寺本益英の日記

 関西学院大学で日本経済史を担当する寺本益英の身辺雑記です。経済、歴史、お茶、フードシステムの話題を中心に、思い立ったことを綴ります。受講生の質問にも答えます。

現代日本経済史セミナー「フランス政治の新自由主義化とフランス社会」のご案内

 11月17日(金)の授業時間内に、名古屋芸術大学非常勤講荒木弘太郎先生をお招きし、セミナーを開催します。

【現代日本経済史セミナーのご案内】

● 講師:荒木弘太郎氏(名古屋芸術大学非常勤講)
● 日時:2023年 11月 17日(金) 13:20〜15:00(予定)
● テーマ:フランス政治の新自由主義化とフランス社会
● 主催:関西学院大学経済学部
● 会場:B号館 103号教室

お問い合わせ
〒662-8501
西宮市上ヶ原一番町1-155
関西学院大学経済学部
寺本 益英研究室
e-mail:teramoto★kwansei.ac.jp ★を@に変更してください。
TEL:0798-54-6469(寺本研究室直通)
受講生以外で参加を希望される方は、事前にメールでご連絡をお願いいたします。

日本のエネルギー安全保障について考える

 近年エネルギー価格が高騰し、電気代、ガス代の負担増が国民生活を直撃しています。冷暖房機器の使用が一斉化する夏・冬には、行政機関や電力会社から省エネ・節電の要請が出されることがしばしばで、わが国のエネルギー安定供給が危惧されるようになりました。
 本日はまず、このようなエネルギー危機が発生する背景を検討します。最大の要因は、2022年2月に勃発したロシアのウクライナ侵攻だと思います。世界屈指のエネルギー大国ロシアは、対立する西側諸国に圧力をかける意図もあり、石油、石炭、天然ガスなどの輸出を大幅に制限しました。一方西側諸国も、ロシアに制裁を加えるため、厳しい禁輸政策を実施しました。両陣営の行動は、エネルギーの供給不足を引き起こし、エネルギー価格高騰につながったことは明白です。
 エネルギー価格高騰は、需要面からも説明できます。インドをはじめとするグローバルサウス諸国の経済発展は目覚ましく、エネルギー需要は著しく増大しています。先進国のみならず、新興国の台頭が、国際的なエネルギー需給をタイトにしているのです。
 次に日本国内の事情に目を転じてみます。2012年、太陽光など再生エネルギーで発電したエネルギーを一定価格で買い取る固定価格買い取り制がスタートし、再生エネルギーの利用が拡大しました。さらに2016年には、小売り電力自由化が実施され、電力事業への新会社の参入が相次ぎ、電力利用者の選択の幅が広がりました。
 これら2つの規制緩和と世界的な脱炭素推進の影響で、各エリアの大手電力会社は、火力発電所の新設を断念し、老朽化した火力発電所の操業を打ち切ってゆきます。しかしこうした制度変更は必ずしも成功したとはいえず、電力不足を引き起こしてしまったのです。ここであらためて火力発電のメリット、デメリットを検証し、脱火力発電の準備が整わないまま新制度を導入することの是非を考える必要があります。
 最後に岸田政権の原発政策を取り上げます。政府は2023年2月10日、GX(グリーン・トランスフォーメーション)実現に向けた基本方針を閣議決定しました。首相はエネルギー安定供給と脱炭素社会の実現に向け、原発回帰の方針を鮮明に打ち出したのです。すなわち廃炉と決めた原子炉の敷地内での建て替えを容認し、これまで最長60年と定められてきた原発の運転期間は、60年超でも運転可能となります。2011年の東日本大震災による福島第一原発の大惨事以降、歴代政権は原発再稼働に慎重な姿勢を示してきたことを想起すると、この方針転換はあまりにも性急ではないでしょうか。原発の安全性と再稼働の促進について、国民的な議論が必要だと感じています。

2023年度 日本経済史機.譽檗璽塙嵒

 今学期は日本経済史気罰愃櫂肇團奪ス「医療をめぐる諸問題」合わせて約1,000名のレポートの採点をしなければならず、本当に大変な思いをしました。2科目のレポートはどちらも10枚程度でまとめてもらっていますから、1,000部となると、そう簡単に処理できるものではありません。7月から今月はじめは、不眠不休で只管受講生が提出したレポートを読んで、成績評価を行うという作業が続きました。おかげさまで、成績評価の仕事が終わりましたので、今日は日本経済史気旅嵒召鬚靴燭い隼廚い泙后
 最初に外形的な点について述べます。課題2.課題3(1)、課題4は自由記述ではなく、講義中に話したことや配付資料に基づいてまとめてもらうものです。にもかかわらず、全く関係のない記事の写しなどが書かれている場合は、採点対象外としました。
 反対に、配付資料の言い回しを一言一句違わないようコピー&ペーストしたものも、自分の頭で考えたとは言えず、ほぼゼロの評価をせざるをえまえん。
 さらに、段落が変わるとこは1マスあける、適当に句読点を打って一文が極端に長くならないようにする、改行する、見出しをつけてこれから何を述べようとするか宣言をするといった、読み手(=出題・採点者)への配慮がなされているかどうかは、内容の充実度とほぼ比例している印象を受けました。
 以下では各設問について、感じたことを述べておきます。まず課題1(1)では、近代史を学ぶ意義について、よく理解してくれていたと思います。高校までの歴史の授業の経験、現在受講している数学系科目との性質の違い、ウクライナ情勢と重ね合わせての近代史を学ぶ意義など、自分の言葉で明確に述べられていたように思います。入試科目としての日本史・世界史は、私も苦しんだ経験がありますが、古代から現代までの年号と史実をとにかく正確に記憶する必要があり、その出来具合が入試の合否と直結するため、プレッシャーは相当なものです。大切なのは事件の契機、展開、帰結を着実に理解し、キーパーソンについては、簡単な経歴なども知っておくと興味が深まりますが、受験生にそのような時間的余裕はありません。だからこそ、大学入学後にしっかりと学び直すことが重要です。
 数学系科目との性質の違いについて、コメントを紹介しておきます、数学系科目は、公式に当てはめて正解にたどりつけるかどうかが問われるということです。これに対し近代史の学びは、答えはひとつではなく、様々な考え方ができます。史実に対する評価は、各個人の価値観によって多様であり、それが正しいか誤っているか、結論を出せるものではありません。他人の異なる意見にも耳を傾けつつ自らの見解に磨きをかけ、良識ある市民として行動できるようにすることこそが、歴史教育の役割だと考えています。
 今学期は韓国併合までの経過を重点的に取り上げたこともあり、戦前期の日本帝国主義とロシアのウクライナ侵攻を重ね合わせる意見も多く見受けられました。19世紀から20世紀前半にかけての帝国主義の時代は、自国の権益拡大のために愛国心を駆り立て、軍事力こそが国力で、戦争も正義であるというとんでもない時代だったといえます。私たちはプーチンが世界を戦前の帝国主義時代に逆戻りさせようとしていることを認識しなければいけません。そしてその暴挙NOの立場をとっているのはNATO諸国と日本くらいであり、大国中国は容認の姿勢を示し、グローバルサウス諸国は、自国の資源や食料確保のため、ロシア経済を支援しているのが現状です。全世界が一致団結し、ロシアの暴挙を止めることができないのは、本当にもどかしいものです。
 続いて課題1(2)の自由研究に関する課題は、例示したロシアのウクライナ侵攻と、核なき世界の実現を取り上げた学生が多かったです。そのほか、少子化対策、地球環境問題、円安と物価高騰問題など、現在の日本が直面する難問への関心が高いこともわかりました。歴史的なテーマでは、太平洋戦争の経過で、わが国が敗戦に至る経過を取り上げた学生もかなり見受けられました。いずれも、ネット記事を参照して書かれていましたが、これらの重要なトピックスに対しては、本当にたくさんの研究者が様々な見解を述べていることを知り、驚きました。研究者としてこうした膨大な研究の蓄積がある分野に新規参入するなら、よほどユニークな分析や見解を示さないかぎり二番煎じの研究にとどまってしまい、ハードルの高さを痛感しました。

2023年度 医療をめぐる諸問題 レポート課題

【2023年度 医療をめぐる諸問題 レポート課題】

※ 下記の【課題1】〜【課題5】について、指定された分量(A4用紙1枚の設定を1,000字程度としたときのページ数)で解答を作成してください。

【課題1】

 次の(1)、(2)の設問に1枚程度で回答してください。

(1) みなさんはこれまで(大学に入学するまで)医療についての授業を受けた経験はなかったと思います。ここで初学者であるあなたが、なぜこの科目の受講を決断したかについて述べてください。なお何らかの形で学んだ経験のある受講生は、その内容を紹介したうえで、受講理由を教えてください。

(2) これまでみなさんが接してきた医療(医療制度・医療機関)を前提に、日本の医療が優れていると思った点、不十分だと感じた点をそれぞれ3つずつ列挙し、簡単なコメントを加えて」ください。回答は見出しを「〜のこと」とし、改行して3行程度のコメントを記し、「〜だから」と締めくくってください。

【課題2】

 日本経済が直面する深刻な問題は、急速な高齢化の進展です。このことを念頭に置いて、次の(1)〜(3)の設問に回答してください。分量は2枚程度を目安とします。

(1) 戦後日本の人口動向を概観し、現在(令和)における高齢化の実態を説明してください。その際必ず授業で提示された図表に基づき、適切な解釈(時代背景、変動要因など)を加えてください。なお用いた図表には、「何月何日何々先生の回と出典を明記すること。

(2) 高齢化の進展は、日本経済にどのような影響を与えますか。医療、財政(社会保障)、社会に焦点を当て、解説してください。なおこの課題は、あなたが関心あるものをいくつか提示し、見出しをつけて説明すること。(1枚程度)

(3) 高齢化の進展に直面した我々は、今後どのような医療を追求してゆけばよいでしょうか。〕祝桧緡鼎療按譟↓∪菽式緡鼎凌篆覆里い困譴の観点から述べてください。

【課題3】

 新型コロナウイルス感染症をめぐり、次の(1)、(2)の設問に2枚程度で回答してください。

(1) 福田先生の資料では、パンデミック(新型コロナウイルス感染症)への対応策が示され、中嶋先生の資料でも、新型コロナウイルス感染症への医療的対応が掲載されています。主にこれら2つの情報を参考にして、わが国における新型コロナウイルス感染症への初期対応から収束に至るまでの経過を顧みるとき、どのような問題点があったと思いますか。後藤先生の資料で強調された日本人の国民性や、歴史からの教訓を念頭に置いて論じてください。

(2) 新型コロナウイルス感染症の感染症上の分類が2類から5類に引き下げられました。この転換によって、これまでのルールはどのように変わりましたか。さらにそれが経済・社会に与える影響について、プラス面とマイナス面を整理して述べてください。

【課題4】

 次の(1)、(2)の設問のうち、どちらか一方を選択して1枚程度で回答してください

(1) 小谷先生の授業を通し、災害医療は平時の医療と比較すると、様々な特殊性が感じられたと思います。大規模震災を想定し、災害医療の特徴を述べてください。さらに行政が中長期的に整備すべき課題を指摘してください。

(2) 鈴木先生の授業では、医学教育論が取り上げられました。その内容を念頭に置いて、あなたが病院経営者となった場合を想定し、どのような経営を目指すか論じてください。その際、後藤先生の授業で指摘された戦略・戦術の考え方を適用すること。

【課題5】

 次の(1)、(2)の設問のうち、どちらか一方を選択して2枚程度で回答してください。

(1) わが国の公的医療保険制度をめぐり、次のA、B設問に回答してください。

(A) 公的医療保険制度には様々な種類がありますが、存続可能性の観点からみて、どの種類にどのような問題があるか指摘してください。
(B) 公的医療保険制度を存続可能なものとするためには、どのような改善策が求められていますか。患者・病院・政府の立場から述べてください。なお回答方式は、「〜すること」という項目を立て、そのあと簡単な説明を加えること。
 
(2) 前田先生の授業では、公立病院の経営について取り上げられました。授業内容に基づき、公立病院の経営実態を明らかにし、今後の展望について述べてください。
 なお経営の実態に関しては、次の視点に留意すること。
  〆拠となる指標を示す。
 ◆〇愽犬,里茲Δ幣況になった原因を明らかにする。

 【備考】

 (現颪魯錙璽匹悩鄒し、文書名は医療問題 課題 カッコ書きで各自の氏名」というスタイルにしてください。具体的には「、「医療問題 課題 (寺本 益英)」 という感じです。
分量は各課題で指示したとおり です。なお文章はいくつかの段落に区切り、一文が極端に長くならないよう留意すること。1ページめの冒頭には、学部、学年、学生番号、氏名を必ず記載するように。
◆。気弔硫歛蠅錬韻弔離侫.ぅ襪砲泙箸瓩督鷭个靴討ださい。なお新しい課題に移るときは、それがわかるよう、2〜3行行間をあけてください。
 回答は各先生方の配付資料に基づいて作成してください。それ以外の文献等の参照は、出典を明記してください
ぁ…鷭个LUNAへお願いします。期日は2023年7月14日(金)まで。
ァゝ震篥世魯瓠璽襪婆笋す腓錣擦討ださい。

2023年度 日本経済史機.譽檗璽伐歛

【2023年度 日本経済史機.譽檗璽伐歛蝓

※ 下記の【課題1】〜【課題4について、指定された分量(A4用紙1枚の設定を1,000字程度としたときのページ数)で回答してください。
  
【課題1】

 下記の(1)、(2)の設問に回答してください。

(1)この授業では特に最初のほうで、日本近代史を学ぶ意義について強調し、授業内でも折にふれて注意を喚起してきたつもりです。
 ここで本学部で開講されている数学系の科目との性質の違いも意識して、基本的な日本近代史の知識を身につけておくことの有用性について、あなたの見解を述べてください。(1枚程度)

(2)日本近現代史に関わる適当な課題を設定し、戦略・戦術論を用いて、簡単な研究計画書を作成してください。(日露戦争の話題は除外します。)例えば、ロシア・ウクライナ戦争を終結させるための方策、核なき世界をどのように実現できるか、といったテーマが考えられますが、各自の関心ある課題を提示して論じてください。なお文献やネット記事を参照した場合は、主な引用元の記載もお願いします。(1〜2枚)
   
【課題2】

 伊藤博文、山県有朋ら明治の指導者たちが構想した国家デザインは、戦前期日本の方向性を規定したといえます。
 ここで大日本帝国憲法およびその精神に基づく教育、山県有朋が主張した主権線、利益線の考え方に焦点を当て、明治の指導者たちがどのような国づくりを目指したかについて論じて」ください。
 なお最後は、次の文言で締めくくること。カッコ内は10字程度で埋め、赤字に変換しておいてください。
 「以上のように戦前期の日本においては、(赤字 10字程度で埋める)といった普遍的価値が浸透する余地はなく、勝ち目のない太平洋戦争に突進することになった。(1枚程度)

【課題3】

 下記の(1)、(2)の設問に回答してください。

(1)戦前の日本は日清戦争を契機に、東アジアにおいて、列強との帝国主義、植民地主義競争の主導権争いに乗り出すことになります。
 こで1880年代から明治末年にかけての朝鮮(大韓帝国)に焦点を当て、日本が同国を植民地化してゆく経過をたどりなさい。その際、主要な出来事の意義、対抗する列強の動向を明ら かにするよう注意を払ってください。(2枚程度)

(2)(1)をふまえ、あなたが朝鮮の民衆であったとするならば、日本をはじめとする列強に対し、どのような理不尽さを感じますか。具体的に述べてください。
 さらに戦後の日韓関係を顧みると、今後両国の国民にどのような努力が求められるか、提言を行ってください。(1枚程度)

【課題4】

 昭和に入り、軍国主義が台頭するに至った背景には、昭和恐慌による経済的行き詰まりが考えられます。ここで1920年代の経済的停滞の要因を明らかにし、浜口雄幸・井上準之助コンビニよって展開された政策が、当時の経済を一段と悪化させることになった理由を述べなさい。(2枚程度)

【備考】

 (現颪魯錙璽匹悩鄒し、文書名は「日本経済史機_歛蝓.ッコ書きで各自の名前」 というス
タイルにしてください。具体的には、日本経済史機_歛蝓 併本益英) という感じです。
 分量は各課題で指示したとおり です。なお文章はいくつかの段落に区切り、必要に応じて見出し  をつけてください。1ページめの冒頭には、学部、学年、学生番号、氏名を必ず記載するように。
◆。瓦弔硫歛蠅錬韻弔離侫.ぅ襪砲泙箸瓩督鷭个靴討ださい。なお新しい課題に移
 るときは、それがわかるよう、2〜3行行間をあけてください。
 回答は基本的に講義内容に基づいて作成してください。講義内容を反映していないレポートは
、採点対象外とします。」、
ぁ…鷭个LUNAへお願いします。期日は2023年7月6日(木)まで。
ァゝ震篥世魯瓠璽襪婆笋す腓錣擦討ださい。

G7 広島サミット が終了しました

 今月19日から21日まで行われていたG7 広島サミットが終了しました。私の率直な感想を述べると、映像的に成功をおさめ、岸田首相の支持率上昇の要因になったと思います。しかし実質面では多くの課題を残し、様々な難問はひとつも解決していません。
 まずG7首脳が被爆地広島を訪れ、平和記念資料館に足を運び、原爆慰霊碑に献花したシーンは、全世界に強いインパクトを与えました。ここで核軍縮・核廃絶が理想であることは宣言されたものの、実現のために具体的な方策が示されたわけではありません。ウクライナ問題でロシアが核使用をちらつかせていることもあり、米・英・仏の核保有国は、依然抑止力としての重要性を強調しています。日本も北朝鮮や中国の脅威に直面しているという理由から、アメリカの核の傘から離れられません。現実の国際情勢を反映したG7の核兵器に対する考え方は、「使用はダメだが保有はよい」という段階から進展していません。
 ところで岸田首相は、G7首脳が広島で被爆の実相ににふれたことは有意義であったと述べています。私はこの点にも違和感があります。何といっても、平和記念資料館での視察の様子が非公開であxったのです。滞在時間が約40分と短く、首脳たちにどこまで広島の犠牲の大きさ、核兵器の悲惨さが伝わったか疑問です。特に原爆投下国アメリカのバイデン大統領のコメントが聞きたかったです。アメリカでは今なお「原爆投下によってアメリカ人の犠牲が少なくて済んだ」という世論が根強く、バイデン大統領もこういった思想の人々の支持をつなぎとめるため、原爆を否定するコメントを出しづらい面があったのです。被爆者の思いを全世界に発信することの難しさを感じます。
 次にゼレンスキー大統領のサプライズ訪日も、実は周到に練られたストーリーだったはずです。G7が結束し、国際秩序維持、法による支配、民主主義など、人類が追求してきた普遍的価値を再確認できたのはよかったと思います。
 しかしゼレンスキー氏の本来の目的は、反転攻勢に備え、G7各国からより多くの武器供与をとりつけることです。G7各国はこの要請に応じたようですが、間違いなくロシアを刺激し、戦闘のNATO諸国への拡大やロシアの核兵器使用のリスクを高める結果になることを懸念します。せっかくG7首脳が集まっている場において、戦闘を終結させるような方策を打ち出せなかったのは残念です。
 最後に今回のサミットでもう一つ新しい点として、グローバルサウスと呼ばれる国々が招待された点にも注目しておきたいと思います。グローバルサウスという言葉は、主に新興国・発展途上国と同義に使われますが、今回の場合は、オーストラリア、インド、インドネシア、ブラジル等を想定すればよいと思います。サミットにグローバルサウス諸国が招待されるということは、これらの国々の影響力が無視できなくなり、世界が多極化してきたことを意味します。
 ロシア・ウクライナ戦争に焦点を当てると、インドやブラジルは、欧米諸国と歩調を合わせ、対ロ経済制裁に加わっているわけではありません。そこでG7は、前述の人類が追求してきた普遍的価値を旗印に、グローバルサウス諸国を自分たちの仲間に引き入れようとしました。現時点でその効果は判断できませんが、インドやブラジルは国際秩序よりも、食料、資源、気候変動など、自国の国益最大化を目指して行動する傾向にあります。日本がインドやブラジルと良好な関係を保とうとするならば、親米路線は好ましくなく、両国を満足させるような独自の方向性を模索する必要があります。
 今回のサミットを通し、核なき世界の実現や、紛争の解決がいかに困難かを痛感しました。そして今後の国際情勢はどう変化し、日本はどうふるまうべきか、しっかり分析してゆきたいと思います。 

2023年度のスケジュール

 2023年度は下記のスケジュールで講義を行います。(ほぼ確定版)

火曜日
2限 春  学部・日本経済史機B−201
2限 秋  学部・日本経済史供畭膤惘 ζ本経済史A 経済−6号
3限 春  学部・専門演習A 経済−2号
3限 春  学部・専門演習B 経済−2号  
4限 通年  学部 研究演習供〃从僉檻温罅 

水曜日
教授会、研究科委員会など会議日

木曜日
2限 通年 大学院・後期課程 日本経済史特殊研究 研究室
3限 通年 大学院・後期課程 研究演習 研究室
4限  春  学部・学際トピックス「医療をめぐる諸問題」 B−103

金曜日
3限 秋 学部・現代日本経済史 B−103

 なお上記担当科目の各回の講義内容は、下記のシラバスへのリンクを参照し、確認してください。(現在公開中です。)

関西学院大学シラバス検索

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教育と経済発展について

 年明け、岸田首相は「異次元の少子化対策」を打ち出し、話題を集めています。昨年末、2022(令和4)年の出生数が80万人を割り込み、1899(明治32)年の調査開始以降、過去最低となる見通しが示されたことに衝撃を受けたのでしょう。こうなることは今から10年以上前の民主党政権時代から指摘されており、「子ども手当」の創設は、この危機感のあらわれといえます。ただ「子ども手当」は財源の裏付けがないことや、バラマキ批判が強く、2012(平成24)年4月、野田政権のときに児童手当に戻されました。ここで思うのは、もし「子ども手当」が今日まで継続していたら、出生数80万人割れを回避できていたでしょうか?私は悪化の一途をたどる少子化の要因は、おカネだけの問題ではないような気がします。とにかく深刻な少子化に歯止めをかけるため、岸田首相は従来とは次元の異なるどんなすごいアイディアを持っているのか、注目してゆきたいと思います。
 さて少子化対策は、教育改革の側面もあります。少子化の進行で困るのは、生産性の低下です。例えば10人で100コのモノを作っていたとします。このとき、1人あたりの生産性は、100÷10=10コです。少子化のもとでは人口が5人に減るため、このペースなら50コのモノしか生産できず、GDPの落ち込みを招きます。では5人で100コのモノを作るにはどうすればよいか?労働者ががんばって、生産性を上げるほかありません。生産性を上げるとは、5人で100コ、1人あたり20コ作れるよう、仕事の効率を上げることで解決します。
 最近、生産性向上を目指し、教育への投資を拡大し、経済の好循環を実現すべきだという議論が高まっています。ノーベル経済学賞を受賞したヘックマンシカゴ大学教授は、就学前の幼児への教育投資が、その後の学力や収入を高めることを実証しており、幼児教育無償化への方策が模索されてきました。ただ財源不足から実現に至っていません。
 また近年の教育経済学の成果として、IQや学力テストで評価される認知能力だけでなく、物事に対する考え方取り組み姿勢など、非認知能力が経済発展や経済的成果と密接な関係があることが指摘されています。では非認知能力を高めるには、どうすればよいのでしょうか。しばしば言われているのがピア効果です。これは類似の目的を持った者同士が、同じ環境に集まり、仕事の効率化をはかることです。その結果、モチベーションが高まり、生産性の向上に結び付きます。私は昭和期までの日本的経営は、「ピア効果」によって成功してきたと思います。日本経済が長期停滞から脱却するには、ピア効果を引き出すべく日本的経営の見直しが有効化も知れません。もっと身近なところで言うと、関西学院大学という組織にも、ピア効果を期待したいところです。

