本当は前回で終わりにしようかと思ってたんだけど、いろいろ書いているうちに、書くことがまた出来てきたので書く。
この回の最初の方でスパイクが聞き捨てならないことを言っていることに気付いてね(3:20付近)。
プリンセスの黄金の林檎!?
これまた何と言う神話的アイテム!?
黄金の林檎が出てくる有名な神話と言えば「ヘーラクレースの12の功業」の11番目、大地の西の果てにある「ヘスペリデスの園」の黄金の林檎を取ってくる、というイベントだ。
これはもともと、地母神ガイアがゼウスとヘーラーの結婚に際して、お祝いとして贈ったものを、ゼウスが女性への贈り物としてばらまかないように移したものと言われている。
また、北欧神話においては、女神イズンが神々のすむ国「アースガルズ」(アースは「アシュラ」や「アフラ・マズダー」と同語源、「ガルズ」は「ガーデン」や「ヤード」と同語源)で、「黄金の林檎」を管理している。
『スノッリのエッダ』によると、彼女はロキの手引きによって、林檎もろとも巨人スィアチにさらわれてしまう。その結果、永遠の命を誇っていたはずのアース神族は老いはじめてしまう。この林檎こそが、神の常若の秘密なのだ。
また、ロシアの魔法物語やグリム童話などでも、王様の庭園に生えている黄金の林檎がたびたび語られている。
中世までのヨーロッパ人達は、相当多くの果物を「林檎」と表現していたらしく、おかげで中世後期にヨーロッパに入ってきたオレンジを「黄金の林檎」を語源とする言葉で呼ぶ言語も多い。だから、彼らの言う子の林檎が、本当に私たちがいう林檎なのかはいまいち不明だが、とにかく「生命の木」としての「黄金の林檎」という発想は、ヨーロッパに広く浸透していたようだ。
なるほど、セレスティア様がいつまでも若くお美しい理由が読めてきたぞ。
ところで、「黄金の林檎」のモチーフには、神話に起源を持ちながら、より現代的な思わぬ変奏がある。
それは「ディスコーディアニズム(discordianism)」と呼ばれる、一種の冗談宗教である。
「Discrodia」とは、ディスコードの性転換ではなく、ギリシャ神話の不和と争いの神「エリス」のラテン語訳である。
彼女を神として崇める宗教がディスコーディアニズムだ。
Principia Discordia: Or How I Found Goddess, and What I Did to Her When I Found Her
著者:Steve Jackson
販売元:Steve Jackson Games
(1994-07)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る
そのシンボルとされるのが、「黄金の林檎」=「Apple of Discord」である。
彼らのシンボルマークの一つ「The Sacred Chao」(また太極図だよ、西洋人はほんと好きだね)

これもギリシャ神話の有名なエピソードから来ている。
海の精霊テティスとプティーアの王ぺーレウスの結婚式に呼ばれなくて怒ったエリス(『眠り姫』とかと同系統の物語だね)は、「kallisti」=「最も美しい女性に」とだけ書いた黄金の林檎を宴席に投げ入れる。
これをヘーラーとアテーナーとアプロディ―テーの3女神が争い、それが全ギリシャを巻きこむトロイア戦争の原因になっていき、テティスとぺーレウスの息子であるアキレウスの死の原因になる。
本来は大切な宝物であるはずの「黄金の林檎」も、その貴重さゆえに不和の原因になる。これが「Apple of Discord」である。
「ディスコーディアニズム」とは、世の中の本質が混沌と不和だと看破し、その世界を乗り切るために、むしろ積極的にそれを利用しようと言う考え方だ。
その教義は、自分たちの教義を含めたすべての教義を徹底的に笑い飛ばし、相対化すること。それを続けるために彼らが行うのが、「パラダイムの海賊行為」と呼ばれる、いろいろな相矛盾しあう考え方を、その場その場で適当に混ぜ合う、と言うもの。
まあ、「文化相対主義」なんて今どきどこにだって転がっている考え方で、本気でやれば、ジョン・バースの『旅路の果て』みたいにどこかで破綻してしまう類いのものなんだけど、この人たちのはちゃんと冗談だと自分で分かっているから、かなり健康的。ノートン将軍を「実在した人間では最高の霊的段階にある」とか言ってしまうセンスは嫌いじゃない(※1)。
もし混沌と不和の女神エリスと彼女の黄金の林檎の活躍を見たければ、ビリー&マンディをみるべし。
ただでさえ混沌と不和に溢れているこのアニメの、混沌の権化として大活躍しているので。
多分単なる偶然なんだろうけど、これがなんだかシーズン2の「ディスコード編」の巧まざる伏線になっているようで面白い。
しかしこんなものを庭で育てているとは、やはりセレスティア様は怖ろしいお方だ。
多分、ときどきこの林檎の実を使って、トロレスティア(※2)となって世の中を(この発想は検閲されました)
※1 ちなみに、この「際限なきパラダイムシフト」を単なる思想的なものを越えて、「魔術」的なものと捉えようとする流儀に「ケイオスマジック」というのもある。こっちは少しマジっぽいので、危険度が高く、遠目で見る分には楽しそうである。
※2 「Trollestia」とは、シーズン1の3話で、友だちがたくさんできたことを知っているだろうに2枚しかガラのチケットを贈らなかったり、22話でもフェニックスのフェロミーナのことをちゃんと説明してなかったり、そもそも1話で封印されたルナが帰ってくることを知ってたに違いないのに誰にも言わなかったりと、セレスティア様の行為が、いたずらっぽさを越えて、若干「釣り行為」に見えることから、妹のルナを月に追放したことからの「セレスティア暴君説」隆盛とともに発生したネットスラングである。
「troll」とは、ルアーなどを垂らしたまま、船を動かす釣り手法であり、ネットに置いて「問題発言をわざとして、人々の怒りを買い、わざと話題を別の方向にねじ曲げる」行為を英語のネットスラングでこういうのである。
日本語でもこの行為を「釣り」と言うので、日英で発想が同じなのは面白い。ちなみに「トロール船」のトロールは「trawl」であり、「網を船で引っ張ってする漁」なので違う。英語のwikipediaでも混乱しやすいって書いてあったけど。
さらに、賢明な読者達はすでにお気づきであろうが、これは北欧の妖精の「troll」とかかっているのである。その証拠に、幾つかの言語では(確認した限りアイスランド語では)、同じ行為を表現するのに、北欧の妖精を意味する単語を使っている。
特に近年、ネットで流行したのが下の「trollface」である。

