事の発端


僕がGunosyの社長だったらこのように謝罪文を書きます - nanapi社長日記 @kensuu

こういう記事をこの前書いたのですが、この中に、漫画のコマの1つを入れたのですね。

そうしたところ、とあるブログから「漫画のコマを無断転載はダメなのでは?」という意見をいただいたのです(ブログ主の方が精神の消耗が激しい、といっていたのでリンクはしていません)。

そして、そのブログへのブックマークコメントでも、これはどうなのか?という意見が多数ありました。

僕も知識不足でやってしまった点も多くあるので、認識が甘いところや、解釈が間違っていた部分なども多々あり反省しています。ご迷惑おかけして申し訳ございませんでした。

また、どこまでが引用として認められるのか?を調べたので、今回のが他の方の参考や、今後の著作権の解釈にも役に立つのではないかと思い、まとめたものをブログに書きました。

※なお、法律の専門家でもなく、書籍・インターネットで調べた情報を元に解釈しているので、間違いなどがある可能性もございますので、もし違っていることなどがあればご指摘いただけると幸いです。

論点


今回のブログの記事での論点はいくつかありました。

・引用元をちゃんと明記していないのはダメでは?
・漫画のコマを引用していいのか?
・漫画のコマの引用はOKでも、本件では正当な引用の範囲内か?

などがあります。

一つ一つ見てみます。

引用元をちゃんと明記していないのはダメでは?


結論からいうと、これはダメです。

著作権法48条では、以下のようになっています。
次の各号に掲げる場合には、当該各号に規定する著作物の出所を、その複製又は利用の態様に応じ合理的と認められる方法及び程度により、明示しなければならない。

今回のブログでは、画像は他のブログで使われてたものを使用していました。そして、そのブログへのリンクを貼るという形を行なっていました。

書いた時の自分の考えでは、画像が載っているサイトから引用しているので、そのサイト元を書くのが引用元を明記する、という感覚だったのですが、これは当然間違いです。「引用の引用」になりますし、もともとの著作物の出所を明示していないことになるのおで、原典のほうを提示をするべきです。申し訳ございません。

漫画のコマを引用していいのか?


この「漫画のコマを引用すること」そのものについては、著作権法の引用の範囲内であれば問題がない、というのが一般的な解釈になりそうです。

有名なものだと、脱ゴーマニズム宣言の判決だと思います。これは高裁の判決の中では、以下のように指摘されています。ここでは、本の作者が、ゴーマニズム宣言の漫画の中のカットを採録したことに対して、著作権法 32条 1 項の「引用」にあたるかどうか、という点ですが、地裁では引用は適法であるとしており、高裁でも

「引用は,新しい文化活動をしようとする者と著作権者との調整として,著作物の利用を許諾した規定であって,著作物の利用が許されているという点において,著作物の利用が許されている他の場合と異なるものではない。」

となっています。

参考:漫画カットの引用における 「改変」の可否:同一性保持権侵害の判断(鳥羽 みさを)

つまり、漫画のコマかどうか、などは著作権法としては、他と区別されるものではなく、引用の範囲内としてみなされてそうです。

漫画のコマの引用はOKでも、本件では正当な引用の範囲内か?


で、今回の論点の中心かなと思っている点はこちらになります。

本件で引用かどうか?という点に関しては、まず著作権法32条第1項を見る必要があります。

公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。

まず、例にあげられている「報道」「批評」「研究」であり、正当な範囲内で行われていれば問題はないとなっています。

正当な範囲内は、諸説ありますが、一つ重要なのが主従関係です。引用をする、ということは、自分の著作物が主であり、引用元は従でなければなりません。

簡単にいうと、漫画を40ページ貼り付けて、「この話が最高だった」と一行だけ書いてあると、たとえ批評だと主張したとしても、これは主従関係が成り立っていないことになります。

