前回書いたfanficの翻訳のときに知った話。
「desire」という言葉は「欲望」を意味しているが、この「sire」の部分はもともとは「sides」で、「星」もしくは「星座」という意味だ。
「星からもたらされるものを待っている」状態からい今の意味になったらしい。
同様の語源からきている単語が「consider」で「よく考える」という意味だが、もともとは「星をよく観察する」という意味だったらしい。
事ほど左様に昔の人にとって、星「星の影響」は今よりずっと身近なものだったのだ。
「disaster」つまり「災害」を意味する単語は「悪い星」を意味していたし、「influenza」は星からの「influence 」によって起こると思われていた。
機械時計の発明は、昔は修道院の規則正しい生活のためと言われていたが、今では天体観測のために正確な時間が必要だったからの方が主流だ。というのも暦は人の運命を左右する超重要技術だったのであり、そのために数学も発展した。『ルパイヤード』で有名なオマル・ハイヤームは、本職は天文学者であり、非ユークリッド幾何学の先駆けとなる思考を残している。その影響か、今でもイランの閏年の入れ方は、公転周期の誤差を考えると無意味なほど正確を期しているとか。
ケプラーもルドルフ2世の占星術師であった。彼は魔術的なほど世界の構造的微を信じてやまなかった。惑星の軌道とプラトン多面体との関係の仮説や、公転周期と音を対応させれば惑星たちが和音を奏でている確信などについて書かれた本が残っている。そしてこれらの研究が、ニュートンの微積分の研究へと繋がっていくのだ。
天文学とは当時の実用的な科学であり、当時は今より科学と人々日常的な精神が近いところにあった。ガリレオ、ケプラー、ニュートンらによる科学の発展が占星術的な当時の人々の心に与えた影響は大きい。それが占星術を次第に実用的な学問の座から落としたのだ。
「使えることがえらい」とプラグマティストを気取った人間が気楽に言ってくれることがあるが、何が「使える」かどうかは、その人が所属する文化圏の世界観によって決まるのだ。ウィリアム・ジェイムズも『プラグマティズム』の冒頭でチェスタートンの言葉を「ある人を知りたいときに一番重要な情報は彼の世界観だ」を引いている理由だ。
昔の人の世界観が分からないと、昔の人にとって何が役に立つものだったのか見誤ってしまい、我々の世界がどこから来たのか見誤ってしまう。
今の人たちは、昔ほど「星の影響を信じてはおるまい。それでも私たちの生活を支える幾つかのものは、「星の影響」を信じる心性によって作られたのだ、歯車を組み合わせた機械や微分積分を使ったニュートン力学などだ。
たまには我々とは随分異なる昔の人の精神構造に想いを走らせ、そんな心から出てきた科学や技術が自分の故郷である精神にどれだけの影響を与えたかを想像してみるのも面白いだろう。