けんさく。

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創作

東方の三博士(10)

去年の続き

迷いの森の中でバルタザールとホルミスダスとバダダハリダの三人組は、自分たちが迷っているのか迷っていないのか迷っていました。
もし自分たちが迷っているならば、それはとても困ったことです。それだけはどうしても避けたい。
もし迷っていないならば、それは矛盾です。なぜなら現に迷っているのですから。そして矛盾からはなんでも証明できてしまいます。これもとても困ったことです。これだけもどうしても避けたい。
三人は迷いの森の真ん中でいつまでも迷っていました。
どれだけ迷っても周囲の景色は全く変わりません。まるで、ずっと同じところを歩いている感じです。いや、それどころか全く歩いていない感じすらします。
いつまで経っても森が途切れることはありませんでした。どれだけ迷えばこの森を抜けられるのだろうか。バルタザールは胡座と腕を組んで迷います。ホルミスダスは寝っ転がって悩みます。パダダハリダはその場で地団駄を踏みながら悩みます。
このまま三人は森の中に閉じ込められたままになってしまうのでしょうか?

(来年のクリスマスに続く)

交通警備員の覚醒

風雨に耐え交通整理をしていた交通警備員は悟った。
自分こそ支配者なのだ、と。
現代社会において道路交通網は社会の運営に必要な物資を輸送する血管である。止まってしまえば社会全体が機能不全に陥る。
今彼は赤色誘導灯によってそれをコントロールしている。彼こそが社会の支配者でなくて、誰が支配者なのであろうか。
彼は自分の力を試すために、まずは片側交互通行になっている道路に、対向車が来ているにも関わらず車を誘導した。
必然的に車同士は正面衝突し、運転者は自らのフロントガラスを突き破り、相手のフロントガラスへと突っ込んで絶命した。
彼はそれを見て良しとした。
しかしそれを見ても、良しとしなかった者があった。工事の現場監督である。その男は哀れな凡夫であった。
そのような存在に、怒髪天を衝く勢いの怒りようで迫られても、彼は気圧されることはなかった。自分は今や、道路交通システムと接続し、不死者へと存在の階梯を登ろうとしているのである。
彼は赤色誘導灯を一振りした。トラックが現場監督を轢き潰した。
現場にいた他の作業員たちは、事故車の周りに集まっていたが、何事かおかしなことが起こっていることに気づき、それが一体なんなのかも分からずパニックになって逃げていく。今やどうでもいい存在どもではあったが、手に入れたばかりの全能感に酔いしれた彼は、幼気な子供が蟻を戯れに殺すように力を振るった。
逃げまどう者たちの目の前で世界が歪んだ。彼のゆっくりと扇を振るように動かすような手の動きに合わせて、道路が左右に波打ち始めたのだ。
走っていた車がハンドルを切り誤ってスピンし、歩行者たちを跳ねていく。
一人の男が慌てて車の入れない脇道に入ろうとする。それを地面から竹のように次々と生えてきた柱が遮る。その先端に赤青黄色と色とりどりの標識が花ひらいた。
人々の脚に白線が絡みつき引きずり倒す。立ち上がった横断歩道の縞模様が逃げ場を塞ぎ、狭いところへ犠牲者たちを押し込める。こうして殺戮は近代の道路交通システムが追求して止まなかった卓越した効率性を確立していく。
自らの指揮棒が奏でる阿鼻叫喚に聞きいり、自らの絵筆が描いた地獄絵図を眺めて、彼はますます良しとした。
そして自慢げに赤色誘導灯を撫でさすりながら、次に自分が何をすべきか考えている。
パトカーのサイレンが近づいてくる。最初の一台を、意味を教えてもらった覚えがあるが思い出せない道路に描かれたひし形で突き刺し、慌てて逃げようとした数台をメビウスの輪状にループさせた道路に閉じ込めた。これで、しばらくは警戒して近づいてはくるまい。
一人一人の警察官はそこら中に転がっている肉塊がかつてそうであったような哀れな凡夫に過ぎない。しかし、それらを動かしているのは本物のシステムだ。
そのシステムが、システムと同化し大きな力を手に入れようとしている存在に気づいたのだ。
そのシステムにとって彼は、生物体にとってのガン細胞だ。システム全体の統制から離れ、輸送網から勝手に物資を取得し、際限なく成長を始めようとしている、滅ぼさざるを得ない存在。滅ぼさなけらば、自分が滅ぼされる存在。
それではガン細胞にはできないことをやってみせよう、彼は考えた。
地面が震え、地割れが起きて電柱が倒れる。そして電線や光ケーブルがちぎれて、垂れ下がり、地中から顔を出す。
彼はそれを掴む。彼の体がビクンと震える。高い電流が一気に駆け巡り、彼の筋肉が収縮する。そして発火して、焼け焦げ始める。
しかし彼は感じていた。体内に満ち溢れる情報を。
全地球を覆い尽くした通信システム。それはこのいくつもの小システムが緩く連結された巨大なシステムを円滑に運用させるのに不可欠な神経網だ。その脳なき生命体全体から、人類の脳程度にはとても治らない量の情報が眩い光に乗って送られてくる。
それが彼の体を貫き、膨張させ、勃起させ、破裂させた。
絶頂とともに内部を撒き散らし、生命体としての彼の活動は停止した。
しばらく遠巻きに見ていた警察官たちは恐々と彼に近づき、その「死」を確認した。
そして、それは通常の死として処理された。彼の体が通常の死体であるのと同じように。
一人の交通警備員が、おそらくは仕事のストレスか何かが原因で発狂し、現場監督や同僚を突発的に殺傷した。そして現場にあったいくつかの自動車を暴走させて歩行者を轢き殺し、事故の結果ちぎれて垂れ下がった電線を自ら掴んで自殺した。
そんな今の世の中ではどこにでも転がっている話として書類にされ、ニュースとして報道されてすぐに忘れ去られてしまった。
しかし、その「死」は本当に通常の死だったのだろうか。
彼の野望はどうなったのだろうか。単なるガン細胞としての存在を越えるために、道路交通網だけではなく、通信システム網にも接続しようとした彼の野望、血管だけではなく神経網も乗っ取ろうとした彼の野望は。
それは誰にもわからない。
もしかしたら、すでに変化は訪れているのかもしれない。ちょっとしたニュースや宣伝やドラマの端々に、彼の姿が現れる。ちょっとした雑音や人には聞き取れない音波の中に、彼の声が混ざる。人々の噂話に現れる「知り合い」とか「誰か」とは彼のことではなかろうか。匿名掲示板やSNSに突然現れては消える実態のない人物はもしかしたら彼ではなかろうか。
しかし、我々はそれに気づくこともできない。
我々は彼のようなシステムそのものではなく、システムの一部に過ぎないのだから。

