寺本益英の日記

 関西学院大学で日本経済史を担当する寺本益英の身辺雑記です。経済、歴史、お茶、フードシステムの話題を中心に、思い立ったことを綴ります。受講生の質問にも答えます。

2021年度のスケジュール 

 2021年度は下記のスケジュールで講義を行います。(暫定版)
 担当するのは概ね次の3つの領域です。まず第1は、明治・大正・昭和・令和の日本の歩みです。いつも強調しているとおり、歴史は時代の位置情報です。どこかへ出かけるとき、私たちはナビや地図を利用するのと同様に、激動の現代社会を迷わず進むには、「歴史感覚」というツールが不可欠です。日本近現代史を、経済を中心に、政治、国際関係、社会・文化にも目配りをして、バランスよく学んでゆきましょう。
 第2の柱は、イギリス史と偉大な経済学者(さしあたりスミス・マルクス・ケインズ)の思想を題材に、「人類が追求してきた普遍的価値」について考えることです。ここで思い浮かぶのは、民主主義(⇔独裁)、国際協調体制(⇔自国第一主義)、自由競争(⇔独占)、市場経済(⇔計画経済)といった言葉です。人類の幸福度を高めるためにこれらの概念がいかに重要かは、カッコで記した反対語と比べれば明白です。国際社会が直面する様々な課題を解決するためには、歴史的なアプローチにより、私たちの祖先が「普遍的価値」を獲得するまでに、どのように困難を乗り越えてきたかを検証するのは、極めて重要だと思います。
 3番目に医療問題に関しても、十分力を注ぎたいと考えています。みなさん誰しも、健康で長生きできることが、人生の最重要目標であるに違いありません。健康的に活動できる時間が長ければ長いほど、種々の目標を達成しやすくなります。このニーズに貢献するのが医療です。国際的にみて最高水準にあるわが国の医療の姿を、医療の最前線でご活躍の医師による講義を中心に、法律や経済からの分析も加え、多角的に把握します。さらに少子・高齢、人口減少社会が急速に進むなか、わが国の優れた医療制度を持続可能とするための方策も提案します。また緊急トピックスとして、コロナ問題を避けて通るわけにはゆきません。これまでの政府の対応を検証し、1日も早終息導くための手段を論じる予定です。
 なお演習系科目の目標は、2月9日の記事をご参照ください。
 最後に全担当科目の授業方針を提示します。受験生時代以来、多くの学生はマークシートのテスト形式に慣れてきたためか、組立を工夫して説得的な文章を書いたり、相手にわかりやすく説明するのが苦手なように感じます。説明不足の答案、よく意味のわからないレポートに何度も遭遇し、授業中にコメントを求めても、ひと言しか返答がなく、何となく気まずい雰囲気になった経験もあります。こうしたシーンを避けるため、文章形式の講義資料配付と丁寧な板書を心がけます。そして歴史の流れ、基本的な用語・概念が確実に身につくよう努力するつもりです。14コマ終了時点で、講義で扱った内容が自分の言葉で説明できる「再現力」が大切だと思います。

火曜日
2限 春  学部・日本経済史機B−201
2限 秋  学部・日本経済史供畭膤惘 ζ本経済史A 経済学部−7号
3限 通年  学部・研究演習機。叩檻苅娃供
4限 通年  学部 研究演習供 。叩檻苅娃供

水曜日
教授会、研究科委員会など会議日

木曜日
4限  春  学部・学際トピックス「医療をめぐる諸問題」 B−204

金曜日
2限 春 学部・現代日本経済史 B−202
2限 秋 学部・研究演習入門  C−201 
3限 秋 学部・経済の歴史と思想  B−201

 なお上記担当科目の各回の講義内容は、下記のシラバスへのリンクを参照し、確認してください。

関西学院大学シラバス検索

ゼミおよび経済史研究の目標

 1月後半はレポート評価に全エネルギーを投入しましたが、どうにか完了し、次は4月の新学期に向けて、講義科目の準備にとりかかっています。守備範囲は日本の近現代史と、封建制時代から第二次世界大戦頃までの外国史(イギリス史)ですが、毎年より深く掘り下げたいテーマや、新しくつけ加えたいトピックスが出てくるものです。根幹部分は変わりませんが、多少のアレンジも行い、受講生の満足度を高める工夫をしなければと思っています。
 一方少人数のゼミは、意見交換を重ね、なるべく多くのゼミ生が卒業論文を執筆するよう誘導したいものです。そこで本日は、これまでのゼミ活動と提出されたレポートや卒論を読んだ経験から、ゼミ(少人数クラス)と、経済史研究の目標について述べてみたいと思います。

【ゼミおよび経済史研究の目標】

(1) 経済史の基本的な考え方や専門用語を理解する。
 水泳の際の泳ぎ方、野球におけるバットの振り方といった具合に、スポーツには型(=基本スタイル)があります。それは自己流で身につけるのは困難で、コーチの指導を受けて上達するものです。大学の学びでも同じことが言え、標準的な経済史の流れやどうしても把握しておきたい概念や用語は、コーチ(=担当教員)から習ってもらうほかありません。その役割を果たすのが講義科目であり、より発展的な議論を行う場がゼミです。学びの効果を高めるカギは日々の授業にあり、授業ファーストの大学生活が大切です。
(2) 歴史的な出来事と現在進行中のホットな経済・政治・外交問題を比較検討し、教訓を導けるようにする。
 この項目のポイントは2点あります。まず第一に、歴史を研究する際に絶えず心に刻んでおきたいのは、「教訓を導く」という姿勢です。過去の様々な政策の成功例、失敗例、あるいは政治家や企業経営者の決断を注意深く検証すると、多くの教訓を得ることができます。検証の過程は複雑で、数式の計算で答えが出るほど単純ではありません。過去の事実を追うだけが歴史ではなく、「なぜそのような結果になったのか」を、証拠を挙げて検討し、教訓を導くところに面白さがあります。
 いまひとつ強調しておきたいのは、現実の経済現象は、決して単純化されたモデルや数値だけで表せるものではないということです。コロナ問題を例に挙げても、感染者の数値を追うだけでは何の意味もありません。その背景にある医療の動向、政府のコロナ対策、海外との比較といったように、多方面からの検討を加えてこそ、適切な解決策が浮かび上がります。経済の諸問題を扱うとき、もちろん経済原則やデータに依拠することは重要ですが、政治や海外の事情への目配りも忘れてはいけません。
(3) 相手にわかりやすく発表したり、論理的で説得力ある文章力を身につける。
 レポートや答案を読んでいると、一読しただけでは理解できないケースに多々遭遇します。またゼミの時間にコメントを求めても、ひと言しか返答がなく、それ以上会話が続かず苦慮したこともたびたびです。これはおそらく、試験の形式が問題ではないでしょうか。つまり、記号解答や計算問題では、正解を導くことはできても、筋道を立てて、明快に書いたり話したりすろ能力は鍛えられません。またこのセンスは、一方通行の講義科目ではうまくトレ−ニンググできないことも事実です。この能力は、ゼミで活発に意見交換をしたり、レポートを書いて担当教員や他のゼミ生に評価してもらってこそ、上達するものなのです。私はここにゼミの存在価値があると考えています。
(4) 基本的な経済論文を自力で読みこなし、解説できるようにする。
 これは卒業時の最終目標といっても過言ではありませんが、卒業して企業に勤めたとき、他学部の出身者と同じ働きでは困ります。「経済学士」と名乗る以上、世間の人々からは経済のプロという視線が注がれます。4年間の学びで身につけた知識や分析力を、実践で活用できてこそ、仲間から信頼も厚くなるのではないでしょうか。経済学部出身者には、経済動向を分析できる能力が期待されています。経済を動かす3つの主体は、家計・企業・政府ですが、これらの動向の分析こそがが経済学です。このように考えると、経済学部の果たすべき役割は極めて重要です。

 今年度はコロナの影響で、非常に不本意な1年になりました。学生と会って直接やりとりを行う機会は限られ、勉強会や懇親会など、交流を深める場を持つことすらできませんでした。3月いっぱいまでに感染が終息し、せめて授業だけでも、教室で実施できることを願っています。

2020年度 秋学期 レポート・卒論の採点が終わりました

 2021年もあっという間に1ヶ月が経過しました。コロナの感染者数は少し減少傾向にありますが、緊急事態宣言は3月はじめまで延長される見込みです。私たちの大学は、4月から通常形態の授業を目指していますが、それまでに感染は落ち着くのでしょうか。いつになったら、マスクなしで歩くことができるようになるのでしょうか。残念ながら、まだ先の見通しは立ちません。
 さて今学期のレポートおよび卒業論文の評価がようやく完了しました。講義科目(日本経済史兇噺渋綟本経済史)は、やや長めの記述を求めたところ、理解度に差が出たように感じました。高評価のレポートは、資料を繰り返し読み、解答を自分の言葉で再編集してあります。歴史の様々な出来事や政策を説明する際は、そのことが問題となった経緯をふれ、展開を説明し、最後は結論や影響で締めくくっており、説得力があります。
 反面、不十分な解答にも遭遇しました。歴史は一連の流れが重要で、その一部を切り取っただけでは、ストーリーとして成り立ちません。何年に何が起こったという具合に、年と事件を並べただけの解答も、意味が伝わりません。
 いまひとつ重要なのは、経済や歴史の専門用語を適切に用い、ある程度詳しい説明を加えていることです。例えば帝国主義、労働分配率といった用語は、用語をそのまま用いるのではなく、簡単な概念の説明や、講義内でどのような脈絡で使われていたかという配慮があれば、採点者に与える印象はかなりよくなります。
 形式面で、採点者が読みやすいような書き方の工夫が大切です。今から何を述べるかの宣言がない文章、適切な見出しがついていない文章、話しが変わっても改行せず、丸ごと1ページ息継ぎなしで読まねばならない文章などには困惑します。
 文章や言葉は、相手にしっかり伝わるように、十分練って発信する心がけがいります。記号や計算の結果、数値で解答を求めるタイプの試験に慣れた学生は、ある程度長文の\記述を求めるタイプの試験には、スムーズに対応できないのかも知れません。自分の思いを相手にわかりやすく伝えるには、ゼミでレポートを書いて担当教員に添削してもらったり、積極的に発表して他のゼミ生からコメントをもらうなどの経験を重ねるのが最も効果的な勉強法だと考えます。
 次に卒業論文は、数名のゼミ生が提出してくれました。卒業論文は「4年間の学びの集大成」という位置づけで、就職活動終了後文献さがしに取りかかり、読んで内容を理解し、ゼミでの議論を経て、論文としての体裁を整えてゆきました。ネット記事は少なめに、なるべく多くの文献に当たるよう促してきたため、コピーペーストではなく、自分の言葉で表現する工夫が行われていました。テーマは特殊な狭い範囲のものを避け、オーソドックスで様々な角度から分析できるものでした。その結果各自、「4年間の学びの総仕上げ」という達成感を感じていると思います。
 例年1月は秋学期の成績評価に追われて忙しいのですが、ひとまず終わり、肩の荷がおりた気持ちです。2月、3月は新学期に備えた講義準備と、新しい研究の材料さがしに努めようと考えています。

