今回は少し、オレの若かりし頃の思い出について振り返りたいと思う。


入社3年目位の頃だっただろうか。オレには、色白で上戸彩を茶髪にしたような感じの、とてもカワイイ同い年の彼女がいた。彼女とはその年のゴールデンウィーク明けに開催された合コンで知り合った。


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知り合ってから5回目位のデートで結ばれ(当時のオレには、こうなるまで1ヶ月超の時間が必要だった。もちろん、今では決してしない、「告白」というものをしていた)、翌朝には仲良く海を見に行った(このときはまだ、セッXするにあたって、泊まりでどこかに行くという"理由づけ"が必要だった)。


その後、毎週土曜日に彼女と会えるのを楽しみにしながら、パワハラと長時間労働の厳しい日々に耐えつつ(金曜日でさえ23時位まで働いていた。もちろん土日出勤もザラだった)、毎日の仕事をガンバっていた。


今流に言えば、彼女に非モテフルコミットしていたといって間違いない。彼女以外の女性に感情を向けようとは思わなかったし、そんな時間的な余裕もなかった。
そしてそもそも、当時は出会いのエンジンなど、ごくたまに開催される合コン位しかなかった。


そんな彼女と約半年間付き合って迎えたクリスマスイブ。この年のイブは金曜日だったものの、オレは早朝から出社し、この日ばかりは18時半過ぎに会社を出た。
彼女と2週間前に一緒に買いに行き、サイズ直しが仕上がった指輪(5~6万円)をカバンに忍ばせながら。


「おう、ケーゴ、今日は早いな。オマエ、あれちゃんとやったのかよ?」


説教好きで異常に話が長いパワハラ上司は、オレが早く会社を出ることを決して見逃さない。ドスが効いた声でそう言った。


「もちろんやりました! 朝7時に出社してガンバりました!! タバコをお吸いになっていていらっしゃらなかったので、先ほどデスクに置かせて頂きました!」


もちろん、オレが退社する直前、上司がタバコを吸いに行くときを狙って、報告書を置いておいた。加えて、長時間労働こそが美徳だと考えている上司の心に響くように、早朝出勤したことをPRするのを忘れない。
 

「おう、そうか。ならいいんだけど。」


1年目、2年目のときは決して得られなかった上司のこの反応に、オレは3年目になった自分の成長を感じつつ、


「すいません、今日はお先に失礼します。」


とペコリと頭を下げ、都内からみなとみらいへ向かった。



 

そう、彼女とのデートに、みなとみらいの夜景が見えるレストランを予約しておいたのだ。


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19:30


全速力でみなとみらいに向かったものの、既に彼女は到着していた。


「ごめんね、待った?」


「ううぅん、私も今来たところ。」


相変わらず彼女は優しい。


「行こうか♪」

「うん。」 


この日のために、夜景が見えるとっておきのレストランを予約しておいた。


「乾杯、メリークリスマス!」


「メリークリスマス」


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待ちに待った彼女とのクリスマスイブ。


だが、美味しい、というか、何よりとても高い料理に舌鼓を打ちながらも、なぜか会話が弾まない。何かがおかしい。雰囲気も微妙だ。


「何か考え事でもある?」


オレは優しく聞いた。


「ううぅん。そんなことないよ。これ、すごく美味しいね」


「そうだね。夜景もキレイだし、素敵だね。彩とこうやって過ごせて嬉しいよ。」


オレはレストランのバリューに頼る位しか、この場の雰囲気を改善させる術を思いつかなかった。


「そうだね。」


上戸彩に似ていた彩ちゃんは、明らかにオレのセリフに相槌を打っただけだった。



21:00


レストランを出る2人。いつも通り手を繋いで歩くものの、何かが微妙だ。


12月なので外は寒いものの、ベンチに座りみなとみらいから見える横浜の海の夜景を見ながら話す。


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何か違和感を感じる。その違和感を感じながらも、その違和感が何なのかをつかめないまま、2週間前に買った指輪を渡す。


「彩、メリークリスマス。」


オレはそう言い、彼女に指輪を渡した。


そしてオレはこのとき、続けてこう言うつもりだった。


「来年は、結婚を前提にオレと付き合ってほしい」


と。


そう、オレは彩ちゃんのことが結婚したい位に好きだった。まだ25歳位だったけれど、半年付き合ったし、翌年もそのまま付き合って、1年ぐらい経てば結婚するのが自然だと考えていたのだ。