2023年 元旦

 新しい年がスタートしました。今年も授業と研究ファーストで、1日1日を大切に過ごしたいものです。
 昨年、私にとって最も大きな出来事は、研究室の移転でした。新しい研究室ではじめての新年を迎えることになったのですが、整理は一向に進まず、大量の段ボールが積みあがったままです。それでも研究室に来ると、何となく落ち着きます。本だけは自分の使いやすいように本棚に並べ替えましたので、欲しい本がすぐに取り出せるようになりました。片付けの苦手な私にとっては、それだけでも一歩前進です。
 今日は、本年の主な研究テーマについて述べてみたいと思います。
 1.国際情勢
(1)ウクライナ危機のゆくえ
 ロシアがウクライナへ侵攻し、2月24日で1年が経過します。この間、数えきれないほど多くの尊い命が奪われ、多数のインフラが無残に破壊されました。理不尽なロシアの攻撃に対し、ウクライナは欧米諸国から武器援助を受けることによって対抗しており、紛争はエスカレートする一方です。ウクライナ危機は、資源や食料価格の高騰を引き起こし、世界的なインフレにつながっています。
 それにしてもウクライナ危機は、いつ、どのような形で終息するのでしょうか?歴史研究者として、過去の主要な戦争(紛争)は、何が原因で起こり、どのような状態で終了したのかを検証してみるのは有意義だと考えています。
(2)アメリカ経済の動向
 昨年のゼミの時間には、バイデン政権の政策について研究してきました。そこで、今年も継続したいと思います。特に注視しているのは、今後のインフレの進み具合と、景気の動向です。インフレを鎮静化するため、FRBは急ピッチで利上げを実施していますが、今のところ十分な効果は出ていません。利上げが長期化すると、そのうち消費や投資が抑制され、景気の落ち込みにつながるかも知れません。景気を悪化させることなく、インフレはおさまるでしょうか?アメリカの金融政策と景気動向から目が離せません。
 2.国内問題
(1)物価と円相場
 昨年最も驚いた経済ニュースは、これまでデフレ基調であった経済が、インフレ基調に変わり、円相場が一時1ドル=150円を突破する円安が進んだことです。
 給料が上がらない状況でのインフレは困ります。とりわけ毎日利用する光熱費や食費の高騰は、私たちの生活を直撃しており、早く有効な手段を講じないと、岸田政権への不満は一段と高まるでしょう。
 円相場は日米の金利差が拡大し、昨年後半のように、1ドル=150円を超えるほどの急激な円安が進むのは望ましくありません。もちろん極度の円高も、輸出企業の業績悪化から景気を冷え込ませるため、回避する必要があります。円安・円高双方にメリット、デメリットがあるので、どちらがよいと断言はできません。ただ、相場が短期のうちに、急速に一方向へ動くのは、混乱のもとです。日銀総裁や財務大臣など、為替相場を動かす力を持った要人の発言にも注意したいです。
(2)日銀総裁人事と金融政策
 (1)と関係しますが、4月から、新しい日銀総裁に誰が就くかも注目です。黒田東彦現総裁は、10年にわたり、「大胆な金融緩和」を展開してきましたが、日本経済は結局、デフレからの脱却に成功しませんでした。また一般市民の感覚から言うと、銀行にお金を預けても、全く利子がつかなくなったのがつらいです。ここ10年の「大胆な金融緩和」の功罪、特にその副作用をしっかり検証し、金融の正常化に期待したいところです。
(3)原発・エネルギー政策
 東日本大震災以降、歴代政権は原発再稼働に慎重な姿勢を示してきました。しかし岸田政権はその方針を大きく改め、原発再稼働、運転期間延長、新型炉の建設など、次々と新しい方向性を打ち出しました。その背景にあるのは、ウクライナ危機にともなう資源価格の高騰や、電力不足の問題です。ここで最大の課題は、原発の安全性が確保されているかどうかです。再び東日本大震災レベルの震災が起これば、取り返しのつかないことになります。さらに気がかりなのは、国民や地域住民の合意が得られないまま、強行突破しようとしていることです。また新型炉の建設には、膨大なコストがかかります。その負担を避けたい電力会社は、従来の原発の運転期間延長で乗り切ろうとしています。これでは危険性が増すばかりです。
 原発推進政策の背景が、資源価格の高騰や電力不足であるというのなら、ここは発想の転換をはかるべきです。すなわち、供給を増やすのではなく、需要の抑制を考えてみてはどうでしょうか。大量生産−大量消費−大量廃棄型の経済・社会を見直し、モノを大切に使う心掛けが必要です。私たちの生活や企業活動で節電を意識し、ムダを省くことによって、電力不足に対応する方策を考えたいと思います。
(4)防衛政策
 昨年岸田首相は、国会審議も経ず、防衛政策の大転換を表明しました。防衛費の対GDP比を1%から2%に倍増し、アメリカにミサイルや戦闘機の爆買いを約束しました。自衛隊と米軍の一体化も加速しそうです。岸田首相は抑止力を高め、日本の安全を守るためといいますが、果たしてそのように作用するか疑問です。むしろ反米感情の強い国々の危機感を煽り、際限のない軍拡競争に巻き込まれるのが心配です。岸田首相は国力=防衛力と考えているようですが、ハイレベルの医療や教育水準、人口減少を食い止める少子化対策なども、国力強化には欠かせない視点です。「身の丈に合った」という言葉があるように、日本に10兆円もの防衛費をつぎ込むことは、小さな体にダブダブの大きな服を着ているようなもので似合いません。
 日本が目指すのは軍事大国ではないはずです。平和主義を捨て、軍事大国の道を進めば、戦前と同じ過ちを繰り返すことになります。その意味で戦前の日本の歩みから、反省と教訓を引き出すことは極めて重要です。
 ここ数年の安倍・菅・岸田政権の政策をみていると、異次元の不安や違和感を覚えます。異次元の不安や違和感には、異次元の良識で立ち向かうほかありません。日本が抱える様々難問について、受講生のみなさんと議論を重ね、望ましい解決策を提案するのを、今年の目標にしたいと思います。

2022年度 現代日本経済史 レポート課題

【2022年度 現代日本経済史 レポート課題】

 講義内容に基づき、下記の1〜3の設問に、指定された分量を目安として解答してください。

1.終戦直後の日本経経済は混乱し、様々な課題を抱えていました。このことを念頭に置いて、次の設問に答えなさい。(2枚程度)

(1) 当時わが国は、極度のインフレに苦しんでいました。インフレを封じ込めるため、どのような政策が打ち出されたかについて述べなさい。その際、年と事項を簡潔に整理した年表形式で解答してください。

(2) 経済の民主化政策として重要なのは、農地改革と財閥解体(巨大企業の分 割)です。これらの政策の概略を述べ、戦前と比してどのような効果があらわれたかについて論じなさい。

2. 1950年代は、現在の日本の基礎が築かれた時期と考えられます。ここで1950年代の主な出来事について、次の設問に答えなさい。(4〜5枚程度)

(1) サンフランシスコ平和条約の意義と、締結後に残された課題について言及しなさい。

(2) 冷戦が激しさを増すにつれ、アメリカの対日政策は大きく変化してゆくことになります。ここで次のキーワードを用い、この変化の経過を概観しなさい。
 【キーワード】
 朝鮮戦争、日本の再軍備、日米安全保障条約、日米MSA協定

(3) 当時、日米安保条約・自衛隊は、憲法9条違反ではないかという議論が起こり、訴訟に発展しました。ここで砂川事件の経緯を明らかにし、司法当局がどのような判断を下したかについて説明しなさい。

(4) 自由民主党、および1955年体制の成立について述べなさい。その際、保守合同の過程および日本社会党の成立に注意を払うこと。

3. 高度成長期の日本経済について、次の設問に答えなさい。(2〜3枚程度)

(1) 岩戸景気の頃、日本人の消費生活は、急速に豊かになってゆきます。いくつかのランドマーク商品を取り上げ、これまでの生活スタイルをどのように変化させたかについて論じなさい。

(2) いざなぎ景気の特徴について、設備投資および輸出の動向に注目し、両者が経済成長にどのような形で貢献したか論じなさい。

【備考】

 (現颪魯錙璽匹悩鄒し、文書名は「現代日本経済史 課題 カッコ書きで各自の氏名」というスタイルにしてください。分量は各課題ごとに目安を示しています。
 なお1ページあたりの字数は約1,000字とします。各自の慣れた書式設定で結構です。1〜3の課題は、1つのファイルにまとめて提出してください。
  文章はいくつかの項目に区切り、適当な見出しをつけてください。改行もなく、だらだら続く文章は読みづらく、減点の対象となります。
  冒頭で学部、学年、学生番号、氏名を忘れないように。
◆〆鄒にあたっては、板書と配付資料をまとめるだけでかまいません。基本的に、他の文献や資料の参照は求めていません。
 提出はLUNAへお願いします。期日は2023年1月15日(日)まで。
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2022年度 日本経済史供.譽檗璽伐歛

【2022年度 日本経済史供.譽檗璽伐歛蝓

 今年度の講義では、岸田政権を取り上げ、岸田氏の経済政策思想、直面した課題およびその解決策などについて考えてきました。講義内容を念頭に置いて、次の1、2の設問に指定された分量を目安として解答してください。

1. 2021年10月4日よりスタートした岸田文雄政権は、同年10月31日実施の衆院選、翌年7月10日実施の参院選に圧勝し、「黄金の3年」に入るとみられてきました。しかし実際は、様々な困難に直面し、支持率低迷に喘いでいます。以下でその原因を考えます。

(1) 岸田政権が変調をきたし始めたのは、2022年7月8日の安倍元首相銃撃事件以降のことです。この事件を契機に岸田首相は、安倍元首相の国葬を決断します。ところが、安倍派を中心とする多く自民党の議員が、旧統一教会(世界平和統一家庭連合)と、長年深い関係にあったことが判明しました。その後岸田政権は、国民からの信頼を失ってゆくことになります。ここで国葬問題、ならびに旧統一教会問題が、なぜ政権への不信感につながっていったのか、1枚程度で述べなさい。

(2) 岸田首相が(1)への対応に追われている間、インフレが日本経済に悪影響を及ぼし始めました。これまで日本経済はデフレ基調が続いていたにもかかわらず、なぜインフレに転換したのでしょう。その要因を説明しなさい。さらに岸田首相はインフレ対策として様々な対策を打ち出します。対策の内容を明らかにし、あなたなりの評価を行ってください。(1〜2枚程度)

(3) 2022年12月に入り、政府は防衛3文書を閣議決定しました。ここで示された防衛政策の骨子を述べなさい。さらに多くの国民は、この決定に懸念や不満を抱いています。どのような側面を危惧しているのか、論じなさい。(1〜2枚程度)

2. 岸田文雄首相の経済政策思想について、次の(1)〜(3)の設問に答えなさい。

(1) 岸田首相は、新自由主義的な政策運営に批判的な立場をとっています。ここで新自由主義的な経済政策が、最近の日本経済に及ぼした悪意影響について、 次のキーワードを用いて説明しなさい。(1〜2枚程度)
 【キーワード】
 小泉純一郎政権、リーマンショック、『蟹工船』ブーム、マルクス主義の再評価、民主党政権の誕生


(2) 渋沢栄一の「道徳経済合一説」について、簡単に説明しなさい。加えて現在の日本企業で、渋沢の精神に通じる取組を行っているところを挙げ、その内容を紹介してください。(ホームページのまる写しではなく、自身の言葉で再編集するようお願いします。)(1〜2枚程度)

(3) 渋沢栄一は、「みんなが豊かになる資本主義」を目指しました。しかし岸田政権発足当初の日本経済は、そのような状況ではなく、「格差」が大きな社会問題になっていました。当時の経済状況を説明し、課題解決のための方策を論じなさい。ただし次のキーワードを用いること。(1〜2枚程度)

 【キーワード】
  K字経済、アベノミクス・大胆な金融緩和、1億円の壁、資産所得倍増プラン、貯蓄から投資へ、NISA


【備考】

 (現颪魯錙璽匹悩鄒し、文書名は「日本経済史供_歛蝓.ッコ書きで各自の氏名」というスタイルにしてください。分量は各課題ごとに目安を示しています。
 なお1ページあたりの字数は約1,000字とします。各自の慣れた書式設定で結構です。
 1、2の課題は、1つのファイルにまとめて提出してください。
  文章はいくつかの項目に区切り、適当な見出しをつけてください。改行もなく、だらだら続く文章は読みづらく、減点の対象となります。
  冒頭で学部、学年、学生番号、氏名を忘れないように。
◆〆鄒にあたっては、板書と配付資料をまとめるだけでかまいません。一部の課題を除き、他の文献や資料の参照は求めていません。
 提出はLUNAへお願いします。期日は2023年1月15日(日)まで。
ぁゝ震篥世魯瓠璽襪婆笋す腓錣擦討ださい。

岸田政権、新防衛3文書を閣議決定

 政府は2022年12月16日、新たな防衛3文書を閣議決定しました。防衛3文書とは、外交・防衛の基本方針となる「国家安全保障戦略」、今後10年間の防衛方針を定めた「国家防衛戦略」(旧・防衛大綱)、実際の装備取得計画と自衛隊の体制を盛り込んだ「防衛力整備計画」(旧・中期防衛力整備計画)のことです。
 国家安全保障戦略では、中国に対し、厳しい見解を示しています。すなわち、中国の外交姿勢や軍事活動が、国際秩序の維持や、日本の平和を確保する上で「最大の戦略的な挑戦」と位置付け、現行の「懸念」という言葉を書き改めました。また北朝鮮が核・ミサイル開発を加速していることについては、「従前よりも一層重大かつ差し迫った脅威」と述べました。さらにロシアのウクライナ侵攻は、「中国との戦略的な連携と相まって、安全保障上の強い懸念」としました。
 このほかに特筆すべきは、国家防衛戦略で反撃能力について詳述したことです。周辺国ではミサイル技術が進化しており、迎撃能力だけでは対応が困難になってきたと指摘しています。そして「有効な反撃を加える能力を持つことにより、武力攻撃そのものを抑止する」と述べています。
 一方で、反撃能力は「必要最小限度の自衛の措置」であって、専守防衛の方針に変わりないと説明しています。自衛隊と米軍の役割分担に関しては、日米が協力して反撃能力を使用するということです。
 防衛力整備計画は、かなり沖縄を意識した内容になっています。前述のとおり反撃能力の保有は、防衛政策の大転換ですが、沖縄本島にはその柱である長射程ミサイルの配備が予想されます。
 ここで長射程ミサイルとは、攻撃してくる敵のミサイル射程圏外から発射できる「スタンド・オフ・ミサイル」です。またスタンド・オフ・ミサイルの主力となるのは、国産の「12(ひとにい)式地対艦誘導弾」です。これまでの射程は百数十キロ程度だったのですが、中国大陸まで届く1千キロ以上に延伸した改良型を、2026(令和8)年度以降に運用を開始することになっています。なお計画では、国産ミサイル「12式」を運用する2部隊の増設が盛り込まれ、1部隊は沖縄本島への配備が検討されているのです。
 ところで12式は、基本的に地上発射型ですが、戦闘機から発射する空発型、艦艇から発射する艦発型、さらには潜水艦から発射する潜水艦発射型まで開発する予定です。12式の量産化が実現するまで、海外輸入品を活用します。具体的にはアメリカからトマホークを大量購入します。長射程ミサイルを搭載できるよう、大型化した試験艦建造も視野に入っているといいます。
 自衛隊の改編も行われます。那覇駐屯地に司令部を置き、沖縄地方の防衛や災害救助を任務としている陸上自衛隊第15旅団は、師団に改編されます。加えて増員も計画されており、現在同旅団には約2,000人が所属していますが、普通科連隊(歩兵)を1つ増やす予定です。
 それにしても、これほど根本的な安全保障政策の転換が、ここ数日の短期間で、国民への説明がなく、同意も得ないまま、一方的に決まったことに、強い憤りを覚えます。何よりも安定財源の裏付けがないまま、多くの戦闘機やミサイルを購入することが許されてよいのでしょうか。防衛力整備計画から明らかになったように、装備品の拡大が身の丈に合っておらず、際限なく広がっていることにも疑問を感じます。ここまで極端に、武器にお金を使うのなら、もっとほかの有益な使途を考えるべきです。
 さらに懸念されるのは、戦後一貫して堅持してきた「専守防衛」の理念が、揺らいできていることです。自衛隊の役割は「盾」に徹することで、「矛」である攻撃力は、アメリカに委ねてきました。それが上述のとおり、「日米が協力して対処する」ということであれば、日米同盟が変質したことになります。日米の軍事行動が一体化すると、日本が主体的な判断ができず、アメリカの戦争に巻き込まれる可能性も、払拭できません。
 以前は「敵基地攻撃能力」と呼んでいた反撃能力保有は、大きなリスクでもあります。政府は相手に攻撃を思いとどまらせる抑止力が働くと言いますが、何の保証もありません。一方で先制攻撃を仕掛けるリスク、相手の対抗措置によって、一段と緊張が高まるリスクもあります。さらに反撃能力を持ったからと言って、北朝鮮の挑発がストップすることも考えにくいです。
 いまひとつ、中国に対する認識にも違和感を感じます。アメリカと中国は、激しい覇権争いをしており、両国が反目しあうのはしかたありません。そうした状況のなかで、日本はアメリカとぴったり歩調を合わせる必要があるでしょうか。日本と中国は覇権を争っているわけではありません。地理的に近接し、歴史的にも深い関係にある両国が対立を深めるのは、国益にかなうことではありません。相互依存関係を深め、友好的に付き合う道をさぐるほうが得策ではないでしょうか。
 今回、突然安全保障政策の大転換が行われたことに、多くの国民は納得していません。とりわけ決定プロセスに問題があり、国葬のときと同じですが、今回の衝撃は、国葬レベルではありません。安倍元首相の銃撃事件以降、岸田政権の迷走は看過できない状態です。

現代日本経済史セミナー「日本の防衛と憲法9条」 をお聞きして

 今日はエコノフェスタという本学経済学部の学生による研究発表会が行われ、私のゼミ生も参加しました。私たちのゼミの報告テーマは、「岸田政権の政策課題およびその対策」とし、具体的には、原発再稼働を中心とした環境・エネルギー問題、ウクライナ情勢への対応、そしてインフレ対策と3つの柱を立てて報告しました。ゼミ生全員が岸田政権が抱えるホットな問題に注目し、現状をよく調べ、有意義な解決策を提案できたと思います。夏休み以降の各自の研究成果を立派に報告できたことを喜びたいと思います。
 さて昨日は医療講座でもお世話になっている弁護士の水島昇先生に、「日本の防衛と憲法9条」というテーマでご講演いただきました。現在岸田政権は防衛費の大幅な増額の方針を示しており、わが国の防衛政策は、大転換期を迎えているといっても過言ではありません。こうした折に、憲法第9条を前提とした国防のあり方を再考するのは、極めて意義深いことです。
 ここでセミナーの内容を簡単にご紹介します。ポツダム宣言、日本国憲法の制定、サンフランシスコ講和と旧日米安保、新日米安保と、現在の日米関係、安全保障環境の基礎が形成されるまでの約15年間を、明快に描いていただきました。そうした中で起こった砂川事件も取り上げてくださり、憲法9条との兼ね合いで自衛隊をどう位置付けるか、最高裁ですら判断を保留する難しい問題であることがわかりました。
 また岸田政権による5年間で43兆円の防衛費拡大方針は、憲法9条の理想と、目前の緊迫した安全保障環境のギャップを強く印象づけられました。ただしあまりにも唐突で、国民に対する説明が不十分です。防衛費を現行の5兆円から10兆円に倍増し、NATO並みに対GDP比2%を目指すという話も出ています。日本は現状でも世界第9位の軍事大国ですが、将来的にアメリカ、中国に次ぐ世界第3位の軍事大国になろうとしています。果たして国民がこのような安保政策の激変を望んでいるのか、確認してから決めるべきです。
 終戦直後、2度と戦争を起こさないという強い決意は、憲法第9条で規定され、戦後日本の「普遍的価値」として、受け入れられてきたはずでした。しかし最近のロシアによるウクライナ侵攻、北朝鮮によるミサイル発射、そして台湾問題などに直面すると、かつての価値観は通用しなくなったということが言えるかもしれません。それならば、国民的議論を巻き起こし、「理想」と「現実」のギャップをどう埋めるか、とことん議論すべきではないでしょうか。今回の岸田政権の決定はこの重要なプロセスを欠いており、あまりにも乱暴と言わざるをえません。

現代日本経済史セミナー「日本の防衛と憲法9条」 のお知らせ

 金曜3限、現代日本経済史を開講しています。ひと言で言うと戦後史で、復興から高度成長を経て石油ショックくらいまでを守備範囲としています。2000年前後に生まれの今の学生は、歴史離れが進んでおり、歴代首相の名前や戦後の有名な事件、基本的経済用語などを話してもピンとこないこともありっます。しかし令和の経済・社会を展望するには、戦後史の理解が不可欠です。
 さて東アジア情勢の緊迫にともない、岸田政権では防衛費の増強が大きなテーマになっています。そこであらためて憲法9条の平和主義の原則、自衛隊の位置づけ、日米安全保障条約との関係などについて、法律の専門家をお招きし、セミナーを開催します。なお政治経済の教科書では、米軍基地反対闘争として、恵庭事件、長沼ナイキ基地訴訟、百里基地訴訟、砂川事件が挙げられています。これらの事件の経緯、争点と司法判断に関し、基本的な理解を得ておきたいものです。自民党は改憲を求めていますが、もし改憲が実現すれば何が変わるのか、国民が背負わなければならないリスクは何かについても、明らかにしておく必要があると考えます。
 以上のような趣旨で、12月9日(金)の授業時間内に、弁護士の水島昇先生をお招きし、セミナーを開催します。

【現代日本経済史セミナーのご案内】

● 講師:水島昇氏(水島法律事務所 弁護士)
● 日時:2022年 12月 9日(金) 13:20〜15:00(予定)
● テーマ:日本の防衛と憲法9条
● 主催:関西学院大学経済学部
● 会場:B号館 304号教室

お問い合わせ
〒662-8501
西宮市上ヶ原一番町1-155
関西学院大学経済学部
寺本 益英研究室
e-mail:teramoto★kwansei.ac.jp ★を@に変更してください。
TEL:0798-54-6469(寺本研究室直通)
受講生以外で参加を希望される方は、事前にメールでご連絡をお願いいたします。

