Crocosが買収された


Crocosという会社がYahoo!JAPANに買収された。

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Crocosとは、「黒子」としての存在として、企業のFacebookネットマーケティング支援に特化した会社だ。Facebook上での懸賞アプリなどを作り、かなりのシェアをとっている。上記写真でもわかるように、黒子に徹して、企業の支援をするというところがかなりイカしている。

そもそも、このソーシャル上でのネットマーケティング支援というのは熱い分野であり、最近だとGoogleがWildfireという会社を2億5000万ドル(日本円で200億円くらい)で買収していたりするのだ。

Google、Wildfireを買収―Google+に加えてFacebookとTwitter向けマーケティング・サービス開始へ

Crocosというのは基本的にエンジニア集団だ。抜群に優秀なメンバーたちだったが、Crocosという会社がどういう実態だったかというものはあまり知られていない。優秀だが、ビジネスについての理解がまだ乏しい20代中盤のエンジニアたちが、なぜ1年半という短い期間で会社を立ち上げ、拡大し、最終的にExitできたのか、というところは謎に包まれているのではないだろうか。

実は、Crocosという会社ができたのは、CTOをやっていたSotarokという人物が僕のサービスに攻撃をしてきたのがきっかけだったのだ。そういう意味では、僕もCrocosの設立に少しながら関わっていることになる。

というわけで、なかなか表にでないこのエピソードを外に出す責任があるのではないかと思い、筆をとった。

きっかけ


Sotarokとの出会いのきっかけは僕の作っていた、「ミルフィール」というサービスだ。

これはデザインからプログラムまですべて一人でやろうと思って作ったサービスだ。僕はプログラマーではなく、コードがかけなかったのだが、いわゆる自分のプロフィールページ+掲示板を持て、お互いにフォローできるというTwitter+掲示板のようなサービスを作りたくて、勉強から始めた。

だいたい2ヶ月くらいして、今のミルフィールの形が出来上がり、僕は公開をした。

しかし、そこは素人プログラマーの弱いところで、あらゆるところに脆弱性があった。それに目をつけたのがsotarokと仲間たちである。脆弱性といっても、非常に基本的なところであり、彼らからしたらお遊び程度だったのだが、初級プログラマーだった僕は焦りながら対応をした覚えがある。

勘違いしてもらいたくないのだが、攻撃されたからといって、攻撃者を憎んだりすることは一切なかった。攻撃される脆弱性があるというのは、完全に作り手の責任であり、作り手が甘いせいでユーザーに迷惑をかけるという、とても責任が重いことである。この件のように悪意を持ってユーザーの情報等を流したりしない限り、攻撃をすることで脆弱性をしらしめることは、感謝こそすれ、怒るのは筋違いといえるだろう。

ごめんなさい


そして、それから数ヶ月後、sotarokから一通のメールが届いた。その内容は「攻撃したのは僕たちです。ごめんなさい。一度、お詫びしたいので、ご飯でもどうですか。」的なものだった。

自分より年下の20歳そこらのプログラマーで、自分のサイトに攻撃をしてきた人と会えるチャンスなんてなかなかない。当然、快諾をして、汐留の40階あたりの和食屋でランチをしたのがsotarokとの初めての出会いである。

そこで「迷惑かけてすいませんでした」という彼らに対して「もちろん、僕のサービスが基本的な脆弱性があったのが100%悪いので、謝る必要ない。むしろ、感謝をしている。そしてこうやって素晴らしい出会いがあったことのほうが価値があるのではないか。」ということを伝えた。

その後、SotarokはGREEに入社することになるが、skypeなどでゆるくつながりはじめたのだ。

会社の設立


数年たったある日、sotarokからとあるサービスの相談があった。彼の仲間であり、のちにCrocosの一員にもなるwozozoというエンジニアが作った「reroom [リルム] - 部屋じまんコミュニティ -」というのがそれだ。

リルムはよくできているサービスだった。しかし、エンジニアがいいサービスを作る時に話が出てきがちな「お金をどう稼ごう」というところのプランはなかった。

そこで、僕は、nanapiのパトロンであり、エンジェル投資家である、おざーんこと、小澤隆生を紹介したのだった。

ここだけの話、Sotarokがあまりに優秀なので、nanapiに入社しないか、とかなり誘っていたのだった。しかし、うっかり小澤氏を紹介してしまったせいで、Crocosという会社を創業してしまった。

Sotarokは「nequal」というエンジニア集団を率いていた。相当優秀なエンジニアが所属している団体だったが、彼らを率いて作られたCrocosはやはり非常に優れている企業になった。

そのあとの流れは凄まじかった。Facebook用のマーケアプリは作りまくり、Facebookの認定マーケティングデベロッパーに日本初で選ばれ、2012年6月には「Crocos懸賞」の応募が累計100万応募を達成し、そしてYahoo!JAPANに買収されたのだった。まさにベンチャーのサクセスストーリーといったところだ。

ハッカーとビジネス


今回の買収はエンジニアにおける、エポックメイキングだと思っている。日本でビジネスがよくわからない20代前半〜中盤のエンジニアが集まって、1年半でExitするという形を実現できたのは今後の流れとしても非常にいいのではないか。

もちろん、社長の岡元氏、取締役と投資家の小澤氏がいたのは大きい。二人とも楽天に会社を売却しており、百戦錬磨の技術者とビジネスマンだった。彼らの力があったのは当然だ。

それでも、やはりエンジニアが中心となった会社が、ビジネスモデルを構築する前に、そのセンスと技術力、ユーザー数などを買われて買収されるというのはワクワクするものがある。

世の中はもっとエンジニアを称えるべきだし、評価するべきだし、お金も手に入れられるようにすべきだと思っている。そのことで、もっともっと価値を生み出してほしい。

今回の買収が、その流れのはじまりであってほしい。そして、人のサービスをハッキングするようなバカたちが、自由に暴れた上で社会的な成功をおさめてしまうような、そんな日本になってほしいし、なるように僕も頑張る。