クリスマスイブを迎えるにあたり、オレはそう思っていた。だからこそ、それにふさわしい場所をこの日のデートに選んだ。


だが、言えなかった。


なぜなら、指輪を渡そうとするオレに対して彼女が言った言葉はーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごめん、ケーゴ。この指輪は受け取れない。」


えっ、、、


この時のショックはあれから10年位の時が経った今も、決して忘れることはない。


2週間前に一緒にとても混んでいた新宿の伊勢丹に行き、共に指輪を選び、そして、彼女のためにサイズを6.5号に直したのだ。


その指輪を、彼女は受け取れないという。


「どうして?」


「私、色々考えたんだけど、私たち、少し距離を置いた方がいいと思うの」


距離を置いた方がいいーー

距離を、キョリを、きょりをーー 

オレは頭の中で大混乱していた。 


「えっ、、、。何で?」


「私もうまく説明できないんだけど、でも、距離を置いた方がいいと思うの。」


「ごめん、急で戸惑ってる。何で彩がそんなことを言うのか分からないよ。」


「私も何でか分からないけど、でも、そう感じるの。」


この後、形を変えて、「なんで?」→「何でか分からない」のやりとりを2~3往復したものの、彼女の意思は固かった。


「分かった。じゃあ時間をおいてお互いゆっくり考えようか。でも、これは彩に受け取ってほしい。彩のために買った指輪だから。」


「え、でも、こんな状況なのに受け取れないよ。」


「この後、僕達がどうなるかは分からないけど、これは僕の彩への気持ちだから、受け取ってほしい。」


「でも、、、」


「彩のために買ったんだもん。受け取ってもらえなかったら、僕だけじゃなくて、この指輪もかわいそうだよ。」


「分かった、ありがとう。何か、ごめんね。」


「ううぅん、そんなことないよ。謝らないで。寒いし、そろそろ行こうか。」


「うん。」


駅へ向かう2人。このときはまだ、東急東横線の桜木町駅があった。

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(今はJRの桜木町駅しかなく、東急は深く地下に潜る、みなとみらい線のみなとみらい駅となっている。)


駅へ向かっていたこのとき、この半年間、一緒に歩くときは握り合っていた手は繋がれていなかった。


この日オレは、金曜日のクリスマスイブだったため、いわゆるシティホテルを予約していた。高いプレミアムを払って。


大好きな彼女と素敵なクリスマスイブの一夜を過ごすためだったら、お金など惜しくはなかった。少ないが、12月だからボーナスも入る。オレには特に欲しいものもなかった。


桜木町駅の改札が近くなる。答えは分かっていながらも、オレは最後の力を振り絞って聞いた。


「クリスマスイブだからさ、実は夜景が見えるホテルを予約しておいたんだ。でも、今日は帰るよね?」


「うん、ごめん。」


「そうだよね。いいんだ、そんな、謝らないで。今日はちょっと驚いたけど、それでも、彩と一緒にクリスマスイブを過ごせて嬉しかったよ。」


「ありがとう。」


「じゃあね。気を付けて帰って。」


「うん。」


オレに背を向け、桜木町駅の改札に向かう彼女。


オレはこの時から、また会いたい女性とは、会ったときに次に会う約束を取り付けることを自分に課していた。


彼女となった女性でも、それは変わらなかった。なぜなら、バイバイした後にメールでやりとりするより(当時はLINEなど無かった)、会って直接話した方が早いからだ。


だが、この日はそんな雰囲気ではなかった。それでもオレは、この習慣をとっさに思い出し、


「彩! この後僕たちがどうなるかは分からないけど、とりあえず、初詣には行こう。一緒におみくじをひこうよ。」


振り向く彼女。


「うん、そうだね。」


「年明けの何日がいいかな。元旦はきっと親戚と集まったりするし、やめた方がいいよね。2日か3日がいいかな?」


「そうだね。お正月は色々あるから、手帳を見て連絡するね。」


「うん、分かった。じゃあ、連絡待ってるね。じゃあね。」


「うん、バイバイ。」


オレは彼女の背中が見えなくなるまで彼女を見送った。オレはこの日、非モテフルコミットしていた彼女に、どこまでも優しかった。



彼女の後姿が見えなくなり、そして、フと現実に帰る。この後どうしようか。オレはホテルを予約していた。


今さらキャンセルしても事前にカードで支払っているお金は返ってこない。


であれば、結論は一つだ。


オレは彼女とタクシーで移動するはずだった道のりを、20分間ぐらい掛けて一人寒い夜道を山下公園の方まで歩き、彼女と泊まるはずだったホテルに宿泊した。


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そして、彼女と見るはずだったみなとみらいの夜景を一人で見ながら、事前にホテルで頼んでおいたスパークリングワインのボトルを開けた。


