ネットベンチャーは何で食っているか
日本とシリコンバレーの大きな違いと「失敗」の意味 - ロケスタ社長日記 @kensuu
こんな記事を今日書いたのですが、とある人から「そもそもネットサービスやっているベンチャーって何で食ってるの?」という話を聞かれました。
質問の意図としては「ネットサービスってたいてい儲かるまで時間かかるけど、それまでどうしているの?」ということだと思います。ここでいうネットサービスは、Webサービスや、アプリなど、価値あるサービスをお客さんに提供するようなサービスのことです。
せっかくなので、それを説明したいと思います。わかりやすさ重点なので、ところどころゆるい部分がありますが、ご了承を、、
前提
前提として、まず株式会社には、資本金というものがあります。
ネットベンチャーの場合、たいてい設立時の資本金は創業者がやります。たとえば300万とかで立ち上げます。会社の設立の登記(お役所に会社を作ったよ!と登録すること)には20-30万かかるので、それをひいた額が会社の銀行口座に残るお金です。
ここで聞かれたことは「そのお金って儲かってきたらかえってくるの?」ということでしたが、資本金として出資したものは、戻ってきません。株主として事業に必要なお金を提供したことで、貸しているわけではないからです。
じゃあなんで投資するかというと、一般的には儲かった時の配当がもらえたり、株の値段があがったときに売れば儲かるから、なのですが、設立時に創業者が出すのは、そんな規模の話ではなく、
- 会社が大きくなれば上場や売却時に株を売ってお金が入る
- 会社の意思決定権利を持つために株を持っておく
みたいな観点が強いです。
というわけで、とりあえず最初の資本金が当面の運用費用になります。
付け加えていうと、資本金は100円とかにしておいて、自分の貯金の300万は、短期貸し付けとして会社にお金を貸す、という形で、あとから返ってくる、という形にしている人もいます。これも自分の株の持ち分は変わらないので、300万はすぐに返してもらえないと困る!という人はこんな手を使ったりもします。
まあ、創業者というのは会社がかなり生活の中心にくるので、やる人は少なかったりします。
しかしお金が足りない
しかし、計算してみるとわかると思うのですが、300万円は速攻でなくなってしまいます。
まずオフィスを借りるとします。家賃8万円のところを借りるとしたら、敷金礼金2ヶ月分くらいで、初期費用で32万円かかります。そして机や椅子、ホワイトボードを買うと10万円くらいかかっちゃいます。その他雑費でなんだかんだで50万くらいかかるとしましょう。
これだけで初期費用で50万飛んでしまいます。会社の設立時のお金20万をひくと、残り230万です。
2人で起業したとしたら2人分の役員報酬もかかります。
役員報酬っていうのは、役員がもらえる報酬のことで、給与とはちょっと違います。これは役員は別に雇われているわけじゃない(むしろ社員を雇う側)だから、ということなのですが、まあ毎月入る給与みたいなもんです。
もちろん、無料でも働くぜ!みたいな人も多いのですが、まあ30万円×2=60万くらいを見ておきましょう。
家賃とか通信費とかアルバイト代金とかで多めに月に80万円かかるとしたら、3ヶ月くらいで0円になってしまいます。
というわけで、速攻で消えてしまうのですね。3ヶ月で大ヒットするWebサービスを作ってすでに黒字になっている、、というケースでない限り、ここで会社が回らなくなってしまいます。
どうするのか
というわけで、どうするのか、という話ですが、方法は二通りしかありません。
- 出費を減らす
- 収入を増やす
しかし出費を減らすとなると、オフィスを使わない、役員報酬なし、というパターンしかありません。実は割と結構使われる手口ではあるのですが、人を雇えない上に貯金で生きていくしかないので限界は早くきちゃいます。というわけで、成功確率は結構低いです。
となると収入を増やすしかありません。そこで出てくるのが
- 借金する
- 第三者割当で増資する
- 受託する
の3択です。以下から詳しくみていきます。
借金する
これはわかりやすいでしょう。親や知人、消費者金融から、銀行や公庫から借りるパターンまでいろいろあります。
ネットサービス系会社だとやっているところは少ないですが、ベンチャー企業としては一般的です。お金を借りて、そのお金を使っていくら儲かったとしても、利子とともに返せばいいだけなので、きわめてわかりやすいです。事業計画通りにいくものであれば、いい手法です。