見ているだけで腹の立つこの顔は、devianartに投稿された下のマンガが初出である。

要は、釣りに引っ掛かった人間が「釣った人間はこんな顔をしているに違いない」と思わず考えてしまう「ドヤ顔」のことである。
こういうわけである時期から、セレスティアにこのtrollfaceを合成した、様々な「Torollestia」画像や動画が作られて、ネットにあげられることになる。
そんな中でも伝説を作ったのが次の動画である(もともとはフラッシュ)
意味不明なテンションで意味不明なネタ。
これ以降、「暴君セレスティア」ネタと絡めて、セレスティアの心証を悪くすると、「バナナを探しに月送り」になる、というのはファンの間で定番ネタになる。
しかしなぜバナナなのかは不明? 作った人の頭がアレだったとしか。
しかし、権力掌握のためにこんな奴に、「月でバナナ探し」の刑に合わされたルナ様可哀そう。
結論:ルナ様は可哀そう可愛い。
あと、「molest」=「子どもなどに性的悪戯をする」から「Molestia」=「変態セレスティア」というネタもファンに愛されている。
この回の最初の方でスパイクが聞き捨てならないことを言っていることに気付いてね(3:20付近)。
プリンセスの黄金の林檎!?
これまた何と言う神話的アイテム!?
黄金の林檎が出てくる有名な神話と言えば「ヘーラクレースの12の功業」の11番目、大地の西の果てにある「ヘスペリデスの園」の黄金の林檎を取ってくる、というイベントだ。
これはもともと、地母神ガイアがゼウスとヘーラーの結婚に際して、お祝いとして贈ったものを、ゼウスが女性への贈り物としてばらまかないように移したものと言われている。
また、北欧神話においては、女神イズンが神々のすむ国「アースガルズ」(アースは「アシュラ」や「アフラ・マズダー」と同語源、「ガルズ」は「ガーデン」や「ヤード」と同語源)で、「黄金の林檎」を管理している。
『スノッリのエッダ』によると、彼女はロキの手引きによって、林檎もろとも巨人スィアチにさらわれてしまう。その結果、永遠の命を誇っていたはずのアース神族は老いはじめてしまう。この林檎こそが、神の常若の秘密なのだ。
また、ロシアの魔法物語やグリム童話などでも、王様の庭園に生えている黄金の林檎がたびたび語られている。
中世までのヨーロッパ人達は、相当多くの果物を「林檎」と表現していたらしく、おかげで中世後期にヨーロッパに入ってきたオレンジを「黄金の林檎」を語源とする言葉で呼ぶ言語も多い。だから、彼らの言う子の林檎が、本当に私たちがいう林檎なのかはいまいち不明だが、とにかく「生命の木」としての「黄金の林檎」という発想は、ヨーロッパに広く浸透していたようだ。
なるほど、セレスティア様がいつまでも若くお美しい理由が読めてきたぞ。
ところで、「黄金の林檎」のモチーフには、神話に起源を持ちながら、より現代的な思わぬ変奏がある。
それは「ディスコーディアニズム(discordianism)」と呼ばれる、一種の冗談宗教である。
「Discrodia」とは、ディスコードの性転換ではなく、ギリシャ神話の不和と争いの神「エリス」のラテン語訳である。
彼女を神として崇める宗教がディスコーディアニズムだ。

著者:Steve Jackson
販売元:Steve Jackson Games
(1994-07)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る
そのシンボルとされるのが、「黄金の林檎」=「Apple of Discord」である。
彼らのシンボルマークの一つ「The Sacred Chao」(また太極図だよ、西洋人はほんと好きだね)