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オレはこの日のために何をして、一体いくら使ったのだろう。


金曜日に早く帰るために、週の前半から終電間際まで働き、この日は朝7時に出社した。


指輪(5~6万円)、レストラン(2~3万円)、ホテル(4~5万円)。合計で1213万円も使っている。


全ては彼女の笑顔と、大好きな彼女との素敵なクリスマスを過ごすためだった。


でも、それがこのザマだ。オレが一人で夜景を見ているのが唯一の現実だ。


そんなことを考えながら、一人で飲んでいたら涙があふれてきて、止まらなくなった。オレは一人で泣きながら、浴びるようにスパークリングワインを飲んだ。




気が付いたら寝ていて、翌朝、スーツ姿のまま目が覚めた。

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この日以来、彼女から連絡が来ることは無かった。そして、オレからの連絡に彼女からの返信は一切なかった。
メールは受信拒否されて、電話さえも、途中から繋がらなくなっていた。そう、着信拒否をされていたのだーー




この年の翌年から、オレは『ぼく愛』( )のわたなべ君のような"掃き溜めのような人生"を送ることとなる。

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"ぼく愛"から引用する。

~毎日、同じ景色を眺めていた。北品川と田町を往復する。寝る、食べる、通勤、山のような書類仕事、そして、風俗嬢の手の中や口の中でする射精。僕のこうした活動のすべてが、わずかながら日本経済に貢献していた。掃き溜めのような人生を漂っていた。恋愛というものはもはや、どこか遠い世界の出来事に思えた~



北品川と田町の部分を当時のオレの自宅と勤務地に置き換えれば、まさにこの通りだった。あの頃をいま思い出しても、涙がこみ上げてくる。現実に、こんな毎日だったのだ。


この彼女との一件は、オレの人生の恋愛史に深く刻み込まれた。10年ぐらいの時間が経っても、これだけ再現できる程に。

オレはこの一件以来、女は突然男を捨てることができる生き物だと刻み込まれてしまい、根本的に女性という生き物を信頼することが無くなってしまったと言っても過言ではない。


オレは男友達とは、心と心でつながっていると考えている。男同士だから、たとえマメに連絡を取らずとも、何かあれば無償の心でオレは友人を助けるし、きっとオレが窮地に陥ったときしても、きっと彼らはオレを応援してくれるだろう。


だが、オレは女に対しては、そこまで思うことはできない。「女」とは、このエントリーでは、恋愛関係にある女性だ。


仮にオレがリストラされたり、新規に立ち上げた事業に失敗して無一文になったとしたら、オレと恋愛関係にある女性が、その後も関係を継続してくれるとは思わない。いや、思うことができない。


恋愛関係から離れて、もっと言えば、セッXしない関係となり、本当の意味での友人としてなら、その女性は応援してくれるかもしれないが。だが、セッXする関係には決してならないだろう。


オレは心の奥底ではこう思っているため、この一件は、その後のオレの恋愛観に大きな影響を与えたと言える。



さて、話を戻す。オレはこのときの彼女の行動がずっと謎だった。ずっと考えていた。来る日も来る日も、毎日。

それぐらい、彼女のことが好きだったのだ。結婚を考えるぐらいの女性に、突然捨てられたのだ。当然のことだろう。

その後しばらくして、この謎を解き明かしてくれる本が出版された。


次回のエントリーではその本の内容と共に、「男はなぜ急に女にフラれるのか?」ということについて、考えてみたい。

【追記】

このエントリーで、たくさんの方から感想をいただいた。

1つ1つ返信することができなかったので、ここに掲載させていただき、この場を借りて、感想を下さったことにお礼を申し上げたい(もし漏れている方がいらっしゃれば、Twitterで連絡下さい)。

共感して下さり、ありがとうございました。若かりし頃の自分に伝えてあげたいです。

「こんなにもたくさんの方達に、共感していただいたよ」

ってーー 

































 



ケーゴ