201612月某日


オレは友人達と新宿で忘年会をしていた。参加者はオレを含めて男5人。30半ばの男達が5人も集まると、みんな色々ある。


この日集まった5人のうち3人は結婚歴があり、その3人のうちの1人はバツイチ。ちなみに、総務省が行う国勢調査によると35歳前後の男の未婚率は約4割のようだ。

KONINRITSU

参考までに、女性の未婚率の推移も掲載しよう。

KONINRITSU2


また、最新の厚生労働省の人口動態調査によれば、日本の離婚率は約3割。2014年の1年間では64万組が結婚し、22万組が離婚している(http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/81-1a2.pdf)。これはあくまで、「調査した年に結婚したカップル」と、「調査した年に離婚したカップル」を対比した数字でしかないが、細かいことは脇に置こう。3組結婚すれば、その内の1組は離婚するのだ。

見事に統計通りの5人だ。この日の友人達をそれぞれを見てみよう。


まず、5人の中で最も若くして、20代前半のときに年上の女性と結婚した田中君にはすでに、小学5年生になる男の子の子供がいる。奥さまは専業主婦。
田中君の目下の関心事は子供の中学受験だ。第一志望は早慶の付属中学校。息子さんが通っている日能研は月5万円ぐらいかかるらしい。


田中君の子供は小学5年生から塾に通い始めたらしいが、小5からだともう周回遅れだそうだ。


そんな田中君の子供は、田中君がスマホを使っていないときに彼のスマホで、

「おっぱい」

と入力して画像を検索するのが、最近の受験勉強の合間のささやかな楽しみらしい。検索して出てきた画面を閲覧して満足した後、画面をちゃんと消して田中君に返すそうだ。


ただ、息子さんは「検索履歴を消す」というところまで気が回らないゆえ、田中君は自分の息子が何を閲覧していたのかをしっかりと把握している。

無論、奥さんには秘密にしており、このことは男と男の秘密として取り扱っているそうだ。


「やっぱり血は争えないんだよね。」


彼はぼそっとつぶやいた。そんな彼自身の最近の楽しみは風俗に行くことだ。


「こないだもいいお店を見つけて~」


と、聞くに堪えない内容を熱弁していた。


田中君は一時期は風俗を止め、もう一人子供を作ろうと頑張っていたが、断念したそうだ。彼の子作りの話は後述しよう。


彼は日中は某大企業で管理職を務めている、仕事中だけは真面目な男だ。貴方の上司や先輩も、仕事が終わればもしかしたら、こんな一面を持っているのかもしれない。



次に、佐藤君を見てみよう。


佐藤君は公務員。公務員にふさわしく、この5人の中で一番真面目な性格だ。奥さまも公務員。彼がもしオレの婚外恋愛の話などを聞いたら、驚いてひっくり返るだろう。
佐藤君は20代半ばで結婚し、既に2人の子供がいる。小学4年生と1年生だ。奥さまは産休後、しっかりと復職して働いている。
 

上の子は女の子のため、田中君の息子の話を聞いて、自分の娘さんの周りの男の子達が既に「男」になりつつあることを、彼はとても心配していた。


佐藤君は奥さんと仲睦まじく、今でも月に2回ぐらいセックスしている。かれこれ結婚して10年ぐらいになるというのに、驚愕に値する素晴らしいことだ。

奥さまは、見た目だけでなく心も美しい女性なのだろう。"スター"(http://blog.livedoor.jp/kgo_number10/archives/2016-12-25.html)と結婚すると、こんな幸せな結婚生活が待っている。


田中君と佐藤君。妻を持つ男が2人いて、1組の夫婦はセックスレスで、もう1組はきちんとセックスをしている。これも統計通りだ(第7回 男女の生活と意識に関する調査 各メディア、「セックスレス44.6%」を取り上げ http://www.jfpa.or.jp/paper/main/000047.html )



残る独身の山田君と鈴木君を見てみよう。彼らは見た目も悪くなく、稼ぎもいい男達だ。


オレは彼らのために今年、2回も合コンを開いたのだが、その後何も聞こえてこなかったため、どうだったのか感想を聞いたところ、


「"なんか"ピンとこなかった」


とのことだった。


オレは女友達にお願いして彼らとLINEをつなげ、合コンのセッティングまではしたものの、合コンそのものには行っていないため、合コンの参加者の女子は分からない。だが少なくとも、幹事の女子2人はかわいい女性だ。


彼らの言う"なんか"とは何かやや詰め気味になりながら定義を聞いたが、要するに彼らの基準に満たなかったらしい。
相手の女性達は仮に「幹事マックスの法則」が起こっていたとしても、幹事の子は素敵な女性だ。


つまり、彼らの求める女性への基準はとても高くなっているのだ。それに比して、彼ら自身のモテ度がどうかというと、見た目も悪くなく稼ぎもいいが、決定的に経験が不足していることに起因して、女性の扱いに慣れていない。そして何より、女性に対して消極的な一面があることは否めない。