最近不思議に感じていること

 コロナの感染拡大がおさまらないため、14日より私たちの兵庫県にも緊急事態宣言が発令されています。飲食店の営業は午後8時まで、不要不急の外出は自粛するようにということです。
 安倍政権・菅政権のコロナ対策をみていると、方向性や基本的な考え方がよくわかりません。つい昨年末まで、go to政策を促進し、旅行や飲食を推進したのに、なぜ年明けから、真逆の方針転換が起こったのでしょうか。さらに午後8時までにしても、飲食店の営業は認めています。その一方で、移動や外出を自粛せよというのなら、飲食店の経営は成り立ちません。飲食店の営業を時間で制限するのではなく、感染対策の度合や、来店の人数で制限するのが現実的です。ようするに政府の打ち出す政策に込められたメッセージにどのような意図が込められているか、国民にどのような行動を求めているのか、理解に苦しむのです。
 それにしても政府の考える「危機」とは何なのでしょうか。例えば2017(平成29)年8月、北朝鮮が発射した弾道ミサイルが北海道上空を通過したとき、広範囲にわたってJアラートが鳴り響き、国民の危機感は最高潮に達しました。その後同年11月、安倍首相とトランプ大統領が共同記者会見を行い、北朝鮮の核・ミサイル開発は、日本にとっての「重大で差し迫った危機」と表現し、アメリカにイージス・アショアの導入を約束しました。
 今私たちが直面しているコロナの感染拡大は、当時の北朝鮮の暴走による危機よりもずっとレベルが高く、多くの尊い人命が失われています。政府は重い腰を上げ、年が明けてからようやく緊急事態宣言の発令に踏み切りました。ところが、繁華街への人出が一向に減らないのは、政府のメッセージの発信力が弱いからだといえます。平時に過剰なまでに危機感を煽り、本当の危機のときに随分限定的な緊急事態宣言で、平時(コロナ前)と変わらない行動が許されるのなら、感染の抑え込みは困難です。
 もうひとつ納得しがたいのは、株価の動きです。緊急事態宣言が出ようが、全国の新規感染者数が過去最高を更新しようが、日経平均株価は上昇し続け、1月14日には2万8,979円53銭を記録しました。株価はここ30年間で、最も高い水準にあるということですが、みなさんにその実感はありますか?コロナで経済活動は大きなダメ―ジを受けています。とりわけ、飲食業、旅行業、観光・レジャー産業、鉄道・航空業など、接触型業種の打撃は深刻です。にもかかわらず、株価は上昇の一途をたどっているのです。実体経済が不振にもかかわらず、株価は異常に上昇しており、この現象はバブルというほかありません。
 このバブルのルーツは、2013(平成25)年4月より始まった「大胆な金融緩和」で、経済に大量の資金が供給され、それが株に向かいました。日銀自身も上場投資信託(ETF)を買い上げ、株価高騰に一段の拍車がかかりました。アベノミクスの顕著な特徴は「株高至上主義」です。株価を吊り上げることで経済は好転し、内閣支持率も上がると考え、安倍政権の間、株価はほぼ一本調子で上昇を続けました。そして菅政権の現在、日経平均株価は3万円まであと少しという水準に迫っています。
 しかしこれだけ株高が進んでも、賃金は上がらず、国民生活が豊かになっていません。恩恵を受けているのは大量に株を保有している富裕層で、最初から株を持っていない人には、特にメリットはなく、所得格差はますます広がるばかりです。今後はコロナによる倒産や失業も増え、景気は悪化する予感がします。
 通常株価は、経済状況がよいときに上がり、悪いときには下がります。コロナ禍で経済がこれだけ多くの不安を抱え、医療体制も逼迫している状況で、ここ30年のうちで最も高い株価がなぜ実現するのか不思議でしかたありません。株価は経済の実力をはるかに上回り、過大評価されています。実体経済が抱える様々な問題点が、株高によって覆い隠されている現状は、錯覚を招き、決して好ましいものではありません。
 有名な相場の格言に、「強気相場は、悲観の中に生まれ、懐疑の中に育ち、楽観の中で成熟し、陶酔の中で消えていく」があります。今は陶酔の瞬間かも知れませんが、陶酔から覚めたとき、つまりバブルがはじけたとき、その事後処理がどれだけ大変かは、現代日本経済史の授業で取り上げたとおりです。
 大学は間もなく入試シーズンを迎え、同時並行的に来年度の授業準備を進めているところです。入試会場での感染対策にはとても神経を使いますし、2年連続でのオンライン授業は勘弁してもらいたいものいです。企業のみならず、教育関係もコロナに振り回され、苦しんでいます。政府の重大な役割は、政策科学に基づく確実な方策で感染拡大を食い止め、困窮する企業や国民に行き届いた救済措置をとることです。

2021年 元旦

 みなさん明けましておめでとうございます。コロナの感染拡大に歯止めがかからない状態で、新しい年がスタートしました。特に心配なのは、コロナ治療を実施している病院のベッドがほぼ満床になり、これ以上患者が増えると、病院がパンクして十分な治療を受けられなくなることです。
 政府のコロナ対策への本気度も、国民には伝わってきません。治療法が確立されていない現状で感染が広がらないようにする手立ては、人々の移動と飲食の機会を最低限におさえるしかありません。この点は医療の専門家が口をそろえて訴えていました。にもかかわらず政府は、go to キャンペーンを強行し、税金を使ってまで、旅行や飲食を促進する政策をとりました。go to キャンペーンの利用者が実際何人感染したかは別として、この政策は国民に対し、「今まで以上に活発に旅行や飲食を行っても、コロナは終息に向かうだろう」という誤ったメッセージを送ることになりました。政治のリーダーたちに、コロナへの危機感・緊張感が全く感じられず、昨年4〜5月に発令された緊急事態宣言解除後、何も対策を講じなかったのです。感染者の急増は、容易に予想できました。
 私たちの大学は、この1年(秋学期の少人数クラスを除き)オンライン授業で臨んできました。コンパや出張、学会開催も禁止でした。学生、教職員とも極めて不自由な思いをしつつも、感染拡大を防ぐため、やむをえないと我慢してきました。しかし社会全体は、正反対の方向に動いており、これでは私たちの努力は、水の泡になってしまいます。新年度から、すべての授業を通常の形態に戻すと聞いていますが、あと3ヶ月ほどで、感染が下火になるのか、予断を許さない状況です。
 さて今年の研究目標は、「コロナに左右されず、研究に全力を尽くすこと」です。昨年と同じく、資料収集や博物館・美術館の展示見学へ出かけることはできないかも知れませんが、手持ちの文献を最大限活用して、少しでも研究を前進させたいと考えています。まず本職の日本近現代史研究は、オンライン授業向けに作成した資料のバージョンアップに取り掛かります。勤めてはじめてオンライン授業を経験し、これまで口頭や板書で説明してきたことを、あらたまった文章で丁寧に書くのは、ずいぶんエネルギーがいることだとわかりました。しかしそうして苦労して作成した資料に基づいて、熱心な受講生から、有益な質問や、より深く掘り下げたいというコメントが寄せられたのは、大変嬉しいことです。戦前のトピックスでは、日清戦争の勝利による賠償金の使い道、金本位制の導入、日露戦争の経過やその前後の国際関係などを、一段と踏み込んで調べたいというリクエストがありました。戦後経済に関しては、高度成長、バブル経済の発生と崩壊、リーマンショックなどに関心を示し、実際の出来事を経済のメカニズムと重ね合わせて説明できるようになりたいという、実践的なニーズが出ました。近現代史の講義ノートは、受講生のリクエストに応じ、毎年加筆してゆかなければなりません。
 次に医療問題に関しては、安倍政権、菅政権のコロナ対応の検証が大切だと考えています。新聞記事検索システムを十分活用し、事実を丹念に追跡しつつ、非常時の医療のあり方について検討してみたいと思います。さらに過去の感染症対策を振り返り、教訓を導くことも歴史研究者の役目だと考えています。
 最後に喫茶文化史の研究は、中国の影響を受けて発展した側面と、日本の風土や精神性を反映し、独自に発展した部分を分けて、描き直してみたいと思います。これまで展覧会に出かけて収集してきた図録と、関連文献が重要な手がかりとなります。これらを精読することが目標です。
 今年は日本経済、世界経済とも予想しがたい展開になりそうです。日本経済に関して当面は、オリンピックが開催できるか否か、衆議院議員選挙の結果はどうなるかが最大の関心事です。一方世界経済では、大統領選挙でより一層分断が鮮明になったアメリカの行方が気になります。そして人類全体の最優先課題は、コロナ制圧の見通しが立てることに尽きます。私たちは混沌とした状況に直面し、何ひとつ明るい兆しはみえません。1日も早く、制限なしの日常生活と、通常の授業スタイルが実現することを願うばかりです。

2020年度 日本経済供.譽檗璽伐歛

【2020年度 日本経済史供.譽檗璽伐歛蝓

1.この授業の前半では、憲政史上最長の7年8ヶ月の長期政権を実現した安倍晋三政権を取り上げました。資料内容に基づき、次の設問に答えなさい。

(1) この体制は「安倍一強体制」とも呼ばれますが、どのような統治手法が用いられたのでしょうか。対国民・野党、対所属議員、対官僚を念頭に置いて述べなさい。10点
(2) アベノミクスの「大胆な金融緩和」に関し、次の問いに答えなさい。
  \策の目標と、具体的な金融政策の手段について説明しなさい。10点
 ◆,海寮策をあなたはどのように評価しますか。評価がプラスに傾く場合も、マイスに傾く場合も、その根拠を明確にして論じなさい。10点
(3) 戦後日本の賃金決定方式を概観しなさい。その際、「官製春闘」の内容と評価についてもふれること。さらに、令和時代における日本の雇用システムについて、望ましい姿を提案しなさい。20点

