0 dBから無限大まで、さまざまになりえます

信号測定とは、常に、わからない信号と測定デバイスからの寄与が結合された結果であることを、多くのRFエンジニアは知っています。私たちが、通常、考えるのはパワーなので、何十年もの間、最も一般的な測定はパワースペクトラムでした。この場合、特定の周波数で測定された平均パワーは、測定しようとしている信号に、アナライザの寄与による余分な「要素」が加算された結果と言えます。

多くの場合、表示された数値は受け入れられるもので、アナライザの寄与は無視しても問題ありません。なぜなら、アナライザの性能は、私たちが測定している信号の性能よりも非常に優れているからです。しかし、問題の信号が、アナライザ自体の寄与と比較して非常に小さい場合は、状況が非常に難しくなります。通常、そのような状況に思いがけずに遭遇するのは、高調波、スプリアス信号、相互変調(またはデジタル変調の類、隣接チャネル漏洩電力、ACPR)を測定しているときです。

このような状況について、以前に説明したことがあります。特に、アナライザのノイズフロア付近のスプリアス測定で生じる状況です。

CW信号とアナライザのノイズフロアの加算を図示したもの。見かけ上の信号と実際の信号、実際のS/N比と表示S/N比の図。

アナライザのノイズフロア付近のCW信号の測定の拡大表示。アナライザ自体が発生する雑音は、信号レベルと信号/雑音の両方の測定に影響を及ぼします。

見かけ上の信号は、信号パワーとアナライザの内部雑音パワーが加算されたものです。例えば、実際の信号パワーとアナライザのノイズフロアが同じ場合、測定結果は3 dBだけ高くなります。

しかし、加算されたパワーがノイズの形状であることを理解することが重要です。ノイズはどれも信号にコヒーレントではありません。測定および信号処理の多くの領域では、ノイズと信号が一般的にインコヒーレントであることが重要な前提条件です。

この前提条件が知らず知らずのうちに成立していないときに、私たちは戸惑うのです。問題を視覚的に把握しやすいように、このようなCWサンプルをタイムドメインで加算することを考えてみましょう。

振幅が等しい2つのCW信号を加算したものを図示したもの。相対的な位相の影響を示しています。同位相を加算すると、合計パワーが6 dBも個々の信号よりも高くなります。一方、逆位相を加算すると最終的なパワーはゼロになります。

コヒーレント信号を加算すると、相対的な振幅/位相に応じて、結果がさまざまに変わる可能性があります。このように振幅が等しいサンプルの場合、電圧が2倍、すなわち、パワーが6 dBも高い信号(上の図)になったり、まったくパワーがない信号(下の図)になったりします。

以前の投稿で、ログスケールのパワースペクトラム測定と、ときどき驚くような結果になることがある例を説明したことがあります。上の図は、コヒーレント信号の実際の関係を、2つの特殊なケースで図示したものです。特殊なケースとは同相または逆相の振幅が等しい信号です。

2つの信号の位相が同じ場合は、信号の加算によってパワーが4倍になり、振幅は6 dB高くなります。逆位相の信号は互いに打ち消し合うため、事実上、測定対象の信号が隠れて、測定ノイズフロアのみが表示されることになります。実際の測定は、位相の関係によって、このような両極端の間のどこかに落ち着きます。

このようなコヒーレントな加算/減算は、一般的に、スプリアス信号では問題になりません。しかし、高調波/相互変調/ACPR測定では問題になる可能性があります。なぜなら、これらの測定では、アナライザ自体の歪み成分がテスト対象の信号とコヒーレントになるからです。いくつかの歪み成分が加算されて異常に高いパワー測定になったり、別の成分が打ち消し合って本当の歪み成分が見落とされたりすることがあります。

私が考えているRFエンジニアの教訓を2つ述べましょう。1:非常に小さな信号を測定するときに期待する確度を実現するために、少し余裕のある高めの性能が必要になる測定があります。2:信号の加算と平均パワーの結果に必要な前提条件に注意することです。

別の投稿で、以上の教訓を適用してACPR測定を最適化する方法について私たちが学んだことを説明しようと思います。それまでは、歪み測定に関する詳細を、信号解析の基礎のページでご覧ください。