引用は1/3以下でなくてはいけないという主張もありますが、要は主従関係が成り立っていないものはダメということです。

本件ですと、単なる分量でいうと、ブログの記事部分が主であるとは思いますが、「引用の目的上正当な範囲内か」というのが重要な点になりそうです。

書いた当時の考えとしては、

- 表現として、入れたいコマだった
- 創作物として、表現に必要なものは引用の範囲内

という認識でした。

感覚的には、

「映画のシーンの一つで、有名な他の小説の一節を引用する」
「小説の中で、有名な映画のセリフを引用する」

などです。

これらは、「報道」「批評」「研究」ではありませんが、表現の上で入れるか入れないかで、観ている人に与える印象が変わるので、引用の範囲としてみなされるのではないかという解釈です。なので、最初はそのように主張していました。

ただし、いろいろな人とやり取りをしているうちに、本当にそうか?という疑問が自分でも湧いてきたので、より深く調べてみました。

まず、文化庁のHPに「『公正な慣行に合致』することと、『引用の目的上正当な範囲内』で行われることとの2つが挙げられていますが、「公正な慣行」や「正当な範囲」とは、具体的にはどのようなものか」という質問があり、それに対する答えとして、以下のように書かれています。

「引用」とは、例えば自説を補強するために自分の論文の中に他人の文章を掲載しそれを解説する場合のことをいいますが、法律に定められた要件を満たしていれば著作権者の了解なしに利用することができます(第32条)。
 この法律の要件の中に、「公正な慣行に合致」や「引用の目的上正当な範囲内」のような要件があるのですが、最高裁判決(写真パロディ事件第1次上告審 昭和55.3.28)を含む多数の判例によって、広く受け入れられている実務的な判断基準が示されています。例えば、[1]主従関係:引用する側とされる側の双方は、質的量的に主従の関係であること [2]明瞭区分性:両者が明確に区分されていること [3]必然性:なぜ、それを引用しなければならないのかの必然性が該当します。

著作権なるほど質問箱
やはり必然性、というところが重要になってきそうです。

で、「表現として使うのはどうか」という点なのですが、以下のブログが非常に参考になりました。

『ヒストリエ』記事の予想外の反響と、著作権・引用に関する話 - マンガLOG収蔵庫

この中で、「マンガと著作権―パロディと引用と同人誌と」から引用された、夏目房之介さんの発言があるのですが、要約すると、絵の内容そのものに言及してあれば成り立つが、単なる挿絵として使う、という点に関してはダメではないかという意見でした。

今回、実はブログを投稿する前の時点では、引用したキャラクターについて書いていたんですね。要は、「常に負け続ける男」というキャラクターの、一番多用し、一番印象的なシーンとして「僕は悪くない」という表現を使うのですが、僕は悪くない、を言い続けることによって、勝つことができず、幸せには決してなれず最底辺にいる、という点です。

しかし、リンクを貼ったブログ先にほぼ同じ内容が、かなり高いクオリティで書かれていました。また、特定のサービスについて言及するという点で、この部分をボリュームを多くすると冗長ではないか、論点がぼやけて読みづらいのではないかという点で削除しました。

もちろん、そこを削ることで、より印象的に見せたいというのもありました。なので、ここで使った漫画のコマに関しては「単なる挿絵」としての役割しか果たしていないのですね。

今の僕の解釈としては、「絵について言及しており、必然性があればOK」であり、今回の場合は、「単なる挿絵としてしか使っていない」から著作権的にはNGではないか、という判断になっています。

おわりに


というわけで、今回は僕の勉強不足かつ認識が甘かったという風に今は捉えています。著作者の方はもちろん、ご不快に思われた方に対しても深くお詫びいたします。

インターネット上では、ライトにテレビの画像や漫画の画像を使ったものなどが氾濫していますが、このあたりに関してもまだまだ問題があると思うので、より議論をしていき、著作者の方にとっても、ブロガーなど記事を書く個人の人にとっても、いい形ができないかと考えています。