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2013年02月

『時の支配者』について語り残しがあったので

以前書いたルネ・ラルーとメビウスの『時の支配者』についての記事に語り残しがあったので追記しておく。ほんとは書くつもりだったんだけど、筆が弾んで話題がずれて、書くのを忘れてしまったんだ。
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出版: IMAGICA
(2005-03-10)






アニメーション制作の大きな問題は、人件費である。
1930年代から50年代のアメリカン・アニメーションの第一期黄金時代が終焉したのも、度重なるストライキで賃金が高騰し、作品製作が不可能になっていったことが一つの原因だ。MGMがアニメーションスタジオを閉鎖した1957年を一つの節目だとわたしは考えている。(ちなみに、ディズニーでのストライキにはソ連のスパイが関わっているという説もあるらしい。ほんとかよ)

アメリカのアニメーション業界が復活するのは1990年前後、そしてそこから現在まで第二期黄金時代が続いていて、そろそろ終わりが来るのではないか、ほらなんだか似たような作品ばかりになってきたではないかと、年のいったファンはいらない心配をしたりしていたりするのだが、今のところ『アドベンチャータイム』とか『レギュラーショウ』とか『マイリトルポニー』、いい作品が出続けている。それを支えているのは、韓国による作画下請けシステムだ(日本のテレコムも、アメリカのアニメーションの作画下請けをして、こちらより向こうのアニメーション業界で有名な気がする。いい会社なのに)。日本もまた80年代からは、韓国による下請けなしで業界を支えることは考えられない。
アニメーションというものは、賃金の安い被搾取国の存在なしではありえない芸術形式なのだ。

フランスだって事情は同じ。フランス人雇ってアニメーション作るなんて、無理な話である。
では、どの国から安い労働者を雇うか。そこには地理的な問題が絡むので、ヨーロッパでは解決策が異なるのは当然であろう。
例えばシルヴァン・ショメの傑作『ベルヴィル・ランデブー』は作画をカナダに下請けしていた。カナダは国営スタジオNFBもあるし、アニメーションには強いし、フランスとの関係も深いが、果たしてフランスと比べて賃金が安いのだろうか? と不思議に思ったものだ。
ルネ・ラルーでは『ファンタスティック・プラネット』が、当時のチェコ・スロバキアで制作している。チェコはアニメーションの盛んな国の一つだが、当時は鉄のカーテンの向こう側である。それほど交流も盛んではなかろうし、実際合作は大変だったという。
さらに、最後の長編『ガンダーラ』と最後の短編『ワン・フォはいかに助けられたか』(マルグリッド・ユルスナールの短編集『東方奇譚』で一番印象に残る作品『老絵師の行方』である)の制作はなんと北朝鮮で行っているという。やはりフランス人、共産主義好きなのか?

で、ようやく(今回も盛大に話がずれている)本題だが、『時の支配者』はフランス・ドイツ・ハンガリースイス共作とあるが、エンドロールをみたところ、作画の主力はどうやらハンガリーのようだ。また共産主義国か。
でも、私はハンガリーのアニメーションも幾つか見たことがあって、結構好きだったので、テンションが上がりはじめていたところ(エンドロールでテンションを上げてどうする)、あったのだ。スタッフの中に。知っている名前が。

「お! イシュトヴァーン・オロスいるじゃん!」

以前記事に書いたように、エッシャー的なアート・アニメーションを作る職人アニメーターで好きなのだ。
その人が若いころに関わっていた作品が分かる、というのはそれだけで得した気分になれる。

あと、下請け会社の名前が「パンノニア・フィルム・スタジオ」で、これがハンガリー最大のアニメーションスタジオらしいのだが、ダニロ・キシュの『砂時計』を読んでから、なんか「パンノニア」という地名がおどろおどろしいものにしか聞こえなくなってしまった。
砂時計 (東欧の想像力 1)砂時計 (東欧の想像力 1) [単行本]
著者:ダニロ・キシュ
出版: 松籟社
(2007-01-31)

RWBY-whiteはやはり白雪姫 もしかして全てグリム童話でいくのかな?

RWBY -white-のトレーラーが来てたので、とりあえず貼っときます。

相変わらずメリハリが効いてていいですなあ。
残り二作が楽しみです。
赤頭巾、白雪姫と来て、次は……?

