けんさく。

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モンティ・パイソン

時間がない


 

大元
 
吹き替え
 

山田康雄、広川太一郎、青野武に続いて、納屋悟郎までも…… 

青野武追悼俺ハマ布教特集 

2012年4月9日夕方に大好きな青野武氏が亡くなられた、という話を聞いた。
そこで、花を添えるためにも、何か書こうかと思う。

青野武氏の声と言ったら私にとってはまずウルトラマンのザラブ星人である。ブラザーを逆さまにした名前を持つこの異星人は、有効的な態度を装って相手にとりいって、お互いを疑心暗鬼にさせ同士うちにさせることにより、たくさんの星を滅ぼしてきた。数あるウルトラマンのエピソードの中でもひときわ記憶に残るこの話。このザラブ星人を声だけでなく、着ぐるみの中にまで入って演じたのが青野武氏なのだ(偽ウルトラマン及び巨大化以降は別のスーツアクターである)。

声若いなあ。

あと、吹き替えで言うと、すでにこのブログでも紹介したが、モンティ・パイソンのマイケル・ペイリンの声を当てているのが印象に残っている。マイケル・ペイリンが出ている映画の多くも青野武が当てているので、気付いたら聞いてみるといいと思う。


そして私が一番愛する青野武キャラと言ったらこの人、ジョン・コーガンである!

これはアメリカの名刑事コメディ『俺がハマーだ!』(略して「俺ハマ」)の第5話だが、しかしこの青野武ノリノリである。血管が切れないか冷や冷やしながら見ていたものである。
このドラマは羽佐間道夫(声優たちが最も尊敬する声優山寺宏一が最も尊敬する声優)、内海賢二(ラオウや則巻せんべい博士などで有名)、小宮和枝(『うる星やつら』の後期ランちゃんですな)などレギュラー吹き替え声優陣が乗りに乗っており、それが優秀な翻訳者の吹き替え台本にアドリブを載せて、原作よりもギャグの多い作品にしてしまったのだ。

ついでなので、青野武は出てこないけど、
基本の第一話


これも好きな話の一つ
第二話


そして伝説の最終回

アホなドラマや。まともに終わらないことが多いアメリカのドラマの中でも、随一のあほらしさを誇っている。しかも、これでちゃんと続編も作られてるってんだから恐れ入る。
ちなみに続編は、時系列的に1期の最終回の後の話じゃなくて、最終回よりも前の話となっている。駄目だなあ、逃げちゃ。ちゃんと「死ぬかと思った」で作らなきゃ。
正直、パンストの二期もそんな感じに作ればいいと思う。
パンティ「死ぬかと思ったぜ」
で。
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で、何の話をしてたんだっけか?
そうだ青野武氏の追悼だったんだ忘れてた!


(作画は『カリオストロの城』のテレコム。作画監督は多分、かつての宮崎駿の片腕友永和秀だと思う)

史上最高のコメディ番組 『空飛ぶモンティ・パイソン』

世界のコメディの歴史をねじ曲げた記念碑的作品が『Monty Python's Flying Circus』邦題『空飛ぶモンティ・パイソン』(1969~)だ。もちろんそれ以前にスパイク・ジョーンズなどの先駆的業績はあったものの、やはりこれ以前とこれ以降では全てが変わってしまった。
まずは第一シーズンの代表作を。


コント集番組(英語ではsketch)はもちろんこれ以前からあったけど、スケッチとスケッチの間には司会が出てきてコメントや次のスケッチの紹介をしていた。つまり小劇場などと同じ形式をとっていたわけだ。それを彼らはテレビ番組ではそんなことする必要がないじゃないかと気付き、さらにスケッチとスケッチの間の切れ目を見えにくくして有機的に繋いでしまおうとしたのだ。そうすることにより趣向の違うギャグがマシンガンのように飛び出す画期的番組が生まれたのだ。
この回だけでも、抽象的な社会学に対する皮肉り、意味不明なアニメ、道路マニア、ヒットラーやナチズムなどの歴史ジョーク、ドイツ訛りギャグ、街頭インタビューに対する皮肉り、使えない警察官への皮肉り、アメリカの大統領への皮肉り、上流階級のアホへの怒りに満ちた皮肉り、フェミニズムへの皮肉り、階級社会への皮肉り、政見放送への皮肉り、と盛りだくさん。ちなみに上流階級のアホが夜中に車の音で付近住民に迷惑をかけることには元になった実話があるんだとか。
すごいのは、政治・哲学・社会などの高尚なネタと時事・芸能・エロなどの下品なネタをあえて整理せずにごった煮の状態で視聴者に届ける、ということ。これがそもそも前代未聞であり、後々もなかなかまねできないことだ。知能的なギャグばかり語られることが多いけれど、良く見てみれば下らないギャグも多い。もちろん知識(歴史やイギリス社会の)があればより楽しめるけど。