阪急電鉄 西宮北口−武庫之荘間で新駅設置計画

 今日から11月です。2023年のお正月がすぐ近くまでやってきました。年賀はがきの販売もスタートしたようです。インターネットの普及により、年賀はがきの発行枚数はここ12年連続で減少しているといいます。しかし私のような昔人間は、インターネットで新年の挨拶をする習慣がなく、ふだんからよくお会いしている方も、長年お会いしていない遠方の方も関係なく、年賀状のやりとりをすることにしています。毎年張り切って、11月半ばころまでには年賀はがきを買い求めるのですが、日ごろの雑事に追われ、クリスマス頃から一気に書き始めるのが悪い癖です。今年こそは、早めに取り掛かりたいと思っています。
 大学では5日(土)、6日(日)の2日間、対面形式で大学祭(新月祭)が開催されます。学生団体やサークルによる様々な企画が予定されており、久しぶりでキャンパスが活気づくでしょう。コロナがひとまず落ち着き、通常の大学生活が送れるようになったことを喜びたいです。
 さて本日の『日本経済新聞』(電子版)を読んでいると、阪急神戸線の西宮北口−武庫之荘間に10年以内に新駅ができる予定というニュースが載っていましたのでご紹介します。阪急電鉄をよく利用している方はご存じだと思いますが、西宮北口−武庫之荘間は3.3kmあり、神戸線の駅間としては最も長距離です。次の駅まで歩いてでも行けそうな阪神電鉄では、考えられないことです。そのため新駅設置構想は戦前からあったそうです。新駅設置に関係するのは、阪急電鉄がもちろん、西宮市と尼崎市ですが、財政難を理由に、尼崎市があまり乗り気ではなく、計画は進みませんでした。しかし最近尼崎市の認識が変化し、鉄道の利便性が高まり、周辺人口の増加が期待でき、新駅ができることによって通勤・通学時間帯の混雑緩和にもつながるという積極評価に転換したことから、3者の合意にたどりつきました。
 気になるのは工事費ですが、駅舎や駐輪場などの鉄道施設に55億円、周辺整備に5億円で合計60億円がかかる見込みです。そして経費の3分の1ずつを、国の補助金、阪急電鉄、西宮市および尼崎市で負担する予定です。なお西宮市と尼崎市では人口増加が続いており、西宮市で年間2億円、尼崎市で年間1.2億円の税収増が期待されています。ホームは武庫川橋梁の上に設ける計画で、阪神電鉄の武庫川駅と同じイメージです。
 新駅の名称はどのようになるのでしょうか。新駅を造った以上は、多額の維持費も必要になるわけで、十分な経済効果があらわれなければ、事業は失敗したことになります。何よりも新駅周辺で高層マンションなどが建設され、地域の人口が増えて、阪急電鉄の利用者数が増えなければいけません。一般論ですが、コロナを契機に鉄道利用者は軒並み減少しています。今のところコロナはおさまっていますが、コロナ前と同水準、あるいはそれを上回るほどに、阪急の利用者が回復するか楽観視はできません。またこれまで西宮北口や武庫之荘を利用していた人が、最寄り駅を変更するというだけでは不十分です。路線バス(阪急バス)との接続をよくしたり、賃貸料収入が期待できる魅力的な商業施設をつくるなど、グループ全体の収益力も高める必要があります。人口減少・高齢化が進む中で、活気があって賑やかや街づくりを実現するのは、決して容易ではありません。

岸田政権が直面する経済的課題

秋学期の講義開始から1ヶ月が経過し、今学期のスケジュールにもなじんできたところです。日本経済史兇旅峙舛任蓮岸田政権の政策に焦点を当てています。岸田政権は、政治・経済・外交すべての面で、解決困難な課題に直面しており、緊張感を持って追跡してゆかなければならないと考えています。
 さて本日の記事では、経済的課題について検討します。私たち国民が最も懸念しているのは、物価高騰問題です。10月21日発表された9月の消費者物価指数は、前年同月比3.0%の上昇でした。消費税率引き上げを考慮すれば、2014年9月以来8年ぶり、消費税率引き上げの影響を除けば、1991年8月以来、31年1ヶ月ぶりの高さです。これほど高い伸びは、受講生のみなさんにとって、生まれてはじめての経験と言っても過言ではありません。ロシアによるウクライナ侵攻のため、石油・天然ガスなど資源価格が急騰し、小麦に代表される農産物・原材料価格の高騰が顕著となり、電気・ガス代のほか食料品価格など、生活に密着した品目の値上がりが家計が打撃を受けています。円相場は1ドル=150円前後まで急激に円安が進行し、輸入物価の押上要因となっています。
 このような事態に対し、政府は傍観しているわけではありません。例えばガソリンでは、次のような基準で石油元売り会社に補助金を支給し、価格高騰を抑えています。まず1リットルあたりの基準価格168円としたうえで、それを上回る分について、35円までなら全額を、35円を超えた分についてはその半額を支給することになっています。なお政府は補助金を段階的に引き下げながら、12月末まで延長する方針です。すなわち、10月→35円、11月→30円、12月→25円と下げてゆきます。また令和4年10月期の輸入小麦政府売り渡し価格は、令和4年4月期の政府売渡価格(5銘柄加重平均で72,530円/トン(税込価格))が適用され、実質据え置きが決定しました。しかしこれらは応急措置にすぎず、苦境にあえぐ国民生活を根本的に改善する効果はありません。
 こうなってくるとアベノミクス「大胆な金融緩和」の意義があらためて問われます。黒田日銀総裁の描いたシナリオは、金融緩和→物価上昇→賃金上昇というものでした。しかし現状は、外部要因(供給ショック)による物価上昇だけが起こり、賃金水準は上がっていません。「大胆な金融緩和」が賃金の上昇を目指した政策であったとすれば、10年間も続けているのに、一向に効果が出ていないのです。これまで何度も見直しの議論が出てきましたが、黒田総裁は一貫して緩和継続の姿勢を変えていません。このスタンスは投機筋に見透かされ、1ドル=160円台という予想も出始めました。このままではより一層のインフレが生活を苦しめることになり、政府への不満は高まるばかりです。
 次に、原子力発電所の再稼働、新増設の是非も看過できないテーマにになっています。東京電力福島第一原発の事故以降、10基が再稼働となっていますが、2022年10月現在、動いているのは、関西電力大飯4号機、高浜3号機、美浜3号機、九州電力川内1・2号機、四国電力伊方3号機の6基です。残り4基は次のような状況です。
 玄海3号機 → 2022年1月21日〜2022年12月まで定期検査・テロ対策施設工事
 高浜4号機 → 2022年6月8日から約5カ月定期検査
大飯3号機 → 2022年8月23日から約5カ月定期検査
玄海4号機 → 2022年9月12日から23年2月までテロ対策施設工事
 この分布からわかるように、現在動いている原発は、西日本に偏在しています。そこで岸田首相は8月24日、来夏以降、東京電力柏崎刈羽原発6・7号機、東北電力女川原発2号機、関西電力高浜原発1・2号機、中国電力島根原発2号機、日本原子力発電東海第2原発の計7基を再稼働させる方針を打ち出しました。加えて次世代革新炉の新増設も表明しています。
 ところでみなさんは、以上の方針に賛成ですか?岸田政権が原発依存を高めようとしている背景にあるのは、電力不足による大規模停電の防止、資源価格高騰にともなう電気料金値上げの抑制、さらに温室効果ガス排出抑制などの理由です。しかしいくらこのような正当な理由があるにしても、原発は100%安全とはいえず、いつ何時想定外の大惨事が発生するかわかりません。もしみなさんが原発の近隣に住んでいたら、再稼働を認めるでしょうか?何よりも大切なのは、地域住民の同意です。沖縄の米軍基地のように、地域の住民の意思を無視し、再稼働を強行するのは好ましくなく、深刻な分断の原因にもなります。
 最後に防衛費の増額について考えます。近年のロシア、北朝鮮、中国のふるまいを見ていると、日本周辺の安全保障環境は大変厳しくなってきたことに疑いはありません。故安倍晋三氏を筆頭に、自民党の保守派の議員たちは、防衛予算を現行の5兆円あまりから7兆円へ、そしてゆくゆくは10兆円にまで増額し、日本の防衛力を強化すべきと主張しています。岸田首相も今年5月、アメリカのバイデン大統領との首脳会談で、防衛費の大幅増額を約束しました。ここで気になるのは、戦後守り続けてきた専守防衛原則との整合性です。これだけ金額を増やし、どのようなシーンを想定し、どういった用途に使うのか、まず方針を示してほしいものです。専守防衛の原則を継承するなら、空母や爆撃機など、攻撃的兵器の使用は認められていません。さらに財源の見通しもなく増額を訴えるのは無責任です。赤字国債の発行で賄うという意見もあるようですが、これ以上の財政悪化は、日本の国力をより一層弱めることになります。増税や社会保障費の削減は、国民の反発を招くでしょう。防衛費を増額すれば、抑止力が高まり、日本周辺の脅威はなくなるとは思えません。日本が磨くべきは、ジョセフ・ナイが唱えたソフトパワーであり、文化力、政治力、外交力だと思います。

※ 10月25日 追記

 本日の日本経済史兇亮業で、ガソリン価格の高騰を抑える方策として、「1リットルあたりの基準価格を170円とし、それを超えた場合、5円を上限に補助金を出す」と言いましたが、古い情報でした。熱心な受講生の指摘をいただき、本文を書き換えました。申し訳ありませんでした。

国葬終了後の岸田政権のゆくえ

 9月27日、安倍元首相の国葬が行われました。保守層で熱烈な支持者は献花のため長蛇の列を作る一方で、反対派は大規模な抗議デモを展開しました。深刻な民意の分断が生じてしまい、岸田首相が拙速に閣議決定だけで国葬を決断したことが後悔されます。根拠法がないことや、過去の事例もよく研究し、国会の了解を得るか、内閣・自民党合同葬という形をとっていれば、もっと平穏な葬儀となっていたに違いありません。民意の分断の修復は、容易ではありません。
 弔辞でも菅前首相と大きな評価の差が出ました。菅さんは安倍政権で長年官房長官を務め、安倍さんと過ごす時間も長かったからこその、心のこもった感銘深いスピーチだったと評価されました。最後は、山県有朋が伊藤博文を偲んで詠んだ歌「かたりあひて  尽しゝ人は  先立ちぬ  今より後の  世をいかにせむ」 を引用し、伊藤博文と山県有朋の関係を、安倍さんと自分に重ね合わせ、大きな反響を呼びました。終了後、会場で自然と拍手が巻き起こりました。葬儀では異例の出来事です。
  それに対し岸田さんの話は、定型的・一般的で、心に響くエピソードの紹介もなかったと、評判はいまひといつでした。
 個人的には、弔辞の優劣を比較するのに違和感を感じますが、国葬終了後、菅さんのスピーチはネットやワイドショーで絶賛され、インタビューに出演した際は、資料集めから始め、全文自分で書き上げたと語っています。一方岸田さんの弔辞に対してコメンテーターたちは、官僚の作文的で心を動かされなかったと、酷評しています。
 ちなみに私は、山県有朋について、戦前の日本帝国主義、藩閥政治を象徴する人物というイメージが強いです。彼の思想は、日本経済史気亮業でも、再三紹介してきました。(2020年11月29日の記事も合わせてお読みください。)菅さんは、「今より後の  世をいかにせむ」に、戦前の「強兵」国家を想定したのでしょうか。会場で拍手した人たちや、スピーチ絶賛のコメンテーターらに、感動・絶賛の理由を尋ねたいところです。
 岸田さんは世論の反対を押し切って国葬を強行したわけですが、メディアの報じ方をみると、菅さんの弔辞と比較され、インパクトが弱かったという評価があっという間に浸透してしまったような気がします。こうした状況のなかで、岸田さんに対しては、自民党内でも逆風が強まり、菅さんの影響力が高まってゆくのではないかと思われます。
 国葬が終わっても、旧統一教会問題が、岸田政権に重くのしかかっています。この問題の本質は、これまで自民党が統一教会とどのような関係を持ってきたか、全容を解明することと、今後完全に関係を断ち切れるかという点に集約されます。
 旧統一教会と自民党は、安倍氏を窓口として深いつながりがあったことは確実です。にもかかわらず、安倍氏が亡くなっているため、調査の対象外となっていることに、強い懸念が出ています。
 さらに細田博之・衆院議長が、旧統一教会の関連団体の会合にたびたび出席していたことも問題視されています。細田氏といえば、自民党幹事長や官房長官を歴任し、長期にわたり党最大派閥安倍派(清和政策研究会)の会長も務めた大物議員です。細田氏は、たった1枚の文書で関係は認めたものの、記者会見などは開かず、詳細な説明を避けていることに批判が高まっています。
 山際大志郎・経済再生相は、旧統一教会の関連団体が海外で開いた大規模な集会に参加していました。また教会本体が主催する国内の集会にも出席していたのですが、自民党の調査には届けていませんでした。
 最後にあらためて一連の問題点を指摘しておきたいと思います。まずと旧統一教会と接点のあった自民党国会議員に対する調査が不十分です。本人が申告せず、あとから次々と週刊誌に指摘されるというパターンが続出し、国民の信用を失っています。
 さらに旧統一教会と関わりのあった議員が、選挙の際、どのような支援を受けていたのかはっきりさせる必要があります。その見返りに、旧統一教会教会にどのような便宜をはかっていたのか、特に教団の意向が政策に反映されることがなかったのか、きちんと説明すべきです。
 自民党が「お墨付き」を与えた教団が要求した献金によって、多額の借金を背負い、家庭崩壊に追い込まれた人々の救済も、緊急性の高い課題です。
 以上指摘した問題は、いずれも根深く、相当思い切った対策を打ち出さないと、解決できません。今後の岸田政権の決断力・実行力に期待したいところです。

岸田政権と旧統一教会問題

 岸田政権の支持率が急落しています。その大きな原因は、多くの世論の反対を押し切って、安倍元首相の国葬を強行しようとしていることに加え、旧統一教会問題があります。先日は国葬問題を取り上げましたので、今日は旧統一教会問題について述べてゆきたいと思います。
 まず統一教会とは、正式には世界基督教統一神霊協会と言い、1958(昭和33)年、文鮮明氏が韓国に設立した新興の宗教団体です。その後友好団体として、1968(昭和43)年、同じく文鮮明氏を開祖として、反共産主義の政治団体、国際勝共連合が設立されました。国際勝共連合は設立時から岸信介首相が支援し、その後安倍晋太郎氏、そして安倍晋三氏さらには安倍派(清和会)と深い結びつきを持ってきました。
 ここで旧統一教会がなぜ問題視されるのかについて、明らかにしておく必要があります。この団体は信者に対し、霊感商法で高額の壺や印鑑、経典を売りつけたり、恐怖と不安に陥れるマインド・コントロールで、多額の献金を求めるなど、悪質な方法で多くの家族を崩壊に追い込んでいったからです。親の影響でその子供も入信させられ、脱会を試みると、「先祖の因縁」と結び付けて不安を煽りました。ようするにいったん標的になると、何代にもわたって抜け出せなくなってゆきました。安倍元首相を銃撃した山上徹也容疑者の家庭も、旧統一教会の典型的な犠牲者でした。すなわち、母親が夫の自殺を契機に入信し、活動にのめりこんで家庭を破壊に追い込まれたたのです。事実山上容疑者の母親は、生命保険金や不動産の売却で1億円以上献金し、破産したといいます。
 山上容疑者が旧統一教会に激しい憤りを感じたのは理解できますが、殺意がなぜ安倍元首相に及んだのか、真相はわかりません。報道で知るかぎりでは、安倍氏が国際勝共連合のビデオメッセージや、機関誌の表紙に登場しているのをみて、関係の深さを思い知ったからだということです。
 山上容疑者が重大な罪を犯したことは言うまでもありません。しかしその一方で、安倍元首相がこのような反社会性の強い団体と密接な関係を持ち、安倍首相に追随して、多くの自民党の国会議員、地方議員たちも、持ちつ持たれつの関係であったことが明らかになってきました。議員らは、霊感商法やマインドコントロールの犠牲者を救済するどころか、選挙の手伝いをしてもらったり、まとまった票を提供してもらったりしていたのです。その返礼として、関連イベントに祝電を送ったり、出席して挨拶や講演を行うなど、活動を支援していました。岸田首相自身が旧統一教会と深くかかわったわけではありませんが、長年にわたり多数の自民党議員が旧統一教会と親密な関係を保ち、多額の負債を抱えて苦しんでいる信者やその家族を放任してきたことに国民は強い不信感を持っているのです。

安倍晋三元首相の国葬をめぐって

 7月8日、奈良市の西大寺駅前で安倍晋三元首相が凶弾に倒れた事件は、私たちに大きな衝撃を与えました。岸田文雄首相はそのわずか6日後の7月14日の記者会見において国葬実施を表明しました。みなさんご存じのとおり、国葬実施日は今月27日です。いよいよあと10日ほどに迫りましたが、各社の世論調査によると、国葬反対派が賛成派を大きく上回っています。本日の記事では、なぜこれほど反対意見が多いのか、考えてみたいと思います。
 国葬について、何よりの問題点は、根拠法令がないことです。ちなみに戦前には国葬令がありましたが、戦後1947(昭和22)年に失効しました。なお戦前の国葬対象者は首相経験者では、伊藤博文、山県有朋、松方正義が挙げられ、東郷平八郎や山本五十六ら軍人にも、国葬が行われています。つまり皇室以外では、主として明治維新の功労者および元老、そして大戦で活躍した人物が選ばれたといえます。終戦後、国葬令がなくなったのは、日本国憲法のもとで軍国主義を排除し、民主化政策を推進する意図があったと思われます。
 さて戦後において国葬のルールが明記されているのは皇室典範です。皇室典範では天皇が崩御したとき、大喪の礼が行われると定められています。すなわち戦後国葬の対象者は、天皇以外想定されていないのです。戦後、首相経験者で国葬が行われた唯一の事例は、吉田茂のみです。吉田の国葬については、根拠法はないのですが、佐藤栄作内閣の閣議決定という裏技で正当化されました。岸田首相は、この吉田茂の前例にならい、閣議決定で安倍氏の国葬に踏み切ったのです。
 繰り返しになりますが、戦後吉田茂と安倍晋三を除く首相経験者が国葬の対象とされなかったのは、葬儀費用を全額国費でまかなうための法的根拠がなかったからです。結局国葬は見送られ、内閣・自民党合同葬というスタイルが定着しました。
 時計を逆回転させることはできませんが、今回岸田首相はどのような手続きをとっていたら、批判をかわすことができたのでしょうか。気をつけなければいけないのは、閣議決定というのはあくまでも行政の判断です。もし様々な政策や税金の使い道が閣議決定だけで決められるとしたら、政権をとれば、何をやってもよいことになります。しかしそれでは民主国家とはいえません。国民を代表する国会と法律のチェック機関である司法当局(最高裁判所)の了承が得られていれば、これほど強い世論の反対派は起こらなかったはずです。
 次に費用について考えます。政府は当初、今年度予算の予備費を使い、およそ2億5,000万円と発表していました。ところがそれほど少額のはずはないという批判を受けて再度見積もりを行い、警備費や外国要人の接遇費など14億円余りを加え、総額で16億6,000万円程度かかるという見通しを示しました。国葬の経費は、災害など突発的な事態に備える予備費が充当され、予備費の決定権は内閣にあるので手続きとしては問題ないのですが、予備費の乱用が目に余るという反発があることも事実です。納税者の立場からいうと、税金の使途は透明性を確保されるべきです。憲法83条によると、国の財政は、国会の議を経て決められなければならないとされています。しかし今回の国葬は、国会に諮られることなく、閣議決定によって決まりました。この決定過程は、財政民主主義の観点からも好ましくありません。
 最後に最も本質的な論点として、安倍氏のレガシーに関する検討も必要です。岸田首相は、安倍元首相の在任が最長の8年8カ月と、憲政史上最長であったことを強調し、経済政策や安全保障政策でも大きな功績を残したとたたえました。しかし安倍氏の政策について、評価が定まっているわけではありません。アベノミクスはデフレからの脱却に成功したとはいえず、急激な円安など、むしろ低金利政策の弊害が目立ってきています。さらにアベノミクスは格差拡大をもたらしたという指摘も聞かれます。安全保障政策では、強引に憲法の解釈を変更し、集団的自衛権の行使を容認を行いましたが、憲法学者はもちろん、一般市民からも異論が噴出しました。森友・加計・桜問題では、政治の私物化が行われ、最後まで国民に納得のゆく説明がされませんでした。そして銃撃事件を契機に、旧統一教会との密接な関係を裏付けるエピソードが次々と報じられました。
 それにしても岸田首相はなぜ拙速に国葬を決めてしまったのでしょうか。歴代首相経験者の国葬が見送られてきた理由をもっと慎重に検討すべきでした。そしてこの国葬問題が急速な支持率低下を招き、10月以降、「岸田おろし」の動きにつながるかも知れません。

研究演習兇里澆覆気鵝‖感範席玄紘についてのお知らせです

 8月も終盤、夏休みは後半を迎えました。4年生のみなさんは、就職活動が終わり、ほっとひと息ついていることと思います。お疲れさまでした。
 さてみなさんの大学生活の残り期間はあと半年(秋学期の終わりまでなら約4ヶ月)となりました。この最後の期間をどう過ごすか、社会人デビューに備え、各自有意義なスケジュールを立ててほしいと思います。色々な考え方があると思いますが、ゼミ担当者としては、4年間の学びの集大成として、是非卒業論文の執筆に取り組んでほしいと願っています。卒論は必修でなくなり、ゼミ生の中でも卒論を書く人は少数になっています。多くの文献を読んで理解し、まとめて発表するのは大変な作業ですが、例年卒論を提出した人は、確かな研究実績を残し、充実感・達成感を得て4年間の学びを終えています。
 卒論を執筆するかどうかは、みなさんの秋学期のスケジュール次第です。秋学期、卒論作成に十分な時間を確保できる見込みのゼミ生は、下記の要領を参考に、準備にとりかかってください。

1.卒業論文作成のための条件
 極めて根本的なことですが、卒業論文の作成にふさわしいのは、調べたいテーマを明確に持っている人です。テーマ、構想が全くなく、ネット記事の切り貼りだけで何とかなると考えている人は、書く意味がありません。
 いうまでもなく卒業論文は4年間の学びの集大成です。これまで受講してきた科目の分析手法や知識を総動員し、オリジナル性の強い研究を残したいという意欲を重視します。

2.テーマ、構想に関して
 次に重要なのは、どのようなテーマを研究するかです。何よりも、研究の意義づけがきちんと説明でき、参照する文献が豊富に存在するかどうかを見極める必要があります。これまでに経験した悪い事例をみると、スポーツイベントやテーマパーク、ゲーム産業の経営や経済効果を調べたいというものです。しかしこれらには、自分が好きだからという以上の動機が見当たらず、適切な文献もあまりありません。したがって、どのような文献を用い、何を明らかにしたいのかという説明がつかず、テーマ変更を余儀なくされています。研究テーマの選定には熟考が求められ、思いつきや直感で決めるのは望ましくありません。
 テーマ選定の際に最も重視すべきは、文献や先行研究が豊富にあることです。いくら興味を持っていても、調べる手掛かりが少ないテーマは、卒論のテーマとしてふさわしくないのです。個人的には、研究の蓄積が十分で文献が揃っているオーソドックスなテーマを、手堅く研究するのがよいと考えます。最近のホットな問題としては、新型コロナが経済に与えた影響、ロシアのウクライナ侵攻が世界秩序や経済に与えた影響、岸田政権の経済政策およびその課題などが挙げられます。

3.作業の進め方
 分量の目安は1,000字×20枚程度です。それだけの論文を来年の正月休み明け早々に提出しなければいけませんので、計画的な準備が必要です。面倒がらず、何回か図書館へ出向いて文献を借りてこなければいけませんし、パソコンに向かって原稿を書く時間の確保も大切です。ネットを有効に利用するのは好ましいことです。しかし出どころがはっきりしない記事の切り貼りで字数を稼ぐのは避けてください。また、たとえ正式な論文であっても、まる写しは認められません。自分の頭でよく考え、自分の言葉に置き換えて表現する姿勢が求められます。ほかの用事があって忙しく、十分な時間を確保するのが困難な人は、卒論執筆には向きません。
 秋学期10〜12月、毎月1回ペースで途中経過を報告してもらいます。報告者は1回あたり2名程度、報告者以外も全員出席が原則で、報告に対して必ずコメントや質問を求めます。
 担当教員が進捗状況を把握できるよう、緊密なコミュニケーションをとれることを重視します。メールでの意見交換、研究室での打ち合わせなどの対応を行います。