2.この授業の後半では、憲政史上二番目の長期政権であった桂太郎首相が活躍した明治後半期の動向を、日露戦争を中心にたどりました。資料内容に基づき、次の設問に答えなさい。10点×5=50点

(1) 山県有朋が主張したように、明治期日本の「利益線」は、朝鮮半島でした。ここで「利益線」の概念を明らかにし、日清戦争後から義和団事件前までの朝鮮半島情勢について説明しなさい。
(2) 義和団事件から日英同盟締結を経て、日露戦争開戦の決断に至るまでの経緯を概観しなさい。
(3) 日露戦争に際し、わが国は巨額の戦費を必要としましたが、これをどのように調達したでしょうか。高橋是清と、ヤコブ・シフの交渉に焦点を当て、論じなさい。
(4) ポーツマス条約締結、明治期いっぱいまで、わが国はどのような対外政策をとったかについて説明しなさい。
(5) 日露戦争開戦当初、小国日本は大国ロシアを相手に戦っても、勝つ見込みはないと考えられてきました。にもかかわらず、なぜ日本は勝利をおさめることができたのでしょうか。講義内容に即して論じなさい。

【備考】

 (現颪魯錙璽廛蹐悩鄒し、文書名は「日本経済史供_歛蝓.ッコ書きで各自の氏名」というスタイルにしてください。分量は課題1、課題2の各設問とも、A4用紙1〜2枚程度を目安とします。(1ページあたりの字数は約1,000字。各自の慣れた書式設定でかまいません。なお課題1と課題2は、1つのファイルにまとめて提出してください。文章はいくつかの項目に区切り、適当な見出しをつけてください。改行もなく、だらだら続く文章は読みづらく、減点の対象となります。
  冒頭で学部、学年、学生番号、氏名を忘れないように。
◆〆鄒にあたっては、配付資料をまとめるだけでかまいません。他の文献や資料の参照は求めていません。
 提出はLUNAへお願いします。期日は2021年1月24日(日)まで。
ぁゝ震篥世魯瓠璽襪婆笋す腓錣擦討ださい。

2020年度 現代日本経済史 レポート課題

【2020年度 現代日本経済史 レポート課題】

1.戦後日本経済に関する次の設問に答えなさい。30点

(1) 終戦後(1945〜50年頃)に様々な経済改革が行われました。その内容を集約すると、〃从僂量閏膕修鮨篆覆垢訐策、⊇戦後の混乱を終息させ、国民生活の基盤を安定させる政策 といえます。 ↓△亡悗掘具体的にどのような政策が行われましたか。年代順にとりまとめなさい。15点
(2) 設備投資ならびに輸出の拡大に焦点を当て、いざなぎ景気の展開について論じなさい。(その際、設備投資と輸出の拡大が、どのようなメカニズムで高い経済成長率と結びついたかについて、明らかにすること。)さらに1960年代後半、わが国の経済・社会の姿がどのような変貌を遂げたかに関しても述べなさい。15点

2.日本型経済システムの起源に関する次の設問に答えなさい。25点

(1) 企業システム、および金融を中心に、戦時経済統制(国家総動員体制)の概要を説明しなさい。15点
(2) 戦後の高度成長は、戦時体制の思想によって支えられていたという主張があります。その根拠について論じなさい。10点

3.バブル経済の発生と崩壊に関し、次の設問に答えなさい。30点

(1) 1985(昭和60)年のプラザ合意を端緒として、1980年代後半、わが国はバブル経済を経験します。景気の過熱はどのようなメカニズムで起こったのかについて説明しなさい。15点
(2) 1990年代に入ると、バブル経済は崩壊します。バブル崩壊の要因について論じ、それが経済にどのような悪影響を及ぼしたか説明しなさい。15点

4.次の(1)〜(3)の設問より、1問選択して解答しなさい。15点

(1) 1950(昭和25)年勃発した朝鮮戦争を契機に、日米の緊密な連携を軸として、安全保障体制の基礎が築かれました。そこで、わが国の安全保障体制が成立するまでの経緯、およびその内容・意義について論じなさい。
(2) 終戦〜1980年代半ば頃の日米経済摩擦の変遷を、この間のわが国の経済発展、および産業構造の移り変わりと重ね合わせて論じなさい。
(3) 金融機関が経営危機に陥ったとき、これを公的資金投入によって救済するのは好ましくないという意見があります。BIS規制に留意しつつ、この意見を批判的に検討しなさい。

【備考】

 (現颪魯錙璽廛蹐悩鄒し、文書名は「現代日本経済史 課題 カッコ書きで各自の氏名」というスタイルにしてください。分量は課題1〜課題3に関してはA4用紙2〜3枚程度、課題4については同じく1〜2枚程度を目安とします。(1ページあたりの字数は約1,000字。各自の慣れた書式設定でかまいません。なお4つの課題は1つのファイルにまとめて提出してください。文章はいくつかの項目に区切 り、適当な見出しをつけてください。改行もなく、だらだら続く文章は読みづらく、減点の対象となります。
 冒頭で学部、学年、学生番号、氏名を忘れないように。
◆〆鄒にあたっては、配付資料をまとめるだけでかまいません。他の文献や資料の参照は求めていません。
 提出はLUNAへお願いします。期日は2021年1月17日(日)まで。
ぁゝ震篥世魯瓠璽襪婆笋す腓錣擦討ださい。

2020年度 卒業論文に関する注意事項

 コロナの感染拡大が止まらないまま、年末を迎えようとしています。秋学期も残り少なくなってきました。春学期、キャンパスが全面閉鎖だったことを考えると、ゼミと大学院だけでも、教室で授業が実施できたのはありがたいことです。どのクラスも少人数でしたので、何と言っても学生の反応を見ながら講義ができ、手応えがありました。オンラインの「無観客試合」は、何となく苦手です。
 さて例年秋学期の研究演習兇任蓮卒論作成に力を注いでもらっています。卒論は必修ではありませんが、4年間の学びの総仕上げとして、是非チャレンジするようすすめています。構想を考え、できるだけ多くの文献に当たり、まとめる作業は決して容易ではありません。それでも、努力の量に比例して、完成時の満足度は高くなるのは確実です。加えて中間報告の段階で、他のゼミ生からの意見を取り入れることにより、新しい発見ができるメリットも大きいはずです。お正月を挟んであと2ヶ月、全力投球でがんばってもらいたいと思います。
 卒論作成に際し、いくつかの注意事項を記しておきます。コロナによる非常事態ということで、提出先は事務室ではなく担当教員、期限の延長も認められていますので、2021年1月末までに仕上げてください。

【卒論作成にあたっての注意事項】

 1.提出期限
 2021年1月31日(日)
 ただしなるべく2〜3日は早めに提出してください。

 2.提出方法
 LUNAの「卒論」コーナーに、提出場所をつくります。


 3.フォーマット・分量など
 (1) A4用紙を使用。
 (2) 1行あたりの字数 35〜40字 左端余白35mm以上、右端余白30mm以上
     1ページあたりの行数 28〜30行 上下余白30mm以上
 (3) 分量 規程では1万2,000字ですが、なるべく2万字以上書いてください。(個人的には1章あたり5〜6ページ、5〜6章構成 + はじめがき、おわりがき が適当かと思います。)
 (4)  ネットからの引用のみでの作成は認められません。必ず文献や論文を読むこと。
 (5) 参考文献の書き方は以下を参照してください。
    文献の場合の例 寺本益英『戦前期日本茶業史研究』有斐閣,1999年.
    著者 『 』で書名、出版社コンマ出版年 ピリオド 
    論文の場合の例 寺本益英「豊かで幸福な現代社会のあり方と経済政策の方向性の検討 −経済成長第一主義再考ー」関西学院大学『経済学論究』第73巻第2号,2019年9月.
    著者 「 」で論文名、『 』で掲載誌名巻号コンマ発行年(月)ピリオド
    通常、文献、論文は著者のアイウエオ順で並べます。
  (6) なるべく丹念に脚注をつけること。他人の文章はくれぐれも無断で引用しないようお願いします。
  (7) 時々ページ番号をふっていない論文をみかけます。特にプリントアウトするとき読みづらいので、必ず入れてください。
  (8) 適当に段落分けし、見出しをつけること。話題が変われば必ず改行しましょう。切れ目のない文章はやはり読むのに苦労します。読み手がスムーズに理解できるよう、長さにも注意を払ってください。
 