それではパイソンズのメンバーを紹介しよう。ちなみにイギリスのコメディの伝統としてこの人たちは自分で脚本を書いて自分で演じている。女役だろうがなんでもやる。無駄に高学歴なのと吹き替え声優の豪華さにも注目。
ジョン・クリーズ
ジョン・クリーズ(吹き替え:納屋悟朗) ケンブリッジ大学法学部卒。大学のコメディ・グループ(ケンブリッジ・フットライツ・レヴュー)で頭角を現す。弁護士を経てコメディ会へ。身長191センチの体格を生かしたダイナミックな演技が特徴。嫌味な権力者(軍人や上司、そして検察や弁護士)を演じさせたら右に出る者はいない。あとドイツ語訛りやフランス語訛り、スペイン語訛りなどの発音ギャグも得意。バカ歩き(Silly Walk)はOEDに乗るくらい有名。情報数学の学会のレジュメでcoalgebraic walk(行き先が収束して行かない移動方法のこと)の例として上げられていたのは笑った。パイソン後も様々なコメディ映画を自作自演するとともに007やハリー・ポッターなどの映画に出演している。ねちねちと論理で相手を追いこんでいくようなギャグを得意としている。『死んだオウム』コントが特に有名。

グレアム・チャップマン 
グレアム・チャップマン(吹き替え:山田康雄) ケンブリッジ大学医学部卒。医師免許持ち。大学時代ジョン・クリーズと出会い、脚本も共同が多いが実際には書いてたのはクリーズで、チャップマンは寝転がりながらときどきアイディアを言うだけだったらしい。189センチの長身を生かした凶暴な演技が得意。居丈高な権力者を演じさせたら絶品(軍人、警察官、そしてもちろん医者)。映画では主人公を演じていた。あと同性愛ネタ(同性愛を異常に嫌うネタも含めて)が妙に多いのはこの人が同性愛者だから。1972年には『Gay News』というゲイの新聞のサポーターとなり寄付や投書をした。番組中のスワッピング(夫婦交換)ネタのときには、他のメンバーの奥さんは全て交換されたのに、チャップマンとその恋人のデイビッド・シャーロックは交換されずにくっついたまんまだった。
あとアル中だったせいでパイソンズ後の仕事は生彩を欠いていた。1989年モンティ・パイソン放送20年記念日の前日にガン(勘違いする人もいるがエイズではない)で死去。唯一の故人。

エリック・アイドル
エリック・アイドル(吹き替え:広川太一郎) ケンブリッジ大学英文学部卒。スケッチ内の音楽などを担当することも多く、後にビートルズのパロディバンド「ラットルズ」を結成、ビートルズの曲だと言われれば信じてしまいそうな曲を作ったりしている。単純に一番イケメンなのでイケメンの役を良くするほか、女装で女役をやっても一番違和感がなかった。あと軽薄な役(女たらし、テレビの司会者)をやらすと異様に上手い。言葉に異様な執着を見せる男で、切れ目なく喋りつづける男とか意味のないことを喋りつづける男とか、単語をバラバラにして発音する男とか、偏執狂の域である。

テリー・ジョーンズ
テリー・ジョーンズ(吹き替え:飯塚昭三) オックスフォード大学卒。英語学や歴史学を学んだ。ジェフリー・チョーサーの研究では学術分野でも評価され、大学の講義に使用する教科書も執筆した。パイソンズ映画第二作『ホーリー・グレイル』の中世歴史考証が無駄に正確だったのはこいつのせい。おばさん(ペパーポットと呼ばれる)の役をやらせたら右に出る者はいない。あとウェールズ人の役を良くするのはウェールズ人だから。虐められる普通の人の役をやっていることも多い。オックスフォード大学派のギャグはどちらかと言うと、反射神経を使った視覚的ギャグなので、論理や言葉を重んじるケンブリッジ大学派と衝突することも多かったとか。特にテリー・ジョーンズは短気ったので、クリーズにタイプライターを投げたこともあるらしく、クリーズが第4シーズンに抜けた理由の一つと勘ぐる向きもある。パイソン後はジョージ・ルーカス監修ジム・ヘンソン監督(セサミストリートの人ね)デヴィッド・ボウイ出演の『ラビリンス/魔王の迷宮』の脚本を書いたり、自分で書いた絵本の映画化『エリック・ザ・バイキング』の脚本・監督・出演をしたりしている(この映画にはモンティ・パイソンの大ファン関根勤が日本語を喚きながら奴隷に鞭を打つ役で出ているぞ。なんでも自分のギャグのビデオを送りつけたんだとか)。

