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2012年07月

メロドラマとはアクションのあるドラマだ! 『ストリート・オブ・ノー・リターン』

サミュエル・フラーはアメリカで多くの低予算映画を作り上げた名監督だ。
この手の職人的映画監督にありがちな話だが、本国よりもヨーロッパで高い評価を受けて、私の大好きなゴダールの『気狂いピエロ』にも本人役で出演している。
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そこでは「映画とは何か?」という質問に対して、
映画とは、戦場のようなものだ。愛、憎しみ、アクション、暴力、そして死。要するに、エモーションだ
と答えていた。
クリエーターがこの手の質問に答えたときに、いつも注意しておかなくてはいけないことだが、彼らの答えは決して一般論として受け取ってはいけない。全く一般性を欠いた、「彼にとっての彼の作品」だと思って聞くべきだ。
そしてこれは、サミュエル・フラーの作品についての言葉としては、どこまでも正しい。

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そしてそのサミュエル・フラーが残したもう一つの言葉が、
メロドラマとはアクションのあるドラマのことだ
である。これだけだと、いまいち意味が分からないが、そんな人は『ストリート・オブ・ノー・リターン』を見ればよい。
「メロドラマ」と言う言葉は、もともとは「メロディ+ドラマ」であり、18世紀にドイツやフランスで音楽を使って見る者を扇情しようとしたことから始まった。
それから転じて、深く考え込ませるよりは、衝撃的な展開を立てつづけに起こすことにより、浅く観客の情緒に訴えかけるドラマ形式を、(時として侮蔑的に)表す言葉になった。
この「衝撃的な展開」の部分がフラーにとっては、「展開」などといった言葉で表せるものではなく、映像でしか表現できない「アクション」だ、と言うことを彼の言葉は表している。
そして彼の映画は正にその通りにつくられている。
『ストリート・オブ・ノー・リターン』の主人公は、かつて歌手としてトップスターの座まで昇りつめながら、ギャングの情婦に手を出したがために、喉を切り裂かれ声を失い、ホームレスにまで身を落とした男だ。
彼はそもそも言葉を奪われている(多少かすれた声を出すことはできるが)。だから、彼はその目で、その体で、アクションで語らなければいけない。
これは映画として、非常に良い設定だ。この与えられた試練を乗り越えたキース・キャラダインは素晴らしい(いつの間にこの人、変な映画専門になっちゃったんだろ?)
この映画では、感情の動きが言葉ではなく、まず映像で、それもとびきり鮮烈な映像で表現される。
冒頭の白人と黒人の暴動シーン。見る者はいきなり、映画の中に引き込まれる(かつて事件記者として、暴力暴動差別の現場に踏み込んだ経験が生きているのであろう)。
突然挟みこまれる回想シーン。見る者は、混乱を覚えながら、主人公の記憶を共に探る。
ベッドルームでの、眩暈を覚えるカメラの回転、少しずつ曇ってゆくシャワールームのガラス。どれも素晴らしい。
特に、警察の誤認逮捕から逃げてきた主人公を助けたガラクタ屋が、主人公が昔とったプロモーションビデオを見せようとするシーンが最高である。そこまで小出しにされていた、その撮影時に主人公とヒロインが最初に出会った、(主人公の歌の)プロモーション・ビデオが、ボロボロになった主人公の前に流れて、彼は何とかそこから逃げようとする。テレビの上では、絶頂期だった主人公とヒロインの姿がある。そして歌われる歌は「ストリート・オブ・ノー・リターン」、もうあのころには二度と戻れない。
現在のみすぼらしい姿の男と、かつてのスターの姿が重なり合う。
ベタベタだ。ベタベタだが、このベタベタさこそがメロドラマなのだ。
それを言葉ではなく、絵で見せてくれることがどこまでも快感だ。