国会開設130周年

 唐突ですが、今日11月29日は、何の日かご存知ですか。実は、130年前の1890(明治23)年の今日、第1回帝国議会が開催されましたので、国会開設130周年の日です。記念式典が行われ、その様子が多くのメディアで報じられていましたから、お気づきの読者もいると思います。
 当時はどのような政治状況だったのでしょう。1890(明治23)年7月、第1回衆議院議員選挙が実施されました。この選挙で政府は超然主義を唱え、不偏不党、すなわちどの主義・党にもくみせず、公正中立の立場で政治を行う方針を打ち出していました。一方政府に対抗する勢力である民党は、政府の経費削減と国民生活の安定を求めて戦いました。結果は、立憲自由党と立憲改進党が過半数を占め、政府を脅かすことになります。
 前述のとおり同年11月29日、第1回帝国議会が開催されました。ここでの山県有朋首相の施政方針演説は、明治国家のデザインを示しており、大変興味深いものです。周知のように山県は、長州出身で、帝国陸軍創設に関わり、藩閥政府の中央に君臨していました。
 山県がこの演説で強調したのは「強兵」でした。民党が「民力休養・政費節減」をスローガンに行政整理を強く訴えたにもかかわらず、財政支出の大部分を陸海軍の経費に充当する政策を表明したのです。この背景にあったのは、「主権線」、「利益線」の思想でした。
 彼の言う「主権線」とは、国家を規定する領域、すなわち領土を意味し、ここには主権が働きます。また「利益線」はそこに近接し、国家の利益に影響を与える領域です。山県は具体的に朝鮮を「利益線」と想定していました。これを妨害する者が出現した場合、強硬策をとってでも、排除する必要がありました。山県の考え方を前提とすれば、壬午事変、甲申事変を契機とする朝鮮をめぐる日本と清国の対立が、日清戦争に発展していった経緯も、わかりやすいはずです。その後日本の「利益線」は満州、中国本土へと拡張してゆきました。
 しかしこのような山県の戦略には、大きな問題がありました。何よりも「利益線」は日本の主権が及ばない地域にあり、対象国の強い抵抗が予想されます。さらに対象国に関心を持つ列強との対立も避けられず、維持には膨大なコストがかかるのです。
 その後第1回帝国議会において政府と民党の間に妥協がみられ、予算が成立しました。両者が歩み寄ったのは、1回目の議会から対立が平行線のままであれば、欧米諸国から、わが国には立憲政治の運営能力が備わっていないと判断されてしまうため、何とか回避したかったのです。
 しかし続く1891(明治24)年の第2回帝国議会において、海軍の拡張をはじめ、政府提案の多くの事業計画が否決され、最終の予算案で政府支出が大幅に削減されたため、松方正義首相は、衆議院の解散に踏み切りました。これが憲政史上最初の衆議院解散でした。なお第2回帝国議会の海軍拡張予算審議において海軍大臣樺山資紀(かばやますけのり)は、「今日の日本があるのは薩長政府のおかげである」という主旨の蛮勇演説を行い、民党からの非難を受けたのは有名なエピソードです。
 ここで時代を現在に戻し、国会について考えてみましょう。今の最重要課題は、まずコロナの感染拡大を阻止することです。国会でも野党や医療関係者は、その方策は人の移動を減らすしかないと言っています。街を歩いていてもほぼ全員がマスクを着用しており、消毒や三密の回避も心掛けているでしょう。個人の注意による対策を行っていても、感染がおさまらないのですから、個人の努力には限界があると考えるべきです。それならばせめて、税金の補助で人の移動を促進するGo to キャンペーンは一旦停止を検討したほうがよいでしょう。しかし経済重視の姿勢を貫く菅政権は、耳を貸そうとしません。一方医療関係者は、コロナ治療にあたる医師や看護師が不足し、医療崩壊寸前と悲鳴を上げています。このような危機にこそ、国会が知恵をしぼり、有効な解決策を提案すべきです。しかし全く役割が果たされていません。もどかしいかぎりです。
 憲法 66条3項では、内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負う」と定められています。つまり議院内閣制のもとで、内閣が一体として国会に対し政治的責任を負わなければならないのです。 それならば前首相と現首相は、「桜をみる会」および日本学術会議問題について、自らの行動や考え方を説明し、野党議員からの質問にも、』誠実に回答すべきではないでしょうか。しかし両者とも不都合な情報は出さず、国民が納得する説明を行なおうという姿勢は、全く感じられません。昨今の国会は、機能不全に陥っていると評価せざるをえない状況です。
 私たち国民が国会に期待しているのは、日本が抱えている様々な難問について、建設的な議論を行い、必要な法律をつくり、危機を乗り切ってゆくことです。国会議員には、些細なことで足の引っ張り合いをしたり、ヤジを飛ばして論戦が空転するような事態だけは、避けてもらいたいと思います。

ゼミ生に尋ねた菅政権、政治・外交面での注目点

政治面

● 政治への信頼回復・安倍政権の負の遺産の清算 
→ 政府は国民への説明責任を果たしているか? 森友学園・加計学園・桜をみる会・日本学術会議問題など。

● 行政改革・縦割り行政の弊害排除 
→ 役所の組織・制度・運営方法の改革

外交面

● 広域的な課題
米中対立が激化する中で、日本は両国とどう向き合うべきか 
自由で開かれたインド太平洋の実現。
敵基地攻撃能力保有の是非。イージス・アショアの代替策など、抑止力強化について。

● 日中新時代 
中国の膨張主義への対抗 
→ 尖閣・西沙・南沙諸島における領土問題の解決。
習近平国家主席の国賓訪問。

● 日ロ関係
→ 北方領土問題。従来どおり四島返還を主張するか、1956年の日ソ共同宣言に明記された二島返還(歯舞島・色丹島)を優先するか? 

● 日韓関係
→ 徴用工問題の解決。健全な日韓関係の構築。

 ● 北朝鮮との拉致問題 
→ 金正恩朝鮮労働党委員長に無条件対話を求めるのか?

 ● 日本の途上国への支援のあり方 
→ コロナ感染拡大に備え、ワクチンや医療機器。資材の提供が重要。

ゼミ生に尋ねた菅政権、経済政策の注目点

 菅政権が本格的に動き出したことを受けて、私のゼミ生がどのような経済政策に関心を持っているか尋ねたところ、下記のような結果となりました。立ち入った議論は講義のなかで進めてゆくつもりですが、矢印(→)以降の記述は、私なりの論点整理です。すべてが重要性、緊急性の高いテーマと受け止めました。活発な意見交換を通じ、問題点や課題を明確にし、解決策も検討してゆきたいと考えています。

● コロナ対策と経済再建 
→ コロナの治療法確立。治療法が確立されるまでの間に、徐々に経済活動を正常化してゆく。飲食業、運輸・旅行業など、コロナで大きな打撃を受けた「接触型ビジネス」への支援強化。所得補償と雇用維持。

● デジタル化の推進 
→ 医療(オンライン診療)、健康保険証とマイナンバーカードの一体化、教育のデジタル化推進。各省庁のシステム統一化。

● 携帯料金の値下げ 
→ 日本の携帯電話料金が国際水準より高く、家計を圧迫している。その値下げは、国民の利便性向上に直結し、成果が目に見えやすい。携帯電話業界はNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの寡占状態で、競争が起こらない構造になっている。

● 少子化対策 
→ 不妊治療への公的医療保険の適用。子供を持ちたい夫婦の負担軽減。
現在医療機関は独自に医療技術を提供し、それに見合った価格設定を行っている。
公的医療保険を適用するには、この自由診療のシステムを、標準化することが必要。

● 東京オリンピックの開催は可能か? 
→ 災害、治安、コロナ(医療支援)面での対策は万全か?

● 原発の再稼働問題 
→ 2050年までに、温室効果ガスの排出をゼロにする目標を掲げた。この目標を、原発に依存せず達成することは可能か?風力発電、太陽光発電など、自然エネルギーの普及と低価格化促進。
 東京電力福島第一原発で発生した汚染水を浄化処理した後の放射性物質トリチウムを含む水の海洋放出問題。人体、環境、漁業への影響は?

● Go to キャンペーンと観光業の復活 
→ 制度設計に欠陥はないか。感染拡大の引き金とならないか?今の観光業への支援拡大は、将来世代の負担増大につながらないか。

● 地域経済活性化 
→ コロナの感染拡大が始まるまでは、インバウンド(訪日外国人)増加により、観光関連産業を中心に地方経済を支えてきた。今後、入国制限が緩和されるまでの間を、どう乗り切るか?入国制限が緩和された後、訪日外国人はもとの水準(年間4,000万人程度)に戻るか?

● 教育費の負担軽減 
→ コロナを契機とする家計急変への対応。奨学金の支給、学費の減免など。

自分史を起点に考える戦後日本の歩み (2)

 23日(水)から秋学期がスタートします。コロナはまだ終息の兆しは見られませんが、政府は様々な経済活動の緩和を推し進め、街に賑わいが戻りつつあります。大学はクラスター発生の懸念から、相変わらず慎重姿勢が続いていますが、少人数クラスの授業は、教室での実施が認められるようになりました。好ましいことです。私の担当科目についても、ゼミと大学院の授業は通常形態に戻します。対面授業のメリットは、学生とのやりとりを通じ、理解度を確認しながら進めてゆけることです。春学期はキャンパスの全面閉鎖が続き、、精神衛生的にも大きなダメージを受けました。感染するかも知れないという不安と恐怖、学生との交流ができないことによる孤独に、どれだけ苦しんできたことでしょう。秋学期を迎え、不完全ながらも教室で授業が再開され、学生と話しができるようになったことを喜びたいと思います。
 昨日の続きを述べます。民主党政権が公約どおりの政策が実行できないことがわかってくると、国民は再び自民党が政権を担うべきだと考えるようになりました。何といっても戦後日本を与党として支えてきたのは自民党であり、政権交代に期待したものの、経験不足の民主党に国政を任せておくわけにはゆかないと感じるようになりました。こうした中、2012(平成24)年12月16日に行われた衆議院議員選挙で民主党は惨敗し、自民党が政権奪還を果たします。そして同年12月26日より、第2次安倍晋三内閣が発足したのです。第2次安倍晋三内閣に関しては詳細な検証と評価が必要ですが、先般2020(令和2)年9月16日まで2,822日続きました。第1次政権を含む通算の在任日数では3,188日となり、いずれも憲政史上最長となりました。持病悪化による8月末の突然の辞意表明には驚きましたが、新しく発足した菅義偉内閣のもとで、日本はどのような方向に進むのでしょうか。
 以上が私の講義受講生の同時代史です。同じように1世代遡り、ご両親が生まれた高度成長期(1950年代半ば〜1970年頃)はどのような時代だったのでしょうか。さらにもう1世代バックして、みなさんのご両親を育てた祖父母が生まれた戦後間もなくの時期の日本経済はどういった状況だったのかも興味深いところです。
 1945(昭和20)年の終戦から今年2020(令和2)年で75年の年月が経過しました。私の講義の受講生には、今後50年間、社会の中心メンバーとして活躍してもらわないといけません。その際道標となるのは、自身、ご両親、祖父母の3世代が経験してきた歴史=戦後史からの教訓ではないかと思います。名医の条件は、数多くの症例を経験していることです。これを経済の研究者に当てはめると、戦後史を丁寧に検証し、教訓を導きつつ、経済・社会の望ましい姿を描くことではないでしょうか。戦後史を扱う現代日本経済史の講義は、このような目標のもとに進めてゆきたいと考えています。

自分史を起点に考える戦後日本の歩み (1)