マイケル・ペイリン
マイケル・ペイリン(吹き替え:青野武) オックスフォード大学卒。歴史学専攻。普通の人の役を良くやるほか、普通に見えて残酷なことをやる人の役とか、ものすごくバカな人の役などをやる。一番演技は上手い。あと性格も良かったらしく、この人がいなければもっと早く空中分解していた、という話も。パイソンズ後もそれぞれのメンバーの作品によく顔を出すのは、演技だけでなく人格への信頼もあるのでは。イギリスでは旅行番組で有名で日本にも何回も来ている。

テリー・ギリアム
テリー・ギリアム(吹き替え:古川登志夫) 唯一のアメリカ生まれ。1968年にイギリス国籍を取得し2006年にアメリカ国籍を放棄しているので今はただのイギリス人。繋ぎ(リンキング)のアニメーションを担当。その意味不明な世界観失くしてモンティ・パイソンはない。ときどきどうでもいい役で出てくることもあるが主に変顔と裸担当(ジョーンズも良く裸になる。テリーは裸担当と覚えるといいぞ)。アニメ作るのに忙しくて、他のメンバーがなにしてるのかよく分かってなかったらしいが、他のメンバーもギリアムがなにしてるのかよく分かってなかったとか。その後有名な映画監督になる。代表作は『未来世紀ブラジル』『12モンキーズ』。一部に熱狂的な人気はあるのだが、なぜか経済的成功にはつながらない。

それでは彼らとともにあらゆる権威を笑いのめしてしまいましょう。

第1シーズン

現代人の基礎教養『死んだオウム』!
冒頭に出てくるのは「イッツマン」。「イッツ!」というだけの簡単なお仕事です。


『木こりの歌』は傑作。
ときどき出てくる頭にハンカチ被せたおっさんは「ガンビー」。あれは日光を避けるためにおっさんがやるダサいファッションなんだとか。元ネタは子どものころペイリンの近所にいた少し頭のおかしいおっさん。










第2シーズン

身を隠す方法を学んでおくと何かと役に立ちますよ!


英国王室はオチ要員なわけです。

その他の重要スケッチ

スパムメールの名前の元ネタ。SPAMとはspice hamの短縮でアメリカの商品名。塩っ辛いハムで、第二次大戦中食料に困ったイギリスやロシアに大量に輸出された。これがなければソ連軍は生き残れなかったかも、という話も。あまりパンには合わないのでヨーロッパ人はこれにあまり良い印象を持っていないんだと思う。ご飯には合うので、戦後アメリカから大量に持ち込まれた沖縄などでは普通に食べてる。今では、本土でも輸入食品店とかで手に入る。その他コンピュータ系の言葉だとプログラミング言語「Python」はこの番組の名前から。ハッカーにはパイソンファンが多いので、知ってると会話が弾む。


『魚のダンス』。ペイリンのお気に入り。言葉ではなく絵で見せようと言うのはいかにもペイリンらしいスケッチ。


『バカ司教』。個人的にはかなりのお気に入り。ペイリンのはっちゃけぶりが良い。キャロル・クリ―ブランド(女優)は人間が出来過ぎ。


クリーズのブチギレ演技は神がかっていると言わざるを得ない。


『デジャブー』。見てるこっちが病気になるわ!


