キーサイトエンジニアブログ

アジレントの電子計測事業は、キーサイト・テクノロジーとして新たなスタートをきりました。
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1996年は忘れられない年です。その年に、『恋のマカレナ』がヒットし、Nintendo64、モトローラ社の折り畳み式携帯電話が発売されました。さらに、その年は、HP54645Aミックスド・シグナル・オシロスコープが発表された年でもあります。今日、ミックスド・シグナル・オシロスコープ(MSO)は業界標準ですが、20年前は新しい革新的なテクノロジーでした。以下は、1997年4月のHPジャーナルからの抜粋です。

「これは、オシロスコープとロジック・アナライザの要素を組み合わせた完全に新しい製品カテゴリーです。しかし、今までの組み合わせとは異なり、『オシロスコープを優先』し、ロジック・アナライザはそれを補完するものです。」

当時、テクノロジー業界では、マイクロコントローラーが注目を集めていました。1980年代、マイクロプロセッサとその数十本ものパラレル信号ラインが使用された時代には、マイクロコントローラーは8ビットまたは16ビットでした。数十(または数百)ものチャネルをテストするニーズが減少するのに伴い、それまで盛んに使用されていたロジック・アナライザがオシロスコープへとシフトしていきます。その結果、ヒューレット・パッカード社は54620Aをリリースしました。これは、16chタイミング解析用のロジックアナライザで、54645Aメインフレームに内蔵できるモデルでした。オシロスコープの容易さと応答性を望みながら、ロジック・アナライザのシンプルなタイミング解析のみを必要としていたエンジニアに大好評でした。

これらのツールは、すべて、ヒューレット・パッカード社が誇るコロラドスプリングス事業部で開発されました。主にロジック/プロトコル製品に主力を置いていた事業部です。今から思えば、ロジック・アナライザからオシロスコープに主力をシフトすることは明らかに避けられないことでした。それでも、プロジェクト投資の決定のためには、ロジック・アナライザを最優先にする必要がありました。

少数の研究開発エンジニアは時代の変化を察知していました。彼らは自分たちで戦略を練り、新しいオシロスコープのプロジェクトを進めていましたが、それが困難な闘いになることもわかっていました。次のような名言があります。「打ち負かすことができなければ、それに従え」。エンジニアたちは、新しいプロジェクトで、オシロスコープとロジック・アナライザを1つのフレームに組み合わせることを提案しました。この考えは、オシロスコープのプロジェクトで資金が得られなかった場合は、ロジック・アナライザをオシロスコープに組み込めば必ず成功するだろうという作戦です。以下は、MSOが考案された1993年の会議でBob Witte(RW)氏が記録した実際のメモの絵です(Bob Witte氏のツイッターのフォロー:@BobWEngr)。この製品は社内では「ロジックバジャー」というコードネームで呼ばれました。54620Aオシロスコープの「バジャー」と54645Aの「ロジックバッド」というコードネームに由来しています。
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1つのことが別のことにつながります。54620Aと54645Aが組み合わされて54645Dへのパラダイムシフトが起こりました。新しいクラスの測定器が業界に発表されたのです:それがミックスド・シグナル・オシロスコープです。これによって初めて、アナログオシロスコープの2チャネルとロジック・アナライザの8チャネルを使用して、1回の収集でシステムのタイミングロジックと信号のパラメトリック特性を確認できるようになりました。
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少々地味な始まりでしたが、その後、MSOは世界的な業界標準ツールになりました。ある計算によれば、世界中の新しいオシロスコープの30 %がMSOだということです。ロジック・アナライザは今日もまだ販売されていて、電気系のエンジニアにとっては非常に貴重なツールで、高度なトリガ機能、プロトコル解析エンジン、ステートモード解析が役立っています。FPGA、DDRメモリシステム、その他の多チャネルを使用するプロジェクトでデバッグを行う場合は、ロジック・アナライザの使用を検討する必要があるでしょう。しかし、ミックスド・シグナル・オシロスコープは、シリアルプロトコルを短時間で容易にトリガ/デコードできるその能力が評価され、今日のベンチの多くを占めています。