あと、この映画には、ニコニコ動画では『コマンドー』で「キャでラックは好きだ」とか「怖いかクソッタレ!当然だぜ、元グリーンベレーの俺に勝てるもんか!」や『プレデター』の「いたぞぉぉぉぉっ!!」などの吹き替えセリフで人気のあるビル・デュークが警察署長の役で出演している。実は映画監督もしているこの人、ここでもいい演技をしているのであるが、見どころは、かつて自分から女を奪い破滅させたギャングが、警察署長を失脚させ、その椅子に自分の傀儡を具え付けようとしていることを知った主人公が、警察署長にそのことを知らせるシーンだ。
そこで彼は言う。
「あんたのこと、絶対に忘れないぜ」
でも、実はこの警察署長は、下っ端時代に、喉を切られ病院の前に放置された主人公の警備を担当し、家族のためにサインも貰ったことがあるのに、落ちぶれた主人公には気付かない。だから「忘れない」も何も、もうとっくに「忘れている」のだ。
こんな皮肉なシーンが撮れるのも、フラーの手腕である。
そこから、クライマックスの警察突入シーンも文句なしだ。なんか、催涙ガスっぽいものを入れたわりには、だれもガスマスクなしで咳き込む様子はないが、あれは画面に霧を立ち込めさせて、シーンの雰囲気を盛り上げるためのものなんだよね。警察も粋なことをするなあ(棒読み)。

そして最後のシーン。ご褒美としてウィスキーを貰った主人公は、ホームレス仲間のところに帰ってしたたかに酔って眠ってしまうのだが、彼のところに、彼によって救われた女が訪れ、そしてふらふらの男に肩を貸しながら2人は通りを歩いて行く。
一体どこに行くつもりなのだろうか。多分、いくところなどどこにもないだろうに。2人とも、ほとんどすべてを失ってしまったであろうに。
すべてを失って、愛だけを得るなんて、現実的にはとてもハッピーエンドとは言えないけど、これもメロドラマティックで実によいではないか。
2人は今も、あの「ストリート・オブ・ノー・リターン」を寄り添って歩いているのであろう。

買ってしまった……

どうしようか考えてたけど、結局買ってしまった『Panty & stocking with Garterbelt』北米版DVD
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決断の理由は「extra」に「吹き替え女性声優の五分間耐久げっぷ大会」が収録されていると聞いたから。
酷過ぎて素晴らしすぎる。
うちのDVDプレイヤーでは再生できないと言うのに……(パソコンでは見れるけどさ)

しばらくはみている暇がなさそうなので、レビューはまた今度。

日英畳語オノマトペの法則

「畳語」とは「人々」とか「国々」などのように同じ言葉を二回続けた語のことである。この2例はどちらも、複数あることを意味するが、その他にも「時々」や「返す返す」などの副詞的用法、「騒々しい」「白々しい」など形容詞の語根、「とてもとても」などの強調など、様々な機能をもつほか、「めめ」「てて」などの幼児語にもなる。
そして、なによりこの用法を見かけるのが、日本語に豊富な「オノマトペ(擬音語、擬態語)」の中にである。

しくしくむかむかいらいらざわざわめらめらもくもくぐらぐら

みな同じ言葉を正確に二回続けている。上記の文法的機能を持った例に比べて、二個目の語頭が濁ることも少ない。

ここで英語の例を見てみると、本来インド・ヨーロッパ語族には畳語の例は少ないのだが、俗語の豊富な英語には、数多くの畳語的オノマトペを擁している。

Flip-flop Zigzag Cling-clang Ding-Dong Tick-Tack Bow-wow

ジグザグやチックタックは日本語になってしまっている。
Bow-wowだけは違うが、みんな一個目と二個目の言葉で母音が変化している「アプラウト的畳語」になっている。

そこで日本語にもこのアプラウト的畳語を導入してみたらどうか、と言う実験である。

彼女は悲しみにしくさく泣いた。
僕は彼女のそんな姿に次第にむかみかしはじめていた。
いらおらしているといつの間にか窓の外がざわぜわしている。
窓から顔を乗り出すと、なんと僕たちがいる建物がめらむらと燃えているではないか。
もくめくと煙が部屋の中に入りはじめ、建物がぐらげらと揺れはじめる。

どうだろうか、なんだか英語っぽくなっていないだろうか。
なっているわけないわな。

ちなみに英語で、flimflamというと「ぺてんにかける、ごまかす」と言う意味になるらしいよ。


追記:後で思い出したけど、「Mumbo Jumbo」=「意味のないでたらめ」とか、「Bow Wow」型の、最初の子音が変わるバージョンも結構あるんだよな。
『My Little Pony』を見てるときには、子ポニーが「Super-duper~」=「超スッゲー~」ってよく言ってる気がする。
追記の追記:あと「okey-dokey」とか「okey-dokey-smokey」とか