ペイリンはこういう笑顔でひどいことする役も得意。


『ガンビー脳手術』。ガンビー物では一番好き。いつ見ても腹を抱えて笑える稀有なコメディである。


伝説のコント『馬鹿歩き省』。もうなにも言うことはない。


民俗学的考察でもしたくなるような佳品。


イギリス人はフリーメイソンネタも大好き。


クリーズはこういうことさせたら天才だな。


これもクリーズらしい役。被害者がチャップマンなのが珍しい。


これはドイツ版から。人気が出てイギリスで制作したものをドイツで放送するだけじゃなく、ドイツで制作したりしていたのだ。吹き替えでなく実際にドイツ語で演じたスケッチもあったりする。


この手の討論番組を馬鹿にするのは大の得意である。


死後の世界について訊くなら死後の人たち、って言う発想は悪くないね。問題はどうやって聞くかだが。


『殺人ジョーク』。ドイツ人にジョークのセンスがない、と言うのは定番ネタ。




「Nobody expects the spanish inquisition! チャラーン!」の流れだけで笑える。このセリフも「And now for something conmpletely different」と共にパイソンファンの間で語り継がれている。

その他

2002年のジョージ・ハリソン追悼式におけるパフォーマンス。


グレアム・チャップマンの追悼式において。最後に歌ってる歌は『Always look on the bright side of the life』。最後の歌『ライフ・オブ・ブライアン』のエンディングテーマ。いい歌だ。


パイソン30周年にチャップマン(故人)がまさかの出演。元ネタはやっぱりモンティ・パイソン中のスケッチの一つ。途中で灰壺を蹴っちゃうだけでなく掃除機で吸うわ、舌で舐めるわ……


日本語吹き替え版もいくつか。
第3シーズンから一本









ブラックジョークの極み。こんなものをよくBBCで放送したものだ。ちなみにNHKもBSで放送したことがありますが、まずい部分はかなり削りました。チキンめ。


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長らく封印状態だった日本語吹き替えを収録したボックス。

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こちらは40周年ボックス。日本語吹き替えは収録してないが、未発表の封印シーンが収録されている。なんでそう言う面倒くさいことするのかな……
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聖杯伝説をネタにした映画。

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キリスト生誕をネタにした映画。映画は全部で四本あり、一本目はテレビのリメイクだが、残り三本は外れなしの大傑作だ。

第一回 そんなもの子どもに歌わせるな世界大会

無邪気さはときに武器になる。
残酷さ、邪悪さ、不条理さ、などを効果的に演出するために無邪気さと組み合わせて使う、と言うのはいくつも例がある。
そこからホラー映画における子どもや、様々な媒体における子どもの姿をした敵キャラなどの図像学に論考を進めてもいいのだが、ここでは「実際に子どもにやらせる」と言うことについて考えてみる。
僕らは子どもは無邪気なものだという嘘を割と本気で信じているふしがあるので、子どもに残酷で邪悪で不条理なことを実際にやらせると、結構ドキッとしてしまう。作品を作る側にとって見てる人間をドキッとさせることはすごく重要で、だから子どもを使うというのは大きな武器になりうるはずだ。「何をやらせてるんだよ!」という素朴なびっくり感もあるし。
例えば、暴走族映画の傑作『狂い咲きサンダーロード』において、一番印象的な登場人物は暴走族ではなく、小学生にしか見えないドラッグの売人であろうと思う。よくぞあんないかにも悪ガキというふてぶてしいガキを連れてきたものだと感心してしまう。
しかし、子どもの権利をどうこうするとかいう話のせいで、そういうものは確実にやりにくくなっていくだろう。
例えばそういうことに敏感な西ヨーロッパでは、1950年の『恐るべき子どもたち』の時点で姉と弟の美しい近親相姦的愛を描いたこの作品を実際に子どもでやることができなかったりする。演じたのは明らかに20歳超えた大人。萎える。いい映画なのに。
昔の映画はそこのところが適当で良かった。この前1932年製作の『Gland Rags to Riches』と言う映画を見た。ハリウッド史上もっとも偉大な子役であり、そしてその後外交官として活躍するシャーリー・テンプル主演の短編映画なのだが、演じているのはすべておむつをはいた子どもたちで、それが踊り子をやって、踊り子に無理やり結婚をせまるキャバレーの支配人をやって、それを助ける恋人をやるのだ。見ているとなんだかむずむずしてくる。この子どもたちは自分たちのやっていることの意味が分かってるんだろうか分かってるはずないわな。
僕にとっては子どもの権利よりもこのむずむずを守ってほしい気もするのだが、もちろんそんな意見が社会的に通るはずもないことは百も承知。
だからこそ、社会の隙間を縫って、そういうきわどいことを子どもにやらせる人がいると、とりあえず応援したくなる。
今回は音楽の世界で変な歌を子どもに歌わせているいい例を世界中から集めて展示しようという、そういう企画である。
いつも通り前置きが長くなりすぎたが、ここからが本編ですので、ここまで読んだ人はここより前は読みとばして結構です。