第一作はこちら

あえて削る勇気 ワンアイディアで押し切る意気込み 『スカイ・ライダーズ』

様々な芸術形式の中で、一番「夢」に近いのが映画である。
映画館が暗くなる。スクリーンが輝き始める。そして、この世界とは違う世界が開闢する。
その多くは見て、そして忘れられる運命にあるのも「夢」と同じだ。。
そこには教訓もないし、哲学もないし、人生観を変えもしない。
それでいい。それでこそ映画なのだ。

でもやっぱり、そこに何かあればいいと思う。深い含蓄があれば、誰かの心に感動を与えられれば。
もちろんそうだ。それが上手く行けば申し分ない。
そう言う映画がたくさんあることも僕は望む。
でも、そういう願いが必ずしも映画を良いものにはしてくれない。
だから思い切って、そう言うものを捨てて、単なる娯楽を追求し続ける勇気も欲しい。
というわけで、『スカイ・ライダーズ』である。
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出演:ジェームズ・コバーン
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(2011-05-20)
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主演はジェームズ・コバーン。渋い。『荒野の七人』や『大脱走』の30代のイメージが強いから、かなり老けてみえるけど、まだギリギリ40代。ていうか経歴調べて、デビューが31歳てのにちょっと驚いた。軍歴が長いのね。『天使にラブソングを2』に出てた頃は完全におじいちゃんだったな。
そのジェームズ・コバーンがさらわれてしまった、離婚した元妻、自分が親だと伝えてない息子、そして再婚相手と元妻との娘を、助け出すために「世界革命云々」とかいう過激派左翼と戦うお話。
この過激派左翼が、すがすがしいほど単なるクズなのがよかった!
普通どうしても悪役にも一分の理を持たせたがるものだが、まったく描かない。テロリストになった理由が、デモを平和的に行おうとしたのに、警官に殴られて、政府は力づくでないと動かせないことを学んだとか、あまりに薄っぺら。作中で、白けた拍手されて「ご立派」とか言われるのも頷ける。テロリストの女も出てくるけど、何のキャラ描写もされなかった。
でもいいのである。そんなの描いてる時間はないのだ。
この映画の肝は非常に単純。ギリシャ正教の聖地メテオラ、高さ500メートル以上の奇岩の上に立つ修道院でロケをする。そして、にょきにょき生えた岩の間をハングライダーで飛ぶのをとろう。
それだけだ。
あとは、それが盛り上がるように全てを準備するだけ。
昼間、フィルターを掛けて撮影しているだけとは分かってるけど、暗い中をハングライダーで飛ぶのはドキドキする。特に飛び出した岩の近くをすり抜けるところは、背筋に悪寒が走る。素材が少ないのか、なんか同じ映像を使い回してるような気がするのも、撮影の大変さを思わせて愛嬌と言えるかもしれない(そうかなあ)。
わざわざ相手と同じ周波数の無線を使っているのも、少し考えると意味が分からないが、夜の飛行の静寂感と緊張感を演出するためと思えば、正当化できるかだろう(無茶苦茶だ)。
静かで緊迫した夜のシーンから一変、昼の光の下での派手な銃撃になるのもいい。銃弾飛び交うなか、命を掛けてハングライダーで飛び立っていくところは手に汗握る。全員がなんでかわざわざ銃撃の激しいところに吹き寄せられていくのは、そういう風でも吹いてんのかよく分からなかったが(一言セリフがあればよかったかも)、もどかしさを演出していると考えれば、良かったと言えばよかった(奥歯に物が挟まってますよ)。
もうこれだけで、この映画はいい映画だと断言できる。
だから、ジャケットがにもなってるポスターの「ハングライダーから機関銃を撃つシーン」が本編に存在しないことなんか、小さな瑕疵に過ぎない。僕は大人なので、そんなことで怒ったりはしないのだ。いい加減慣れた。

