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2015年10月

都市の環境再生について

 続いては特集です。
 一人の市民の熱意が都市の環境を再生し、美しい一年のサイクルを復活させるまでの感動のドキュメントです。
 ここはとある都市の郊外、そしてこちらの人が原田さん、一見普通の主婦に見えますが、実は今回の主役です。まずは原田さんに町を案内してもらいましょう。
 「私は実は小さいころ、ここで育ったんです」
 時代は高度成長期の真っただ中、国の大動脈である高速道路網が国土の隅々にまで伸びていった時代です。原田さんも、刻一刻と様相を変える町の景色を目の裏や、心の襞に刻み付けながら育ちました。
 「家からはもちろん、よく遊んでいた公園からも、学校の窓からも、どこからでもこの高速道路が見えていました。そしてその上をビュンビュン走っていく車の音もいつも聞こえていました。私たちにとって、高速道路は遊び場であり、学び舎であり、いつも見守ってくれていたお母さんのような存在でした」
 原田さんは地元の高校を卒業した後、故郷を離れます。山間部の大規模農場で作業員や事務員として働き始めたのです。
 住み慣れた都市から離れた田舎暮らしは慣れない苦労の連続でした。しかし原田さんは懸命に働き、同僚と結婚し、二児を得て、幸せな家庭を築きあげました。そんな中、残してきた故郷のことが急に懐かしく思い出されるようになったのです。
 ところが久しぶりに帰ってみた故郷の光景は原田さんを驚かせます。
 「本当に目を疑いましたよ」
 幾度もの長い不況に見舞われて、すっかり都市は荒れ果て、かつての美しい輝きを失ってしまっていたのです。
 特に原田さんを悲しませたのは高速道路の惨状でした。
 「見てください」
 原田さんが持っているのは、原田さんが子どものころの高速道路の様子です。
 「美しいでしょう。それにこんなにもたくさんの車が行き交っている。本当に風景全体が生き生きしているみたいです。今度はこっちを見てください」
 もう一枚の写真は原田さんが故郷に帰ったばかりのもの。手入れもされていないので塗装は剥げ、アスファルトは捲れ上がり、通る車の影も見当たりません。
 「ひどいでしょ。本当に悲しかったんです」
 このありさまを目の当たりにした原田さんは今や誰も住まなくなった都市の郊外にあえて引っ越しをすることを決意したのでした。
 「友人たちや仕事の上司はみんな反対しました。どこで仕事するんだ、子どもの学校はどうするんだって。でも夫や子どもたちだけは理解してくれたのです。家族の協力がなければとてもできないことでした」
 仕事をやめ故郷に戻った原田さんは、内職をしながら、高速道路の掃除を始めます。
 「最初はずいぶん馬鹿にされました。そんなことしてなんの意味があるのかって」
 実際、ごみを拾ってアスファルトを舗装しなおし、標識や街灯の交換をしても車は戻っては来ませんでした。
 悩んで心が折れそうになった原田さんを救ったのは毎日遠い農村まで通勤して生活を支えてくれる夫の一言でした。
 「専門家に訊いてみたら、って言われたんです。何気ない一言だったんでしょうけど、目の前のことに夢中すぎて、私には気が付けなかったことでした」
 原田さんは車の生態に詳しい東西大学の河野教授に質問の手紙を送ります。
 「返事があるなんで全く期待してませんでした。でもすぐにこの手紙が帰ってきたんです」
 そこには原田さんが知らない様々な車の生態について書かれていました。例えば車は電磁波をキャッチする能力があり、それに従って進む方向を決めること、また車には生まれた場所に年に数回帰ってくる本能があり、それを「帰省ラッシュ」と呼ぶことなどです。
 原田さんはそこで、ラジオ局を作って交通情報を流し車を誘導することを始め、また一年に一回最初は数台ずつでしたが車を高速道路に放流し始めました。