アメリカ代表。Richard Cheese 『Beat it』

以前にも紹介したラウンジ・ミュージックの巨匠。どんなアナーキーな曲もパンクな曲もヒップホップな曲も全部レストランにでも流れてそうなイージーリスニングなジャズ調の音楽にしてしまう。
この曲ではとりあえず子どもに「ブッ飛ばせ!」というセリフが言わせたかったというような安易さがいい味を出している。

イギリス代表 『Monty Python's Meaning of Life(人生狂想曲)』 より 『Every Sperm is Sacred』
Monty Pythonは僕の尊敬してやまないイギリスのコメディグループ。これは彼らの四作目にして最期の映画の始めの方、あまりに子だくさんで家計が崩壊したカトリックの家族で(カトリックは避妊を禁止している)、子どもたちを研究所に実験材料として売ることを決めたシーンの直後、子どもたちが「なんで避妊しちゃいけないの?」「コンドームは?」「ペッサリーは?」と質問するのに、父親が答えるシーン。

すばらしすぎる。ちなみにこれに続くシーンでは夜の営みに飽き飽きしているプロテスタントの夫婦が登場し、返す刀で分けへだてなく馬鹿にする手腕、尊敬に値する。
告白すると、夜道でときどき口ずさむくらい好き。

フランス代表 Serge Gainsbourg and Charlotte Gainsbourg 『Lemon Incest』

フランスを代表する作曲家作詞家歌手映画監督俳優、Serge Gainsbourg(セルジュ・ゲンスブール)とその実の娘Charlotte Gainsbourg(シャルロット・ゲンスブール)のデュエット。このときシャルロットは13歳。あまりにあからさまに近親相姦な内容にスキャンダルに。youtubeのコメントにも「This is disgusting.」てのが目立ったりする。
だがはっきり言おう。僕は好きだ。
ちなみにシャルロットは当時全寮制の学校に通っていたので、スキャンダルになっていたことは知らなかったという。
どんなお嬢様学校だったんだよ。普通、学校で話題になっていじめられると思うのだが。
彼女は今でも女優として活躍し、2009年にはカンヌで賞をもらっている。

日本代表 谷山浩子 『穀物の雨が降る』

これがカラオケに無いのは犯罪クラス。まあいずれ近いうちに入るだろうけど。
谷山浩子は『まっくら森の歌』や『恋するニワトリ』などのみんなのうたの曲などで、誰でも一度は聞いたことがあるにもかかわらず、名前はあまり知らなかったりするシンガーソングライター。スタジオジブリの『ゲド戦記』の主題歌『テルーの歌』の作曲者でもある。
しかし、そういう割と普通なものはこの人の作品の中ではむしろ少数で、カオスな曲やダークな曲などを大量に発表するかと思えば、信じられないほど美しい曲を繰り出してきたりする偉人。上記Monty Pythonの曲をカヴァーしてたりする。BL小説も書く。
この曲は彼女いわく、「世界滅亡三部作」の一つ(アルバム『水玉時間』で世界が滅亡する歌が三連続で来るのだ)。人ごみでイライラしていたときに思いついたのだそうだ。『ライ麦畑でつかまえて』のホールデンの影もちらつく。自我ばかり肥大化した少年の矮小な心理が痛い。そしてそれを思春期にも達していない子どもに歌わせる、というのが恐ろしい。

日本代表次点 谷山浩子 『夢のスープ』(注:出来るだけ夜中にヘッドフォンでお聞きください)

谷山浩子ダーク曲随一の曲。これはちゃんとカラオケにある。無邪気であることの恐怖。


おまけ。
ここまでは一応すべて、子どもに普通歌わせない歌を歌わせることによって、ショックを与えようという目的があるものばかり選んだ。最期におまけとして「子どもに歌わせる」ことを考えつづけた結果出来てしまった怪作を紹介しよう。
『チコタン ぼくのおよめさん』
映像は日本のアートアニメーションを代表する岡本忠成。
前編

後編

淀川長治先生が涙したという作品。

『合唱組曲 日曜日 ~ひとりぼっちの祈り~』


すべての小学生にこれ歌わせるべきだね。
これオンリーの合唱コンクールとかあってもいいかも。
いろんな学校の生徒がやってくるけど全員歌うのはこれ。
どうかな?
地獄だね。

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