これはなかなか根が深いなと思っていたら、なんと鈴木君の方はその後、最近になり彼女ができたという。素晴らしい。鈴木君の状況を見ていこう。



鈴木君は某大企業の経理部に所属する真面目で誠実な男だ。見た目は悪くないというか、むしろいい。クールな印象の風貌だ。オレは彼が結婚していないのは、彼自身の真面目でやや奥手な性格に起因すると分析している。
 

そんな鈴木君は、友達の紹介で彼女と知り合ったらしい。その後みんなでゴルフに行き、何度かみんなで遊ぶうちに、という感じだようだ。


絵に描いたような素敵な出会いだ。素晴らしすぎる。もう7~8回ぐらい2人でデートを重ねているらしい。相手の女性は34歳。彼女の年齢的に、来年は結婚も視野に入れているようだ。


オレは聞いた。


「で、セックスはしたんだよね?」


「いや、まだ。」


オレは絶句した。まだキスまでしかしていないようだ。


「お前な、セックスもしていない男女は付き合ってるなんて~」とオレがここまで言った瞬間、お気に入りの風俗の熱弁が終わった後は食事に集中していた田中君が、口を開いた。


「お前、それはやばいぞ。早くした方がいいよ。変な意味じゃなくて、彼女は来年35歳だろ。35歳過ぎると女の人は子供ができづらくなるし、初産だったらなおさらだぞ。お前、子どもは欲しいんだろ。そうしたら、ホント早くした方がいいよ。


オレなんて1人目ができてからずっとセックスレスで、でも2人目を作ろうとして嫁が35歳を過ぎてから1年以上も頑張ったけど、結局できなかったよ。お前、セックスが義務になったらホントつらいよ。


既に嫁じゃ勃たないから、一週間オナニー我慢して、直前にAV見て元気出して、ときどきスクワットしたりなんかして、それで子供を作るためだけにセックスするんだよ。イケればまだいいけど、イケないときもあるし、かなりしんどいよ。

それでイケても、2週間後に嫁の生理が来たらすげ~凹むんだぞ。で、またオナニーの我慢を始めるわけ。こんな性生活が1年以上も続くこと、お前は想像できる?


だからむしろ、彼女がそれぐらいの年齢なら、できちゃった婚がいいと思うよ。お前みたいにゆっくり付き合ってて、1年付き合ったら結婚して、その時彼女は36歳になってて、それから子作りなんて、マジしんどいよ。」


田中君の気迫にオレは圧倒された。さっきまでお気に入りの風俗の話を笑顔でしていた彼は一体どこへ。子作りに悩んだ経験のある、彼の思いを吐き出しているようにも感じた。


鈴木君は言った。


「うん、分かった。来年頑張るよ。」


オレは突っ込まずにはいられなかった。


「お前、大晦日の日に彼女に会うんだろ。そこだ、そこでベッドに誘おうよ! お前なら絶対できる!! 」


彼はやや動揺しながら、言葉少なに小刻みに首を上下に何度も動かした。オレの友人だ、彼ならきっとゴールを決めることだろう。



そしてもう一人の独身男、山田君。彼は某外資系企業で営業の仕事をしている面白い男だ。田中君の以前のよき風俗仲間でもある。


山田君も見た目も悪くなく稼ぎもいいのに、彼もまたなぜか彼女がいない。オレはそれは、彼の理想が高すぎることに起因していると分析している。

最近、20代の頃に非モテコミットしていた年上の女性に呼び出されて、いきなり"中出し"をせがまれたようだ。


ん、いきなり"中出し"をせがまれる!? 


言葉の響きとしてはどこかうらやましくも一瞬感じるが、いやいやいや、決してそうではない、むしろ怖い。そして、よく話が見えない。順を追って彼の話を聞いてみよう。


いま39歳のその女性は、いわゆるバリキャリの女性で、今は某グローバル大企業のマーケティング部で働く、とても頭脳明晰で積極的な女性だそうだ。写真を見せてもらったが、とても美しい女性だった。

お互いが20代の頃に山田君と知り合い、彼がアプローチをし続けたが、彼女が断り続けていた。


その後も男女の関係にはならないが、なぜかたまに2人でご飯を食べに行ったり、ときに旅行!(セックスはしていないらしい)に行ったり、彼らは奇妙な関係を数年間にわたり続けていた(山田君も男なので、その間に別の恋人がいたこともあった)。


彼は当然にして彼女への好意があってそのような関係を続けていたが、彼女が「友人」としての山田君を受け入れながらも、「男」としては受け入れないことをお互いに了解しあっていたようだ。彼女はその間、別に男(そろいもそろってみんなハイスぺだったらしい)もいて、彼女の恋愛相談などもされていたらしい。


そんな彼女が今年夏ごろに彼を呼び出し、「貴方と結婚したいから考えてほしい」と言ったそうだ。


彼は嬉しかったようだが、さすがに即決できる話ではないため、答えを保留した。とりあえず結婚については保留にして、「付き合う」ことを始めたらしい。


そして彼はしばらくすると、念願だったそのバリキャリの美しい女性と、ベッドを共にする機会に恵まれた。だが、なんと彼女は最初のセックスで、「つけなくていいよ。というか、つけないで」と自分から言ったそうだ。


