原題:INGLOURIOUS BASTERDS 製作年:2009年 製作国:アメリカ 上映時間:152分 監督:クエンティン・タランティーノ 脚本:クエンティン・タランティーノ 出演:ブラッド・ピット、メラニー・ロラン、クリストフ・ヴァルツ、ミヒャエル・ファスベンダー、イーライ・ロス、ダイアン・クルーガー、ダニエル・ブリュール、ティル・シュヴァイガー、B・J・ノヴァク、サム・レヴァイン、ポール・ラスト、ギデオン・ブルクハルト、オマー・ドゥーム、マイケル・バコール、アウグスト・ディール、ジュリー・ドレフュス、シルヴェスター・グロート、ジャッキー・イド、ドゥニ・メノーシェ、マイク・マイヤーズ、ロッド・テイラー、マルティン・ヴトケ、リシャール・サメル、アルンドゥト・シュヴェリング=ゾーンレイ、ザック・フォルカー・ミヒャロウスキ、ケン・デュケン、クリスチャン・ベルケル、アン=ソフィー・フランク、レア・セドゥ、ティナ・ロドリゲス、レナ・フリードリヒ、ルドガー・ピストール、ボー・スヴェンソン、エンツォ・G・カステラッリ

あらすじ:1944年、ナチス占領下のフランス。かつて、“ユダヤ・ハンター”の異名をとる冷血な男ハンス・ランダ大佐によって家族を皆殺しにされた少女ショシャナは、ただ一人逃げ延び、現在はパリで映画館主に身をやつしながら復讐の機会を窺っていた。同じ頃、アルド・レイン中尉率いるユダヤ系アメリカ人を中心とした連合軍の極秘部隊“イングロリアス・バスターズ(名誉なき野郎ども)”がナチスを次々と虐殺、血祭りに上げた相手の仕上げに頭皮を剥ぎ取るといった残虐な手口でドイツ軍を震え上がらせていた。そんな中、ショシャナの映画館でナチスのプロパガンダ映画「国民の誇り」のプレミア上映が決まり、ヒトラーはじめナチス高官が一堂に集結することに。この千載一遇のチャンスを逃すまいと、ショシャナ、バスターズそれぞれが行動を開始するが…。-allcinemaより

タランティーノ印の強烈さ

クエンティン・タランティーノの代表作としても名高い作品、と言っても全てが彼の代表作としてもおかしくはありません。それもそのはず2019年1月現在で監督作品は実は9本しかなく、今年8月にアメリカで公開される新作「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」でようやく10本ですから思ったより少ないんですよね。

今のところ興行成績としては本作は「ジャンゴ 繋がれざる者」に次いで2番めですが、ものすごい数の映画賞にノミネート・受賞をしており、実質的には彼のフィルモグラフィーで最高評価の作品かもしれません。

タランティーノ作品の特徴は特に古い映画やテレビ、アニメ、コミック、音楽のマニアックな知識の豊富さに裏打ちされたオマージュ、バイオレンス描写、本編に関係のない長い会話、群像劇とも言える多くの登場人物など。それらは脚本に完璧に詰め込まれており、監督していなくても彼の脚本であればすぐに「タランティーノだ」と分かるほどです。

当然ながら本作でもその特徴はいかんなく発揮されており、10年もの歳月をかけて何度も書き直された脚本の練度は非常に高く、恐らくタランティーノ自身も最高傑作だと考えているんではないでしょうか。

イングロリアス・バスターズ_場面写真01

抜群なマッシュアップのセンス

そしてもう一つ外せないのが掛け合わせの妙。特に映像と音楽の掛け合わせですね。

映像のテイストとは全く異なる既存の楽曲をBGMとして使うスタイルはマシュー・ボーンの「キングスマン」やジェームズ・ガンの「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」といった大ヒット・アクション映画で定番にすらなってきていますが、始まりはタランティーノでした。

本作では第二次世界大戦が舞台なのにマカロニ・ウエスタンやデヴィッド・ボウイの曲が使われているのが印象的であり実に新鮮!ジャンルや国、時代が全然違っていてもお構いなしの選曲で、これがまた異ジャンルなのに不思議とマッチして独特な高揚感、哀愁、ユーモアを醸し出していました。

全く異なるもの同士をマッシュアップさせることで新たな味わいを生み出したり、隠された魅力を引き出してくる能力にかけては右に出るものはありません。とにかくそのセンスの良さには感服させられます。

イングロリアス・バスターズ_場面写真02

遅咲きの名悪役クリストフ・ヴァルツ登場

掛け合わせの妙は音楽だけではなく、キャスティングにも現れています。それまでのイメージを覆すのではなく調理の仕方でイメージを保ちながらもモダンな味わいを引き出すことで、多くの俳優がタランティーノ作品をブレイクスルーにしているのがその証拠です。

ジョン・トラボルタやブルース・ウィリスは「パルプ・フィクション」で返り咲きましたし、サミュエル・L・ジャクソンも同作でブレイクしました。

本作でもレア・セドゥやマイケル・ファスベンダーなんかが注目を集めスター俳優の仲間入りを果たしおり、中でもクリストフ・ヴァルツはその最たるもの。それまで全くの無名だったのが信じられないほどの堂々たるヴィランとしての演技を披露しており、本作が受賞した映画賞のほとんどがクリストフ・ヴァルツの助演男優賞なんですから凄いことです。

上品な佇まいでエレガントな所作、淀みない会話といったものは紳士めいていますが、同時に全く逆のねちっこい偏執的な下劣さと冷徹さを醸し出す演技は実に圧倒的。

その存在感は映画全体を支配しており実質的な主人公とも言えるほどで、彼をランダにキャスティングした時点でこの作品は成功を約束されていたのかもしれません。

イングロリアス・バスターズ_場面写真03

これぞタランティーノ流どんでん返し

だがしかし、最も衝撃的というか、観客を唖然とさせるのはラスト5分の展開ではないでしょうか。

劇場を焼き尽くす作戦は失敗に終わるのだろうということは半ば既定のこととして観ていたら、なんと大成功!しかもゲッペルス達もろともヒトラーも銃殺!その後劇場大爆発!!予想を覆す結果に呆気に取られてしまいました。

レインはレインで意気揚々のランダの亡命確約をいともあっさりと反故。お付きの通信兵を射殺してランダは卍印の刑!「デス・プルーフ in グラインドハウス」のラストを思い起こさせるランダの情けない姿です。

取引をした以上その約束を守るという基本的なルールをいとも簡単に無視するなんて主人公にあるまじき行為。主人公じゃなくたって人としてやっちゃいけません。だがしかし、ランダも観客も忘れていたことがあります。

そう、彼らはイングロリアス・バスターズなのです!

最後のレインのセリフ「こりゃ俺の最高傑作だぜ」はタランティーノの言葉でもあるんでしょう。

史実ではヒトラーはベルリンの地下壕で死ぬけどこれは映画だぜ?その通りにならなきゃならないなんて誰が決めた?ヒトラーを殺させてくれたけど約束は守らない。だってお前ナチスだもん!

大作映画であってもこんな斜め上を行くオチをしかけてくるとは…。物事はこう進むはず、こうなるはず、という既成概念にとらわれていたランダも観客もレインとタランティーノに気持ちよく裏をかかれてしまいました。

イングロリアス・バスターズ_場面写真04

というわけで、高い脚本の完成度とマッシュアップの妙技といい意味で乱暴な結末を評価しまして個人的評価は100点満点中85点です。

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