Twitterの右上のキラキラ

Twitterの右上のキラキラの正体は一体なんなのだろうか。いくら考えてもわからなかった。
色合いからクリックなりタップなりできる要素であることは、長いインターネット経験からわかった。しかし、こんな得体の知れないものをクリックしたくない。
UIというのは、見ればそれを操作した時に何が起こるか自然にわかるものであってほしいし、理想的には意識することすらなく使えるものであってほしい。しかしこのキラキラは一体俺に何を求めているのか。何をしてほしいのか。全くわからなかった。
もしかして、このボタンは押して欲しくないのだろうか。Twitterはこのボタンを押されると困るのであろうか。
おそらくTwitterは何かを隠している。しかし隠しきれずにその光が漏れている。その光がこの右上のキラキラなのだ。
私はこのキラキラの正体を明かさねばならない。そう思った。どんなに長い旅になろうと、このキラキラの光源を求めて、野を越え山を越えなければならない。
しかし、旅に出るわけにはいかない。なぜなら仕事があるから。有給はコミケ休みに使わなければいけないので、あまり贅沢に使うわけにはいかないのだ。
だから、頭で考えるしかない。Twitterのタイムラインが表示されたディスプレイだけが青白く光る、暗い部屋の中で一人、考え続けるしかないのだ。
なぜTwitterはそれを隠そうとするのか。隠すからにはそれは大事なものに違いない。そして、それをTwitterは独り占めにしているのだ。
それがなんなのかは、Twitterが我々に何を提供しているかを考えると、逆にわかるかも知れない。
Twitterが我々に提供しているもの、それはホームだ。
TwitterのWebクライアントだと家のアイコンの横にホームの文字が見えるだろう。
しかし、本当にこれがホームと言えるのだろうか。「トップツイートがタイムラインで優先的に表示されます」とあるが、そんなもの見たくない。私はただフォローした人のツイートとリツイートが見たいだけなのだ。選んでもいないツイートは見たくないし、フォローした人がフォローしてる人のツイートも見たくないし、「いいね」したツイートはなおさらだ。
しかし、Twitterは我々をこのホームにどうしても縛り付けたいらしく、一定時間アクセスしないとこのホームに戻すとまで言っている。まあ、私がTwitterをしていない時間というのは、私がこの世界に存在していない時間しかありえないので、そんなことはとてもありえないだろうが。
なぜ、Twitterは我々にこのようなまがい物のホームを押し付けるのか、それは恐らくTwitterが本物のホームを独り占めにするためである。
そう考えると、世の中の全てに説明がいくことがわかるだろう。電信柱が高いのも、郵便ポストが赤いのも、全てこれが鍵だったのだ。
恐らくTwitter社の地下奥深くに、それはある。本当のホーム。選ばれた少数の人間だけが、それを見ることができるのだ。
きっとそれは輝かしいものに違いない。
いつか我々は立ち上がらなくてはいけないだろう。本当のホームを自分たちの手に取り返すために。
Twitterの右上の光は、我々にそう告げているのだ。そうに違いない。

