インターネットのコンテンツ
最近インターネットを見ていて、本当に素晴らしいと思った記事が一つあります。
技術はコンテンツに対し中立でいられるのか?〜CD1枚74分とサビ頭ポップソングにその真髄を見る〜
この記事を簡単に説明すると、「技術の制約によって、コンテンツも影響を受ける」というような話しです。
その中に、an・anの記事がもしもインターネットメディアで公開するとすると、タイトルは以下のようになる、というような例がありました。
例えば、かつてなら『an・an』のような女性誌において、「夏の恋」に破れ、打ちひしがれた女性向けに秋を迎えて、「さあ元気になろう!」というような特集が掲載されるとするならば、そのタイトル見出しは
「一夏の花火よ、サヨウナラ!深まる秋に心を磨く」
というようなものになるのかもしれません。しかし、Web上でPVを稼ぐように見出しを付けると
「夏の失恋から回復するための自分磨きの方法100」
とでもなるのでしょうか。なんだか説明的で文学的情緒がないですね・・・。しかし「夏」、「失恋」、「回復」、「自分磨き」「方法」というようなワードでの検索結果に表示されるため、あるいはソーシャルメディア上での拡散からのPVニーズを取り込むためには、前後の文脈を省いても、内容に興味を持ってもらうために、「見出し」はどんどんと説明的にならざるを得ないのです。
これはまさにそのとおりなのです。これは、「クリックで飛べる、インターネット上のHTMLで書かれたページ」という新しい技術に縛られているのですね。そして、この技術によってコンテンツの表現方法が紙の本の時代と比べて大きく変わってきているのです。
紙の時代から、ネットの時代まで、コンテンツはアーキテクチャに支配される、と僕は思っています。(アーキテクチャとは、設計思想、みたいな意味で使っています)
紙とネットの違い
では、紙のコンテンツと、ネットのコンテンツの違いとは何でしょうか?
クリック一つで記事に飛べるから、飛ぶ時のコスト(手間・お金)は本や雑誌を買うよりもはるかに低い。ただし、そのコンテンツの続きが別ページである場合、紙の本をめくるのに比べるとコストが高い、というのがネット上のページの特徴です。

さらに言うと、
本・雑誌・・・買うまでの敷居が高いが、買ってしまえば読み進める敷居は低い
ネット記事・・・読むまでの敷居が低い分、ライバルが多く存在するためひきのあるタイトルをつける必要がある。また一度読んでも、そこから他サイトに飛んでしまったりするケースが多いため、読んでもらい続けるのが大変。
という差があるのではないかと思っています。

そう、つまりは、自分のサイト内の回遊と、他サイトへの移動が同じコストという状態なのです。
どういうコンテンツが合理的?
この状態だと、ネットのコンテンツを読んでもらう一番合理的な方法は「検索にひっかりやすい内容の記事を書いて定期的に流入させる」ことか、「スキャンダラスなタイトルをつけて、反射的にクリックをさせ、一度読んだらそこにとどまってもらうことは諦めて他のサイトにいってもらう、その代わりに自分のサイトにも、同じ方法で来てもらう」ということです。最近のはやりは後者です。
お気づきの人も多くいらっしゃるでしょうが、要は2chまとめ系サイトでは、このような方法がとられています。
東京新聞:東電、夏のボーナス支給見送りへ 値上げ批判で:経済(TOKYO Web)
これが元記事なのですが、2chまとめだと
東電「値上げ批判されたからボーナス見送ろうかな〜 チラッ」 カナ速
こうなります。当然、後者のほうが引きがあります。タイトルはもはや本文に書いてある事実ではなく、書き手の解釈を全面に押し出したものになっています。さらに上下には

このように、他サイトとのトラフィックを流し込むための導線がサイトのいい場所にあったりします。
いい・悪いではなくて、このほうがPVが集まりやすい合理的な手段になっているのです。事実、大成功しているわけです。
2chまとめ以外でも、GIGAZINEやロケットニュース24も同じような内容ですね。ここでのポイントは「PVを稼ぐとお金が儲かる」ので、PVをとにかく集めること、そして、「とは言っても対して儲からないので、質を問わずに数百円〜数千円とかでライターに書いてもらう」ことだったりします。
ネットに向いているコンテンツ
上記のような理由から、インターネットには向いているコンテンツとそうでないものがあります。
向いているものとしてはニュース、辞書、コラム、日記、Q&A、イラストなどです。これらは非常にインターネット向けといえます。読み進めてもらうのが目的ではなく、一つのページで完結しているようなものがメインです。
逆に向いていないものとしては、「本一冊かかるような専門的な内容」「順番に読み進めないとわからないような文脈があるコンテンツ」などです。要は、本やセミナーに向いてるものですね。これらは、未だにインターネット上ではあまり存在しません。
たとえば「簿記3級のとり方」のような記事をインターネット上で探してもあまりありません。正確にいうと、あるにはあるんですが、儲かっている感じはしません・・・。なぜならコンテンツを作る手間の割にPVが少なく、広告代が入らないからです。
というわけで、作っているのが、この前発表した、「nanapi Biz」というサービスです。(ちょっと宣伝ぽくなって恐縮なんですが。)

nanapi Biz - 動画で学べる!20代向け仕事術サイト
招待依頼はこちら
何がしたいかというと「動画で30分くらいで教えることによって、今までネットで伝えられなかったHowtoコンテンツとかを充実させたい」ということと、「広告代で稼ぐには無理なレベルのトラフィックだけど、ニーズはあるものを有料課金で稼ぐ」というのができたらいいなー、と思っているのですね。
このままだとインターネットのコンテンツが偏りまくっててつまらないなーと思っているので、こういう取り組みをしていたりします。
これからのネットのアーキテクチャ
さて、これからはスマートフォンの拡大やアプリなどによって、かなりアーキテクチャが変わってきます。ソーシャルゲームが、今までのゲームと違った形になるように、インターネットコンテンツも相当変わるのではないかと思っています。
その時に、どんなコンテンツを出せるのか・・・というところが非常におもしろいところですね。これから1,2年はコンテンツの変化が起こりまくる気がするので、非常に楽しみです。
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