 秋学期の授業が目前に迫ってきて、焦りを感じています。今学期は久しぶりで現代日本経済史(=戦後史)の授業を受け持つことになり、夏休み期間中は、戦後史の文献を勉強していました。
 経済学部で学ぶみなさんにとって戦後史は、明治・大正・昭和戦前期に比べると、取り組みやすいのではないかと思います。というのも、最近20年くらいの出来事は、自らが経験していることであるし、復興〜高度成長期のエピソードに関しても、祖父母やご両親から間接的に聞く機会があるからです。戦後史について学ぶことは、自身、ご両親、祖父母の3世代がどのような時代を生きたかを知ることであり、今後私たちが進むべき道を探る上でも、極めて有意義であると考えています。
 まず現在20歳前後で私の講義の受講生は、2000(平成12)年前後の生まれです。この20世紀と21世紀の変わり目の頃は、世界がITバブルに沸いていました。情報通信技術の発展が目覚ましく、情報が瞬時に世界を駆け巡り、eコマースが普及し、インターネットで生産者と消費者が直接結びついて、従来のビジネスモデルが激変します。産業構造は、造船・鉄鋼・石油化学といった重厚長大型から、軽薄短小に移行し、ITに象徴される知識集約型の企業が急成長してゆきました。しかしITバブルは長続きせず、2000(平成12)年末に崩壊し、景気は悪化してゆきました。
 2001(平成13)年4月、小泉純一郎内閣が誕生し、2006(平成18)年6月まで続きます。小泉首相は「聖域なき構造改革」をキャッチフレーズに競争を促進し、郵政民営化も実現しますが、経営基盤の脆弱な企業は次々と淘汰され、格差拡大が深刻になってゆきました。
 一方世界情勢に目を向けると、2001(平成13)年9月11日、アメリカで同時多発テロが勃発しました。アメリカ繁栄のシンボルである世界貿易センタービルが炎上し、倒壊してゆく光景を目の当たりにした私たちは、計り知れない大きな衝撃を受けました。同年10月よりアメリカのアフガニスタン侵攻が始まり、中東情勢は混迷を極めます。
 2008(平成20)年9月、リーマンショックが世界を襲い、「100年に一度の不況」と呼ばれるほど景気が落ち込みました。このリーマンショックと時を同じくして麻生太郎内閣が成立し、様々な対策を打ち出し、景気を立て直そうとしますが、小泉内閣時代の競争促進政策により、家計も企業も疲弊しきっており、厳しい逆境に耐えられるだけの抵抗力は残っていませんでした。
 国内の政治動向に話を戻しますが、小泉首相退任後、自民党の短命政権が続きます。第1次安倍晋三、福田康夫、麻生太郎の各政権は、ほぼ1年で幕を閉じ、政治の不安定さが大問題となりました。
 格差拡大、自民党政権の迷走が続く中、国民の支持は次第に自民党から離れてゆきました。民主党の鳩山由紀夫代表は、小泉氏とは180度異なる「友愛」をスローガンとし、「温かさとやさしさ」で経済を立て直すことを訴えて国民の共感を得、2009(平成21)年9月、民主党・鳩山由紀夫内閣が誕生しました。鳩山氏は「戦後行政の大掃除」を旗印に、マニフェストで細かく政策を定めてゆきました。中でも、子ども手当や高速道路の無償化は目玉政策として注目されましたが、財源の裏付けがなく、すぐに行き詰まりました。さらに「コンクリートから人へ」の理念のもと、公共事業を大幅に削減しますが、乗数効果の大きな公共事業の削減は、景気を冷え込ませることになりました。鳩山氏の退陣後、菅直人、野田佳彦と民主党の首相が続きますが、いずれも短命に終わっています。

レポート評価を終え、夏休みに入りました

 今学期は関学に勤めてはじめてレポートで成績評価を行うことになりました。担当科目は3科目で、受講生は400名を超えました。それぞれの科目で10枚程度の長さで書いてもらいました。以前述べましたが、コロナ騒動前の経済学部における定期試験は、原則持ち込みなしで、筆記試験を行っていました。それが、全面的にレポート試験に変わったわけですから、学生・教員の双方に、戸惑いが生じたのではないかと思います。
 レポート試験には、様々な大変さがあります。まず学生は、講義内容を記憶して試験に臨み、制限時間内に答案をまとめるプレッシャーから解放されるメリットはあったものの、資料や文献に基づいて課題の回答を作成するには、かなりの時間を要したはずです。その上、10科目ほどの提出が7月後半に集中していたとすれば、相当な負担であったに違いありません。一方採点する側の私も、7月後半から8月上旬までのほぼ1ヶ月間、全エネルギーをレポート評価に投入しました。LUNAで受講生のファイルを開くだけでも手間がかかり、約10ページの文章が、講義内容を反映して正確にまとめられているか判断しなければいけません。小規模クラスのゼミではいつも経験している作業ですが、400名を超える講義科目で実行するのは、さすがにつらく、連日へとへとになって倒れそうでした。
 受講生から提出されたレポートを読む前、私が懸念していたのは、一定数の学生が、ネット記事からの切り貼りや、テキスト・参考資料の丸写しで対応するのではないかという点でした。しかしそのような学生はほとんど見当たらず、大多数が講義内容をよく理解し、ポイントを的確に整理してありました。私は大学での学びの本質は、講義内容を確実に理解し、自分の言葉に置き換えて他人にわかりやくす説明し、納得してもらえる能力を磨くことだと考えています。こうしたポリシーに基づき、以前より筆記試験の場合も、正誤判定やカッコ埋め、選択肢の問題は出題せず、記述式問題を出してきました。今回のオンライン講義とレポート試験の経験で、私の目標やポリシーを一段と強化することができましたが、受講生のみなさんは、期待どおりよく勉強し、理解力の定着をはかることに努めてくれたと感じました。
 このような高い学習成果が得られた要因を少し考えてみました。まず思い当たるのは、コロナ感染拡大にともなう学生の意識の高まりです。歴史系の科目では、中世ヨーロッパにおけるペストの蔓延、近代日本における簡単な衛生行政史、大正期のスペイン風邪の流行などを取り上げ、人類は過去にも様々なパンデミックと格闘し、生活様式の変化や医療の発展に結び付いてきたことを紹介しました。そして今回のコロナ騒動でも、人類と感染症との闘いから教訓を得て、ショックを最小限に食い止める知恵を絞らなければならないと強調しました。経済の歴史と思想および日本経済史気亮講生は、コロナの体験を通じ、歴史を分析し、歴史からの教訓を導くことの重要性を、深く心に留めて講義に臨んでくれたのだと思います。一方医療をめぐる諸問題の受講生は、日々報道される感染状況や政府の対応を通じ、日本の医療の脆弱性や、日本の社会・経済が抱える課題が明らかになり、医療改革と、その裏付けとなる財政や社会保障改革が急務であることを強く認識できたと思います。このように考えると、今学期私が担当した3科目は、コロナに触発され、その存在意義を確かなものとし、受講生の努力と相まって、十分な成果を得ることができたといえます。
 いまひとつ指摘しておきたいのは、コロナでサークル活動やアルバイト、旅行や食事会など、大学生活の各方面で自粛を余儀なくされたことです。大学生らしい楽しい時間を過ごす機会が奪われたのは気の毒ですが、その分、学びに十分な時間を費やしてくれたのだと思います。経験的に学習時間を長く割くほど、学びの成果は高まります。今学期の受講生は、コロナのもとでの不完全な学習環境を克服し、かなり熱心に学びと向き合ってくれたと感じます。深甚の敬意を表したいものです。
 レポート評価が終わり、ほっとして夏休みを迎えていますが、特に心弾む予定があるわけではありません。stay home で乱雑になっている家の片付けをして環境を整え、go to 研究室で、秋学期の講義準備や、調べものに励むつもりです。コロナが完全におさまり、世の中が正常化するまでは、外出は最小限におさえ、自宅か研究室で研究の遅れを取り戻すことに専念するのが、この夏休みの過ごし方です。

研究演習脅講生のみなさんへ 卒業論文の準備についての連絡です

あっという間に8月に入りました。今学期は全面的なオンライン授業となり、みささんつい先日までレポート作成に忙しくしていたことと思います。ようやくレポートから解放され、夏休みを迎えますが、今夏はコロナ感染拡大が止まらず、旅行を楽しむという雰囲気ではありません。特に4年生のみなさんは、就職活動も終わり、就職先が決まってきた頃だと思います。新年度からの社会人デビューに備え、自分が働く業界の動向と、その業界がコロナ蔓延に動揺する日本経済・世界経済からどのような影響を受け、いかに立ち向かうべきか熟考する機会にしてほしいと思います。
 さて例年のことですが、4年生のみなさんにはそろそろ卒業論文の準備にかかってほしいと思います。例年なら執筆者には10月、11月、12月と、1ヶ月に1回のペースで進捗状況を報告してもらい、ゼミ生全員で議論することになっていますが、今年は当分キャンパスの閉鎖が続く見込みですから、私とのメールでの意見交換になるかと思います。
 念のためつけ加えておくと、経済学部では、卒業論文を提出しなくても卒業資格が得られる制度になっています。したがって卒論を執筆を強制するつもりはありません。下記の注意事項を参照し、個別に意思表示をお願いします。

1.卒業論文作成のための条件
 極めて根本的なことですが、卒業論文の作成にふさわしいのは、調べたいテーマを明確に持っている人です。テーマ、構想が全くなく、ネット記事の切り貼りだけで何とかなると考えている人は、書く意味がありません。
 いうまでもなく卒業論文は4年間の学びの集大成です。これまで受講してきた科目の分析手法や知識を総動員し、オリジナル性の強い研究を残したいという意欲を重視します。

2.テーマ、構想に関して
 次に重要なのは、どのようなテーマを研究するかです。何よりも、研究の意義づけがきちんと説明できるかどうかがポイントです。よくある悪い事例ですが、「ディズニーランドへ行って楽しかったので、ディズニーランドの経営を調べたい」というものです。そのような人は「経営」という何でもない言葉を、どういう切り口で調べればよいのか、ビジョンを持っていません。(当たり前の言葉ほど、慎重に使いたいものです。)さらにその運営会社がオリエンタルランドであること、大株主に京成電鉄や千葉県がいることすら知らないようです。研究テーマの選定には熟考が大切で、思いつきや直感で決めるのは望ましくありません。
 ところでテーマを選定する際に最も重視すべきは、文献や先行研究が豊富かどうかです。以前から学生が好むテーマは、スポーツやイベントの経済効果、ゲームやレジャー産業などですが、調べる手掛かりがほとんどありません。個人的には、研究の蓄積や文献が豊富なオーソドックスなテーマを、手堅く研究するのがよいと考えます。