4.論文の構成
 論文の基本スタイルは、次のとおりです。
 まず「はじめ書き」で、テーマ選定の理由を明示してください。無数のテーマの中からなぜそのテーマを選んだのかに関し、アピールが大切です。そして従来の研究でどこまでが明らかになっているかを示し、その研究を行うことによって、自分がどのような貢献ができるのか考えましょう。
 次に本論でしっかり分析を行います。要するに課題を設定し、証拠を示しながら、なぜそうなったのか、理論的・実証的に解明してゆくのです。章や節のはじまりでは、今から何を述べたいのか、はっきりさせてください。いきなり、「何年、何々の事件が起こった」というような書き方からスタートする人が多いのですが、何を主張するためにその事件を取り上げるかという説明がないと、文意が通じません。
 形式的には4〜5章に分けるのが適当です。各章はさらに節に分け、適切な見出しをつけてください。段落や切れ目のない長い文章は読みづらいので、必ず節を作り、今から述べることがわかる見出しを忘れないようお願いします。
 最後は全体を通じて何が明らかになったのか、締めくくりを(まとめ)をしっかり書いてください。

5.卒論計画書の提出
 秋学期が近づいてきましたので卒論を書く予定のゼミ生には、準備を始めてもらいます。まずテーマを設定し、そのテーマを選んだ理由、暫定的な章立て、明らかにすべき目標に関し、A4用紙1枚程度でまとめてください。また折をみて図書館へ行って文献を収集し、参考文献リストの作成も始めてください。文献の利用は必須で、ネットの利用のみでの作成は認められません。
 
 卒論執筆希望者は、さしあたり上記の卒論計画書を、9月18日(日)までに私宛にメール(添付ファイル)で送付してください。連絡がない場合は、卒論作成の意思がないものと判断します。

関西学院大学の恵まれた研究環境

 昨日の神港橘高校の生徒への模擬授業は、関西学院大学のよさを高校生にPRする目的もありました。そこで私の簡単な経歴と、関学との関わりについてもお話ししました。
 私は1967(昭和42)年、三重県伊賀市生まれ。私立滝高校(愛知県江南市)を卒業後、1986(昭和61)年、関西学院大学経済学部入学しました。高校は厳しい進学校で、授業が難しく、わからないまま頻繁に試験を課せられたので、泣きそうな毎日を送っていました。関学の入試は全く自信がなく、英語と国語は壊滅的な打撃を受けました。ただ日本史だけは、よくできたつもりでした。自分の感触では、到底合格ラインには達していないと思っていましたので、合格通知が届いたときは、夢かと疑いました。
 大学の授業は、受験勉強よりはるかに取り組みやすいと感じました。入試はどんな問題が出るかわからず、不安でしかたありませんでしが、大学の授業は、真面目に聞いていれば、よく理解できました。親切な先生とのすすめもあり、学部2年生のころ、大学院への進学を決意しました。
 関学生活を振り返ってみると、学部4年、修士課程2年、博士課程3年、研究員1年と10年間学生として過ごし、1996(平成8)年、助手に就任して以降26年間、教員として経済史系の授業を担当しています。
 このように私は、昭和の終わり頃から、平成、令和の現在に至るまで、1日も関学を離れず過ごしてきました。こうした中で、次のような点に、関学の魅力を感じています。
 々盥酸犬里箸は、関西私学の名門校で、経済界に多くの立派な人材を送り出していると聞いていました。
◆‘学後、高校時代と比べ、急に世界が広がりました。熱心に指導してくださる素晴らしい先生方との出会いのおかげで、将来の方向性が決まりました。ゼミの友人とは、今でも交流が続き、学生時代のエピソードで話が盛り上がります。
 研究するには最適の環境です。施設が整っており、特に図書館の充実度は最高です。研究室にいるのが一番落ち着き、休日も来ています。学内各部署のスタッフのみなさんが大変親切に応対してくださり、ありがたく思っています。
ぁ‘荏訐犬里弔覆りが緊密であることも、関学のウリといえます。同窓生が様々な分野で活躍しており、支援を受けられます。茶業や食で実績をあげておられる先輩もいらっしゃり、総合コースという授業のコーディネートでお世話になりました。
 私は母校出身教員として、これらの関学のよさを後輩である現役学生に伝え、継承してもらうよう、日々の授業を行っています。

経済学部での学びについて 神戸市立神港橘高校の生徒に模擬授業

 本日朝9時から神戸市立神港橘高校の生徒に模擬授業を行いました。あいにくの大雨でしたが、20名ほどが参加してくれました。この企画は、かねてから交流のある同校の島田融先生の発案によるもので、これから進路を決定しなければならない高校生に、大学での学びとは何か、さらに様々な学部がある中で、経済学部の位置づけはどのようなものか、私なりの考えをお伝えするのが趣旨です。
 最初に、大学で学ぶことの意義について、私の思いをお話ししました。大学には様々な学部がありますが、基本的に各自が仕事のやりがいや人生の幸福を追求し、携わっている仕事によって、顧客や社会全体の幸福に貢献できるよう、準備をする場だと考えています。具体的には次のような感じです。
 文学部 → 歴史、言語、文化、芸術、思想などを研究の対象とし、作品の魅力を見出し、鑑賞力やコミュニケーション力を身につけ、豊かな心を育む。
 法学部 → 世の中が法やルールにしたがって運営されるよう努める。自由・平等・公平な社会、安全性の高い社会の実現を目指す。
 商学部 → 経営、会計、マーケティングなどを通じ、より効率的な企業の管理、運営方法を研究する。
 医療・福祉系学部 → 病気で困っている人を助ける。
 工学部 → 技術開発を通じ、人々の生活をより便利で豊かにする。
 では、経済学部にはどのような特徴があるのでしょうか?経済学部で対象とするのは、家計、企業、政府の活動と海外情勢です。これら各主体の活動の活発さが景気や私たちの暮らしの良し悪しを左右します。
 あるいは次のようにも言えます。私たちは朝起きて、会社へ勤めにゆきます。会社で働くことは、何らかの財・サービスの生産に携わるということです。この生産活動に対しては、給料が支払われます。これを経済の言葉では、所得として分配されると言います。分配された所得は、食料品や服を買ったり、旅行・外食に使うなど、様々な用途に支出されます。このように私たちの日々の生活は、生産→分配→支出と動いています。この各段階がうまく機能しているかどうかを考えるのが、経済の学びといえます。時々、経済は自分の生活と関係ないと言う人がいますが、そう言ってよいのは、無人島で自給自足生活をしている人だけです。働きに行って給料をもらい、それで色々な物を買って生活している人は、全員経済と関わっていることになり、経済学の学びを欠かすことはできません。
 学際トピックスで医療問題の授業をしていることもあり、私はいつも日本の経済状態を、人間の健康状態にたとえて診断するようになりました。みなさんにお尋ねしますが、日本経済の体調は健康でしょうか?残念ながら平成以降の日本経済は、重病を患っています。早く適切な治療をしないと、どんどん悪化して、手遅れになってしまいます。日本経済がすごく元気で、何の問題もないというのなら、経済学部の出番はありませんが、全身悪いところばかりの状態だからこそ、「名医」となって、治療に全力を投入しなければならないのです。こう考えると経済学は、非常にやりがいのある研究分野だといえます。
 本日の模擬授業では、岸田政権下の日本経済の健康状態をチェックしてみました。すぐに思い浮かぶものだけでも、コロナの第7波による経済活動の停滞、インフレ、低賃金と不安定な雇用、円安、電力不足などがあります。これら現在日本が直面する課題に、どのような治療法を提案できるか、経済を学ぶ私たちの知恵を結集しなければなりません。

2022年度 日本経済史機.譽檗璽伐歛

【2022年度 日本経済史機.譽檗璽伐歛蝓

※ 下記の【課題1】〜【課題3】について、指定された分量(A4用紙1枚の設定を1,000字程度としたときのページ数)で解答を作成してください。
  

【課題1】

 本講座では、ロシアのウクライナ侵攻と重ね合わせ、戦前における日本の帝国主義について、反省と教訓を引き出しながら、検証してきました。講義内容をふまえ、次の(1)〜(5)の設問に答えなさい。分量は5つ合わせて5〜6枚程度、配点は45点とします。

(1) 主権線、利益線の発想に言及しつつ、戦前の指導者たちは、帝国主義、植民地主義についてどのように考えていたか、とりまとめなさい。

(2) (1)の思想に基づき、第一次世界大戦のころから、日本は中国に対する支配を強化してゆきます。ここで次の時期区分にしたがい、日本の中国への帝国主義政策の内容を整理しなさい。
 1910年代後半(第一次世界大戦ころ)
◆1920年代後半〜30年代前半
 1930年代後半

(3) 日本が中国への侵略をエスカレートさせるにしたがい、アメリカの日本に対する経済制裁は強化され、日米関係は悪化の一途をたどります。1930年代終わりから、40年代はじめの動向に焦点を当て、日米開戦までの経緯を説明しなさい。

(4) 日中戦争の頃から、国民生活は窮乏してゆきます。具体的に国民は、どのような生活を余儀なくされたかについて、説明しなさい。

(5) 大正・昭和戦前期の日本の帝国主義政策は、ロシアによるウクライナ侵攻と類似点が多く見受けられます。両者を重ね合わせ、みなさんはどのような反省と教訓を得て後世に伝えますか?コメントしてください。

【課題2】

 戦前の日本の景気変動は、冊子p.5 図1に示したとおりです。図1を参照しながら、適当な時期区分を行い、戦前における日本の景気動向を概観しなさい。その際、景気がよくなっても、悪くなっても、なぜそうなったのかについて、丁寧に述べること。分量は5〜6枚程度、配点は45点とします。← 注記を忘れたので追加しました。


【課題3】

 次の(1)、(2)の設問のうち、どちらか1問選択して解答しなさい。なお分量は1枚程度、配点は10点とします。

(1) 日露戦争において、小国日本は、大国ロシアに到底勝ち目がないとみられて いました。にもかかわらず、日本はなぜ勝利をおさめることができたのでしょうか。戦略・戦術論に基づいて説明しなさい。

(2) 大日本帝国憲法の解釈をめぐる神権学派と立憲学派の論争を念頭に置いて、 天皇機関説事件の経緯を述べなさい。さらにこの事件が、その後の日本社会に与えた影響に関しても言及しなさい。


【備考】

 (現颪魯錙璽廛蹐悩鄒し、文書名は「日本経済史機_歛蝓.ッコ書きで各自の氏名」 というスタイルにしてください。具体的には、日本経済史機_歛蝓 併本益英) という感じです。
  分量は各課題で指示したとおり です。なお文章はいくつかの段落に区切り、適当な見出しをつけてください。1ページめの冒頭には、学部、学年、学生番号、氏名を必ず記載するように。
◆。海弔硫歛蠅錬韻弔離侫.ぅ襪砲泙箸瓩督鷭个靴討ださい。なお新しい課題に移るときは、それがわかるよう、2〜3行行間をあけてください。
 解答は冊子と配付資料に基づいて作成してください。それ以外の文献等の参照は必要ありません。
ぁ…鷭个LUNAへお願いします。期日は2022年7月13日(水)まで。
ァゝ震篥世魯瓠璽襪婆笋す腓錣擦討ださい。

2022年度 学際トピックス・医療をめぐる諸問題 レポート課題

【2022年度 学際トピックス・医療をめぐる諸問題 レポート課題】

※ 下記の【課題1】〜【課題3】について、指定された分量(A4用紙1枚の設定を1,000字程度としたときのページ数)で解答を作成してください。
 
【課題1】

 新型コロナウイルス感染症は、わが国の医療体制のみならず、経済・社会・国民生活に甚大な影響を及ぼしました。講義内容を参照しながら、以下の6つの設問に答えなさい。分量は、6つの設問を合わせ、5枚程度とします。配点は6つの設問を合わせ40点です。

(1) この病気の感染→発症→改善の経過について説明しなさい。
(2) 感染拡大にともない、医療供給体制にどのような課題が浮かび上がったかについて説明しなさい。
(3) 感染拡大に直面し、保健所はどのような対応をとったかについて述べなさい。
(4) 感染拡大の局面で、経済・社会・国民生活にどのような悪影響を及ぼしましたか。いくつかの論点を提示して、明らかにしてください。

(5) 感染対策として、政府は緊急事態宣言を発令し、東京都は飲食店を対象に、営業自粛・時短営業を求めます。この措置を受けて、飲食店チェーンのグローバルダイニングは、営業の自由を保障した憲法に違反するとして、東京地裁に提訴しました。
 ここで、水島先生の講義資料、およびLUNAで紹介した新聞記事を参照して、この問題の争点を明らかにした上で、東京地裁はどのような判決をくだしたかについて論じなさい。さらにその判決内容に対し、あなたのコメントを加えてください。
(6) (2)で指摘した課題を根本的に解決するためには、どのような制度的変革が求められているかについて論じなさい。

【課題2】

 下記のA、B、C3つのテーマより、2つ選択して各設問に答えなさい。分量はA、B、Cそれぞれ2枚程度、2つ合わせて4枚程度とします。配点は、20点×2=40点です。

A.戦後日本の社会および医療の動向に関し、次の視点から論じなさい。

(1) 戦後日本の人口動向について、総数と年齢区分別人口の変遷に注目して概観しなさい。さらにその結果が、医療費にどのような悪影響を与えるかに関しても述べなさい。
(2) 戦後日本の疾病傾向、および主な死因の変遷について論じなさい。
(3) 戦後わが国の医療技術は目覚ましい発展を遂げ、近年では、遺伝子工学が医療に応用されるようになりました。そのメリットを指摘し、生命倫理上の課題関して述べなさい。

B.前田先生と後藤先生授業から、公立病院と民間病院の経営課題が明らかになりました。お2人の先生の講義内容を念頭に置いて、次の(1)、(2)の設問に答えなさい。

(1) 公立病院の経営は危機的な状況に置かれています。その構造的要因に関して論じ、悪化した経営を立て直すための方策を述べなさい。
(2) 民間病院の経営は公立病院と比べると、不利な側面が見受けられます。この点に関し、診療報酬制度とキャピタルコストをキーワードに論じなさい。さらに民間病院の経営を、公的資金の支援なしでどのように再建すべきか、提言を行いなさい。

C. わが国の公的医療保険制度について、次の設問に答えなさい。

(1) 種類を列挙し、それぞれの特徴について、簡単な説明を加えなさい。
(2) 民間保険と比較し、給付と負担の間にどのような問題があるか説明しなさい。
(3) 公的医療保険制度の財政面での健全性を確保し、持続可能なものとするために必要と思われる医療改革について論じなさい。

【課題3】

 次の(1)〜(3)の設問のうち、1問選択して解答しなさい。なお(1)〜(3)とも分量は1枚程度、配点は20点とします。

(1) 2005年4月25日に起きたJR福知山線の脱線事故における兵庫医科大学病院の対応について、時間の経過にしたがって追跡しなさい。加えて、大規模災害が発生したとき、被害を最小限にとどめるため、どのような方策が考えられますか。あなたの見解を述べなさい。

(2) 良医には、プロフェッショナリズムが求められます。社会において信頼される医師の資質・能力について、いくつかの視点を示し、あなたの見解を述べなさい。

(3) 中世ヨーロッパにおいて発生したペスト(黒死病)について、当時の時代背景、応急的な治療、人口動向を明らかにし、その後社会としての感染対策がどのように展開されていったかについて論じなさい。

【備考】

 (現颪魯錙璽廛蹐悩鄒し、文書名は「医療問題 課題 カッコ書きで各自の氏名」というスタイルにしてください。具体的には、医療問題 課題 (寺本 益英) という感じです。
  分量は各課題で指示したとおり です。なお文章はいくつかの段落に区切り、適当な見出しをつけてください。1ページめの冒頭には、学部、学年、学生番号、氏名を必ず記載するように。
◆。海弔硫歛蠅錬韻弔離侫.ぅ襪砲泙箸瓩督鷭个靴討ださい。なお新しい課題に移るときは、それがわかるよう、2〜3行行間をあけてください。
 解答は各先生方の配付資料に基づいて作成してください。それ以外の文献等の参照は必要ありません。
ぁ…鷭个LUNAへお願いします。期日は2022年7月10日(日)まで。
ァゝ震篥世魯瓠璽襪婆笋す腓錣擦討ださい。

バイデン大統領初来日 日米首脳会談行われる

 本日の日本経済史気亮業では、昨日(5月23日)行われた日米首脳会談を取り上げました。
 バイデン政権について簡単に振り返っておくと、発足は2021年1月20日です。最初の外遊は、6月11日から3日間行われたG7サミットに参加するため、イギリスを訪れています。そのあとベルギーへ移動し、NATOやEU首脳と会談を行っています。訪欧の目的は何と言ってもNATOやEUが結束し、中国と対抗することです。今回の訪日(訪韓も)の目的も、ライバルである中国を牽制するのが主目的でしょう。しかしヨーロッパ訪問よりほぼ1年遅れています。中国を意識しているとしつつも、日本(アジア)のあと回し感は否めません。
 さて今回の日米藺首脳会談のキャッチフレーズは「自由で開かれたインド太平洋」です。もちろんウクライナ問題にふれないわけにはゆかず、ロシアの侵攻に対し、「力による現状の変更を認めない」ことも強調しています。いまアメリカはロシアと中国の二正面作戦をとらなければならず、なかなか大変です。そこで日米同盟を強化し、様々な脅威に立ち向かうということになりました。
 具体的にどのようなことが話し合われたかみておきます。弾道ミサイルに対処するための「反撃能力」の保有が議論されました。これは北朝鮮を意識してのことだと思います。「反撃能力」とは、以前「敵基地攻撃能力」といっていたものです。近年ミサイル技術の急速な進化で、迎撃のみで日本を防衛しきれないという意見が自民党内から出てきました。「反撃能力」の対象範囲はミサイル基地だけではなく、指揮統制機能なども含みます。これまで日本は相手の基地の攻撃を目的とした装備の保有を考えてきませんでしたので、実現すれば大きな方向転換です。私が懸念するのは、相手が攻撃するということを正確に察知して、日本が攻撃を受ける前に、相手国の基地を攻撃できるのかということです。失敗は許されないし、相手国からの報復を受け、戦闘が長引く可能性があります。
 いまひとつのポイントは、日本の防衛力を抜本的に強化し、防衛費の増額を約束したことです。岸田首相はいったいどれくらい増額するつもりなのでしょうか?2022年度当初予算で防衛費は、5兆3,145億円です。これを倍増するというのが、自民党の構想です。
 ここでみなさんに質問です。5兆円自由に使えるお金があれば、防衛費に使ってほしいですか?学生なら、奨学金や授業料減額に使ってほしいと思いませんか?あるいは子育て支援、国産ワクチンの開発、企業の技術開発支援等々、様々な優先順位の高い用途が思い浮かびます。そもそも政府は、どのような事態に備え、どんな武器がどれくらい必要と計算しているのでしょうか?アメリカの武器産業の得意先の役割を果たすだけなら、もっと生産的なことに使うべきだと思います。

3年ぶり 行動制限のない大型連休が終わります

 3年ぶりの行動制限のない大型連休が終わろうとしています。新幹線や飛行機の旅客数は大きく伸び、全国の行楽地には久しぶりで賑わいを取り戻してきました。ただ昨日(5月7日)時点における全国の新型コロナの新規感染者数は、3万9,327人(NHK調べ)に達し、決して低水準とはいえません。大型連休で人の移動がかなり活発になっており、これから5月末にかけて、リバウンドが起こらないか心配です。
 さて私はこの連休、例年どおりstay homeとgo to 研究室で過ごしました。研究室移転後の荷物の整理が一向に進まず、書棚に本を並べ替えたり、段ボール箱を開けて必用な物と不要な物を分けたりなど、色々仕事が残っています。研究室を片づけながら、4月30日〜5月1日、zoom開催された第91回社会経済史学会全国大会の報告やパネルディスカッションを視聴しました。学会参加のメリットは、他大学にどのようなテーマの研究者がいるかを知ることができ、その方がどんな文献やデータを利用し、どういったストーリー展開で報告されるかについて学べる点にあると思います。
 ゴールデンウイーク中に憤りを感じたのは、4月23日に発生した知床遊覧船の遭難事故です。乗員乗客合わせて26名が犠牲になりました。事故の原因は、運航会社の杜撰な安全管理体制だったことがわかってきました。当日は強風波浪注意報が出ており、悪天候になることが予想されました。漁船は操業を見合わせ、他の遊覧船会社も営業していないのに、知床遊覧船のみが強引に出航したのです。またいずれ明らかになるはずですが、出航前にきちんと船の安全点検をしていたのでしょうか。もし船体の一部が損傷していたり、エンジンに不具合があって、今回の事故につながったのかも知れません。さらに陸上と海上(観光船)の間でやり取りをする通信設備の不備もひどかったようです。運行責任者である社長と船長の経験が浅く、天候の判断や運行ルートの地形や海流の特徴を把握しきれていなかったことは、大きな問題だったと思います。
 ここで質問です。もしみなさんが知床観光を予定していた場合、この事業者を避けることができましたか?旅行気分をそそるホームページをみて、料金が手ごろで、自分のスケジュールと座席のあき具合がうまく調整できれば、予約を入れていたかもしれません。とにかく判断する情報を持っていなければ、他地域の遊覧船でも、観光バスやタクシー、ホテルの選択でも、同様の失敗を起こす可能性があると感じました。
 私たち一般人は、業者を選別する情報を持っていません。それでも監督官庁(国交省)がきちんんとチェックし、不適格な業者は最初から除外されていると思っていました。しかし実際はそうではありませんでした。平素の点検が形式的なものにすぎず、このような杜撰な経営を行っている業者を見抜けなかったのです。いったい国は何をしていたのかと、不信感が高まりました。
 合わせて17年前の同じ頃(2005年4月25日)に起こったJR福知山線の脱線事故も私の頭をよぎました。普通に電車に乗っているだけで、このような大惨事に巻き込まれることもあります。(107名の方が亡くなられました)運輸業界の最重要使命は、安全運行を行い、何よりも人命を最優先に考えることです。そんな当たり前のことが、業者にも監督官庁にも徹底されていないことをあらためて痛感しました。早急な立て直しと、意識改革が必要です。

2022年度の授業が始まります

 今年度の授業がいよいよ本格的に始まります。2年連続でオンライン授業が続き、長い間キャンパスは活気を失っていましたが、今年度は原則対面授業が実施されることになり、大学はようやく賑わいを取り戻してきました。スポーツ選手が2年間試合をできなかったら、感覚が鈍るのと同じで、教員もあまり長い間ブランクができると、スムーズに授業ができなくなってしまいそうです。久しぶりで大勢の学生の前で話すためかなり緊張し、足が震えていますが、全力投球でがんばりたいと思います。
 さて今年度の担当は、「経済の歴史と思想」がなくなり、日本経済史(明治〜昭和戦前)、現代日本経済史(戦後史)、医療問題になります。現在全世界が注目しているのはウクライナ情勢の行方ですが、この問題の本質はどこにあるのでしょうか?このところ、新冷戦とかロシアによる新帝国主義という言葉を耳にします。しかし冷戦・帝国主義という概念は、1回や2回の授業で片づけられるほど簡単なものではありません。またロシアのウクライナに対する侵略行為と同様の行為を、19世紀後半〜20世紀前半にかけて、日本を含む列強各国は行ってきました。色々考えさせられることがあり、今こそ歴史の出番だと考えています。
 国内に目を向けると、何といってもコロナがみなさんの最大の関心事ではないでしょうか。学際トピックス「医療をめぐる諸問題」は、今年度からコロナ分野を強化し、リニューアル開講します。コロナ禍で医療現場で何が起こり、医療関係者はどのように対応してきたか、感染再拡大に備えどのような対策を行っているのか等々、医療の最前線でご活躍の方々から、ナマのお話をお聞きします。医療問題はコロナだけではありません。とにかく、「健康で長生きしたい」という人類共通の願いをかなえてくれるものなのです。日本は世界屈指の長寿国となり、医療制度は非常に充実していますが、少子・高齢化が急速に進む中、持続可能性が危ぶまれています。わが国の恵まれた医療制度を持続可能なものにしてゆくは何が必要か、受講生のみなさんと一緒に考えてゆきたいものです。
 あらためて述べるまでもなく、大学生活の4年間は、社会に出て活躍するための準備期間です。まずは自身の未来予想図を描き、それを実現するために、1日、1日後悔のないよう過ごすことが大切です。様々な岐路に直面し、右へ進むか左へ進むか、その都度慎重に判断しなければなりません。私の担当授業で取り上げるテーマや考え方が、受講生の大切な決断の際の手掛かりとなるように進めてゆきたいと意気込んでいます。  

