テレビ版の吹き替えのカット部分を2009年に、納谷悟朗や小林清志や大塚周夫など当時の吹き替え陣が補完再録しているのだが、山田康雄(おっと、1stルパンのルパンファミリーと銭型警部じゃないか)だけはすでになくなっていたので、その部分を、声質が似ている多田野曜平が代役を務めている(出演していた『姫様ご用心』を見て、決めたという)。
これがものすごく自然で驚いてしまうくらい。
多田野曜平といったら、ドゥーフェンシュマーツだろうが、渋い演技もうまいのだ。50代で、演技に脂が乗り切っている時期だ。硬軟どんな役でもやれる幅の広さは、かつての山田康雄や納谷悟朗や大塚周夫を思い出させる。それこそ、もし今モンティ・パイソンの吹き替えするんだったら、この人は絶対に入るだろうし、先輩たちに負けずにはっちゃけてやり遂げるだろう。そういえば、この人テアトル・エコー(アニメ草創期から、声優を輩出し続け、また劇作家として井上ひさしも出している名門)所属だから、山田康雄や納谷悟朗の後輩なのだ。
今、日本アニメで演技派の声優というと、なぜか一昔前の大御所を持ってくることしか思いつかないようなのだが(すぐガンダムとかのネタに頼るから)、海外のアニメ、ドラマ、映画の吹き替えを見ていると、多田野曜平や岩崎ひろしなど、日本アニメにはあまり出ないけど、まじめな演技も崩した演技もむちゃくちゃうまい人がたくさんいることが分かる。この人たちをもっと使えばいいのにね。
さて本題に戻ると、この時点で納谷悟朗は残念ながら相当衰えていて、違和感がぬぐえない。それに比べて、小林清志と大塚周夫はほとんど違和感がなくて、やはりすごいと感心させられる。
一見の、いや一聴の価値あり。
映画もむちゃくちゃ面白いしね。荒野の超ロングショットに響き渡る銃声から入る超かっこいいタイトルロールから最後まで全くだれるところがなく、いつも何かが起こり続ける。セルジオ・レオーネは、ロングショットとクローズアップを対比させる自分の手法を確立させただけでなく、独特の音楽、乾いた雰囲気、凝ったガンアクション、暴力、そして秘めた復讐、とマカロニ・ウェスタンの定番を一つ残らずこの作品で完成させた(お色気以外は。この映画、ものすごく男くさくて、一応回想シーンでヌードは出てくるものの、主要登場人物は全員男)
次作の『続 夕陽のガンマン』でそれを完全に破壊しちゃうんだけどね(創始者にありがちな話なのかもしれない。ちなみにこの作品はさらに男しかいない)。
俳優もいい。クリント・イーストウッドもいいけど、リー・ヴァン・クリーフはもっといい!

目つき鋭すぎ! この人が家族に俳優をやるのを進められるまで会計士をやってたなんて絶対に信じられない。こんな視線で人を殺せそうな会計士がいてたまるか。
デビュー作の『真昼の決闘』の悪役でも、一人だけ異彩を放っていたもんな。『ニューヨーク1997』でも、とてもいい雰囲気をまとっていたし。悪役のエル・インディオをやっていたジャン・マリア・ヴォロンテも良くて、二人でイーストウッドを食い気味である。
あと、私の大好きな悪役俳優クラウス・キンスキーが敵一味の一人として、出ています。これまた一人だけ妙に目立っていて、いいぞ。

ちなみにこれが、『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ!夕陽のカスカベボーイズ』に出てくる「変な顔の男」(役名)である。

うわあ、これはキンスキーですね。たまげたなあ