去年の続き

穴に飛び込んだバルタザールとホルミスダスはどこまでも落ちていきます。
しかし、どんどんと地団駄を踏んでどんどん穴を深くしている
バダダハリダにはなかなか追いつけません。
どんどん落ちる速度が速くなることにだんだん二人は不安になってきました。
「バダダハリダもう地団駄を踏むのはやめてくれ。これ以上速くなったら落ちた時痛いと思う」
バルタサールが言いました。
「いや、多分もう落ちたら痛いはずだ。だから地団駄を踏み続けてくれ、バダダハリダ。そうすれば助かる」
ホルミスダスが反論します。
「それじゃあ、ますます僕らは速くなる。なんの解決にもならないじゃないか!」
バルタザールは反論に反論します。
「どうすればいいかわからないじゃないか!」
同時に逆のことを言われてバダダハリダは怒りのあまり地団駄を続けます。
「ああ、だめだ。ますます速くなる。これは困ったことになるぞ」
とバルタザールは目の前を上方に流れていく竪穴の壁に計算式を書きながらつぶやきます。
「どういうことだ」
ホルミスダスはその式を目で追いながら言います。
「このまま加速し続けると、光の速度を超えてしまう」
「そうするとどうなるんだ?」
「光の速度を上回ると、未来ではなく、過去に行ってしまうのだ」
「そうするとどうなるんだ?」
「過去の俺たちは光の速度を超えていない」
「そうするとどうなるんだ?」
「光の速度を下回ると過去ではなく、未来に行ってしまうのだ」
「そうするとどうなるんだ?」
「未来の俺たちは光の速度を超えている」
「そうするとどうなるんだ?」
「光の速度を上回ると、未来ではなく、過去に行ってしまうのだ」
「そうするとどうなるんだ?」
「ループだ!俺たちはループから出られない!なんてことだ!」
同じところをぐるぐる回るバルタザールとホルミスダスの会話にイライラして、
バダダハリダはますます地団駄を踏みます。
「せっかくまっすぐ進もうとしたのに、まっすぐ進んでもループになるなんて!? それもこれも真っ直ぐ進みすぎたからだなんて!? ああイライラして地団駄が止まらない!」
こうして3人はどこまでも落ち続けていくのでした。

(来年のクリスマスに続く)