3.作業の進め方
 分量の目安は1,000字×20枚程度です。それだけの論文を来年の正月休み明け早々に提出しなければいけませんので、計画的な準備が必要です。今年度は大変不自由ですが、何回かは図書館へ出向いて文献を借りてこなければいけませんし、パソコンに向かって原稿を書く時間の確保も大切です。ネットを有効に利用するのは好ましいことです。しかし出どころがはっきりしない記事の切り貼りで字数を稼ぐのは避けてください。また、たとえ正式な論文であっても、まる写しは認められません。自分の頭でよく考え、自分の言葉に置き換えて表現する姿勢が求められます。したがって、ほかの用事があって忙しく、十分な時間を確保するのが困難な人は、卒論執筆には向きません。
 秋学期10〜12月、毎月1回ペースで途中経過を報告してもらいます。原則、メールでの意見交換になりますが、臨機応変に個別対応もします。キャンパスの閉鎖が解除されたら、正規のゼミのやり方に戻し、ゼミ生との議論も行います。担当教員が進捗状況を把握できるよう、緊密なコミュニケーションをとれることを重視します。

4.論文の構成
 ゼミで普段から強調してきた論文の基本スタイルは、次のとおりです。
 まず「はじめ書き」で、テーマ選定の理由を明示してください。無数のテーマの中からなぜそのテーマを選んだのかに関し、アピールが大切です。そして従来の研究でどこまでが明らかになっているかを示し、その研究を行うことによって、自分がどのような貢献ができるのか考えましょう。
 次に本論でしっかり分析を行います。要するに課題を設定し、証拠を示しながら、なぜそうなったのか、理論的・実証的に解明してゆくのです。章や節のはじまりでは、今から何を述べたいのか、はっきりさせてください。いきなり、「何年、何々の事件が起こった」というような書き方からスタートする人が多いのですが、何を主張するためにその事件を取り上げるかという説明がないと、文意が通じません。
 形式的には4〜5章に分けるのが適当です。各章はさらに節に分け、適切な見出しをつけてください。段落や切れ目のない長い文章は読みづらいので、必ず節を作り、今から述べることがわかる見出しを忘れないようお願いします。
 最後は全体を通じて何が明らかになったのか、締めくくりを(まとめ)をしっかり書いてください。

5.卒論計画書の提出
 8月になりましたので卒論を書く予定のゼミ生は、準備を始めましょう。まずテーマを設定し、A4用紙1枚程度で「はじめ書き」をまとめてください。その後章立て(可能なら節も)決定してください。また同時に図書館に出向いて文献を収集し、参考文献リストを添えてください。文献の利用は必須で、ネットの利用のみでの作成は認められません。(図書館に行きづらい場合は、1,000円程度の新書を数冊購入してください。)

 卒論執筆希望者は、さしあたり上記の卒論計画書を、9月13日(日)までに私宛にメール(添付ファイル)で送付してください。連絡がない場合は、卒論作成の意思がないものと判断します。

受講生のみなさんへ レポートの提出期日、延長します

 今学期のオンライン授業、私のようなIT弱者には、かなり厳しいものがありました。まず苦労したのは、これまで普通に行ってきた対面授業においてなら言葉での説明で済んだことを、あらたまった文章に置き換える作業です。
 推敲に推敲を重ね、やっと資料が出来上がっても、それをLUNAへ掲載する作業、期日を定め、受講生にレポートを提出してもらえるよう設定するのに困りました。LUNAの操作で焦っているときにかぎり、接続障害が起きてシステム自体が利用できないという経験もありました。こういうとき、自分のパソコンが壊れたのかとパニックになってしまい、仕事が手につきません。
 ようするに講義内容ではなく、機材の操作で頭を悩ませなければならないのが、オンライン授業の難点です。では、IT弱者がIT社会をどう生き抜けばよいのでしょうか?私がたどり着いた結論は、援助を受ける力、すなわち「受援力」をフルに活用することです。パソコン操作に行き詰まったらすぐに事務室に走り、目の前で操作の実演をしてもらって覚えるのです。無知な者は無駄な抵抗をせず、教えてもらうのが一番です。この半年間、事務室のみなさんのご親切な支援に助けられ、辛うじて乗り越えることができました。
 パソコン操作は不注意でちょっと違ったキーに触ると、全然知らない画面になってしまったり、操作を失敗すると、やり直しがきかない場合もあります。相手が人間なら多少の思い違い、言い間違いはすぐに修正できますが、機械の場合はそうはいかないので厄介です。
 さて年初以降のコロナの流行は、何よりも「教育危機」だと認識しています。教室で授業が実施できない、質問や討論の機会がない、図書館も利用できない等々の現状を取り上げただけでも、事態は深刻です。コロナを一段と拡大させる可能性が高い旅行を推進する前に、医療体制の強化や教育の充実に税金を使うべきです。実験などが多い理系の学部では、文系の私たち以上に研究ができず困惑しているに違いありません。文系学部においては、当面のところ、オンライン授業を前進させるしかないと考えますが、それならばもっと、オンライン教育への投資を増やすべきです。例えば、機材の操作に困ったときに備え、24時間の相談窓口を設けるとか、大手予備校の授業のように、講義の光景を撮影し、映像を体裁よく編集して、学生に配信するといった対策を講じるべきだと思います。オンライン授業の環境は、どの大学でもまだまだ充実させる余地があるはずです。感染拡大リスクを冒し、一時的な経済効果を求めるよりは、医療や教育・研究にお金をつぎ込み、長期的視点での経済発展を目指すほうが、よほど効果的ではないでしょうか。
 私の担当科目3科目、それぞれ期日を設けレポートの提出を求めています。現在採点の途中ですが、全体として教科書や資料をよく読み、講義の主旨に即したレポートを提出してくれています。
 しかしその後何名かの学生から問い合わせがあり、LUNAの操作がうまくゆかない、氏名の書き忘れなど形式的な不備、出題の意図を取り違えてしまった等々のメールが届きました。とくに1年生は、大学へ来て一度もパソコン操作を習っていないのに、課題を間違いなくLUNAで提出せよというのは酷な注文です。また焦って思い違いをしたり、時間切れでうまくまとめられなかった学生もいるようです。ともかく事情は色々ですが、大学生になってはじめてのレポートテストで、期日厳守で完璧を求めるとは気の毒です。少々遅れても、雑ではなく、きちんと練られたレポートを提出してもらい、不合格者を少なくしたいと考えています。そこで全科目のレポートの提出期限を、7月31日(金)までに延長します。LUNAも、2〜3日予備日を設けてありますが、LUNAで提出できない場合は、遅くなった事情を簡単に添え、メール(添付ファイル)で直接私に送ってください。採点基準は内容の充実度です。時間をかけてテキストや資料を読み、上手にまとまっているレポートには高得点を出します。反面何も考えずに切り貼りしただけのもの(=そういうレポートは思いもよらない誤字脱字が多々見受けられます)は、採点対象外となります。

レポートのまとめ方についてひと言

 コロナがおさまらず、今学期は一度も教室で授業ができずに終わりました。緊急事態宣言が解除され、休業していた施設が営業を再開し始めた途端、また感染者が増えてきており、みなさん大変不安を感じていることと思います。一方九州地方を襲った豪雨で、甚大な被害が出ています。
 このようなタイミングで政府は、「Go To トラベルキャンペーン」を行います。それもすんなり進めるわけではなく、唐突に東京を除外し、そのキャンセル料を政府が負担する、しないで迷走したりと、混乱が増幅するばかりです。私は移動の活発化化が、コロナが広がる最大の要因と認識しています。だからこそ政府も、連休頃には、接触を8割削減せよと、やかましく言っていたはずです。旅行を推進するなら、そのときと今で、どう状況が変わったか、説明が必要です。このまま感染拡大が続けば、私たちの関学も、秋学期以降もオンライン授業を余儀なくされそううです。4月からキャンパスを閉鎖して我慢してきた努力が、水の泡になってしまいます。旅行による需要喚起も重要ですが、このような「非常時」に行うべきではないでしょう。小池知事の言葉を借りれば、「暖房と冷房を同時に動かしている状態」です。今は最低限の外出にとどめ、コロナを完全におさえこんでしまうことが最優先です。
 さて今みなさんは、レポートの作成に追われていることかと思います。ゼミはともかく、講義科目においてレポートで成績評価を行うのは、20年を超える関学生活のなかで、はじめての経験です。レポートと筆記試験、どちらが取り組みやすいかと尋ねた場合、大部分の学生はレポートと答えるでしょう。その理由として、覚える必要がなく、資料を参照しながら作成できること、また、準備期間が十分あり、定期試験のように時間切れになる心配もないことが挙げられると思います。とはいえレポートも、それなりに注意してまとめてもらいたいと思います。
 まず重要なのは内容です。ほんの数行の課題ですが、考えるのに相当手間がかかっています。というのは、講義の全体像を反映した出題にし、一部分を丸写しするだけでよいという形にならないようしたかったからです。テキストや資料を熟読し、出題・採点者が何を求めているか、意図を汲み取ってもらうことがレポート試験の主眼です。
 内容に関しさらに付け加えると、各設問に対し、「なぜそうなったのか」という証拠の提示や説明力を重視します。つまり様々な問題が起こる背景に何があるか、できるだけ多くの事例を示しながら、結論を導いてほしいと思います。
 次に歴史に関して言うと、時代の流れを正確に把握し、それぞれの事件が起こったきっかけ、展開、結果をスムーズにまとめてもらいたいと思います。
 形式面では、筆記試験のときは濃い字で、丁寧に書いてほしいと口を酸っぱくして言ってきました。うすい字、乱雑な字は読みづらく、時間のロスです。今回はそういう心配はありませんが、これまで演習科目でよく見てきたのは、改行や読点のない文章です。1ページ全然改行のない文章、何行も読点なしで続く文章は、途中で読む気力が失せてしまいます。適当な長さで段落を変える、テンを打って読みやすくする配慮が必要です。また冒頭、この項目では何を述べようとしているかを明らかにし、最後は結論で締めくくってあると明快です。主張の大きなかたまりに対しては、見出しをつけてほしいものです。形式面でもちょっとした配慮があるかないかで、読み手に与える印象はずいぶん違ってきます。
 私は大学生として最も求められるのは、知識を自分の頭の中で再編し、まとめ上げる能力だと考えています。したがって筆記試験では、記号や○×式の問題は出していませんし、明らかに切り貼りだけというレポートは採点対象外にしています。コロナ前、経済学部のルールでは、成績評価は必ず筆記試験で行うよう求められていました。しかしレポート作成の意図が学生に正確に伝っているのなら、今学期のようなレポート評価を実施しても、全く問題ないと感じています。

