による犯罪の防止を目的とするもので、
テロ対策とは無関係
*本条約は、犯罪組織への参加罪を処罰する方法、共謀罪を処罰する方法、その他の方法のいずれかで
対策を講じることを求めている
・【理由②】テロ集団その他の組織的犯罪集団に限定?
*「一般の方々がその対象となることはありえない」ため、2003 年・2004 年・2005年提出の共謀罪と
は異なると説明
*「もともと正当な活動を行っていた団体も、組合の目的が犯罪を実行する団体に一変したと認められ
る場合は、組織的犯罪集団に当たる」(2月16 日、金田法相)
②共謀罪の危険性
・【理由①】既に多くの規定で導入、組織犯罪集団を対象とする処罰にすぎない?
*爆発物取締罰則、破壊活動防止法、自衛隊法(防衛秘密漏えいの共謀)、国家公務員法・地方公務員
法(争議行為の共謀罪)、特定秘密保護法(特定秘密の漏えい・取得の共謀罪) → 追加する対象犯罪は277 !
*「準備行為」(2人以上で計画した者の「いずれかによりその計画に基づき資金または物品の手配、
関係場所の下見その他の計画をした犯罪を実行するための準備行為が行われたときは」処罰する)について拡大解釈のおそれ
・【理由②】思想の取締りや表現活動の規制にはならない?
*原則は、実行された犯罪の処罰(既遂- 未遂- 予備- 共謀)
*共謀罪の捜査には捜査対象の拡大が必要。限られた人員・予算、重大事件の捜査優先。このジレンマ
解決には、「選別的執行」・狙い撃ち的執行が必要
*共謀の「合意」判断にはプライバシーに立ち入った監視捜査が横行する
*現状でも日常的な監視、監視カメラやGPSを使った情報収集(もっとも、令状のないGPS捜査を
違法とする最高裁平成29 年3月15 日大法廷判決)。通信傍受法の改悪もあり、共謀罪の成立によりさらなる捜査権限の拡大
・マンションの建設に反対している住民団体が、工場着工を間近に控えた会合で当日は資材搬入阻止の
ため未明から現場に座り込むことを決定→ 組織的威力業務妨害罪の
共謀罪【日本弁護士連合会『共謀罪ここが問題だ!』(2006 年1年31 日)27 頁】
(2)政府方針に反する思想・活動の「弾圧」
①辺野古新基地・高江ヘリパッド建設の強行 以下項目のみ
②安倍政権・翁長県政の対応
結――秩序破壊の完成としての改憲論
(以下略)
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