2022年度 学際トピックス「医療をめぐる諸問題」 日程表

 この講座では医療について、社会科学の観点から、総合的に考えてゆきます。医療は医師の立場からは「病気を治す」ため、医学の知識と技術を磨くことが大切です。しかし全人口で医師の占める割合はほんの一握りに過ぎず、大部分の国民は患者として医療サービスを受ける側にいます。では患者となる私たちは、医療のことを全く知らなくてよいのでしょうか。例えば次のような問いに答えられますか?
 .灰蹈覆梁茖掲箸来たとき、入院させてもらえるのか?感染者が増加すると、保健所がパンク状態と言われているが、そもそも保健所はどのような業務を行っているのか?
◆〔延防止措置と緊急事態宣言の違いは?
➂ 日本はなぜ世界屈指の長寿国になれたのか?
ぁ〜加の一途をたどる医療費をどのように削減するか?
ァ^緡纏故はどのように解決されるのか?
 ちょっと考えただけでも様々な疑問がわいてきます。しかしこれらの課題は、現状の学部の枠組みでは、扱うことができません。そこで様々な分野の専門家が力を合わせ、総合学として取り組んでゆく必要があるのです。
 本講座は以上のコンセプトのもとで、医療の専門家を中心に、関連分野である法律や経済にも目配りをしながら、日本の医療の歴史・現状を分析し、将来展望を試みるものです。
 大学生のみなさんは、今最も元気な時期で、たちまち医療や病院のお世話になることはありません。しかし50歳くらいになると、ご両親や自分自身の健康が気になり、否応なく医療と向き合わねばなりません。私たちは100%の確率で死ぬことがわかっている以上、100%の確率で医療や病院と関わることになります。そのときに備え、そしてそのとき少しでもよいサービスを受けられるよう、望ましい医療のあり方を考えておかなければいけません。
 他大学では類例のないユニークな講座です。ひとりでも多くの受講を期待しています。


【日程表】


第1回 4月14日 本講座のねらい 寺本益英(経済学部教授)
第2回  4月21日 医療問題を考える視点 −歴史・現状・将来展望− ゲスト 山中若樹(明和病院理事長)
第3回 4月28日 戦後日本の経済構造の変化と疾病の傾向 若林一郎(兵庫医科大学教授)
第4回 5月12日 救急医療・災害医療について  小谷穣治(神戸大学教授)
第5回 5月19日 先端医療における経済学 後藤章暢 (兵庫医科大学教授)
第6回 5月26日 日本の医療経営の問題点と対策 後藤章暢
第7回 6月2日 医療と法  −新型コロナウィルス感染症とその対策法規−  ゲスト 水島昇(水島法律事務所弁護士)
第8回 6月9日 良医の育成と医学教育 −兵庫医科大学の取組− 鈴木敬一郎(兵庫医科大学教授)
第9回 6月16日 保健所の業務とコロナ対応 福田典子(西宮保健所長)
第10回 6月23日 人類と感染症との闘い 中嶋一彦(兵庫医科大学准教授)
第11回 6月30日 公的医療保険制の仕組みと課題 前田高志(経済学部教授)
第12回 7月7日 自治体病院の運営と課題  前田高志
第13回 7月14日 本講座のまとめ (1)寺本益英
第14回 7月21日 本講座のまとめ (2) 寺本益英

2022年度のスケジュール

2022年度は下記のスケジュールで講義を行います。(ほぼ確定版)

火曜日
2限 春  学部・日本経済史機B−201 ← 5月10日より大教室で行います。
2限 秋  学部・日本経済史供畭膤惘 ζ本経済史A A−104 
3限 通年  学部・研究演習機。董檻横隠亜← 新研究室の近くに変更
4限 通年  学部 研究演習供 。董檻横隠亜← 新研究室の近くに変更

水曜日
教授会、研究科委員会など会議日

木曜日
2限 通年 大学院・後期課程 研究演習 研究室
3限 通年 大学院・後期課程 経済史特殊研究機仝Φ羲
4限  春  学部・学際トピックス「医療をめぐる諸問題」 B−204

金曜日
3限 秋 学部・現代日本経済史 C−202

 なお上記担当科目の各回の講義内容は、下記のシラバスへのリンクを参照し、確認してください。(現在公開中です。)

関西学院大学シラバス検索

関西学院大学シラバス検索

バイデン政権の経済外交政策 阪神シニアカレッジマイスターゼミナールで講演

 本日武庫之荘のトレピエに出かけ、阪神シニアカレッジマイスターゼミナールで講演を行いました。テーマは、「バイデン政権の経済外交政策」です。ここ2年、コロナの影響で市民講座での講演の機会がめっきり減り、学生に対しても、大人数の教室で授業を行う機会がなくなっており、このままでは、大勢の方の前で話す感覚を失いかけていました。今回はお天気に恵まれたこともあり、100名を超える聴衆に集まっていただき、忘れかけていた講演の感覚を取り戻すことができました。
 主催者にいただいた講演のテーマはアメリカ経済についてということでしたが、バイデン政権発足から1年あまり、ロシアのウクライナ侵攻から1ヶ月という国際情勢激動のタイミングで、参加者のみなさんとともに現状を分析し、今後の見通しを考える機会が得られたのは、大変有意義でした。
 さて2021年1月スタートしたバイデン政権は、コロナで混乱した経済の立て直しと格差是正を目指し、巨額の財政出動と金融緩和を継続しましたが、やがて与党の内紛でが政策停滞し、経済は40年ぶりの高インフレに見舞われている状態です。講演jのj第吃瑤任蓮▲丱ぅ妊鸞臈領の目玉政策をたどり、どこに問題があったのかを明らかにしました。
 続いて第局瑤任蓮外交政策に焦点を当てました。アフガニスタンからの撤退が国際秩序に与えた影響を考え、ロシアのウクライナ侵攻への対抗措置とその効果について検討しました。
 なお講演の内容は下記のとおりです。

機シ从兩策
1.宙にういたままの歳出・歳入法案
2.歴代政権の気候変動対策
(1)なぜ気候変動対策が必要か
(2)オバマ政権とパリ協定
(3)トランプ政権におけるパリ協定からの離脱
(4)バイデン政権の気候変動対策に暗雲
3.インフラ投資法案
4.インフレに直面するアメリカ経済
(1)40年ぶりの高水準となった2022年2月の消費者物価指数の伸び
(2)アメリカ、政策金利を0.25%引き上げ
5.高圧経済の落とし穴
供コ宛鮴策
6.米軍のアフガニスタンからの撤退
(1)アフガニスタン戦争
(2)ウサマ・ビンラディンとアルカイダ
(3)帝国の墓場と呼ばれたアフガニスタン
7.ロシア軍がウクライナへ侵攻
(1)ウクライナとロシアの関係史
(2)一般教書演説にみるバイデン大統領の立場
(3)アメリカのロシアに対する経済制裁

 上記のとおりバイデン政権の経済・外交政策をみましたが、あらためて今後の課題を整理しておきたいと思います。
 まず第一に、国民の分断が一段と深まらないか気がかりです。トランプ前大統領は、国民を敵味方に分けて分断をあおり、民主党と共和党の間に深い溝が生じました。現在はバイデン政権の政策をめぐり、身内民主党内にも不協和音が生じています。思いどおり政策を実行できるかどうか、微妙な情勢なのです。
 さらに高水準のインフレの鎮静化も課題です。大規模な財政出動を行うのなら、それに対応できるように供給能力を高めなければいけません。その際、ロシアに対する経済制裁は、供給能力の制約として働きます。供給不足はインフレ要因となり、インフレ抑制のため引き締めを強化すれば、景気を冷却する可能性があります。
 外交的には、アメリカは3正面のリスクを抱えることになりました。アジアでは、中国の動向から目が離せません。台湾周辺での軍事活動を活発化させています。一帯一路の広域経済圏構想も進めており、中東諸国との関係強化もはかっています。北朝鮮は、核実験と大陸間弾道ミサイル発射再開を示唆しており、日本にとっても脅威です。
 アメリカはウクライナ危機までは、中国を意識し、アジア・太平洋地域に関心を集中していたましたが、2月以降、民主主義や主権、国際秩序を脅かすロシアに対抗しなければいけなくなりました。今のところNATOと連携して軍事力を使う可能性は低いですが、追い詰められたロシアがもし核兵器を使用したらどうするのでしょうか。現在西側諸国はロシアに対し、厳しい経済制裁を課しています。この措置のため、世界経済は原材料不足や、エネルギー価格の高騰に苦しんでおり、スタグフレーションという厄介な事態も危惧されます。

新しい研究室に移りました

 1996年の就任以来、26年間過ごしてきた研究室を離れ、新築の建物に引っ越しました。たくさんの思い出が詰まった部屋を去るのは名残惜しい気もしますが、新年度からは気分一新で、研究に励みたいと思います。移転先はA棟という建物の420号室です。神学部と文学部の間の道を少し右に入ったところにあります。これまで長年、時計台に向かって左半分のエリアで過ごしてきましたが、新研究室があるのは、右半部のエリアです。同じキャンパス内ですが、これまでほとんど行ったことはなく、慣れるまでにしばらく時間がかかりそうです。
 引っ越し作業は2月下旬、日通のスタッフが8人がかりで3日間かけてやってくれました。大量の荷物を手際よく箱詰めし、運び、また箱をあけて並べてくれました。もしこの作業を私ひとりで行ったら、箱詰めだけでも300年はかかったと思います。プロの仕事の見事さに、唯々驚くばかりでした。新しい研究室は、未開封の段ボール箱が山積みですが、あとは自分で少しずつ片付けてゆくほかありません。
 さて今回の引っ越し作業を通じ、思わぬ収穫であったのは、これまで集めてきた文献を、分野別に書棚に整理できたことです。書棚に並んだ数々の本をあらためて見てみると、自分史(私の研究生活史)と、世の中全般の動きが重なりあい、感慨深いものがあります。ここでこれまで私が読んできた文献を簡単に整理しておきます。
 まず日本経済史の講義と論文作成用に、近代史の本はかなり多く集めました。明治・大正・昭和戦前期の日本の歩みをどう描くか、これは私の永遠の研究テーマといっても過言ではありませんが、概説書から専門研究まで、幅広く勉強して、講義や論文作成に役立ててきました。また経済史のみならず、政治史や外交史・アジアを中心とした国際関係史にも関心を持ってきました。
 次に戦後昭和史・平成史など、現代史関係の文献も多くあります。現代史の出来事はある程度自身でも経験しており、歴代政権の政策についても、色々考えてきました。ホットな経済問題は、市民大学や少人数クラスで取り上げる機会が多く、報告資料や教材をたくさん作成してきました。
 あまり意識していませんでしたが、フードシステム、食料・農業問題に関する文献も結構集めています。この分野には、直接的に深く足を踏み入れているわけではありませんが、緑茶の消費動向の分析をする際、大いに役立ちました。また以前はフードシステム学会によく出席しており、学会報告に刺激を受けた面があるかも知れません。
 日本経済史と比べると圧倒的に少ないですが、イギリス・アメリカ経済史、国際関係史の文献を揃えています。これらは完全に授業を意識したもので、経済史や経済の歴史と思想の教材・資料を作成するとき、活用しました。
 ここ10年くらいは、医療関係の本も収集しています。これは現在開講中の学際トピックス「医療をめぐる諸問題」に触発されてのことです。医療の第一線でご活躍の先生方のお話を聞いていると、日本の医療の素晴らしい点がよくわかりました。同時に深刻な少子・高齢化に直面し、現行の高い医療レベルを維持できるかという点も気になります。またコロナ問題も見過ごすことはできません。この医療講座では、すべての経済学部生に受講してほしいと思うほど、重要なテーマが扱われています。「健康で長生きしたい」という人類共通の願いを少しでも前進させるためにはどうすればよいか、真剣に考えてゆかなければいけないと思っています。
 勤めた当初の頃は、ミクロ・マクロ・計量経済学のテキストも揃えていました。当時は大学院入試の余韻が残っており、地方上級公務員試験レベルの問題は解けるようにしておきたいと意気込んでいました。その後、理論・計量分野からは遠ざかってしまいましたが、今回引っ越しを機に、久しぶりで経済の基本原則や用語をおさえたいと思いました。
 最後に喫茶文化史を中心とする日本文化史関係の文献がかなりあります。これはちょうど2000年以降くらいからのことだと思いますが、宇治茶の歴史を研究する機会を与えていただいたことがきっかけです。茶道と煎茶道の歴史、それを支えた人物、関連文化としての絵画、茶器、庭園など、調べれば調べるほど、どんどん興味が沸いてきました。展覧会にもよく足を運び、国宝クラスの名品を直接鑑賞できたのは、貴重な体験です。展覧会に出かけると、図録を必ず買い求めました。展覧会の図録はかなりの冊数になりますが、研究室で美術館気分を味わうことができ、心が豊かになります。
 26年間の研究生活を振り返り、収集してきた文献を整理すると上記のようになります。古い研究室では、原稿が思い通りに進まず、もどかしい思いを重ねてきましたが、ようやく完成し、担当者宛メールの送信ボタンを押せたのも、古い研究室のパソコンからでした。本当に様々な思い出が頭をよぎりますが、ここでひとまず区切りをつけ、2022年度からは新しい研究室で、精いっぱい研究に取り組まなければと、決意を新たにしています。

ロシア軍がウクライナへ侵攻

 2022年2月24日、ロシアが隣国ウクライナへの軍事侵攻を開始しました。キエフなど主要都市の軍事施設がミナイル攻撃や空爆を受け、一般市民にも多数の犠牲者が出ています。
 ここでウクライナの歴史を簡単に振り返っておきます。20世紀を通じウクライナは旧ソ連の一部として歩んできました。そして両国は、宗教や言語の近いスラブ民族の兄弟国とみなされてきました。
 しかし1991年ソ連が崩壊して以降、政情が不安定化してゆきます。すなわち西部地域に居住し、ウクライナ語を話す親欧米の居住者と、東部地域に生活基盤を置きロシア語を話す人々が対立を繰り返し、大統領選挙では親欧米政権と親ロ政権が目まぐるしく入れ替わりました。
 さて2019年5月より第6代の大統領を務めているのがゼレンスキーです。彼は政治家の汚職撲滅や、企業の賄賂、脱税の取り締まりを訴えました。また対外的には、バイデン大統領を頼り、EUやNATOへの加盟を希望し、反ロシア(プーチン)の姿勢を鮮明にしました。
 ところでNATOは、ソ連を中心とする共産主義国の脅威に対抗する軍事同盟として、1949年組織されました。当初の加盟国は12ヶ国でした。NATOの特徴は、もし加盟国のひとつが攻撃を受けた場合、集団的自衛権を使い、共同で対処できることです。
 冷戦終結後、東欧諸国のNATOへの加盟が相次ぎ、現在の構成国は30ヶ国に拡大しています。東西対立という概念が消滅して以降、周辺地域の紛争やテロに対する抑止力として機能しています。
 プーチン大統領は大国ロシアの存在感を誇示したく、NATOの勢力圏がこれ以上東方に拡大するのを阻止したいと考えていました。とりわけウクライナとベラルーシはNATOとの緩衝地帯として重要であり、ウクライナの欧米接近が進むと西側の自由主義思想が浸透し、自らの支配体制が揺らぐのを危惧したと思われます。
 しかしたとえそのような背景があったとしても、一方的に軍事力を使い、ウクライナを屈服させる方法が許されるはずがありません。侵攻を正当化するための、ロシアが独立を承認した東部のドネツク人民共和国、ルガンスク人民共和国のロシア人を守るためという言い分は、1939年ナチスがポーランドに侵攻した際の理由づけ「域内のドイツ人保護」と重なります。
 あらためて述べるまでもなく、ロシアは国連安全保障理事会の常任理事国である上、核兵器を保有し、世界屈指の軍事大国です。このような極めて影響力の強い大国が公然と国際法を犯した事実は、全世界に大きな衝撃を与えました。加えて冷戦後に浸透した民主主義、自由主義的な価値観を否定する強権型指導者(独裁者)の暴走に震撼するほかありませんでした。

2021年の研究生活を振り返って

 今年も最後の1日となりました。この1年コロナのため、みなさんの生活は大きな制約を受けたことと思います。旅行はもちろん、知人との会食の機会も減り、stay home を徹底する毎日だったに違いありません。私もコロナ前は、お茶に関係する展覧会を鑑賞するのが何よりの楽しみだったのですが、ここ2年、お気に入りの美術館・博物館が休館で、出かける機会はありませんでした。
 授業は多人数クラスはオンライン形式でしたが、大学院やゼミなど、少人数クラスは対面で実施できました。学生の出席率は高く、理解度を確認しながら丁寧に進めてゆけたのがよかったと思います。
 研究生活を振り返ると、菅政権から岸田政権への移行が最重要のトピックスであったため、両政権の研究に、ほとんどのエネルギーを投入しました。まず菅政権の1年を顧みると、コロナの感染動向と強い連動性がありました。菅氏は経済活動と感染抑制の両立を目指しましたが、どちらも中途半端で、国民の混乱を招きました。緊急事態宣言を発令しても効果が見られず、期間延長や地域拡大など、小出しの手法が、国民の不満を一段と高める結果になりました。お盆頃、1日の感染者数は2万人を超え、いったいどうなることかと、目の前が真っ暗になったのを覚えています。
 菅政権の支持率は、就任当初こそ高かったものの、コロナの感染拡大とともに低下してゆきました。感染者数に減少の兆しがあらわれたときには、若干持ち直しましたが、再び増加に転じると、再度下落のトレンドを描きました。そして8月半ばに深刻な感染爆発と医療崩壊が起こり、22日に行われた横浜市長選において、菅氏の推薦した候補が敗北に追い込まれると、自民党内の求心力も一気に低下してゆきます。こうして9月3日、ついに退陣表明を余儀なくされたのです。
 皮肉なことに、コロナの感染者数は、9月以降急速に減少してゆきました。ワクチン接種が大部分の国民に行き渡ったからでしょう。9月30日、緊急事態宣言は全面解除となり、その後経済活動は、少しずつ正常化の方向に進んでいます。コロナの鎮静化がもう1ヶ月半早く、オリンピック開会前に実現していたら、その後の政治は、全く別の展開になっていたことでしょう。現実の社会・経済変化は、一般的な経済原則で説明できるものではなく、そのとき、そのときの情勢を細かく追ってゆくことの重要性を痛感しました。ここに歴史分析の存在価値があります。
 菅政権の経済政策にも注目しました。最初に取り上げたのは、経済のデジタル化推進です。技術的なことはあまりわかりませんが、縦割り行政の弊害については、なるほどと思うことがたくさんありました。行政システムのデジタル化がもっと進んでいたら、ワクチン接種の予約も、きっとスムーズにできていたはずです。ワクチン接種の混乱をみても、わが国のデジタル化の遅れ、行政の効率の悪さが浮き彫りになった思います。デジタル庁の開設が、行政の生産性の低さの改善につながることを期待したいものです。菅政権が、歴代政権が消極的であった行政システムのデジタル化に力を注いだことは、高く評価できます。

2021年度 日本経済史供.譽檗璽伐歛

【2021年度 日本経済史供.譽檗璽伐歛蝓

※ 下記の1〜4の大問について、指定された分量(A4用紙1枚の設定を1,000字程度としたときのページ数)で解答を作成してください。

1.アベノミクス第一の矢「大胆な金融緩和」に関し、次の(1)、(2)の設問に答えなさい。分量は(1)、(2)合わせて2枚程度。9×2=18点

(1) この政策は、デフレからの脱却を目指して行われたものです。具体的にどのような手段を用い、政策目標を達成しようとしましたか。
(2) 2021年末の段階で、この政策に十分な成果はみられません。この政策にどのような誤算が生じたか、説明しなさい。

2.本講義では、経済成長第一主義の問題点・弊害を、いくつか取り上げました。経済成長第一主義の課題について、事例を2つ示し、それらの内容を明らかにし、どのような解決方法が望ましいか、あなたの見解を述べなさい。(なるべく新聞記事検索システムも活用すること。)分量は2枚程度。24点

3.日本型経済システムを念頭に置いて、次の(1)、(2)の設問に答えなさい。分量は(1)、(2)合わせて2枚程度。9×2=18点

(1) 終戦後、バブル崩壊前まで、このシステムはうまく機能し、日本の経済発展に貢献してきました。そこでこのシステムの特徴を述べ、わが国の経済発展にどういった形で好影響を及ぼしたかについて説明しなさい。
(2) 平成以降、このシステムは徐々に崩壊してゆきます。平成年間における変化の実態を明らかにし、社会・経済にどのような悪影響を及ぼしているかについて論じなさい。

4.日露戦争の経過について、次の(1)〜(5)の設問に答えなさい。 分量は(1)〜(5)合わせて3〜4枚程度。8×5=40点

(1) 日清戦争後、ロシアは東アジアにおいて、どのような形で影響力を高めてゆきましたか。日本の対応にも留意して、説明しなさい。
(2) 義和団事件の経緯、および帰結を明らかにしなさい。
(3) 日露戦争前、わが国では日露協商論と日英同盟論の利害得失が議論されていました。両者の主張を明らかにし、最終的に日英同盟論を採択するに至った理由を述べなさい。
(4) 日露戦争に際し、日本は巨額の戦費をどのように調達しましたか。高橋是清と、ヤコブ・シフの交渉に注目して説明しなさい。
(5) 日露戦争において、小国日本は、大国ロシアにどうして勝利をおさめることができたのでしょうか。戦略・戦術論に基づいて説明しなさい。

【備考】

 文書はワープロで作成し、文書名は「日本経済史供_歛蝓.ッコ書きで各自の氏名」というスタイルにしてください。分量は各設問で指示したとおりです。なお文章はいくつかの段落に区切り、適当な見出しをつけてください。冒頭、学部、学年、学生番号、氏名を忘れないように。
 4つの大問は1つのファイルにまとめて提出してください。なお新しい設問に移るときは、それがわかるよう、2〜3行行間をあけてください。
 解答は配付資料に基づいて作成してください。ただし2は例外です。
 提出はLUNAへお願いします。期日は2022年1月20日(木)まで。
ァ 疑問点はメールで問い合わせてください。

2021年度 経済の歴史と思想 レポート課題

2021年度 経済の歴史と思想 レポート課題】

※ 下記の1〜4の大問について、指定された分量(A4用紙1枚の設定を1,000字程度としたときのページ数)で解答を作成してください。

1.ヨーロッパにおける農村の移り変わりを念頭において、次の(1)〜(3)の設問に答えなさい。分量は(1)〜(3)合わせて2〜3枚程度。

(1) 農民に対する負担や制約、および農法に焦点を当て、中世の農村が停滞的であった理由を述べなさい。
(2) 14〜15世紀頃になると、荘園制が崩壊します。荘園制崩壊の要因を明らかにし、それにともない、農村にどのような変化が生じたかについて論じなさい。
(3) 16〜18世紀に至ると、半農・半工の農村において、プロト工業化が展開します。プロト工業化展開のプロセスを説明しなさい。 

2.資本主義経済を特徴づける「競争」に関し、次の(1)〜(3)設問に答えなさい。分量は(1)〜(3)合わせて2〜3枚程度。

(1) 競争回避経済の典型として、ツンフト(ギルド)システムが挙げられます。これが具体的にどのような形で、経済発展の阻害要因となったかについて、説明しなさい。
(2) (1)で指摘した競争回避の解消が、資本主義経済発展の原動力になったといえます。現代社会において、企業間の競争が業界の発展、国民生活や地球環境に対してプラスに働いた事例を1つ挙げ、説明を加えなさい。(『日経テレコン』など、新聞記事検索を利用してください。)
(3) 競争が行き過ぎると、格差拡大につながる場合があります。そのメカニズムを説明し、なるべく弊害が起こらないようにするための方策について論じなさい。