2020年度 学際トピックス・医療をめぐる諸問題 レポート課題

【2020年度 学際トピックス・医療をめぐる諸問題 レポート課題】 

※ 下記の【課題1】〜【課題3】について、指定された分量(A4用紙1枚の設定を1,000字程度としたときのページ数)で解答を作成してください。なお【課題3】(4)を除いては、ひとりの先生の資料に依拠するだけではなく、複数の先生の資料をまとめた内容で論じてください。

【課題1】

日本の医療に関し、次の(1)〜(3)の設問に答えなさい。

(1) わが国の国民医療費は年々増大が続いています。その要因について、高齢化の進展、疾病構造の変化、医療の高度化をキーワードに論じなさい。(1〜2枚程度)15点

(2) 国民医療費の内訳をみると、患者の自己負担比率は低く、約半分が各医療保険組合からの保険料(公的医療保険制度)、約3分の1が公費で賄われている状況です。そこでまず、わが国の公的医療保険制度の種類と特徴について論じ、その給付と患者負担の間には、どのような問題が生じているか述べなさい。(1〜2枚程度)15点

(3) 国民医療費を抑制し、公的医療保険制度を持続可能なものにしてゆくためには、どのような改革が必要でしょうか。講義内容をふまえ、あなたの見解を述べなさい。(1〜2枚程度)15点

【課題2】

 病院の経営形態は、民間経営と自治体経営(公立病院)の2つに分類されます。このことを念頭に置いて、次の(1)、(2)の設問に答えなさい。

(1) 一般に民間病院は公立病院と比較して、経営面で不利な立場に置かれていると言われています。具体的にどのような問題が起こっているか論じなさい。(1枚程度)10点

(2) 民間病院と比べ有利な運営条件にあるはずの公立病院ですが、様々な課題を抱えており、存続が危ぶまれています。今公立病院がどのような問題に直面しているかについて述べ、それを解決するためにどういった改革が考えられるか提言を行いなさい。(1〜2枚程度)15点

【課題3】

 次の(1)〜(4)の設問のうち、2問選択して解答しなさい。なお(1)〜(4)とも分量は1枚程度、配点は15点とします。

(1) もしあなたが医療従事者に対する接遇の研修を行うことになった場合、どのような目標を定め、どういったプログラムを組み立てますか。4月30日の山中先生、および6月18日の鈴木先生の講義内容をふまえ、提案しなさい。

(2) Society5.0の概要を述べたのち、この社会にふさわしい医療・介護の姿(未来像)について論じなさい。その際、神戸医療産業都市で行われている取組についても言及してください。

(3) 明治以降令和に至るまでのハンセン病に対する国の政策をたどり、国家賠償訴訟で患者とその家族が勝訴を勝ちとるまでの経緯を説明しなさい。またその経緯をふまえ、新型コロナウイルスの感染拡大で予想される社会問題に関して指摘し、国の政策や私たちの行動で注意を払うべき点を論じなさい。

(4) 2005年4月25日に起きたJR福知山線の脱線事故における兵庫医科大学病院の対応をたどり、規模が大きな災害・救急医療の特徴およびその留意点について、あなたの見解を述べなさい。

【備考】

 (現颪魯錙璽廛蹐悩鄒し、文書名は「医療問題 課題 カッコ書きで各自の氏名」というスタイルにしてください。分量は各課題で指示したとおりです。なお文章はいくつかの段落に区切り、適当な見出しをつけてください。冒頭、学部、学年、学生番号、氏名を忘れないように。
◆。海弔硫歛蠅錬韻弔離侫.ぅ襪砲泙箸瓩督鷭个靴討ださい。なお新しい課題に移るときは、それがわかるよう、2〜3行行間をあけてください。
 解答は各先生方の配付資料に基づいて作成してください。それ以外の文献等の参照は必要ありません。
ぁ…鷭个LUNAへお願いします。期日は2020年7月26日(日)まで。
ァゝ震篥世魯瓠璽襪婆笋す腓錣擦討ださい。

2020年度 経済の歴史と思想 レポート課題

【2020年度 経済の歴史と思想 レポート課題】

※ 下記の【課題1】〜【課題4】について、指定された分量(A4用紙1枚の設定を1,000字程度としたときのページ数)で解答を作成してください。

【課題1】

 民主主義は私たちの経済・社会が追求してきた「普遍的価値」といえます。しかしその獲得に至るまでの道のりは、決して平坦なものではありませんでした。この点をふまえ、次の(1)、(2)の設問に答えなさい。

(1) エリザベス1世の死去からチャールズ1世の専制政治の時代、ピューリタン革命、王政復古を経て、名誉革命に至るまでの経過を説明しなさい。(2枚程度)15点
(2) 名誉革命の結果、近代市民国家が成立することになります。近代市民国家のいくつかの特徴を挙げ、経済発展にどのような形で結びついているか説明しなさい。(1枚程度)10点
 
【課題2】

 イギリスの産業革命について、次の(1)〜(4)の設問に答えなさい。

(1) 産業革命前の17世紀半ばから18世紀半ばにかけて、農業部門ではどういった発展・効率化がみられたか説明しなさい。(1枚程度)10点
(2) テキストp.54表5−1およびp.57図5−2、p.58表5−2を参照し、17世紀から18世紀にかけて、イギリスの輸出入動向にどのような特徴や変化がみられたか論じなさい。(1〜2枚程度)15点
(3) 綿工業または製鉄業のどちらか一方を選び、産業革命の展開過程を述べなさい。(1〜2枚程度)10点
(4) 産業革命によるひずみを明らかにし、現代社会が教訓とすべき点を指摘しなさい。(1枚程度)10点
  
【課題3】

 次の(1)、(2)の設問のうち、どちらか一方を選択して解答しなさい。

(1) 荘園制、ギルドシステム、経済思想に注目し、伝統的社会において経済が停滞していた要因について述べなさい。(2枚程度)15点

(2) スペインが覇権国としての地位を築き、やがて弱体化してオランダにその地位を奪われるまでの経過をとりまとめなさい。(2枚程度)15点

【課題4】  ← 資料準備中です。先に1〜3の課題に取り組んでください。

 次の(1)、(2)の設問のうち、どちらか一方を選択して解答しなさい。

(1) 分業、自由貿易、夜警国家、市場メカニズムをキーワードに、アダム・スミスの経済学説を説明しなさい。(1〜2枚程度)15点

(2) 経済が不況に陥った場合、政府はどのような役割を果たすべきでしょうか。ケインズの唱えた財政・金融政策(ケインズ政策)の概要を説明しなさい。(1〜2枚程度)15点

【備考】

 (現颪魯錙璽廛蹐悩鄒し、文書名は「経済の歴史と思想 課題 カッコ書きで各
 自の氏名」というスタイルにしてください。分量は各課題で指示したとおりです。
 なお文章はいくつかの項目に区切り、適当な見出しをつけてください。冒頭、学部
、学年、学生番号、氏名を忘れないように。
◆〆鄒にあたっては、テキストと補足資料をまとめるだけでかまいません。他の文
 献や資料の参照は求めません。
 提出はLUNAへお願いします。期日は2020年7月23日(木)まで。
ぁゝ震篥世魯瓠璽襪婆笋す腓錣擦討ださい。

2020年度 日本経済史機.譽檗璽伐歛

【2020年度 日本経済史機.譽檗璽伐歛蝓

【課題1】
 戦前の日本の歩みを顧みると、経済の近代化には成功したものの、精神的価値の近代化には失敗し、民主主義が浸透しなかったため、最終的には太平洋戦争への道を歩むことになりました。
 明治維新以降、わが国の指導者たちはどのような国づくりを目指し、政策を進めてきましたか。政治・外交面の主な出来事を追って評価しながら、太平洋戦争に至るまでの経緯をまとめてください。(45点)

【課題2】
 適当な時期区分を行い、1880年代半ばから1930年代半ばに至るまでのわが国の景気動向を概観してください。その際、景気の転換点を明示し、景気が上昇または下降することにつながった経済的要因を詳述してください。(40点)

【課題3】
 あなたが経済学部の1年生に日本近代史(明治〜昭和戦前期)を学ぶことの意義や重要性を説明するとしたら、どのような点を強調しますか。春学期、この授業を受講した経験に基づいて述べてください。(15点)

【備考】

 (現颪魯錙璽廛蹐悩鄒し、文書名は「日本経済史機_歛蝓.ッコ書きで各自の氏名」というスタイルにしてください。分量は課題1、課題2に関してはA4用紙5〜6枚程度、課題3については同じく1枚程度を目安とします。(1ページあたりの字数は約1,000字。各自の慣れた書式設定でかまいません。なお文章はいくつかの項目に区切り、適当な見出しをつけてください。冒頭、学部、学年、学生番号、氏名を忘れないように。
◆〆鄒にあたっては、冊子と補足資料をまとめるだけでかまいません。他の文献や資料の参照は求めません。
 提出はLUNAへお願いします。期日は2020年7月19日(日)まで。
ぁゝ震篥世魯瓠璽襪婆笋す腓錣擦討ださい。