最後に、注目に値するのは、ヒューレット・パッカードの事業部はキーサイトのコロラドスプリングスに形を変えて、今でも力強く存在しているということです。実際に、非常に初期のMSOプロジェクトに関わったエンジニアたちが、現在の(そしてこれからの)MSOに今でも携わっています。

オシロスコープでどのようにデジタルチャネルを扱うのか、詳細については、こちらの2分間のビデオ「How MSO Digital Channels Work -Oscilloscope How To - The 2-Minute Guru(英語字幕あり)をキーサイトのオシロスコープYouTubeチャネルでご覧ください。


関連情報
オシロスコープ・ラーニング・センター
キーサイトのオシロスコープ ラインナップ
Keysight Oscilloscopes YouTube channel

煩わしいガレージ・ドア・オープナーのケース

 

Benからのお知らせ:キーサイトのエンジニアであるJennifer Starkによる第1回目のゲスト投稿です。以前、こちらに説明したように、ますます過密になったRF環境によって干渉が増加しているため、干渉によって問題が生じる可能性が高くなっています。これに遅れをとらないようにするには、創造性、推論のスキル、根気強さが必要になります。

 

干渉はいたるところにあります。まさかと思うような干渉源から生じることも珍しくありません。

最近、ガレージ・ドア・オープナーの問題を経験したあるエンジニア(ここではMikeと呼びます)の例をご紹介しましょう。Mikeは最近、新しいガレージ・ドア・オープナーを取り付けました。イライラすることに、Mikeとその妻が車を入庫するとき、遠隔操作のガレージドアで間欠的にガレージ・ドア・オープナーが動作しないことがありました。

最初、Mikeは、ガレージ・ドア・オープナーのメーカーのサポートセンターに電話をかけて欠陥製品について報告しました。工事サポート担当者が電話でMikeにトラブルシューティング手順を順番に説明しました。手順に従っても、ハードウェアに欠陥がある理由は何も特定できませんでした。ここで、工事サポート担当者は深刻に言いました。「これは何らかのRF干渉です。そちらの問題です。私たちの問題ではありません」。

これを聞いてMikeはRFエンジニアの立場になって、これを面白い課題だととらえました。

Mikeは自分のN9912A FieldFoxハンドヘルドRFアナライザを、スペクトラム・アナライザ・モードで使用しました。入力コネクタに手作りのアンテナをつなげて、自宅周辺をRF干渉がないかどうか探索し始めました。ガレージドアのリモートボタンを押しながらRFスペクトラムを表示すると、目的の周波数を特定できました。

ウォーターフォール/スペクトログラム表示は、信号/干渉のタイムドメイン動作と発生頻度を視覚的に理解する手段です。この表示は、ハンドヘルド・スペクトラム・アナライザと追加ソフトウェアによるもので、干渉の検出/表示に役立ちます。

ウォーターフォール/スペクトログラム表示は干渉を特定して、タイムドメインでの動作を理解するのに有用です。N9918A-236 FieldFoxアナライザ用干渉アナライザ/スペクトログラムソフトウェアによって、このような表示がスペクトラム測定に追加されます。

対象の周波数範囲に関するこの情報を携えて、Mikeは、ガレージ・ドア・オープナーの周波数近傍の信号の調査を開始しました。勤勉なエンジニアである彼は、自宅の周辺すべてを歩き回って手掛かりを探しました。ガレージを探しました。家の中の階段、ガレージの上の階段を調べました。家の隅々まで調べました。

最終的に、発見した信号はキッチンにあり、小さいものの無視できないものでした。冷蔵庫から発生しているように見えました。これにMikeは混乱しましたが、彼の今までの技術的な鍛錬によって、この調査を強いられました。冷蔵庫の電源コードを抜きましたが信号は消えませんでした。Mikeは同じ日の別の時間にチェックをして、冷蔵庫が動作しているにも関わらず干渉信号がなくなっていることを発見しました。不可解です。

キッチンカウンターで彼は自分の考えをまとめ、わかったことを並べて吟味しました。間欠的なガレージドアの問題、キッチンから発生する信号。そしてMikeはひらめきました。ガレージドアが動作しないのは、が家にいる時です。つまり、問題は、妻の在所に関係がありそうです。