3.イギリス産業革命について、次の(1)〜(3)設問に答えなさい。分量は(1)〜(3)合わせて2〜3枚程度。

(1) 蒸気機関発展の経緯をたどり、それが当時の社会・経済に与えた影響について述べなさい。
(2) 産業革命は、当時のイギリス社会に、負の影響も与えています。具体的にどのような問題が起こってきたか、説明しなさい。
(3) 産業革命がもたらしたひずみを是正するため、ロバート・オーウェンやマルクスはどのような主張を展開しましたか。「資本主義経済批判」の観点から、両者の主張について論じなさい。


4.次の(1)〜(4)の設問から、2問選択し、解答しなさい。分量は、1つの設問について1〜2枚、2問で3〜4枚程度。

(1) ネーデルラント独立戦争の展開をたどり、覇権国がスペインからオランダへ移り変わってゆく経過を説明しなさい。
(2) クロムウェル没後の動向から出発し、名誉革命の経過を説明しなさい。さらに、名誉革命とともに成立した近代市民社会の特徴を論じなさい。
(3) 17世紀半ばころから約1世紀の間に、イギリスの輸出入構造は、量的にも質的にも大きく変化しました。商業革命期と呼ばれるこの間に、イギリスの輸出および輸入の動向はどのような変化を遂げたかについて説明しなさい。
(4) ケインズ経済学の基本的考え方に簡潔にふれた上で、この理論に基づいて展開されたニューディール政策の概要をとりまとめなさい。

【備考】

文書はワープロで作成し、文書名は「経済の歴史と思想 課題 カッコ書きで各自の氏名」というスタイルにしてください。分量は各設問で指示したとおりです。なお文章はいくつかの段落に区切り、適当な見出しをつけてください。冒頭、学部、 学年、学生番号、氏名を忘れないように。
4つの大問は1つのファイルにまとめて提出してください。なお新しい設問に移るときは、それがわかるよう、2〜3行行間をあけてください。
解答はテキストと配付資料に基づいて作成してください。ただし2(2)は例外です。
配点は1〜3は各24点、計72点。カッコの1問につき8点。、4は各14点、計28点とします。
提出はLUNAへお願いします。期日は2022年1月9日(日)まで。
Αゝ震篥世魯瓠璽襪婆笋す腓錣擦討ださい。

よりよいレポートを作成するために 

 今年も残り期間2週間となり、みなさん慌ただしくお過ごしのことと思います。緊急事態宣言が完全解除となった10月1日以降、街は次第に賑わいを取り戻しています。しかし大学は依然として慎重姿勢を崩さず、多くの科目でオンライン授業が続いています。キャンパスの人通りも決して多いとはいえず、以前のような活気は感じられません。
 9月下旬からはじまった秋学期はいよいよ終了間近で、近いうちにレポートの課題を発表する予定です。「経済の歴史と思想」を受講している1年生のみなさんにとっては、長文のレポート執筆ははじめての経験になると思います。そこで少しでも充実した内容で、高得点が出るようなレポートを提出してもらうため、私が日ごろから考えていることを述べたいと思います。

1.レポートテストの意義と役割

 コロナ前、経済学部では、原則筆記試験で成績評価が行われていました。試験時間は長くても70分、受講生の多い科目では、記号解答やカッコ埋めなどの、簡単な形式での出題も見受けられました。しかし私は、このようなスタイルでは本当の理解力が確認できないと考え、記述式問題を出題してきました。
 記述式試験において私は必ず事前に問題を予告し、本番では、予告通りの問題を出しました。すると平素の学習の差がはっきり表れ、的確でよく整理された答案と、白紙同然の答案の二極化現象が起こりました。教室で試験を行う場合は「持ち込み不可」で、講義内容をきちんと頭に入れないで臨み、合格点に到達しない学生も散見されました。
 それに比べると、レポート試験は、テキストや資料を参照しながら作成でき、時間を十分にかけることができますから、教室での筆記試験に比べると、ずいぶん負担が軽減され、取り組みやすいと思います。とはいえ、レポート作成には「作法」があり、その作法に応じてきちんとまとめられているかどうかは、一目瞭然でわかります。出題・採点者が好印象をもって採点できるレポートの条件を以下で整理します。

2.出題・採点者が好感を持つレポートとは?

 講義科目の大原則は、講義内容を正しく理解しているということに尽きます。したがって、テキストと配付資料に基づいて、要領よくポイントをまとめることが重要です。私の担当科目では、他の文献の参照は求めません。その上で注意してほしいのは、ネット記事からの切り貼りは絶対禁止ということです。また、テキストと配付資料の丸写しも、自分の頭で考えたことにならず、採点対象外とします。加えて時折、「何回か読んだことがある文章だ」と思い、遡ってみると、全く同じ文面のものに出会うことがあります。他人のレポートの盗用は、筆記試験なら不正行為で全科目0点扱いになります。他人の力を借りず、必ず自力でまとめるようお願いします。
 歴史系科目のレポート作成で最も重要なのは、時間の流れを間違いなく理解し、歴史用語・経済用語に適当な説明を加えながら、出題テーマに即したストーリーを描くことです。その事件の発端、展開、帰結を明らかにし、場合によっては、人物の解説も必要です。
 細かい知識を尋ねるつもりはなく、問題の本質を把握できているかどうかが採点の基準になります。

3.分量および形式についての注意点

 各課題をまとめる際の分量は、指定された基準の8割以上、オーバーするときは、2割程度におさまるよう工夫してください。繰り返しになりますが、テキストや資料の文言をそのまま写すのではなく、自分の言葉で言い換えたり、少し離れた箇所にある内容を統合するなど、再編の努力をしてください。
 文章は、 適当に段落分けし、見出しをつけることが重要です。また改行の際は、1文字あけるのもエチケットです。切れ目なく続く文章は、どこで話題が変わったのか、何が言いたいのかよくわからないため、採点意欲が消失します。読みやすい文章を作成するには、推敲の手間を惜しんではいけません。
 最後に出来上がった文章はプリントアウトし、誤字・脱字がないか、文意が通っているか、ページ番号が打ってあるか等、最終点検をお願いします。ワープロミスが多いと、どうしても雑な印象を受け、高評価ができません。

4.歴史的アプローチの役立て方

 講義科目を担当するたびに感じることですが、半期14コマの授業はあっという間に終わってしまいます。私の力不足もありますが、もっと丁寧に説明したい、もっと多くの事例を取り上げたいと思いながら終了してしまいます。しかし講義を通じて伝えたい重要なメッセージや本質的な考え方は、お伝えしたつもりです。それは、時間の経過に即して、経済現象を観察するという姿勢です。その尺度が、何百年であっても、1〜2年の短期であっても、出来事には必ず転換点が存在し、改善する場合も悪化する場合もありますが、とにかく変化してゆきます。その動きを正確にとらえ、よりよい将来を展望する手がかりを得るというスタンスです。さらに社会は、経済の論理だけで動くわけではなく、政治、外交(国際関係)の側面も合わせて観察必要があります。歴史の動きの背景には、為政者や民衆の心理の変化が反映されていることも、見過ごしてはなりません。理論系の科目は現実経済を単純にモデル化して結論を導くのに対し、歴史的アプローチは、世の中の変動要因をすべて考慮し、複雑な相互関係を勘案しながら解明してゆくところに魅力があるといえます。
 今後私たちの人生において、あるいは職場において、様々な分岐点に遭遇し、その都度意思決定をしなければなりません。その際できることなら、手堅く、事態がうまく進むような決断を下したいものです。過去に何度か「歴史は役に立つのか」という質問を受けましたが、歴史の考え方は、みなさんの将来のナビゲーターとして、「大いに役立つ」というのが私の結論です。講義はひとまず終了しますが、今後はできるだけ多くの経済現象を歴史的に分析し、みなさんのナビ能力に磨きをかけてほしいと願っています。名医は多くの症例を経験しているのと同様に、私たちもできるだけ多くの事例研究を行い、経済分野の「名医」を目指したいところです。

第49回衆院選が行われました

 第49回衆院選は、2021年10月31日投開票が行われ、自民党は単独過半数(233議席)を確保しました。さらに国会運営を有利に運べる「安定多数」(244議席)も達成しましたた。自民、公明両党では293議席を獲得し、国会を安定的に運営できる「絶対安定多数」(261議席)も大きく上回りました。仮に支持率低迷が続いていた菅義偉前首相で選挙を行っていれば、自民党がこれほど大きく勝つことはできなかったかもしれません。4名候補を立てて総裁選を行い、新しい選挙の顔として岸田文雄首相を選んで臨んだことが功を奏したと考えられます。自民党総裁である岸田文雄首相の続投が決まり、政権運営において、確固たる基盤が出来上がりました。
 次に野党に目を転じると、野党共闘の成果は、いまひとつでした。第1党の立憲民主を中心に、共産、国民民主、れいわ新選組、社民の5党は全国289の選挙区のうち、217選挙区で候補者を一本化をはかりました。それでも、枝野幸男代表が率いる立憲民主党は、公示前勢力109から94へと、大きく議席を減らす結果となったのです。他の野党と候補者を一本化した小選挙区に注目すると、公示前は48議席であったのが、57議席まで伸ばしましたが、比例区は不振で37議席の獲得にとどまりました。野党共闘は、反自民票を取り込み、全体として公示前勢力を上回れると期待されていたにもかかわらず、芳しい結果は出なかったのです。
 日本維新の会は公示前の11議席から41議席と、ほぼ4倍に議席を増やし、第3党に躍進しています。とりわけ大阪府の19の小選挙区では、15議席おさえ、自民党に1議席も与えなかったのが印象的です。吉村洋文知事のコロナ対策や、国会議員の定数削減など、「身を切る改革」を訴えてきたことが有権者に評価されたのでしょう。また維新は、反自民であるが、立憲と共産の野党共闘に違和感を持つ有権者の受け皿の役割を果たすことにもなりました。
 今回の選挙では、与党、野党を問わず、大物ベテラン議員が小選挙区で苦戦したのも印象的でした。とりわけ神奈川13区では、自民党の甘利明幹事長が敗北しました。自民の幹事長が、小選挙区で落選するのは初のケースとなり、甘利氏は幹事長を辞任するに至りました。東京8区では、石原伸晃元幹事長が敗れ、比例区での復活当選もできませんでした。
 一方野党(立件民主党)も、これまで17回連続当選してきた小沢一郎氏(岩手3区)や、辻元清美氏(大阪10区)など有力候補が落選し、衝撃が走りました。
 今回の衆院選の党別当選者数は以下のとおりです。
【第49回衆院選 党別当選者数】
合計当選者  公示前    小選挙区     比例区
自民       261     276     189         72
立憲      94     109     57        37
公明       32     29      9        23
共産       10     12      1         9
維新       41     11      16        25
国民       9     8      6         3
れいわ      2     1      0        2
社民       1     1      1          0
N党       0     1      0          0
諸派       0      0      0          0
無所属      10     12     10   

経済学と経済史の学びの素材が豊富な岸田首相の政策

 2021年10月4日より、岸田文雄内閣がスタートしました。岸田首相の政策は、経済学(経済史)を専攻する私たちに、様々な学びのヒントを与えてくれます。
 岸田首相の政策でまず注目すべきは、日本近代史に名を遺した2人功労者(渋沢栄一と 池田勇人)をモデルにしていることです。渋沢栄一は、明治〜昭和戦前期、 池田勇人は敗戦〜高度成長期に活躍していますが、これらの時代背景を知り、そこからどのような思想や政策が生まれたかを理解しておくことは、極めて重要です。
 いまひとつ気をつけたいのは、岸田首相は新自由主義的な政策に否定的なことです。新自由主義はケインズの大きな政府の対極にある概念で、小さな政府、規制緩和、競争、自己責任といったキーワードに特徴づけられます。戦後史を振り返ると、基本的にケインズ政策で運営されてきましたが、その弊害が現れると、新自由主義へ政策転換が行われ、それがまたうまくゆかなくなって、ケインズ政策に戻るという繰り返しなのです。経済はケインズ主義と新自由主義の間で大きく揺れてきましたが、可能ならこの際、適当な着地点をさぐりたいところです。そのためには、両学説を徹底研究し、それぞれの学説を反映した政策の内容と経済に与えた影響を検証する必要があります。
 以上のテーマに取り組むことは、たくさんの経済の課題のなかでも、重要性、緊急性が高いと考えられます。今学期の私の担当授業では、岸田首相の経済政策に関して、基本的な考え方を整理しつつ、現実の経済と学説をつなぐ端緒をさぐりたいと考えています。受講生との活発な意見交換を楽しみにしています。

自民党総裁選討論 物足りない安倍・菅政権の総括

 21日から秋学期の講義がスタートしました。今学期は少人数のゼミと日本経済史は対面授業、大人数の「経済の歴史と思想」はオンラインで行います。コロナ禍でも対面授業ができるのは貴重です。参加してくれる受講生に満足してもらえるいよう、丁寧な解説と双方向の意見交換を重視したいものです。また「経済の歴史と思想」の受講生は、500名近くとなり、目を疑いました。この科目、過去に何度も担当経験がありますが、だいたい300名規模のクラスでした。コロナ禍でこれだけ多人数のクラスとなれば、オンライン開講は致し方ありません。しかし若者の歴史離れが進む中で、これほど多くの受講生が得られ、力が入ります。配付資料を工夫し、質問などには、キメ細やかに対応したいと、決意を新たにしています。
 さて自民党総裁選、いよいよ終盤を迎えました。ニュースや新聞記事になるべく詳しく目を通し、各候補の政策に耳を傾け、実現可能性や財源、過去の言動とのブレがないかなど、私なりに検討しています。どの候補も、首相になって実現したいことは積極的に発言していますが、10年近く続いた安倍・菅政権の総括や反省はほとんど口にしません。批判的なことを言うと、得票にさしさわるのかもしれません。しかし歴史を研究する者としては、ここでいったん立ち止まり、過去の反省の上に未来を切り開いてほしいと思います。このような気持ちで新聞記事をチェックしていたら、『朝日新聞』でぴったりの連載を見つけました。「長期政権を問い直す  銑Α廖2021年9月16日〜21日)です。
 簡単な概略紹介と気づいたことのメモ書きにすぎませんが、安倍・菅政権で達成できなかったことや、負の遺産として残された課題は何か、わかっていただけると思います。
 下記私の要約記事に目を通し、その後『聞蔵』で全文を読んでみてください。意見・感想をメールで届けていただけるとありがたいです。
 なお本文の最後に、※で『聞蔵』など、新聞記事検索の手順を説明しています。新聞をとっていなくても、主要新聞の記事を自由自在に検索できるのが、関学生の強みです。まだ使ったことのない人は、大いに活用してください。

 1.政権運営(2021年9月16日)
 数は力の政権運営
 選挙結果=民意 として、野党や反対派の意見に耳を貸さず。
 憲法第53条で定められている臨時国会召集要求に応じず。
 2014(平成26)年5月 内閣人事局設置。官邸による幹部人事の一元管理は官僚の委縮につながった。首相や官房長官に異論や反対意見が言えず、不都合なことは隠蔽された。国民への説明責任が果たせなかった。

 2.アベノミクス(2021年9月17日)
 安倍・菅政権の8年間で、最初の目標であった2%の物価上昇目標を達成できなかった。
 日経平均株価は31年前のバブル期並みの水準(3万円台)にまで上昇したが、一般国民の生活に「豊かさ」が感じられない。賃金水準は上がらず、正規雇用も増えていない。預金をしも金利はつかず、老後資金は2,000万円必要とされる。
 株高の恩恵を受け、富裕層はますます裕福になり、格差拡大が著しい。

 3.貧困・格差(2021年9月18日)
 コロナ禍が貧困に拍車をかけた。失業や倒産で、最低限の衣食住に支障が出る生活困窮者が続出。自立支援制度が創設されたものの、応急処置にとどまり、根本的解決になっていない。
 生活保護は申請条件が厳しすぎる。特に「家族や親族などの身内から援助を受けられない」ことの証明を躊躇する人が多い。

 4.コロナ対策(2021年9月19日)
 そもそも感染拡大防止と経済活動の両立という方針に無理があった。とりわけ感染がおさまっていない状況下でのGo to 事業、緊急事態宣言下でのオリンピック、パラリンピック開催は、国民の混乱を招いた。自粛生活やテレワークを求める一方で、人流や行動を促進する政策を推進し、矛盾を生じさせた。
 楽観的見通しで国民に緊張感がなくなった。たび重なる緊急事態宣言の延長、地域拡大により、コロナに対する国民の警戒感が低下し、時短や酒類提供禁止を求められる飲食店の不満が高まった。
 感染者数が少ない時期に、コロナ病床の拡大や医療スタッフの研修・確保が進まず、感染爆発に対応できなかった。感染しても受け入れ病院が見つからず、自宅待機中に症状が悪化するケースが増加した。さらにコロナ以外の診療に大きな支障が出た。
 ワクチン接種は国内治験の結論が出るのを待っていた関係で、欧米諸国と比して、数ケ月出遅れた。菅首相は1日100万回接種の目標は実現したが、予約がとれなかったり、供給不足でいったん成立した予約を取り消さねばならない混乱が生じた。

 5.説明責任(2021年9月20日)
 安倍首相の関与が疑われる森友・加計問題、菅首相が何らかの形でかかわっていたとみられていると東北新社社員の長男による総務省幹部官僚接待事件について、説明責任を果たしていない。
 安倍首相、菅首相に近いとされる国会議員の汚職事件が相次ぎ、立件・逮捕されているにも関わらず、真相が究明されていない。
 長期政権に対する奢りから政治不信が高まったが、真実を明らかにしようとする姿勢がみられない。

 6.外交・安保(2021年9月21日)
 米中対立が激化する中で、日本は両国とどのような関係を築くべきか、明確な方向性が見えていない。日米同盟を強化すると、巨大貿易相手国で、製造業の生産拠点となっている中国との関係が悪化する。
 自由で開かれたインド太平洋VS一帯一路
 2016(平成28)年8月、安倍首相によって、「自由で開かれたインド太平洋戦略」が打ち出された。これは中国の台頭を意識し、インド洋と太平洋をつなぎ、アフリカとアジアを結んで、国際社会の安定と繁栄をはかるものである。法の支配、航行の自由、自由貿易等の普及・定着を目指す。
 一方中国は、2013(平成25)年9月、習近平主席が「一帯一路」構想を提唱。アジアとヨーロッパを陸路と海上航路でつなぐ。
 ロシアに対しては、安倍首相のプーチン大統領へのすり寄り外交が目立った。プーチン大統領のクリミア併合や反政府勢力弾圧に対し、日本はG7に足並みを揃え、制裁に加わったものの、2016(平成28)年5月、安倍首相はプーチン大統領にロシアの生活環境大国、産業・経済の革新のための協力プラン=8項目の協力プランを提示した。それでも、北方領土問題は全く前進していない。
 日本は中国に対し、海洋進出や人権侵害を批判するが、ロシアの同様の行為は、全く非難しない。

※(『聞蔵』など新聞記事検索の手順)
 関学図書館のホームページ → QUICK LINK よりデータベース一覧 → 右上 学外から利用する → ログイン → 例えば『聞蔵』→ キーワードを入れて検索 (今の場合は、「長期政権を問い直す」です。)

自民党総裁選、4名の候補者が出そろう

 今年は自民党総裁選と衆院選が行われることが年初からわかっており、わが国の政治・経済・外交が大きく動く年になると、動向に注目していました。
 選挙年は各候補者が政党の主張がメディアを通じて頻繁に報道され、否応なく耳に入ってきます。経済学を専攻する私たちにとって、好機到来といえます。この際、わが国が抱える課題を洗い出し、何をどう変革べきか検討することが重要です。それに最も適した場は、ゼミや親しい友人との議論ではないでしょうか。
 さて本日のブログでは、自民党総裁選に注目します。9月17日に告示され河野太郎、岸田文雄、高市早苗、野田聖子の4氏が届け出ました。4候補とも自民党で要職を経験してきた実力者ばかりです。以下では4候補の簡単なプロフィールや思想・信条、政策を紹介し、少しだけ私のコメントもつけ加えたいと思います。
 まず河野太郎氏は、1963(昭和38)年1月生まれの58歳。祖父一郎氏、父洋平氏はいずれも自民党の重鎮で名門の出身です。衆議院神奈川15区選出で当選8回。麻生派に所属していますが、麻生派が一致して応援しているわけではありません。
 初当選は1996(平成8)年。国会議員になって以降、ずっと首相を目指すと言っていました。そして2009(平成9年)の総裁選挙に出馬しました。その際、世代交代や派閥政治からの脱却を訴えています。なおこの選挙では、谷垣禎一氏と西村康稔氏が出て、谷垣氏が当選しています。
 河野氏は安倍政権、菅政権において重責を担いました。第2次安倍内閣で国家公安委員長兼行政改革担当大臣として初入閣し、その後、外務大臣、防衛大臣を務めました。防衛大臣であった2020(平成2)年6月、新型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」を、山口・秋田両県へ配備するのを断念したのは、強く印象に残っています。
 菅政権では規制改革担当大臣に就任し、今年1月からは、新型コロナウイルスのワクチン接種も担当しています。ワクチン接種は今年9月半ばの段階で、国民の50%強が2回目の接種を終えました。河野氏はその成果を強調しています。また将来的な「脱原発」、「脱炭素社会」、年金制度の抜本改革(消費税を財源とする最低保障部分の創設)なども主張していますが、実現可能性を疑問視する声もあります。
 河野氏の政策は、旧来の方法を根本的に覆すもので、既得権益に守られてきた人々の中には、強い反発もあります。今後どこまで支持を広げられるか、注目したいと思います。
 次に岸田文雄氏をみます。1957(昭和32年)年7月生まれで64歳。父親の秘書を経て、1993(平成5)年の衆議院選挙で初当選しました。衆議院広島1区選出で当選9回。
 以前から安倍首相の後継とされ、昨年の総裁選にも出ましたが、菅氏に敗れました。岸田派(宏池会)のリーダーです。ちなみに宏池会は、広島出身の池田勇人元首相が創設者で、これまで大平正芳、鈴木善幸、宮沢喜一と、4名の首相が出ています。
 2007(平成19)年には、第1次安倍改造内閣で内閣府特命担当大臣(沖縄及び北方対策、科学技術政策、国民生活、規制改革)として初入閣しました。
 2012(平成24)年、第2次安倍内閣で4年半にわたり外務大臣を務めました。タカ派の安倍氏がハト派の岸田氏を起用し、対外的にバランスをとったのでしょう。その後2017(平成29)年、自民党の政務調査会長に就きました。
 岸田氏の中心的公約は、「成長と分配の好循環をつくりだす」です。アベノミクスのもとでは、株高は実現したものの、経済成長率は低いままで、格差が拡大しました。大切な政策ですが、具体的にどのような方法でこの問題を解決しようとしているのか、知りたいところです。
 3人目の高市早苗氏は、1961(昭和36)年3月生まれの60歳。松下政経塾出身で、今回の候補のなかで、ただひとり世襲ではありません。衆議院奈良2区選出で当選8回。1993(平成5)年の衆議院選挙で初当選しましたが、このときは無所属でした。その後、柿沢弘治氏の設立した自由党に入党しました。(柿沢自由党はその後小沢一郎氏の新進党に合流します。)自民党に入ったのは、1996(平成8)年のことです。政治信条は極めて保守的で、安倍前首相と意見が合います。今回の選挙でも、安倍氏が強力に支援しています。はじめ清和政策研究会(現在の細田派)に所属していましたが、自民党が野党時代、次の首相候補として派閥会長だった町村信孝元官房長官ではなく、安倍氏を応援したいと、派閥を離脱し、以後は無派閥です。過去に清和政策研究会を離脱しているため、今回の選挙で細田派は、高市氏の支援で一致していません。
 2006(平成18)年、第1次安倍内閣で、内閣府特命担当大臣(沖縄及び北方対策、科学技術政策、少子化・男女共同参画、食品安全、イノベーション担当)に就任し、初入閣を果たしました。2012(平成24)年、第2次安倍内閣において女性ではじめて政調会長になりました。2014(平成26)年、第2次安倍改造内閣では、女性初の総務大臣に就任しています。
 高市氏は安倍前首相から強い信頼を得ており、経歴からも窺えるとおり、何度も安倍内閣の要職に起用されています。経済政策ではアベノミクスの継承を訴えていますが、私はこれ以上の金融緩和や財政赤字拡大は、日本経済の健全性を一段と悪化させるように思います。憲法改正によって戦争放棄を削除する主張や、日本がアジアを侵略したという政府見解の否定などは、近隣諸国との関係悪化につながることを危惧します。
 最後に野田聖子氏は、1960(昭和35)年9月生まれで61歳。衆議院岐阜1区選出で当選9回。野田氏は安倍一強体のもとで何度か総裁選への出馬を模索しましたが、無派閥ということもあり、20名の推薦人が集まらず、初挑戦になります。今回の選挙は、それだけ派閥のコントロールが効かなくなったことを物語っています。
 1993(平成5)年の衆議院選挙で初当選し1998(平成10)年、小渕恵三内閣では、当選2回、37歳の若さで郵政大臣に抜擢されました。その後、2005(平成17)年、郵政民営化法案に反対票を投じたため、その年の郵政選挙で刺客を送られ、自民党の公認を得られませんでした。(しかし郵政選挙では僅差ながら刺客に勝ちました。)郵政選挙で自民党が圧勝すると、郵政民営化に反対した野田氏に離党勧告が出され、自民党からの離党を余儀なくされました。しかし翌2006(平成18)年、第1次安倍内閣が成立すると、安倍氏の意向で郵政造反組の復党が検討され、同年末、自民党への復党が実現しました。その際、「郵政民営化法案に賛成する」という念書が取られ、「踏み絵」と呼ばれました。よほど自民党に戻りたかったのでしょうが、主張がブレるのは、政治家として望ましくありません。
 復党後、2008(平成20)年)福田康夫改造内閣で、内閣府特命担当大臣(科学技術政策、食品安全、消費者行政担当大臣、宇宙開発担当大臣)に就任しました。
 第2次安倍政権発足後は、2012(平成24)年)には総務会長、2017(平成29)年には総務大臣を務めました。昨年菅内閣のもとでは、二階幹事長を支える党の幹事長代行に起用されました。
 野田氏の政策は、女性や子供など、社会的に弱い立場に置かれている人に救いの手を差しのべることに力点を置いており、共感できます。しかし財政・金融政策、外交政策についてはあまり言及がなく、どのような展望を持っているか知りたいところです。
 総裁選挙の結果は29日に判明します。投票日当日まで、各陣営が水面下で熾烈な駆け引きを繰り広げ、決選投票になりそううです。自民党員以外に投票権はありませんが、経済・外交政策のセンスを磨くにはよい機会です。身近な人との議論を通じ、各候補者が提案するひとつひとつの政策をよく検討し、評価できる能力を身につけたいものです。