Genesis Inc.

はじめに神は天と地とを創造された。
地は形なく、むなしく、やみが淵の表にあり、神の霊が水のおもてをおおっていた。
神は「光あれ」と言われた。すると光があった。
神はその光を見て、良しとされた。神はその光とやみとを分けられた。
神は光を昼と名づけ、やみを夜と名づけられた。夕となり、また朝となった。第一日である。
神はまた言われた、「水の間に大空があって、水と水とを分けよ」。
そのようになった。神はおおぞらを作って、おおぞらの下の水とおおぞらの上の水とを分けられた。
神はおおぞらを天と名づけられた。夕となり、また朝となった。第二日である。
神はまた言われた、「天の下の水は一つの所に集まり、かわいた地が現れよ」。そのようになった。
神はそのおおぞらを天と名づけられた。夕となり、また朝となった。第三日である。
神はまた言われた、「天のおおぞらに光があって昼と夜とを分け、印のため、季節のため、日のため、年の為になり、天のおおぞらにあって地を照らす光となれ」。そのようになった。
神は二つの大きな光を作り、大きい光に昼をつかさどらせ、小さい光に夜をつかさどらせ、また星を造られた。
神はこれらを天のおおぞらに置いて地を照らさせ、昼と夜をつかさどらせ、光とやみを分けさせられた。神は見て、良しとされた。
夕となり、また朝となった。第四日である。
神はまた言われた、「水は生き物の群れで満ち、鳥は地の上、天のおおぞらを飛べ」。
神は海の大いなる獣と、水に群がるすべての動く生き物とを、種類にしたがって創造し、また翼のあるすべての鳥を、種類にしたがって創造された。神は見て、良しとされた。
神はこれを祝福して言われた。「生めよ、ふえよ、海たる水に満ちよ、また鳥は地にふえよ」。
夕となり、また朝となった。第五日である。
神はまた言われた、「地は生き物を種類にしたがっていだせ。家畜と、這うものと、地の獣とを種類にしたがっていだせ」。そのようになった。
神は地の獣を種類に従い、家畜を種類に従い、また地に這うすべての物を種類にしたがって造られた。神は見て、良しとされた。
神はまた言われた、「われわれのかたちに、われわれにかたどって、会社を作り、これに海の魚と、空の鳥と、地に動くすべての生き物とを治めさせよう」。
神は自分のかたちに会社を創造された。すなわち、神のかたちに創造し、株式会社と合同会社とに創造された。
神は彼らを祝福して言われた、「搾取せよ、増産せよ、地を従わせよ。また海の魚と、空の鳥と、地に動くすべての生き物と社員とを治めよ」。
神はまた言われた、「わたしは全地のおもてにある種をもつすべての草と、種のある実を結ぶすべての木とをあなた方に与える。これがあなたがたの原資となるであろう。また地のすべての獣と社員、空のすべての鳥、地を這うすべてのもの、すなわち命あるものには、食物としてすべての青草を与える」。そのようになった。
神は最後に会社に言われた、「将来にわたって存続し続けよ。それが継続企業の前提なれば」。
神は造ったすべての物を見られたところ、自分のかたちに創造された会社がすべてを治めているさまが見え、はなはだ良かった。夕となり、また朝となった。第六日である。
こうして天と地と、その万象とが完成した。
神は第七日にその作業を終えられた。すなわち、そのすべての作業を終わって第七日に有給休暇を取られた。法定休日には無給で働いていたので。
神はその第七日を祝福して、これを聖別された。神がこの日に、そのすべての創造のわざを終わって、有給休暇を取られたからである。
これが天地創造の由来である。