ただし、お金は返せないといけないので、失敗したら返すのが大変だったりします。
第三者割当で増資する
まず、第三者割当で増資するのパターン。これは最近はやりのスタートアップにお金を払って応援してくれるという人や団体がいます。ここから増資されるパターンがあります。
第三者割当で増資するというのは、簡単に言うと、「会社の評価額(バリエーションといいます)が1000万円だとして、100万円増資するから株の10%をもらいます」という感じです。会社の評価額は、出す人が「この評価額でどう?」といい、会社側が妥当だと思ったら決まります。
ここらへんはいろいろな計算方法とかあるのですが、ざっくりいうとそういうことです。
投資を受けるのと、借金するのは全く違い、投資は返す必要がありません。なので失敗したときも、自分の個人のお金が取られるみたいなことは通常ありません。
しかし、立ち上げたばっかりのネットサービス系の会社だと、第三者割当で増資しても、あまりお金は入ってきません。まだサービスができていない / 流行っていない状態での会社の評価はたいしたことないのです。ここで増資する意味はたいてい「メンター」としての役割が多いです。未熟な起業家の相談にのってくれたり、戦略を一緒に考えてくれたりするパターンです。要はお金を入れてくれる意味よりも、一緒にプロジェクトに関わってくれる意味のほうが強くあります。
さらに、いわゆる株というのは、創業者が意思決定をするのに必要なものでもありますし、会社を大きくする上に増資をするための武器でもあり、そうたやすく人に渡すものではありません。ここがうまくいかなくて駄目になってしまう会社もたくさんあります。資本政策っていうやつで、会社の根本に関わる非常に重要な点です。
というわけで、ここの時期で、お金目的で第三者割当するのはあまり選択肢としてはありません。よほどの評価額でお金をたくさんもらえる立場の人でないと、20%株を渡して300万みたいな額を、お金目的でするのは合理的でないのです。そういう割合で渡す場合は、お金目的でなく
「その投資家と一緒に仕事がしたい」
「その投資家にいろいろ相談できてサービスを大きくできる」
「その投資家がいると、会社の評価があがる」
などの理由がほとんどです。
受託する
さて、次の受託、これが一番ネットサービスベンチャーでは多いと思います。
受託というのは何か、というと、他の会社から「こういうシステムを作ってくれないか」などの依頼を受けて、納品することで成り立つ商売です。
これは非常にわかりやすくて、要は依頼されたものを作ればお金が入ります。しかも単価が割りと高く、ネットサービス系ならだいたい1人1日5万円くらいのお金をもらえます(もちろんディレクションからプログラミングまで、きちんとできる前提ですが)。また、コンサルティングのような仕事もあります。
仕事の量としてはいろいろなところに転がっています。何でもやるぞというスタンスであれば、かなり請け負うことができます。きちんと仕事をこなしていれば紹介をしてもらうこともあるでしょう。
すると、2人で20日働くと100万円入るのです。これは食っていけます。安定して仕事が来ればつぶれす心配がありません。しかも技術的にいろいろなこともするので、スキルもアップします。
ただし、あまりにこれが商売として優れているため、こればっかりやってしまうと自分たちのサービスが作れなかったりします。そこのバランスが難しいです。受託は短期的には利益が高いのですが、長期的に見ると、リターンは少ないのです。
nanapiの場合なんかは、あとから増資されるまでは、半分を受託、半分を自社サービスという風に決めてやっていました。これでぎりぎり食えてた、という感じですね、、
というわけで
参考になればと思って書いてみましたが、いかがでしょうか。僕や僕の周りの事例で書いているので、環境によっては全然違うかもしれませんが、そこらへんはご了承ください。
なお、そのサービスで儲かっている分だけで人を雇っていき、大きくしていけばいいじゃん、、、という意見の人も多いのですが、ネットベンチャーは一気にスピード感を持ってやらないとすぐ真似されてしまったりしまいます。というわけで、ベンチャーはなんらかのレバレッジを聞かせないと、資金も人手も足りないので、負けちゃいがちなのですね。
というわけで、お金の話というのは常にベンチャーの課題なのですが、立ち上げの時の参考になれば思います−。