 「これでもし何の効果もなければやめよう、と本気に思ってました」
 しかし次の年のお盆、小規模でしたが放流した車が帰ってきたのです。帰省ラッシュが復活した瞬間でした。
 これをきっかけに協力者も現れ始めます。最初は原田さんの活動を冷ややかに見つめていた他の住民たちも、これが地域を復活させる鍵になるかもしれないことに気づいたのです。
 今ではラジオ局ではプロのDJを雇って、交通情報だけでなく流行のポップソングを流し、車の放流も毎年恒例となって一回に何十台と放します。
 盆や正月などの帰省シーズンにはには、かつてのような大渋滞が起こるようになりました。町の上空からけたたましいエンジン音やクラクションが鳴り響きます。高速道路に生命が帰ってきたのです。
 「時間は戻せませんけど、でもあの頃の高速道路だ、という感じはしますよね」
 原田さんはよみがえった高速道路を感慨深げに見つめます。その手には子どものころの友達の写真が握られています。実はこの写真には複雑な思い出があるのです。原田さんにとって高速道路は単に優しいだけの場所ではなかったのです。
 原田さんの子どものころの友達、この山田君は高速道路で遊んでいる最中に不幸な事故で亡くなってしまっていたのでした。
 「高速道路の上の歩道橋から走っている車の上に物を落として遊んでいたんです。当時のこの周りの子どもたちならみんなやっていたお気に入りの遊びでした。そのとき柵から身を乗り出しすぎた山田君が下に落ちてしまったんです。すぐに大人を呼びましたけど、山田君は何台もの車に轢かれて、ズタボロになっていました」
 原田さんの目に涙が光ります。
 「彼のことは忘れられません。高速道路は子どもだった私たちに、世界というのは優しいだけでなく、残酷なものでもあることを教えてくれていたのです」
 実際当時の高速道路は危険なものでした。交通量があまりに大きくなると、氾濫し、溢れ出した車が町を蹂躙することも頻繁に起きていました。もちろん今は建築技術が向上し、そのようなことは滅多に怒らなくなってはいます。しかしそのような荒れ狂う科学技術の姿は幼い原田さんに強烈な印象を与えたのでした。
 「今の子どもたちはみんな森や川なんかで大自然に囲まれて遊んでいます。しかしそこには何かが欠けているような気がしてならないのです。もっとみんなアスファルトやコンクリートでできた場所で遊んだり、『コンボイの謎』や『ソード・オブ・ソダン』などのビデオゲームで遊んで世の中の理不尽さを思い知るべきなのではないでしょうか?」
 原田さんは都会ですくすくと育つ我が子の姿に目を細めながら言います。
 「携帯電話なんて絶対に触ろうとしなかったうちの子たちも今ではすっかり都会っ子ですよ」
 そんな原田さんに最後に、この地域に昔から伝わる伝統的な漁の方法を聞きました。この漁が行われるのは、盆や正月などの帰省シーズンに車が大渋滞して、動かなくなった時です。
 漁をする人たちは塀に身を潜めて、チャンスを伺います。車の動きが止まった瞬間を狙って、飛び出します。もし車が動いていると大変に危険なので、このタイミングはベテランが慎重に決めます。
 そして止まっている車の一つに狙いを定めると、ハンマーで素早く窓ガラスを割り、中に拳銃を突き入れます。そして金品などを強奪し、急いで帰っていくのです。ある程度慣れてくると、どの車を狙うべきなのか、外見から分かるようななるそうです。
 もし車が子持ちだったら、その子どもも取っていきます。持って帰った子どもはその日のうちにおいしく食べてしまうらしいですよ。
 「こういうことをしてると、本当に子どものころを思い出します。なんか、今までの努力が実ったんだ、ってことを強く感じる瞬間ですよね」
 一仕事をした汗をぬぐって、笑顔でそう語る原田さんなのでした。
 さて、次はスポーツコーナーです。

