前回、日銀が異次元の金融緩和をしてマネタリーベースを増やしても、マネーストックはたいして増えていない、ということを書きました。
中央銀行はマネタリーベースのコントロールは可能だが、マネーストックに影響を与えることはできない、とはよく聞く言葉ですが、現実は概ねそのとおりのようです。

では、現在の金融政策が意味を持たないのかというとそうではありません。
まず今回、日銀は短期国債だけでなく、償還期限の長い長期国債を大量に買い入れることで,長期国債の金利を引き下げる効果があります。
ただし、元々がゼロ金利政策を採っていて、世界で最低の金利水準の日本ではたして異次元の金融緩和が効果があるのか、正直疑問に思っていました。
しかし、現実は異次元の金融緩和を行う前から円安・株高が始まったのでした。
円を大量に刷ると言っただけで人々のマインドは日本円を売る方向に変わりました。
ミセス・ワタナベの登場でしょうか。
いずれにしても、リーダーが強い意志を持って大胆な政策をアナウンスすれば、人々のマインドを変えられるということがある程度証明できたといえるのではないでしょうか。

私は正直マネタリーベースを増やしてなぜ円安になるのかその理由がわかりません。
円を印刷して、他の通貨より量を増やしているのだから相対的に円の価値が下がるのはあたりまえだろう、という人がいるかもしれませんが、マネタリーベースは金融市場にお金を供給しているだけで、、決して世の中にお金がまわっていっているのではありません。
ですから、円安になる理由も、なお言えばインフレになる理由もわからないのです。

ただ言えることは、金融市場でだぶついているお金が株式市場、為替市場、あるいはJ-REIT市場に流れているのは確かなようです。
日本が20年の不況に陥った原因が資産バブルの崩壊から始まったわけですから、資産価格の上昇は好ましいことです。
自分の保有している資産が上昇すれば、少し消費を増やしてみようかと思うのは自然な人の心理の流れです。

量的緩和にはもうひとつ大きな意味があります。
それは、日銀が国債を買い入れることで、実質、財政のファイナンスをしているという現実です。
福井元総裁や白川前総裁は、日銀が国債を買い進めた際には必ず、「日銀は決して政府の財政ファイナンスをしているのではない」と強弁していましたが、まぎれもなく、日銀が政策金利の調整を図るために行う買いオペ以上の国債を購入することは財政ファイナンスになります。
なぜか。

日銀が国債を買う場合と民間人が国債を買う場合、政府が国債購入者に金利を払うのは同じなのですが、違うところは、日銀が得た利子は、経費を除いた後、国庫に納入されるということなのです。
つまり、日銀は国債を買えば買うほど利益を上げることになり、その利益は国庫収入となるわけです。
言い方を変えれば、仮に、日本の国債発行残高約1000兆円を日銀がすべて買い取ってしまえば、日本政府は国債金利を払わなくて良いのです。
ね、財政ファイナンスでしょ。

また、日銀が購入した国債の償還期限が来た時は、政府が1年未満の政府短期証券として借換債を発行し、日銀乗り換えとして日銀が直接引き受けしているのです。
これは国会で毎年決議されていることです。
ね、まぎれもない財政ファイナンスでしょ。
私が日銀の異次元緩和に賛成する理由がここにあるのです。