ここで、Mikeは妻の財布の定位置が、冷蔵庫の近くのカウンター上であることに気付きました。FieldFoxで妻の財布を調査しました。確かに、干渉信号は財布から発生していました(冷蔵庫ではなく)。財布の中に、車のリモート・キー・フォブが入っていました。Mikeがキーフォブのバッテリーを外すと、干渉信号はただちになくなりました。

対策は簡単です。トラブルの原因であるキーフォブの場所を変えれば良いのです。現在、ガレージドアは適切に動作していて、MikeもMikeの妻もハッピーです。そして厄介なRF干渉は二度と生じていません。

創作性を例示できるエンジニアとそれを解説できる能力

学校が終わり、休みに入った方もいらっしゃるでしょう。テクノロジーを主題としているこのブログのテーマを少々広げて、その他のトピックに寄り道するのに良い時期です。今回は、昔のエンジニアがあげた印象的な成果と、彼らの発明に関する啓発的な解説のいくつかを紹介します。

今日では、電気に関するスキルと、プロセッサ、ソフトウェア、数々のアクチュエーターを組み合わせることによって、あらゆる複雑な機械的作用が実際に作り出されています。電子と物理的な世界をつなげる必要がある場合にはいつでもです。過去、コンピューターやステップモーターがない状態でどのように高度な作業が成されたのか、また、どのように知覚符号化のような高度な手法が物理的な仕組みに実装されたのかということは、容易に忘れられてしまいます。

最近、イリノイ大学のBill Hammack氏が作成している"engineerguy"の印象的なYouTubeの解説には、このような要素のすべてがまとめられています。たった4分間で、Billは、フィルム映写機が発明された時期(1894年)からデジタル・シネマ・テクノロジーに置き換えられる時期(1999年)までの進化した映写機についての、ほとんど理解されていないさまざまな側面を説明しています。

Billはスローモーション映像とアニメーションの図を使用して、ランプとレンズの間で断続的にフィルムを開始したり停止したりしながら、映写機がフィルムをサウンドセンサに同期させて円滑に進ませる仕組みを非常にわかりやすく説明しています。ここでは映像を厳密な精度で開始したり停止したりしてフィルム画像が動いていない時だけ投影しており、これにより、私たちの視覚システムは、連続した静止画を滑らかな動画としてとらえるように誘導されます。

Billは、カム、シャトル、ワッブルプレートの同期によってどのように動画が生じるのかを示しています。私がさらに詳細に調べたところ、いくつかの映写機は別のジェネバ機構(またはジェネバストップ)という同じくらい革新的な仕組みを使用していることがわかりました。これは、19世紀後期に最初のクリュード映写機が作成された頃には既に古い仕組みになっていました。ジェネバ機構の形状を確認するために、私は非常に古い書籍『Five Hundred & Seven Mechanical Movements』の複製を確認しました。

1889年の書籍『Five Hundred & Seven Mechanical Movements』から引用したジェネバ機構(ジェネバストップ)の複製画像

この合成図は、1896年に発刊されたHenry T. Brown著の書籍『Five Hundred & Seven Mechanical Movements』の中にある機構から引用したジェネバ機構の2つの例です。これは、開始/停止を滑らかに続けて連続回転運動を断続回転運動に変換するために、リミッタすなわち「停止」部分を組み込んでいます。

古い書籍のこのようなことに興味があるのは私だけだろうと思ったのですが、そんなことはありません。もう一度、簡単な検索を行ったところ、産業革命のこのような多くの果実がインターネット時代にまで引き継がれていることがわかりました。507movements.comのハイパーリンク/アニメーションで見ることができます。アニメーションは病みつきになります!

この本は、かつてのエンジニアが、多くの場合、我流で、限られた材料を使用して作業しながら、実際のところいかに賢明で想像力があったかということを忘れてしまいそうな私たちの強力な解毒剤になります。さらにエジソンやライト兄弟を思い出してください。彼らは根気強い実験者です。

1896年の本からYouTubeのお楽しみまで、そこには技術と解説の両方に関する知恵があります。キーサイトの専門であるRFに関して似たものをお探しの場合は、Billのデモ、『機械装置によるフーリエ解析の実行』をご確認ください。これとまったく同じ方法でFFTについて考えたことはないはずです。

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