自然は真空を嫌う

子どもに科学実験をしていると、アリストテレス自然学が人間にとって「自然な考え方」なんだな、と思える瞬間に多く立ち会う。

例えば、ペットボトルの側面に熱した釘で小さな穴を開けて、水を一杯に入れて蓋を締める。すると穴が開いているのに、水は落ちない。
この理由を子どもに問うと、中学生で圧力の授業をすでに受けた子でも、多く
「これで水が出ちゃうと真空が出てくるから」
というアリストテレス風の「自然は真空を嫌う」という方針で説明しようとする。
実際、液体が水で、穴が一つだけだと、これを否定するためには、穴の上に十メートル近くの水の入れ物の柱を立てなくてはいけない。すると穴における水圧が気圧を上回り、水が流れ出て、容器の上部に真空が出来る。(マグデブルクの市長であり、発明家・科学者のゲーリケはこれをやって、天気の良しあしと水面の高さに関係があることを発見していたらしい。彼は理解できなかったが、後から考えればこれは気圧と天気の関係の発見である)。

手軽にこのアリストテレス自然学に疑問符をつけるためには、一個目の穴と同じ高さに二個目穴を開ければいい。これでもやはり水は落ちない。
しかし穴の高さが違うと、上の穴から空気が入り、下の穴から水が出る。同じ高さに穴をあけた場合でも、傾ければ同じことが起きる。
それどころか、ペットボトルに水平に切れ目を入れて、上部をへこませて、下部をまるでバルコニーのように飛びださせても、端が水平なら決して水は落ちない。しかし、切れ目が斜めになっていると、やはり下の方から水が流れ出て、上から空気が入ってしまう。
パスカル以降の圧力の物理学ではこれは、
「下の穴には水圧と、上の穴にかかった気圧の両方がかかるので、気圧よりも強い圧力が外に向かってかかる。よって、それを抑えようとする気圧に打ち勝って外に水が流れ出る」
と説明される。
もちろん、学説と言うものは一つの疑問符では揺るいだりはしない。アリストテレスにこの実験を見せたら、
「同じ高さの穴では、どちらが水の出る穴で、どちらが空気の入る穴かを、自然が決めかねるので、膠着状態になって、なにも起きないのではないか」
と言うかもしれない。
そして圧力による説明と、アリストテレス自然学の説明の間には想像以上に深い溝がある。
それは「質による説明」と「量による説明」だ。
アリストテレス自然学はあくまでも質による説明で、「自然はこういう性質を持つからだ」と言う。だから、言葉の解釈で、微調整がしやすい。
しかし近代物理はあくまでも、量である「圧力」のどちらが大きいかによって説明する。もちろん式をいじって微調整することはできるが、融通の効かない部分がある。

もちろん歴史において、勝利したのは後者だ。様々な真空現象の発見により、アリストテレス自然学の中心学説であった「真空恐怖」が否定されてしまい、「真空恐怖」に頼らずに、普段の空間に真空が見当たらないのを説明することが圧力説にはできるからだ。

しかし、それにもかかわらず、子ども、いやそれだけでなく大人も、やはり精神の深いところでアリストテレス的考え方を捨てていない。
人間にとって自然なのは「質による説明」で、「量による説明」は多くの人間にとって窮屈でなじめないものらしいのだ。

メイクはチャチだが、ロジャー・コーマンの地味な佳作 『蜂女の恐怖』

ネタに困ったらロジャー・コーマンの映画をレビューする流れに……
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でも前回の『X線の目を持つ男』と比べたら、特に語ることもないかなあ。
DVDのジャケットがネタバレだが、蜂女のメイクというかかぶり物がチャチいとか、この蜂女、翅もないのにブンブン羽音がして変だなとか、ポスターの「蜂女」が顔と体の変換が逆で嘘じゃねえか! とか、でも全体的には出来が良くて普通に楽しめる優良低予算映画(さすがコーマンだね)だとか、なんだか語りつくされたことばかりしか語れない予感。

無理やりこじつければ、スズメバチのローヤルゼリーから抽出した「若返り成分」を注射することによって、「蜂女」になってしまうのは、科学的には馬鹿らしいが、呪術的にはフレイザーの『金枝篇』にいう「類感呪術」、すなわち「結果は原因に似る」であり、様々な通俗物語に出てくる似非科学の多くは、これと同類であり、我々の直観的な部分には、相変わらずこのようなプリミティブな部分が残っていることが証明できる、みたいな議論を展開できるが、これもなんだか他の人がどこかで展開していたような気がするので、やめる。
そして今日はつかれているのでさっさと寝よう。
初版 金枝篇〈上〉 (ちくま学芸文庫)初版 金枝篇〈上〉 (ちくま学芸文庫)
著者:ジェイムズ・ジョージ フレイザー
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