結局、コンドームを「つける・つけない」の攻防を経て、最後はつけてしたそうだが、彼女は最後まで外そう試みたらしい。
 


そう、頭脳明晰で積極的な彼女は、子作り年齢の限界ラインに自分がいることを自分自身でよく知っているのだ。だから一刻も早く、山田君とノープロテクションでセックスし、妊娠したいのだ。


このときの彼女の行動に驚いた山田君は、その後は彼女とセックスをすることはなく、ほどなく別れることになった。


オレはこの女性はとても合理的で自分の状況をよく理解し、そして、自分の考えを実行に移せる行動的な人だと感じた。だが、男は男で好きな女性(ひと)を抱きたいという欲求はあれど、いきなり子供となると、これはやはり、また違う話だ。


また、彼らのベッドインを違う角度から見ると、年齢を重ね収入も増えて男としての魅力を増しバリューがあがってきた山田君と、昔ははるか高みに存在し自分のバリューがとても届かなかったけれど、年齢を重ねバリューが下がってきた女性とが、時の経過を経てバリューが等価になり、恋愛市場というマーケットで約定した瞬間でもあったとも言える。


彼女が、山田君が非モテコミットしていた20代の頃に、女性の本能で判断するのではなく、その頭脳明晰な頭で彼の一途な気持ちを評価し、彼の非モテコミットに応えてあげていれば、2人の人生は変わっていたかもしれない。


だが、これが現実の恋愛市場だ。男と女はいつもすれ違う。



失恋話を終えた山田君は自分を奮い立たせるように、
「よし、みんなでおっぱぶに行こう!」
と言い始めた。

風俗が大好きな田中君はもちろん乗り気だ。セックスレスの子作りについて熱く語っていた彼は一体どこへ。また、ただの風俗好きな男の表情になっている。


鈴木君も、「おっぱぶは風俗じゃないからオレも行こうかな」などとクールな顔は維持したまま、ボソっと言い始めた。

どうやら、射精が含まれない場所は、彼の辞書の中にある「風俗」という場所にはあてはまらないようだ。



おっぱぶーー


それは薄暗い店内にソファーが並べられていて(店によってはクラブ以上に、狂乱的な音楽がガンガンに流れている場所もある)、そこに男が座ると、隣に女性が来る。
 

5
 分ぐらい女性と話すと、彼女は自分の太ももの上にまたがり、自分の顔がその女性の胸の前にきて、女性のおっぱいを触るというお店だ。そして、女性が  40分間で  3  人ぐらい入れ替わる。

オレの友人達の名誉のために言うが、彼らは見た目も悪くなく、稼ぎもいい、そして、時には知り合った女性から言い寄られることもある男たちだ。

でも、彼女がいない。デートする女子とはいつの間にか尻つぼみに終わってしまう。またはようやく彼女ができても、なかなかセックスしない、誘えない。そして、たとえ結婚していてもセックスレスだ。

そんな彼らが、「おっぱぶ」に行きたいと言う。これが世の中の、"普通の"男達の行動だ。性的欲求はあるが、それを恋愛市場や妻に対して向けることができない。


以前も同じような状況があり、


「お金を払えば外れるブラのホックを外して触るおっぱいと、お金を払っても外せないブラのホックを外して触るおっぱいは、天と地の差があるんだよ!」


とオレは熱く語ったが、一瞬でスルーされ、彼らのおっぱぶに賭ける熱量に全く変化がなかったことを思い出した。

同じことをまた言うのも、野暮というものだ。

オレは彼らを温かくおっぱぶへと送り出し、彼らは歌舞伎町の暗闇へと消えた。オレは風俗にも行かない一番真面目な愛妻家の佐藤君と共に、新宿駅に向かった。

彼と駅の改札で別れた後、オレはストナンを始めた。実にオレも、人のことをあれこれ言えない人間だ苦笑。



オレは結婚について思うことはいろいろあるが、それでも、友人が結婚すればとても嬉しい。結婚したいと思う友人にはぜひ結婚してもらいたいと思うし、「結婚しない」という選択も、もちろん尊重されるべきものだ。そして、もし結婚したのならば、その相手と幸せになってもらいたいと心から思う。

だからこの日の山田君と鈴木君が結婚するなら、オレは東京に帰って来て結婚式に出たいし心からお祝いしたい。そして結婚したら、佐藤君みたいな幸せな家庭を築いてほしいと思う。


でもやっぱり、結婚しても田中君みたいにセックスレスになる男もいれば、オレみたいにセックスレスどころか、「婚外恋愛は~」とか言い出す男もいる。5人もいれば、人生みなそれぞれだ。

オレは友人が結婚したら心からうまくいってほしいと思うけれど、たとえば5人いたら1人か2人はどうしても、うまくいかなくなる人が出てくるだろう。もし、そんなうまくいかなくなった友人がいたら、

「ようこそ、"こっちの世界へ"」

と言って、温かく迎えてあげたい笑


2017年、友人で結婚する人はいるだろうか。もしいたら本当におめでたいし、心から幸せな結婚生活を送ってもらいたいと思う。

結婚に迷える友たちに幸あれ!


ケーゴ