これもギリシャ神話の有名なエピソードから来ている。
海の精霊テティスとプティーアの王ぺーレウスの結婚式に呼ばれなくて怒ったエリス(『眠り姫』とかと同系統の物語だね)は、「kallisti」=「最も美しい女性に」とだけ書いた黄金の林檎を宴席に投げ入れる。
これをヘーラーとアテーナーとアプロディ―テーの3女神が争い、それが全ギリシャを巻きこむトロイア戦争の原因になっていき、テティスとぺーレウスの息子であるアキレウスの死の原因になる。
本来は大切な宝物であるはずの「黄金の林檎」も、その貴重さゆえに不和の原因になる。これが「Apple of Discord」である。
「ディスコーディアニズム」とは、世の中の本質が混沌と不和だと看破し、その世界を乗り切るために、むしろ積極的にそれを利用しようと言う考え方だ。
その教義は、自分たちの教義を含めたすべての教義を徹底的に笑い飛ばし、相対化すること。それを続けるために彼らが行うのが、「パラダイムの海賊行為」と呼ばれる、いろいろな相矛盾しあう考え方を、その場その場で適当に混ぜ合う、と言うもの。
まあ、「文化相対主義」なんて今どきどこにだって転がっている考え方で、本気でやれば、ジョン・バースの『旅路の果て』みたいにどこかで破綻してしまう類いのものなんだけど、この人たちのはちゃんと冗談だと自分で分かっているから、かなり健康的。ノートン将軍を「実在した人間では最高の霊的段階にある」とか言ってしまうセンスは嫌いじゃない(※1)。
もし混沌と不和の女神エリスと彼女の黄金の林檎の活躍を見たければ、ビリー&マンディをみるべし。
ただでさえ混沌と不和に溢れているこのアニメの、混沌の権化として大活躍しているので。
多分単なる偶然なんだろうけど、これがなんだかシーズン2の「ディスコード編」の巧まざる伏線になっているようで面白い。
しかしこんなものを庭で育てているとは、やはりセレスティア様は怖ろしいお方だ。
多分、ときどきこの林檎の実を使って、トロレスティア(※2)となって世の中を(この発想は検閲されました)
※1 ちなみに、この「際限なきパラダイムシフト」を単なる思想的なものを越えて、「魔術」的なものと捉えようとする流儀に「ケイオスマジック」というのもある。こっちは少しマジっぽいので、危険度が高く、遠目で見る分には楽しそうである。
※2 「Trollestia」とは、シーズン1の3話で、友だちがたくさんできたことを知っているだろうに2枚しかガラのチケットを贈らなかったり、22話でもフェニックスのフェロミーナのことをちゃんと説明してなかったり、そもそも1話で封印されたルナが帰ってくることを知ってたに違いないのに誰にも言わなかったりと、セレスティア様の行為が、いたずらっぽさを越えて、若干「釣り行為」に見えることから、妹のルナを月に追放したことからの「セレスティア暴君説」隆盛とともに発生したネットスラングである。
「troll」とは、ルアーなどを垂らしたまま、船を動かす釣り手法であり、ネットに置いて「問題発言をわざとして、人々の怒りを買い、わざと話題を別の方向にねじ曲げる」行為を英語のネットスラングでこういうのである。
日本語でもこの行為を「釣り」と言うので、日英で発想が同じなのは面白い。ちなみに「トロール船」のトロールは「trawl」であり、「網を船で引っ張ってする漁」なので違う。英語のwikipediaでも混乱しやすいって書いてあったけど。
さらに、賢明な読者達はすでにお気づきであろうが、これは北欧の妖精の「troll」とかかっているのである。その証拠に、幾つかの言語では(確認した限りアイスランド語では)、同じ行為を表現するのに、北欧の妖精を意味する単語を使っている。
特に近年、ネットで流行したのが下の「trollface」である。

見ているだけで腹の立つこの顔は、devianartに投稿された下のマンガが初出である。

要は、釣りに引っ掛かった人間が「釣った人間はこんな顔をしているに違いない」と思わず考えてしまう「ドヤ顔」のことである。
こういうわけである時期から、セレスティアにこのtrollfaceを合成した、様々な「Torollestia」画像や動画が作られて、ネットにあげられることになる。
そんな中でも伝説を作ったのが次の動画である(もともとはフラッシュ)
意味不明なテンションで意味不明なネタ。
これ以降、「暴君セレスティア」ネタと絡めて、セレスティアの心証を悪くすると、「バナナを探しに月送り」になる、というのはファンの間で定番ネタになる。
しかしなぜバナナなのかは不明? 作った人の頭がアレだったとしか。
しかし、権力掌握のためにこんな奴に、「月でバナナ探し」の刑に合わされたルナ様可哀そう。
結論:ルナ様は可哀そう可愛い。
あと、「molest」=「子どもなどに性的悪戯をする」から「Molestia」=「変態セレスティア」というネタもファンに愛されている。