菅義偉首相、退陣表明

 9月3日、菅義偉首相が自民党の総裁選に立候補しない意向を表明しました。退陣の決め手となったのは、8月22日に行われた横浜市長選強において、首相が支援した元国家公安委員長の小此木八郎氏が、立憲民主党が推薦した元横浜市立大学教授・山中竹春氏に大差で落選したことだと思います。衆議院議員選挙が近づいていることもあり、自民党内では「選挙は菅首相で戦えない」というムードが一気に広がったと考えられます。もっとも横浜市長選前から菅内閣への支持率は低下の一途をたどっていました。その理由を私なりに解釈すると、「国民の疑問に正面から答えない」、「決定の基準や過程がわからない」ということに尽きます。
 菅内閣の1年を振り返ると、昨年9月の就任の際、ワイドショーでは、官房長官として長年安倍政権を支えてきた実績を評価し、世襲議員ではなく「たたき上げの苦労人」として努力し、首相の座についたことを好意的に報道していました。また政策面では、アベノミクスの継承を唱え、デジタル化の推進、携帯電話料金の引き下げなどに力を入れると宣言し、国民の期待はかなり高かったように思います。ところがその後、国民の不信を買うような出来事が相次ぎました。
 就任直後の10月、日本学術会議が新会員候補として推薦した候補者105人のうち、6人を除外して任命するという前代未聞の決定がなされました。学問的に問題があるのなら、当然その理由を説明すべきですが、記者会見や野党の質問に対しては、「総合的、俯瞰的な活動を確保する観点から判断した」の一点張りで、詳細を明らかにしませんでした。あまりにも不誠実な対応でした。
 さらに致命的な失策は、コロナの感染拡大を制御不能状態にしてしまったことです。ワクチンや治療法の見通しが立たず、感染がおさまっていない2020年7月末から、「感染防止と経済再生は両立できる」という楽観的見通しのもと、go to キャンペーンを推進したことです。この政策が発表されたとき、私はあまりにも無謀だと思いました。この時点で有効な感染拡大防止策は、不要不急の外出をひかえ、なるべく人流を抑えるという方法しかなかっはずです。にもかかわらず、なぜ多額の税金を使ってまで、逆行する政策をとるのかと、愕然となりました。自腹では行けない高級ホテルの宿泊費を税金で負担する必要があるのでしょうか。そのような余裕があるのなら、まず医療体制の充実に投入すべきではないでしょうか。
 go to キャンペーンは夏休みから秋の行楽シーズンにかけての時期と重なり、当然ながら全国で人の動きが活発になり、感染者数は増えてゆきました。しかし菅氏は、「go to キャンペーンと感染拡大に因果関係はない」との主張を譲らず、年末まで継続しました。取り返しのつかない判断ミスです。
 全国の大学では2020年度を通じてオンライン授業が主流となり、クラブ活動も停止に追い込まれました。小中高では、運動会や修学旅行も中止となりました。こうした取り組みは、いうまでもなく、感染拡大の抑制を目指してのことです。多くの国民が自粛生活を余儀なくされる反面、税金の補助を受けて、格安料金で旅行や飲食を楽しみ、このような行為が感染拡大を引き起こすことにもなっているのですから、国民の不満が高まるのは当然です。
 2021年が始まって以降、状況は一段と悪くなりました。新規感染者は増加し続け、私たちの兵庫県でもほとんどの期間、緊急事態宣言かまん延防止等重点措置が発令されたままです。飲食店は午後8時に閉店となるので、外食の機会はなくなり、博物館や美術館が休館で利用できないのも困ったことです。飲食店には時短や休業を求めるため、助成金が必要です。助成金の出所も税金です。昨年のうちに有効な対策を講じていたら、感染者数はもっと低水準で推移しており、税金を使って感染を拡大し、その後始末にもう一度税金を使うというような愚策は避けられたはずです。
 7〜8月には多くの世論の反対を押し切って、オリンピック・パラリンピックを開催しました。緊急事態宣言下で大規模イベントを開催すれば、感染者が急激に増加し、医療崩壊が起きるのは明白でした。もしどうしても開催する必要があるのなら、全国の1日の感染者数が何人以下とか、ワクチン接種率が何%以上といった基準を事前に決めておくべきでした。また8月8日のブログでも述べましたが、このオリンピックの意義が最後まで明らかになりませんでした。東日本大震災からの復興でもなく、コロナとの戦いに打ち勝った証にもなっていません。結局首相の口からは、安全に開催するための条件も、大会の意義すらも語られることはありませんでした。
 8月半ば、全国の新規感染者数は2万人を超え、コロナ病床がパンクし、病院にかかれず、自宅で亡くなる人も出てきました。連鎖的にコロナ以外の通常医療にも悪影響が出て、医療崩壊が起こりました。
 あらためて菅政権の1年を顧みると、次のような印象を持ちます。自身にとって不都合なことは国民に説明せず、コロナに関してはあまりにも楽観的な見通しを立て、うまくゆく可能性に懸けて突っ走りすぎたということです。もし途中で反対意見に耳を傾け軌道修正したり、別のプランを出していたら、ある程度国民の支持は維持できたと思われます。最初の判断や対策が的確ではなかったため、緊急事態宣言が長期化し、地域を五月雨式に増やしていったことも、国民の不満を高めることになったと思います。
 これから約1ヶ月、ポスト菅を巡り、激しい総裁選レースが展開されます。いったい誰が次期総裁に選ばれることになるのでしょうか。安倍・菅政権の継続か、あるいはがらっと雰囲気が変わるのか、注目したいところです。私たちは1票を投じることはできませんが、テレビ討論会などを通じ、各候補者の国家観や経済政策を慎重に吟味したいものです。各候補者から発せられる言葉は票集めのため、長老や派閥の領袖など有力者に忖度したものではいけません。困っている国民や企業の声を吸い上げ、迅速に行動に移せる候補者は誰か、見極めたいと思います。また秋学期の担当授業の中でも、受講生と活発な意見交換を行いたいと考えています。

全国のコロナ新規感染者 2万人超え

 お盆休みの最中ですが、今年は豪雨とコロナが重なり、二重の意味で厳重な警戒が求められています。豪雨は地域によって、がけ崩れ、地すべり、土石流といった深刻な土砂災害を引き起こしています。平成に入ってから気候が変調をきたし、想定外の暑さ、寒さ、豪雨を経験しています。一方で乱開発による自然破壊が進み、家を飲み込み、多数の死者を出すほどの土砂災害が頻発するようになりました。安倍政権による開催決定以降、東京オリンピック・パラリンピックに投入した費用は総額で3兆円を超えると言われています。経済効果を生むこともなかったこの莫大なお金を、自然災害対策や乱開発防止に使っていた方が、はるかに有効でした。
 次にコロナの感染状況を確認しておきます。14日の新規感染者数は、2万147人となり、2日連続で2万人を超えてしまいました。都道府県別でみると、東京都5,094人、神奈川県2,356人、大阪府1,828人、私たちの兵庫県でも628人(うち西宮市73人)という状況です。12日に開催された東京都の新型コロナウイルスモニタリング会議において専門家は都内の感染状況を、「制御不能状態」、「災害レベル」、「非常事態」と評価し、医療提供体制に関しては「深刻な機能不全」とコメントしました。
 ここで問題にしたいのは、オリンピック期間中になぜ感染者が急増し、専門家が「手のほどこしようがない」と表現せざるをえないほど切迫した状況に陥ってしまったかです。それはひとことで言うと、政府の危機意識のなさと矛盾したメッセージの発信によると思います。
 オリンピック開始前、ワクチン接種がある程度進み、リスクの高い高齢者が重症化する事例は少なくなっており、政府は感染拡大は起こらないだろうと楽観視していました。しかし蓋をあけてみると、70代以上の高齢者で重症化するケースは減少しているものの、20〜50代で中等症となり、入院して酸素吸入が必要な患者が大幅に増加してしまいました。さらに厄介なのは、、20〜50代の患者はワクチン接種を受けておらず、最初自宅療養で軽症だったのが、突如急変し、慌てて救急車を呼んでも、病院に受け入れてもらえないという「医療崩壊」が多発していることです。菅首相の「国民の命と健康を守る」というセリフは聞き飽きましたが、もっと早い時期にコロナ病床や治療できる人材、薬品、機器などを増強したうえで発するべきでした。さらに自宅療養中に症状が悪化する事例への対応も不十分です。素人の発想ながら、何もせず経過観察にとどめるのではなく、感染の初期段階で、重症化を抑制し、発熱やせきなどの症状改善をはかる飲み薬の使用を、標準治療とすることはできなかったのでしょうか。
 政府はオリンピック開催とコロナの感染拡大は無関係だと断言します。しかし多くの国民は、納得していません。何よりも国民に長期にわたる自粛を求め、大学でもずっとオンライン授業が続いています。飲食店の営業は大きく制限され、めっきり外出の機会が少なくなりました。我々がこうした制約の多い生活に耐えているのは、コロナの感染を拡大させたくないと思うからこそです。しかしその一方で、国民の不安を無視し、世界中から多数の選手が集まるオリンピックを強行したのです。政府の行動は、国民に外出をひかえ人流を削減せよというメッセージと矛盾しています。だから国民が反発し、外出自粛に協力しなくなってしまったのです。政府がバッハ会長の銀座散策を容認したことも「不要不急ではなかったのか」と、疑問視されています。ネット上で、「今後、不要不急の外出かどうかは自分で判断する」というコメントが出回りましたが、これは国民のホンネの反映だといえます。一貫性のない政府の言動に嫌気がさし、自身の外出を正当化する国民が増えても無理はありません。
 8日夜から9日未明にかけて、テレビ朝日のオリンピック担当スタッフが多人数で「打ち上げ」と称して会食・飲酒を行い、酔った社員が店の外階段から転落して骨折したという事件がありました。仮にオリンピックが中止されていたら、このような事件は起こっていません。オリンピックをお祭りととらえ、気分が高揚して理性を失ってしまった国民は少なくないはずです。コロナの恐ろしさを忘れ、気の緩みから行動が奔放になり、感染爆発を招いたのだと推察されます。
 新規感染者2万人超えの現状は、東京都のモニタリング会議が指摘するとおり、「制御不能状態」です。緊急事態宣言は何度発令しても効果がみられません。そこでより強い措置として、ロックダウン(都市封鎖)もやむなしという意見が出てきています。詳細はわかりませんが、すべての営業をストップするとか、交通機関を停止するなどの手段を使うのでしょう。また病院には強制的に、他科の診療の縮小を求め、より多くのエネルギーをコロナ対応に投入するようにという指令がくだるかもしれません。ようするに、自由な経済活動ができなくなり、国民生活はこの上なく不便になります。
 そこで私の頭に浮かんだのは、1938(昭和13)年4月に発令された国家総動員法でした。挙国一致で「コロナとの戦い」に臨むわけです。「ぜいたくは敵だ」の代わりに、「外出・外食は敵だ」、「欲しがりません(コロナとの戦いに)勝つまでは」がスローガンとされ、政府はコロナ対策という名目で、国民や企業に、物資、建物、労働力などの提供を強要できる法律が制定されるようなことになれば、一大事です。統制経済の出現です。
 歴史を顧みると、戦争が拡大すると「非常時」という言葉に違和感を覚えなくなり、政府の権限が強大化し、個人や企業の自由な活動が厳しく制限されてゆきます。だからコロナとの戦いが早く終息させるよう努め、「非常時」という言葉を使わせないことが極めて重要になります。
 コロナの感染拡大は政治の劣化とともに進んでいるように思います。私たち国民は、強権的で説明責任を果たさない政府が「非常時」を口実に暴走しないよう賢明な世論を形成しなければならないと痛感しています。

コロナ感染が急拡大するなかで、夏休みを迎えました

 連日厳しい暑さが続いていますが、ブログをご覧のみなさんは、お元気でお過ごしでしょうか。私はつい先日今学期の成績評価を終え、夏休みを迎えることができました。筆記試験ではなくレポートで成績を出すのは、昨年の春学期・秋学期に続き3回目です。レポート試験は筆記試験に比べると、記述する分量は多いものの、講義内容を頭に入れ、制限時間内で答案をまとめるというプレッシャーはなく、資料を見ながら手堅くまとめてゆける点で、取り組みやすいのではないかと思います。ただしレポートを書く際には、最低限守るべき「作法」があります。各科目の課題の注記でかなり強調したつもりですが、十分な理解が得られていない答案も散見されました。
 まず何よりも改行がなく、小問のマルカッコの記載もされていないので、例えば(3)の回答がどこから始まっているか、一見してわかりません。答案を読み進めてゆくうちに、何となくこのあたりから話題が変わっているという判断をしなければならないのは困ります。
 次に感じたことは、話題が切り替わるときには、今から何を述べるかという宣言が必要です。出題・採点者が数行の文章を読んで、結局この段落ではこういうことが言いたかったのかと、意図をくみ取りながら読むのもエネルギーがいります。冒頭で主張したい内容の要点を示し、続く文章で具体例を挙げたりしながら詳しく説明してゆくスタイルが好ましいです。柱となる議論に見出しをつけることも大切です。
 いまひとつ注意を喚起しておきたいのは、資料からの丸ごと引用です。例えば、何々の理由として3つ挙げられるとして、資料の一部をそのままコピーするパターンがあります。もちろん内容的には誤りではありませんが、これでは本人が考え、工夫した形跡が見えません。少しは言い回しを変えるとか、資料の別の場所に書いてあることを再編するといった配慮が求められます。
 IT社会のマイナスの側面といえるかもしれませんが、ネット上に情報が溢れ、文章は一から自分の頭で考えなくても、コピー&ペーストで何とかできる時代になりました。卒業論文なども紙の本は読まず、参照するのはすべてネット情報というケースも見受けられます。そしてオンライ授業を余儀なくされ、少人数クラスで、自分の発言や文章に対し、他人からコメントしてもらう機会が激減したことは、本当に残念です。秋学期、どのような授業形態になるのかわかりませんが、コロナが早くおさまり、対面型の授業ができないと、「大学の学び」の本来の機能が果たせなくなります。
 さて本日で東京オリンピックの全日程が終わりました。日本人選手の活躍が目立ち、メダルは金27、銀14、銅17、計58も獲得し、過去最高を記録したのは喜ばしいことです。しかしその一方で、あまりにも負の側面が目立った大会でもありました。まず第一に、開催の理念、メッセージ性が全く伝わってきませんでした。1964(昭和39)年大会では、日本の目覚ましい戦後復興と高度成長の姿を世界に向けて発信するという誰の目にも明らかな大義名分がありました。特に印象深いのは、1963(昭和38)年、国際収支上の理由で輸入制限のできないGATT11条国に移行し、翌年(オリンピック開催の年)には、国際収支を理由に為替管理を行えないIMF8条国に移行しました。さらに1964(昭和39)年といえば、OECDへの加盟も果たしています。すなわち日本は「先進国クラブ」に仲間入りし、資本取引の自由化を義務付けられるようになって、発展途上国への援助の責任まで負うようになったのです。前回の東京大会は、こうした輝かしい経済実績の基礎のもとで開催されたのです。
 しかし今回の大会は、安倍前首相が誘致したときから、「なぜこのタイミングで?」という疑問が残りました。単に大規模なお祭りを行い、世の中を明るくしようという程度のものでした。その後あまりにも理念がなさすぎるので、「東日本大震災からの復興五輪」ということになりました。しかしもしこのスローガンを掲げるのなら、「原発を今後どうするか」という問題に解決の見通しを立ててからです。
 コロナの感染が広がり、安倍前首相が開催の1年延期を表明した後は、「コロナとの戦いに打ち勝った証としての五輪」ということになりました。ところが確実な治療法、感染拡大を抑制する方策の裏付けもない状況で、この楽観的スローガンには、あまりにも無理がありました。このスローガンが説得力を持つとすれば、私たちにマスクなしの「普通の生活」が戻ったことを確認できてからです。
 安倍政権を継承した菅政権は、当初安倍政権のスローガンを唱えていましたが、「コロナとの戦い」で敗色濃厚になってくると、「国民の命と健康を守る」、「安全・安心の大会」と、心に響かないフレーズを連呼するようになりました。しかしオリンピック開催期間中に、感染爆発が起こり、ここ数日で見ると、1日当たりの新規感染者数は東京都で4,000人超(8月5日には5,000人超)、全国ではおよそ1万5,000人という危機的な状況です。夏休みやお盆とも重なり、感染者まだまだ増える可能性があります。そうすると、症状が悪化しても病院がパンクして、治療を受けられないという深刻な事態を招きかねません。
 多くの国民が今回のオリンピック開催に躊躇したのは、最後まで明確な理念が示されなかったことと、国民の命と健康を守り、安全・安心の大会にするために有効な手段のないまま強引に開催したからだと考えています。
 頼みの綱であるワクチン接種が滞っているのも心配です。威勢がよかったのは最初だけで、今では供給不足のため、いったん受け付けた予約もキャンセルとなり、今後の見通しが立っていません。そもそもワクチンの確保ができていないのに、安易に国民の命と健康が守れる、安全・安心が確保できているという誤ったメッセージを発信すべきではありません。国民は混乱するだけです。
 これまでとは違い、今回の夏休みはより慎重に過ごすことが重要です。コロナはもちろん、それ以外の病気にかかっても、病院で満足な治療すら受けられないという事態も覚悟しておかなければなりません。政府が機能不全に陥ってしまった現状では、私たちは気の緩みから病気にかからないよう、細心の注意を払って生活するほかありません。

2021年度 学際トピックス・医療をめぐる諸問題 レポート課題

 学際トピックス・医療をめぐる諸問題の課題を公開します。今年度の受講生は200名を超え、過去最高を記録しましたが、コロナの感染拡大で、これだけ医療への関心が高まっている年に、この授業を受講してもらえたのは、大変有意義だったと思います。
 コロナ問題はもちろんですが、この授業で扱ったテーマは多岐にわたります。医療の重要なトピックスを、各分野の専門家が詳しく体系的に分析した点が本講座のセールスポイントです。
 医療は「健康で長生きしたい」という人類の究極の願いを叶えてくれるものです。そして日本の医療は世界一恵まれているといっても過言ではありません。しかし、少子・高齢化が進むなかでその持続可能性が危ぶまれています。わが国の高レベルの医療を今後も持続させるための方策は、令和時代の主役である受講生のみなさんひとりひとりの課題として探究してほしいものです。授業は本格研究の入り口に過ぎず、今後の実践的な取組が重要になります。

【2021年度 学際トピックス・医療をめぐる諸問題 レポート課題】

※ 下記の1〜3の大問について、指定された分量(A4用紙1枚の設定を1,000字程度としたときのページ数)で解答を作成してください。

1. 新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めがかからず、オリンピックを目前に、東京で4度目の緊急事態宣言が出されます。こうした状況を意識して、この講義でも、多くの先生方がコロナ問題を取り上げてくださいました。講義内容を復習しながら、次の設問に答えなさい。分量は(1)〜(6)合わせて2〜3枚程度。

(1) 新型コロナの臨床上の特徴について説明しなさい。
(2) 新型コロナの検査は、主としてPCR法が用いられています。しかしわが国における実施体制は、諸外国に比べ、十分とはいえません。その理由を説明しなさい。
(3) 現在日本で行われている治療法・予防法の概要を述べなさい。
(4) 感染拡大が医療体制、および国民生活・経済にどのような悪影響を与えているか述べなさい。
(5) 感染拡大を食い止めるため、私たち国民および企業に、どのような行動変容が求められていますか。具体例を挙げて論じなさい。
(6) これまで政府は、感染急増、感染爆発の兆候がみられると、まん延防止等重点措置や緊急事態宣言を発出してきました。まん延防止等重点措置を軸に、緊急事態宣言と内容を比較し、両者の違いを明らかにしなさい。加えてこれらの効果について評価しなさい。(6月10日の水島先生の資料および「緊急事態宣言とまん延防止等重点措置 どう違う?」『東京新聞』2021年7月8日 → 下記のリンクを参考にしてください。)
『東京新聞』参照記事

2. 次の(1)〜(3)より、2問選択して解答しなさい。分量は(1)〜(3)いずれも2枚程度。 

(1) この講義では、多くの先生方が、わが国が超高齢・人口減少社会に直面していることを指摘されました。この点をふまえ、次の設問に答えなさい。
 …狭睥陝人口減少社会が経済に与える影響について論じなさい。
◆々睥隹修凌陛犬、これまでの疾病構造にどのような変化をもたらしたか述べなさい。加えて医療の供給体制に、どういった問題が生じているかに関しても言及しなさい。
(2) わが国の公的医療保険制度は、年齢の違い、仕事の形態の違いによって分類されています。このことを念頭に置いて、その仕組み、特徴について説明し、持続可能性の観点から、どのような問題を抱えているか論じなさい。
(3) 医療事故に関する次の設問に答えなさい。
 ,茲知られた医療事故の事例として、都立広尾病院・注射器取り違え事件や、福島県立大野病院産科医逮捕事件があります。これらのうちどちらか一方を選び、その経緯を説明し、裁判所の判断を示しなさい。
◆^緡鼎砲いて、最も重視されるべきは、安全性の確保です。医療の安全確保をはかるため、どのような仕組みがつくられていますか。その概要を述べなさい。