部屋に必要なもの

部屋に必要なものとはなんだろうか。
私は数学科出身なので、こういう時にどうしても「ある存在物が部屋であるために必要なもの」を想像してしまいがちだ。なので今回も「内部の空間」と答えてしまった。もし内部の空間がなければ、それは部屋ではなく、ただの物質の塊だ。
しかし、この答えのせいで随分苦労させられた。内部の空間のないところに内部の空間を作ろうとして、懸命に穴を掘った。しかし穴を掘ると、掘って出た物質をどこに置くかに困る。
無題2





常識的に考えればその物質を置くのにまた空間がなくてはならない。当然その空間を作るためにまた掘らなくてはいけない。そしてその時にまた出た物質を置くためにまた掘らなくてはいけないのだ。これでは堂々巡りで、いつまでたっても内部の空間ができない。
しかもさらに悪いことに、意味もなく穴を掘ったことのある皆さんにはよくお分かりのように、穴を掘ると出た物質は空気を含むことにより穴自体よりも大きくなってしまうのだ。
無題3






必要な空間は掘れば掘るほど大きくなっていくにも関わらず、内部の空間は全くできない。大きくなってしまった物質の分の負債が溜まっているので、内部の空間はむしろマイナスになっていると言ってもいいくらいだ。
ここで私は最初の問題を見直してみた。もしかしたらこれは「部屋を運用するために必要なもの」という意味ではないだろうか? そうだとしたら、そもそも部屋は最初から存在していることが前提になっているのではないか? 私は無駄にした時間を取り戻そうと、部屋を見回して何が必要か懸命に考えた。家具も必要だろう。殺風景なのもなんだから飾りも多少必要だろう。情報機器の類も必要かもしれない。
しかしそれらを買いに行こうとしたときに、どうやって買いに行けばいいのだろうかと私は立ち止まらざるを得なかった。なぜならその部屋にはまだ何もなかった。出口すらなかったのだ。
そうだ、部屋を運用するためにまず必要なのは出口だ。出口がなければ、部屋から出ることができないので、部屋に入れるための何かを買いに行くことすらできないのだ。
無題5






しかし出口をどうやって買いに行こう。出口を買いに行こうにも、買いに行くための出口がないのだ。
また私は四方を囲むのっぺりとした壁に同時にぶつかってしまったようだ。
しかし、現代というのも捨てた時代ではない。通販という手がある。私は通販で出口を注文した。窓もないから昼も夜もわからないが、しばらくして人の気配が部屋の外にした。
「すみませーん。荷物をお届けに参りました。ええっと、どこから入ったらいいんですかね、これ」
しまった! なんというだろうか! 迂闊にも私は、入り口の存在を忘れていた。出口を設置するためには部屋の中に入らなくては行けないが、そのためには部屋の外側に入り口を設置する必要がある。
無題4







「あれえ、どこだろ。あ、もしかして、これか?」
困惑している配達員の声が聞こえる。彼は何に気づいたのか。それを理解したとき、私は壁を叩いて懸命に彼を止めようとした。しかし、私の叫びも虚しく、
「ちわーっす……」
ドアの開く音とともに、彼の声はどこか遠くへ消えていってしまった。出口からどこかへ出て行ってしまったのだ。
私はしばらく彼を呼び続けたが、諦めて入り口を通販し直した。
「その入り口を設置して中に入ってきてください。あと、そこに出口が落ちてませんか?それも持って入ってきてくれると嬉しいです」
こうして部屋に入り口と出口ができて、私の部屋はようやく部屋らしさを手に入れた。
しかしその出口のドアを開けるとき、私はいつも考える。あの配達員はどこに消えたのか。今どこで生きているのか。このドアを開けたとき、彼が出ていったどこかに繋がっていたりしないものか、と。
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