想像されたおっさんの記録

 理解も想像もできない理由で続けられるつまらないくだらない話を聞き続けることにようやく遅すぎる見切りをつけ、俺は尻の痛いパイプ椅子の上で一人静かに目をつむった。自らの内面の沃野に遊ぶためだ。
 そこにいたのはおっさんだった。そこはどうやらオフィスの仕切られたブースの一つの中。机の上にはでんとデスクトップパソコンが鎮座し、キーボードが埋まるほど様々なものが乱雑に置かれている。中でも多いのが紙紙紙。あと何かのマニュアルらしき揃って真四角で白を基調にした本が雪崩を起こしそうになりながら積み重なり、それに辞書、携帯端末、タブレット端末、ラップトップパソコン、USBメモリ、シャープペン、ボールペン、修正ペン、修正テープ、消しゴム、時計、家族が写っていると思しき写真立て、空のコンビニ弁当、中身の入ったコンビニ弁当、ガムや飴の包装紙、仕事と関係なさそうな文庫本、などなど。
 彼は今、オフィス用の高級リクライニングチェアの背もたれに深くもたれて指を組み、左右の親指をくるくる接近した連星のように互いの周りを回転させ、椅子自体もくるくる回している。仕事をしている風情には残念ながら見えない。
 いったいこのおっさんは誰だ。俺はもっと美しく広大な想像の桃源郷を瞼の裏に見るために目をつむったのであって、こんなおっさんを見たかったわけじゃない。こんな仕事を進めあぐねているおっさんを見たって、何も浮世の憂さが晴れぬではないか。
 恒星間を微弱に加速しながら飛び続ける世代宇宙船、打ち捨てられた古代遺跡の中にひっそりと眠る巨大な思考機械、時空が結晶化して世界が滅びていく間も続く優雅なお茶会、はるかな未来の地球の上をさまよい続ける退化した我々の子孫と主を失った殺人機械たち。
 そういうものこそ想像に値すると言えないだろうか。
 そんなことを考えていると、俺に想像するに値しないと断罪されたおっさんが急にこっちを見た。つまり俺の方を見たのだ。こっちとか俺の方とか言ったって、俺はおっさんの存在する空間に存在していないのだから、俺の視線の根本の方向とでも言う以外にいい説明が見つからないが、要するに急に回転を止めて、俺と視線を合わせたのだ。視線を外そうにも、どうも俺の視点は空間の一点に固定されているようで、寸とも動かない。これでは想像の羽を広げて飛び回るどころか、想像の世界に捕らわれた囚人だ。
 「おいお前!」
 おっさんが急に叫んだ。どうやら俺に叫んでいるらしい。
 「お前だろ!? 俺を想像しているのは!」
 俺の存在しない顔の中心に突き刺すように指を突き出して、禿げかけた額に脂汗を滲ませながら、顔を真っ赤にして叫んでいる。
 「俺を想像するのをやめろ! 俺はお前に想像してくれなんて頼んだ覚えはないし、お前のご想像に任せたこともない。俺は誰かに自分をご想像にお任せするなんて、絶対死んでもやらねえぞ」
 一体何を急に叫び始めるかと思ったら、そんなことか。俺だって好きで想像してるわけじゃねえや。できればもっと楽しいものを想像するわい。
 「俺はここ数か月ずっと気づいてたんだ。誰かが俺を想像してるってな。とうとう見つけた! とうとう尻尾を捕まえたんだ。そうかお前だったのか」
 いったい何の話だ。俺は今までお前を想像したことなんかない。これが初めてだ。言いがかりはよしてくれ。
 「お前に分かるか。どこの誰とも分からない奴に想像されてるっていう気分が。俺はずっと仕事にも手がつかず、このままじゃクビ確定だ。女房子どもも俺に愛想をつかし、確実に出ていってしまうだろう。それもこれも全部お前のせいだ」
 どうやら俺の声は向こうには届いていないらしい。
 「俺は最後の賭けに出たんだ。お前を想像してやろうとしたんだ。いったい勝手に俺を想像しようなどという卑劣漢はどんな顔をしてるかなあ、どんな生活を送っているんだろうかなあとか。毎日毎日想像続けたんだ。瞼の裏が熱くなるくらい強く目をつむって、お前の顔を思い浮かべようとし続けたんだ。ハッ! 予想通りだ。予想通りのクズで自堕落な野郎だよ、お前はよ」
 男のいるブースの周りが急にざわついているのが視点の固定された俺からでも分かる。どたどたと足音がして、警備員の服装をした人間が二人ほど現れて、男をどこかに連れていこうとする。男は腕を振り回して抵抗しながら、俺の眼を見据え続ける。
 「俺はお前を逃がさねえぞ。お前が俺を想像するのをやめようとしないなら、俺にだって手がある。俺は死ぬまでお前を想像するのをやめないからな。覚えとけよ。お前が寝てたって糞してたってsexしてたって、俺がその姿を想像してるってことをよ。この世界のどこにもお前の逃げ場はねえからな」
 と喚きながら男はどこかへ連れていかれてしまった。
 そのとき急に周囲に動きがあった。一緒に話を聞いてた同僚たちが立ち上がったのだ。どうやら皆何らかの指示を受けて、さっそくどこかへ仕事に向かうらしい。
 俺も何らかの仕事の指示を受けたのだろうか。そう考えるのが合理的に思える。しかし、いったい何の?
 一人だけ座ったままなのも怪しまれるので、とにかく立ち上がった俺は、渡されたものの一切読んでない資料を書類カバンに突っ込んで、部屋から出てトイレに向かった。
 そして個室に入って、下を穿いたまま洋式便座に座って目を閉じる。
 何も見えてはこなかった。

暇があればコード書いてるせいで記事を書くのをさぼっていた

プログラミング面白いわ。
いろいろ書いてると小説やら評論やら文章のネタはいろいろ出てくるけど、そんなことよりコード書いていたい気分だ。
やはりある程度の規模のものを書いてみないと、原語の長所短所はわからないな。
プロじゃないしプロになる気もないんで「驚き最小の原則」なんてなんのその。
「PHPの使用ではそうなってんの!?」
 と驚かされるほうが面白い。「驚き最大の原則」が生きるモットーである。
三項演算子の結合則とか暗黙の型変換とかCoWとか配列の一つを参照するとか、いろいろ落下可能な落とし穴にはすべて落ちる勢いで楽しんでいる。
「落下可能な落とし穴にはすべて落ちる、躓ける段差にはすべて躓く」
ううむ、よい人生とはこうあるべきであるな。自分で言ってて何を言っているのかわからなくなってきたが。 
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