3. 次の(1)〜(4)の設問のうち、1問選択して解答しなさい。分量は1〜2枚程度。

(1) 5月27日の後藤先生の授業では、神戸における医療産業クラスターの説明がありました。クラスターとは本来「果実の房」という意味ですが、この房はどのような医療関係企業から成り立っているか論じ、房であることでいかなるメリットを生み出しているか説明しなさい。
(2) 信頼される医師像とはどのようなものでしょうか。理想の医師の姿は、あなたが医療サービスを提供する医師の立場であっても、サービスを受ける患者の立場であっても、一致しなければなりません。6月24日の鈴木先生の講義における医学教育論、および5月6日の山中先生の講義における明和病院の取組を参考にして論じなさい。
(3) 2005年4月25日に起きたJR福知山線の脱線事故では、災害・救急医療の対応が求められました。この事故において、兵庫医科大学病院のスタッフはどのような対応に迫られたでしょうか。小谷先生の資料に基づいて論じなさい。さらにもしあなたたが同様の事故現場に居合わせたとしたら、どのように行動しますか。
(4) 自治体経営の病院(公立病院)の役割を明らかにし、その運営面で現在どのような問題が起きているか指摘しなさい。さらにその問題を解決するには、いかなる改革が要請されているか説明しなさい。


【備考】

 (現颪魯錙璽廛蹐悩鄒し、文書名は「医療問題 課題 カッコ書きで各自の氏名」というスタイルにしてください。分量は各設問で指示したとおりです。 なお文章はいくつかの段落に区切り、適当な見出しをつけてください。冒頭、学部、 学年、学生番号、氏名を忘れないように。
◆。海弔硫歛蠅錬韻弔離侫.ぅ襪砲泙箸瓩督鷭个靴討ださい。なお新しい設問に移るときは、それがわかるよう、2〜3行行間をあけてください。
 解答は各先生方の配付資料に基づいて作成してください。
ァ’枦世錬院■欧40点、3は20点とします。
Α…鷭个LUNAへお願いします。期日は2021年7月18日(日)まで。
Аゝ震篥世魯瓠璽襪婆笋す腓錣擦討ださい。

2021年度 現代日本経済史 レポート課題

 現代日本経済史のレポート課題を発表しました。この授業のコンセプトは、受講生の祖父母、ご両親、そして受講生自身の3世代が歩んできた道を追体験しようというものです。課題のテーマはほんの一部分ですが、戦後経済史の重要なトピックスについての理解を確認することが主旨です。
 さて2は東京オリンピックについての設問です。前回の東京オリンピックは、高度経済成長の真っ只中で開催されました。すべてを失った敗戦からわずか20年ほどで見事に復興を遂げた日本の姿を、世界にアピールすることに成功しました。それに対して今回はどうでしょうか。当初のスローガンであった「東日本大震災からの復興五輪」、「コロナに打ち勝った証としての五輪」の両方が実現できていません。コロナの感染拡大が止まらず、無観客開催を余儀なくされ、経済効果も見込めません。私たちは東京大会の大義をどこに求めればよいのかがわかりません。
 最近経済学の数学化が進み、日本社会の過去からの歩みや、目前で起こっている問題に対する関心の薄い学生も見受けられます。この科目の受講が、経済・社会の複雑な現象を、数式化・抽象化できない側面から解明することに役立てていただけると嬉しいです。

【2021年度 現代日本経済史 レポート課題】

1.戦後日本の外交・政治に関する次の設問に答えなさい。28点
(1) 戦後日本外交を考えるとき、日米関係を看過することはできません。両国の関係の基礎は、1950年代前半に築かれました。当時のアメリカの対日政策について、国際情勢も勘案して論じなさい。10点
(2) 1955年体制とはどのような体制を指しますか。簡潔に説明しなさい。また この体制ができるまでの経緯についても述べなさい。10点
(3) 昨今の政治体制は「自民党一強体制」といっても過言ではありません。しかしこの体制には、様々な弊害が目に付くようになってきました。あなたの感じる弊害を指摘し、今どのような政治改革が求められているか、提案してください。8点

2.戦後日本経済に関する次の設問に答えなさい。12×2=24点
(1) 1964(昭和39)年10月、東京オリンピックが開催されました。その準備段階における日本経済の動向について説明しなさい。
(2) オリンピック終了後、いざなぎ景気が始まるまでの間、景気は一時的に落ち込みます。当時の景気動向を概観しなさい。その際、国際収支の悪化が景気悪化につながるメカニズムに関しても言及しなさい。(ヒント:配付資料の神武景気の箇所を参照してください。)

3.戦前の経済と戦後経済を比較すると、非連続の側面と連続の側面があります。このことを念頭に置いて、次の設問に答えなさい。12×2=24点
(1) 非連続という点では、戦前における日本社会・経済の弊害を取り除くため、GHQは徹底した占領・改革政策を行います。いくつかの事例を挙げ、目的と内容について論じなさい。
(2) 一方連続性という点では、戦後における高度成長の原動力となった日本型経済システムのルーツは、戦時統制経済(国家総動員体制)に求められるという見解があります。企業システムおよび金融に焦点を当て、この主張の内容を解説説しなさい。

4.バブル経済の崩壊に関し、次の設問に答えなさい。12×2=24点
(1) 私が経済学部に勤めたのは、1996(平成8)年でした。その頃(1990年代後半)の日本経済は、バブル崩壊の影響を受け、危機的な状況にありました。当時の日本経済を概観し、具体的にどのような難題を抱えていたか論じなさい。
(2) 金融破綻を回避するため、大手銀行に公的資金注入が決定されました。民間企業を税金で救済することには、否定的な意見も出ましたが、もしこの措置をとっていなければ、日本経済は一段と悪化していたと考えられます。公的資金注入はなぜ必要であったのか、BIS規制と関連づけて説明しなさい。15点


【備考】

 (現颪魯錙璽廛蹐悩鄒し、文書名は「現代日本経済史 課題 カッコ書きで各自
の氏名」というスタイルにしてください。分量は1〜4の4つの大問の計9問の小問それぞれA4用紙1〜2枚程度、全体で8〜10枚程度を目安とします。(1ペー
ジあたりの字数は約1,000字。各自の慣れた書式設定でかまいません。なお文章はいくつかの項目に区切り、適当な見出しをつけてください。
 冒頭、学部、学年、学生番号、氏名を忘れないように。
◆〆鄒にあたっては、補足資料をまとめるだけでかまいません。ただし1(3)の
み、適当な資料を調べ、自身の見解を述べてください。
 や資料の参照は求めません。
 提出はLUNAへお願いします。期日は2021年7月18日(日)まで。
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2021年度 日本経済史機.譽檗璽伐歛

 日本経済史気離譽檗璽伐歛蠅鮓開します。この科目では、明治・大正・昭和戦前の日本の歩みを取り上げました。経済学部の授業で戦前の日本を扱っているのは、おそらくこの授業だけではないかと思います。
 戦前の日本の歩みを振り返ると、重要な教訓が導かれます。何よりも、強固な民主主義の基盤を築き、為政者は国民の声をよく聞いて国の進路を誤らないことが大切です。戦前の為政者は、軍事力強化をはかり、日本が覇権国の地位を獲得できるという幻想を抱き、無謀な帝国主義の争いに参入したのです。太平洋戦争が始まってからは、不利な戦況を隠して戦争を続け、傷口を一段と広げました。最終的にこの戦争は取り返しのつかない犠牲を生み出し、貴重な人命とこれまで築き上げてきた財産を失う結果になりました。
 さて最近はどうかというと、戦前と何も変わっていないという見方もできます。国民のワクチン接種が不十分でコロナの感染拡大が止まらない状況下でのオリンピック開催は、太平洋戦争の敗戦と同じ失敗を繰り返すという見解を耳にします。このタイミングでのオリンピック開催はどう考えても避けるべきで、多くの国民は望んでいません。政府は何よりも、感染に苦しむ人、亡くなる人をゼロにすることに全力を注ぐべきです。まずは社会全体の安全・安心が確保されなければならず、それに逆行するリーダーの暴走は、何としても阻止する必要があります。

【2021年度 日本経済史機.譽檗璽伐歛蝓

【課題1】
 この講義の主な目標は、戦前の日本がなぜ勝ち目のない戦争に突進したのかについて、反省も込めて、検証することです。以上の問題意識に基づき、次の設問に答えなさい。(80点)
(1) 戦前の指導者たちは、どのような国づくりを目指しましたか。大日本帝国憲法の内容、およびその解釈をめぐる論争、教育との関連で論じなさい。(20点)
(2) 戦前の指導者たちは、帝国主義思想のもとで、第一次世界大戦の頃から、中国への影響力を一段と強めてゆきます。1920年代から30年代にかけてのわが国の対中国政策について、主要な出来事とその概要を、時間の経過に即して論じなさい。(30点)
(3) 1920年代から30年代にかけて、日本が中国への進出を強化していったのは、1920年代の国内経済が極めて停滞的であり、その打開をはかろうとしたからです。そこで第一次世界大戦後のバブル崩壊から昭和恐慌に至るまでの日本経済は、どのような要因で停滞していたかに関して説明しなさい。(30点)

【課題2】
 次の2つの設問のうち、どちらか一方を選択して詳しく説明しなさい。(20点)
(1) 1897(明治30)年、わが国は金本位制を導入しますが、導入のメリット、 デメリットをめぐり、激しい論争が行われました。具体的に何が問題になって いたのか、わかりやすく述べなさい。また金本位制の導入は、当時の日本経済にどのような影響を与えたかに関しても述べなさい。
(2) 犬養毅内閣の蔵相高橋是清による経済政策の結果、日本経済は昭和恐慌の打撃から立ち直ってゆきます。高橋是清の打ち出した政策の内容を論じ、日本経済がどのようなメカニズムで回復したかに関して述べなさい。


【備考】

 (現颪魯錙璽廛蹐悩鄒し、文書名は「日本経済史機_歛蝓.ッコ書きで各自の氏名」というスタイルにしてください。分量は課題1(1)〜(3)、課題2、そ れぞれA4用紙2枚程度、全体で8〜10枚程度を目安とします。(1ページあたりの字数は約1,000字。各自の慣れた書式設定でかまいません。なお文章はいくつかの項目に区切り、適当な見出しをつけてください。 冒頭、学部、学年、学生番号、氏名を忘れないように。
◆〆鄒にあたっては、冊子と補足資料をまとめるだけでかまいません。他の文献や資料の参照は求めません。
 提出はLUNAへお願いします。期日は2021年7月18日(日)まで。
ぁゝ震篥世魯瓠璽襪婆笋す腓錣擦討ださい。

オリンピック開催 求められる一貫性と具体性ある説明

 オリンピックの開会式が予定されている7月23日まで、あと1ヶ月あまりとなりました。政府は只管安全・安心の大会ができると超楽観的な見通しを示していますが、その実現に向けた具体的方策が全くみえません。ここまで目前に迫っていて、観客を入れるのか無観客で行うのかすら決まっていないのですから、異常事態です。今日に至るまで政府がとってきたコロナ対策は、密を避け、人流を減らすことでした。強い強制力はないものの、飲食店や大型商業施設の時短・休業要請、テレワークやオンライン授業などで、国民は大変不自由な生活を余儀なくされてきました。感染拡大を少しでも早く終息させるため、私たち国民は、緊急事態宣言の発令とは関係なく、ワクチンが希望する全国民に行き渡る予定の年末まで、こうした制約の多い生活を続けることになるでしょう。
 人間誰もが目前にリスクがあれば、それを避けて通ろうとして当然です。コロナ感染の観点からは、密が多発し、人流が増えることであり、オリンピック開催は明らかにその傾向を強めます。例えば選手が選手村で食事をとるとき、孤食、黙食を徹底し、飲酒をひかえるよう、どのような方法でチェックできるのか明確ではありません。また報道関係者など、競技に出ない人たちが、ホテルに滞在せず、観光に出かけたり、夜遅くまで繁華街で飲酒するといった行動も完全に阻止できないと思います。ルールを守らない選手や関係者を見つけ出し、その行為をやめさせるには、相当厳重な監視体制を構築しなければなりません。現実にできるわけはなく、安全・安心の担保からはほど遠い状況です。
 もうひとつ気になるのは、人流のコントロールができていない点です。全国の新規感染者数は多いときには1日あたり7,000人を超えていましたが、最近では2.000人台、1,000人台まで減ってきています。とはいえ市街地の人出は増加傾向で、リバウンドも懸念されます。このような不完全な状況で仮に観客を入れてオリンピックを行うとどうなるでしょうか。大勢の観客が移動するので人流が増え、密も生じるはずです。応援している選手がよい記録を出せば、「特別な日」ということで、お酒を飲んで大騒ぎする人もいるに違いありません。
 尾身会長ら専門家が警告しているように、常識的に考え、パンデミック下でオリンピックを開催するのは無謀です。諸外国で見られたロックダウンのような強硬手段を発動することなく、日本流の穏やかな方法で抑えようとしてきました。とはいえ、相当制約の多い生活に耐えてきました。政府の示した方針に従い、多くの国民はワクチンが行き渡る年末まで、以前と同じ生活は無理だと覚悟していたはずです。切り札のワクチン接種は順調に進んでいますが、1回目の接種を終えた国民は全体の10%強であり、1ヶ月後にはもっと進んでいるにしても、オリンピックが開催できるほどの浸透は期待できません。もし開催すれば、大きなリバウンドが起こり、「船着場で船を割る」結果になるのではと危惧します。
 私は学生と意見交換するとき、まず具体例を挙げて説明するよう促します。また自身の主張は辻褄が合っているか、一貫性があるか、よく考えてから発言するようにと要請します。何でもない当たり前のことですが、この2点に気をつけるだけで、話は相当明快でわかりやすくなります。今このタイミングで国を挙げてオリンピックを開催するというのなら、これまで国民に求めてきた自粛生活との整合性を明らかにし、感染レベルに応じた具体的な対策を語ってほしいものです。

コロナ禍とK字経済

 今年は例年になく早い梅雨入りで、5月後半から雨の不快な日が多くなりました。こうした中今日28日、9都道府県に発令されていた緊急事態宣言が6月20日まで再延長されることが決まりました。6月20日という日にちは、オリンピック開催のほぼ1か月前までに、宣言解除しておきたいという政治判断から割り出したものでしょう。しかし重要なのは日にちよりも、感染状況です。例えば全国の新規感染者数が何人以下とか、コロナ病床の使用率が何%以下という数値目標を定め、安定的な状況が何日続けば、ひとまず安全・安心と確信できるのか、数値目標を提示してもらいたいものです。当然ながらオリンピック開催の是非も、感染状況次第で決めるべきです。さらに心配なのは、6月下旬いったん感染がおさまっても、7月下旬にリバウンドが起こっていることです。国内のコロナ入院患者が5〜6万人いるところに、(選手以外の)大会関係者が7万8,000人ほどが来日し、日本国内で外国人感染者の治療も行うとなれば、深刻な医療崩壊が起こるのではないかと危惧します。
 さてコロナ禍が長期化するなかで、K字経済という言葉をよく耳にするようになりました。K字経済とは、富裕層と低所得層、正規雇用と非正規雇用といった具合に、経済の二極化が進む現象をいいます。つまり豊かな階層と、貧しい階層の格差は、時間の経過とともに拡大し、その上下に開く状況がKという字に見えることから、こう呼ばれるようになりました。以下ではコロナ禍のもとで、どういったK字の格差拡大が起こっているか、考えてみたいと思います。
 まず金融資産を持つ富裕層と持たない貧困層の格差です。コロナ禍でも多くの金融資産を持っていれば、株価の上昇を待つだけで資産が増えます。世界の中央銀行が足並みを揃えて金融緩和を推進したため、コロナ禍でも各国の株価は順調に上がりました。またそうして上昇した株を売り、贅沢品を買う余裕もできました。
 一方金融資産を持たない低所得階層の人々は、株価上昇の恩恵を受ける余地がありません。職業的には、非正規雇用、飲食業やサービス業が多く、仕事の減少から一段と困窮してゆきました。
 アメリカに目を向けると、バイデン政権はコロナからの景気回復と、低所得層の所得水準を高めるため、約660兆円にのぼる経済対策を打ち出しています。その結果、消費・投資・公共事業などの需要に供給が追い付かなくなり、景気に過熱感が出ています。2021年4月のアメリカの消費者物価上昇率は、前年同月比4.2%に達し、インフレ懸念が生じています。
 経済にインフレ警戒感が出てくると、中央銀行は金融引き締めに方向転換するでしょう。リーマンショック以降、世界の中央銀行は一斉に超金融緩和政策をとり、それがマネーの膨張と株高につながってきました。その前提が崩れると、株価の急落による経済混乱が起こるかもわかりません。
 K字経済現象は先進国と新興国の間でも起こっています。コロナとの関連でみれば、先進国はワクチン接種が進み、経済が正常化しつつありますが、ワクチン接種が遅れている新興国は、感染拡大が終息せず、経済活動は停滞しています。さらに新興国の中には、観光業が中心産業となっている国も多く、観光客の減少が経済に深刻な打撃を与えています。
 アメリカ経済にインフレ傾向が出てきて金利が上昇すると、ドル高(=新興国通貨安)が進むことになります。そうなると、新興国は経済再建のための輸入が困難になり、ドル建て債務の負担も重くなって、財政を悪化させます。
 グローバルに見ると、ワクチン接種と財政余力の度合が経済格差を生む要因になっています。
 私たち経済を学ぶ者にとって、コロナが経済に与える影響の分析は、最優先課題であると考えます。その際注意すべきは、影響が国あるいは業種・産業によって一律に出ているわけではないということです。困窮している国や業界・個人に、どのような救済策をとるべきかの検討が、緊急かつ重要なテーマであるといえます。

迷走する政府のコロナ対策

 大型連休も終わり、社会は通常の姿に戻りました。1日には以前お茶の研究でよく出かけていた静岡県・牧之原で竜巻がみられました。茶農家は突風のために防霜ファンが倒れたり、茶樹が折れるなどの被害を受けましたが、一番茶の摘採は終わったばかりで、最悪の事態は免れたようです。
 さて大型連休に「短期集中」でコロナを抑え込もうと3度目の緊急事態宣言が発令中ですが、一向に下火になる気配はみられません。コロナが始まってほぼ500日が経過しますが、いったい政府はどのような方針で感染拡大を阻止しようとしているのか、国民に伝わってこないのが心配です。言い換えると、これまでの対応の検証が行われておらず、感染者が増えたら緊急事態宣言を出し、減ってきたら解除する、しばらくたってリバウンドが起こったら、再び規制を強めるという繰り返しです。コロナ対策の迷走で、国民の政府に対する信頼は著しく低下しているように感じられます。今日は政府のコロナ対策について、釈然としない点を述べてみたいと思います。
 まず会食をともなう飛沫感染が「急所」であるとし、ずっと飲食店の時短営業要請を続けています。しかしこの成果は、確実に出ているのでしょうか。多人数で飲酒して大騒ぎするとリスクが高まるのは当然ですが、ファミリーレストランでお酒も飲まず、静かに食べるだけなら、問題ないように思います。特に午後8時までの時短営業で、仕事が終わった後の食事を、コンビニ弁当で済まさざるをえない「夕食難民」が増えています。飲食店に一律の時短要請を行う理由と、その効果の説明が必要です。
 次に今回の緊急事態宣言では、「人流」を減らすため、大勢の人が集まる百貨店や映画館に休業要請を行っています。どうしてこのような考え方が出てきたのか、国民は理解しかねます。政府は昨年Go to キャンペーンで、多額の税金を投入し、人の移動を促進する政策をとってきました。その根拠は、人流の活発化と感染拡大に明確な因果関係はないというものでした。ではこのタイミングでなぜ、「人流削減」に方向転換したのか、理由を明確に伝えるべきです。また税金面でも、Go to キャンペーン、休業・時短協力金と、国民に二重の負担が生じています。税金で感染を広げ、それを抑えるのに、また税金を使うというわけです。このお金は、医療体制の充実に費やすべきだったと思います。
 さらに深刻なのは、コロナ患者の急増で、医療にアクセスできず、自宅で死亡する人が多発していることです。コロナの入院治療ができる病院や病床がなぜ増えないのかを検証し、態勢を整えるのが急務です。コロナ患者の急増は、一般の医療にも支障をきたし、コロナ以外の病気にかかっても、受け入れ病院が見つからなかったり、予定されていた手術が延期されるという問題が起こっています。日本の医療体制は非常時に脆弱であることがわかりました。現状で2か月後に迫ったオリンピック開催など、到底困難だと感じます。
 菅首相は就任以来、コロナ禍からの早期脱却、国民の命と健康を守るために全力を尽くす、オリンピックは人類が新型コロナウィルスに打ち勝った証として予定どおり開催できると強調してきました。しかし現状では、依然としてコロナウイルスが猛威をふるい、感染は大都市だけでなく、地方都市にまで拡大して、危機的です。ワクチン接種はいつ順番が来るかわからず、国民は自分が感染者になるかも知れない、もし感染しても、病院で治療が受けらる保証はないと、不安で一杯の日々を送っています。国のリーダーの役割は、こうした国民の不安を払拭することです。根拠のない楽観的メッセージを発するよりも、これまでの対策の検証と反省、的確な現状分析、そして実効性ある対策および、感染抑制の数値目標を示してほしいものです。

激化する米中覇権争いと日米関係・日中関係

 トランプ氏との熾烈な選挙戦に勝利したジョン・バイデン氏は、2021年1月21日、第46代アメリカ大統領に就任しました。一方日本では、2020年9月より、菅義偉氏が首相の座につきました。日米関係の方向性を決めるのは、トランプ−安倍から、バイデン−菅へと移行します。私の最近の関心は、新しい首脳体制のもとで、日米関係はどう動くか、また、どのような経済・外交関係を結ぶべきかについて色々考えてみることです。その際、米中の覇権争いからも目が離せません。
 まずバイデン氏の政策の方向性をみると、トランプ政権時代に激化した自国第一主義の修正が目立ちます。具体的にはWHO(世界保健機関)からの離脱中止、パリ協定への復帰、メキシコとの国境の壁建設中止などが挙げられ、国際協調体制へ回帰する動きが確認できます。
 次に対中国政策に目を向けると、前政権時代と同じく強硬姿勢を示しています。特にアメリカの繁栄を妨げる安全保障上の諸課題、知的財産の侵害などには厳しい態度で臨み、香港や新疆ウイグル自治区における人権弾圧問題や、南シナ海南沙諸島での人工島建設、および台湾海峡付近での軍事行動の活発化など、力による現状変更の動きは容認していません。以上のような民主主義における「普遍的価値」の維持を目指す政策には力を入れています。
 今後バイデン政権の政策をよく整理しなければと考えていますが、日米関係の行方も気になります。2先般4月16日の日米首脳会談で特に注目されたのは、台湾海峡問題を共同声明に明記ことです。独立を求める台湾に対し、「1つの中国」を主張する中国政府は断固これを認めない方針です。中国が台頭する状況のもとで、アメリカは台湾との関係を深めています。日米同盟の観点からは日本はアメリカと歩調を合わせるべきですが、特に経済面では、日中両国は強い結びつきがあり、中国とも良好な関係を維持しなければなりません。米中両大国の間で、日本は極めて難しい立場に立っています。米中の覇権争いが激しさを増す状況下で、日本はこれに巻き込まれないよう、独自の立場から両国と経済・外交関係を築くよう努めなければいけません。
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