いや、ほんとにいい映画なんだってば。この書き方だと皮肉に聞こえるかもしれないけど。
こういう大雑把で、割りきった映画というのが、もっとたくさんなきゃいけないと思ってる。
そう考えてみると、『新幹線大爆破』は割り切れてなかったかもしれないな。
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80キロ以上に加速したのち、80キロ以下に減速すると爆発する爆弾を新幹線に仕掛けるというこのオールスター勢ぞろいパニック大作のこの作品。『スピード』の元ネタになったのでは、などで日本でも今ではカルト作品となっているが、撮影に国鉄側の協力が得られなかったことも響いたか、放映当時日本ではあまり受けなかった。評価は、海外から始まったのだが、海外版と日本版では大きな違いがある。
それはテロリストの描写である。日本版では、高倉健をはじめとするテロリストたちに、「社会の負け組」に対する同情のこもった視線が送られ、そのバックグラウンドもかなり詳しく描かれる。時代もあって、そこに挫折した左翼が出てくるのも、『スカイ・ライダーズ』と比べられる。
しかし、海外版ではその描写はあっさりと削られ、単なるテロリストとして描かれる。
実はそれが、ヒットの要因なのかもしれない。
別に僕は、海外版の方が質が高いとは言わない。オリジナル版のほうが当然好きだし、尊重されるべきだと思う。
でもこれって、スターは集めてるけど、良質な娯楽作で、要はB級映画でしょ、という気がするのだ。だから、この作品の「格」から言うと、海外版の方が正解ではないだろうか。
そちらの方が文句なしの一級のサスペンスである本編の中心部分により焦点が当たる。
そこに不必要な、テロリスト側の動機とか背景とかの詳細な描写を入れたから、B級映画としては長くなりすぎてるし、主題がぼやけてしまっている。
僕がこの作品を思い出そうとして思い浮かぶのは、「ブラジルに行きてえなあ」と呟く何も考えてなさそうな高倉健とか、爆走する新幹線の中で一心に「南無妙法蓮華経」と太鼓叩いて唱える集団とか、冒頭の爆破される汽車とか、本編の中心ではない部分だったりする。新幹線の描写って、あんまり印象に残ってない(国鉄が協力してたら変わってたかも)。ゲリラ撮影とか、模型をシュノーケルカメラで撮るとか頑張ってはいるけどね。
結論を言うと、この作品は娯楽作でありながら、娯楽作に終わらない部分を入れようとして、それが必ずしも成功してなくて、歪になってると思う。
その歪な部分が、この映画のかけがえのない、愛しい部分である。ビデオ化されたあと評価され、長くカルト作として語り継がれる要因であろう。見る物の愛情がこの作品をより面白くする(つまらないとは言ってない。世の中には、駄作なのに、見る物の愛情だけで面白いことになっている作品もある。これはそれとはちゃんと一線を画している。そのままでも、かなりの作品だと思う)
そして、これが同じ文脈で語られやすい真の傑作『太陽を盗んだ男』との埋められない差であろう。
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出演:沢田研二
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こちらでは、テロリストである主人公の、動機のなさ、バックグラウンドのなさを、気味が悪いまでの描写している。なさを描写することに成功していることで、この作品は単に歪であることを越えて、凄みを感じさせる。娯楽作を越えて、しかもちゃんと娯楽作になっている(娯楽作であることを捨てる、という選択肢もあるものの、娯楽作であり続けようとする方が、茨の道であることが多い)。削って良い部分などどこにもない。
こちらは見る物の愛情と関係なく面白く、なにしろ傑作なのである。

『スカイ・ライダーズ』の話を書くつもりが筆が乗って色々書いてしまった。

Sex&Violenceだとハリウッド映画だが、

Sex&Domestic Violenceだと急に生々しくなって、ハリウッドじゃなくなる。

「日本コンダラ製鉄会社」のウェブページが無くなっていて隔世の念を覚える。

ふと魔が差して日本コンダラ製鉄会社のウェブページを見直してみようと思ったら、なんと、無くなってるではないか。
日本で様々な意匠を凝らしたオーダーメイドのコンダラを販売していた唯一の会社だったのに。
不況のあおりを受けて、ひっそりと店をたたんでいたとは……
惜しいことである。
あの、傑作ウェブページだけは、誰かが再現して跡地として残しておいてくれないものか。

internet archive(日々変化していくinternetの世界の様相を保存しようとしている、時の流れに抗う偉い人たち)によると、2010年まではページが存在していたようだが、2012年の6月には消失しているらしい。ありし日の姿を見たい人は、どうぞこちらへ。


ヴァレンタインになに挙げてんだか……
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