ハンセン病と感染者差別

 「医療をめぐる諸問題」水島昇先生の担当回でハンセン病が取り上げられました。そこで今回は、ハンセン病と感染者差別について考えたいと思います。まずハンセン病とはらい菌に感染することにより、皮膚に斑点ができたり神経の感覚がなくなるといった症状が出る病気です。重症化すると手、足、顔面など身体の一部が変形することもあります。
 ハンセン病を引き起こすらい菌は1873(明治6)年、ノルウェーの医師ハンセンによって発見されています。しかし病状や治療に対する正しい情報が広まらず、特定の家族に発病するとか、遺伝する病気と恐れられ、政府が長年隔離政策をとってきたことも重なり、患者は厳しい差別を受け偏見の眼が向けられました。
 松本清張の名作『砂の器』の背景にあるのはハンセン病です。刊行されたのは1961(昭和36)年の高度成長期で、日本人の生活は目覚ましく豊かになってゆきます。しかしハンセン病への根強い忌避の感情は、戦前から一向に変わらず継続していました。
 『砂の器』は刊行後何度もテレビ放送されており、ストーリーをご存じの方も多いと思います。主人公は和賀英良という有名な若手作曲家です。彼には絶対に知られたくない過去がありました。父親本浦千代吉がハンセン病で、地元石川の寒村を追われ、父親と放浪の旅に出ます。(和賀の本名は元浦秀夫です。)父子はやがて島根県・奥出雲の亀嵩にたどり着きます。そこで善良な巡査・三木謙一に保護されました。三木は千代吉を療養所に入れ、秀夫は自分の手元で育て、篤志家をさがして養子縁組してもらうつもりでした。しかし秀夫はいつの間に三木の元を去り、行方がわからなくなります。秀夫のその後の詳しい足取りは不明ですが、過去を消すために戸籍を捏造し、新しく和賀英良としての人生を歩んでいたのでした。
 長い年月を経たのち、三木謙一は東京で和賀英良(=元浦秀夫)と再会します。当時音楽家として成功していた和賀は、三木が自分の過去やハンセン病の父親がいることを世間に話すことを恐れ、口封じのために殺してしまうのです。和賀が殺人を犯すまで追い詰められた背景を考えると、日本社会がハンセン病患者に対し、非科学的な差別と偏見の感情を強く抱いていたことが窺えます。
 ここでハンセン病をめぐる主な出来事を整理しておきましょう。
 ハンセン病が恐ろしい伝染病と認識され、国が患者の隔離政策を開始したのは1907(明治40)年です。この年法律「癩(らい)予防ニ関スル件」が制定されました。
 1943(昭和18)年、アメリカで治療薬「プロミン」が開発され有効性が確認されます。プロミンの開発でハンセン病は「治る病気」となり、その情報は戦後になって日本にも伝わったはずです。しかし1953(昭和28)年、 「らい予防法」(新法)が制定され、隔離政策は継続されました。
 1996(平成8)年になって「らい予防法」が廃止されます。国が治療法が確立されたと判断し、ようやく隔離政策をやめたのです。
 1998(平成10)年、元患者13人が国に損害賠償を求め熊本地裁に提訴しました。そして2001(平成13)年5月11日、 熊本地裁が国の隔離政策を違憲として、国に総額約18億円の賠償を命じます。当時の小泉純一郎首相はハンセン病問題の早期解決を重視し、控訴はしませんでした。同年6月には、坂口力厚生労働大臣が療養施設を訪れ、元患者に謝罪しました。
 2016(平成28)年、元患者の家族が熊本地裁に国家賠償訴訟を起こします。そして2019(令和元)年、熊本地裁が国に賠償命令を出します。安倍晋三内閣は控訴せず、判決は確定しました。
 以上明治から令和に至るまでのハンセン病政策の歴史を整理しました。プロミンが開発されて以降、ハンセン病は「治る病気」になっていたはずです。にもかかわらず国の政策として患者を隔離してきたことで、社会の偏見や差別意識が助長され、彼らの人格と尊厳がどれだけ深く傷つけられたかわかりません。失われた時間は決して金銭で償えるものではありませんが、私たちは教育や研修を重ね、正しい情報を広げる努力を行い、二度と同じ失敗を繰り返さないように心掛けなければいけません。
 いまひとつ肝に銘じておきたいのは、政府の行動を厳しくチェックすることです。政府の失策はハンセン病政策だけではありません。つい先日導入を断念しましたが、イージス・アショア、2基配備すれば6,000億円、関連施設も含めるとその3倍はかかると言われていました。不備だらけのシステムにこれほど巨額の予算をつぎこもうとしていたことには唖然とします。普天間基地の辺野古移設費は当初想定していた2倍の9,000億円が投じられます。沖縄県民が強く反対している事業にここまで膨大な費用をつぎ込むのはどういう神経でしょうか。私たちがコツコツ納めた税金がこのような使われ方をしているのかと思うと、やりきれない気持ちです。政府への信頼は遠のくばかりです。

「政策」いろいろ

 オンライン授業は何となくこのまま今学期いっぱい続きそうです。友人や教員と会うことすら許されず、図書館はじめ学内の施設も利用できません。いつになったら安心して教室で授業ができるのかと、強い焦りを感じるようになりました。ほぼ2ヶ月不完全な体制で授業をやってきましたが、「コロナのため、例年より学習量が少なくなった、成果が得られなかった」という結果にはしたくありません。私の取組は、詳しい補足資料の作成と、受講生に質問を促し、丁寧に回答することです。政府のコロナ専門家会議風に、「新しい学習様式」と名付けたいところですが、受講生の積極的な授業参加のおかげもあり、かなりうまく軌道に乗ってきたと実感しているところです。
 さて今日はある学生とのやりとりをご紹介します。それは「政策」という一見何でもない言葉をめぐってなのですが、日本経済の現状や近現代史を考えるとき、かなり幅広い視野で使う必要があります。
 はじめに「政策」という言葉を定義しましょう。私なりに解釈すると、「政府が目標を達成するための手段」と考えています。最もオーソドックスな政策は、経済政策です。普通経済政策というと財政政策と金融政策を指し、前者は公共事業の増減や税制を通じ、景気をコントロールします。金融政策は日銀が金利や経済に流すマネーサプライの量を調整し、景気に影響を与えます。景気が悪いときは緩和政策をとって経済を活性化し、過熱気味のときは引き締め政策で対応して、行き過ぎを是正します。
 ここで直近の日本の財政・金融政策を評価してみましょう。特にいま、企業も国民もコロナで大変な思いをしており、企業活動や生活の継続のため、金銭面でのサポートが要請されています。しかし政府の対応があまりりにも小粒で遅いと批判されるのは、平時の財政・金融政策がうまくいっておらず、日本経済全体に、逆境に抵抗できるだけの強い体力が備わっていないと判断せざるをえません。税金のムダづかいがなければ、困っている人たちにもっと支援ができたはずです。金利がせめて3%くらいあり、預金をしたら多少の利子を受け取れる環境であったなら、非常時備え、もっと貯金ができていたに違いありません。超低金利・マイナス金利政策の弊害ばかりが目に止まります。金融の正常化が急がれます。
 そのほか経済でよく出てくるのは、輸出入を調整する貿易政策です。戦後経済のグローバル化に歩調を合わせ、各国はできるだけヒト・モノ・カネが国境を越えて自由移動できるよう、自由貿易政策を進めてきました。しかしいま世界のリーダー国アメリカが掲げている自国第一主義は、輸出拡大・輸入抑制の保護貿易政策、あるいは重商主義政策といえます。
 ミクロ経済学との関連では、競争政策が重要です。すなわち市場環境を競争的な方向で維持し、経済成果を挙げる政策です。もっとも競争政策は、なかなか手加減が難しいと感じています。徹底すると、強いところしか生き残れません。流通ならセブン&アイグループとイオングループ、衣料ならユニクロ、家具ならニトリといった具合です。巨大企業が支配している分野に参入するのは極めて困難です。しかし一方で日本の市場は非競争的であるとも言われています。特に政府発注事業は、有力政治家と特定業者との癒着が強く、競争すると例えば1,000万円でできる事業を、1,500万円で発注している側面があります。差額500万円は私たちの税金の負担です。私たちは誰もが高い税金を納めているわけですから、政府の税金の使い方に、厳しい目を向けるべきです。
 次に経済以外に注目すると、外交政策が看過できません。要するに海外諸国とどう付き合ってゆくかという話になります。日米関係は重要であるのはいうまでもありませんが、とても対等な関係とはいえません。武器の爆買いや普天間基地の辺野古移設は本当に日本のためでしょうか。問題発言・問題行動で、アメリカ社会の格差・貧困・差別を助長し、分断を促進しているトランプ大統領には、各国首脳は距離を置いて付き合っています。しかし日本の首相だけが、おかしいことをおかしいと言おうとしません。ロシア、韓国・北朝鮮、中国といった近隣諸国との関係もうまくいっていない状況です。最近の日本外交で、どんな「国益」が得られたのかと問われても、残念ながら何ひとつ思い浮かばないのです。
 最後に文化政策を取り上げておきたいと思います。これはいうまでもなく、芸術や文化に対する支援です。私は以前から文化政策も不十分だと感じてきました。経済効率第一主義を強調するあまり、芸術・文化は役に立たないもの、不要不急のものとみなされ、支援が後回しにされる傾向が強まっています。名品を所蔵している博物館・美術館が休館に追い込まれているのも深刻です。
 長くなりましたが、歴史を見る場合でも、現代社会を分析する場合においても、「政策」にはいろいろあり、幅広く把握する必要があります。そしてそれぞれの時期に、どのような目標が掲げられ、それを達成するためにどういった手段が用いられ、どの程度成果があがったのか、きちんと検証することが肝要です。受講生からの何気ない質問を契機に、以上のようなことを考えた次第です。

理解力(読解力)・質問力・構想力を鍛える

 6月が目前に迫ってきました。緊急事態宣言が解除され、社会は少しずつコロナ前の姿に戻ろうとしています。ただ私たちのオンライン授業は今学期いっぱい続きそうです。オンライン授業に切り替わり、決まった時間に教室へ行ったり、会議に出席しなくてもよくなったという意味で体は楽です。しかし私の場合、6種類(講義科目3つ、ゼミ2つ、大学院1つ)について、補足資料の作成や提出物へのコメントを行わなければならず、研究室で長時間調べものをしたり、パソコンでの作業に追われる忙しい毎日です。
 オンライン授業、ほぼ2ヶ月行っていますが、学生に二極化現象が起こっているのではないかと考えます。自分で時間割を作り、配付資料をよく読み、課題をきっちりこなしている学生と、資料の勉強を後回しにし、課題の作成も、ネットからの切り貼りで簡単に済ませておこうという学生との二極化です。特に気になるのは、今年度に入ってからまだ一度も友人や教職員と顔を合わせていない1年生で、大学での学のスタイルを実体験できていない点です。
 さて2ヶ月オンライン授業を行う中で、理解力(読解力)・質問力・構想力の重要性を痛感しましたので、少しコメントしたいと思います。オンライン授業は基本的に配付資料(文字や音声)に基づいて進められます。対面授業との最大の違いとして、耳から聞く情報量が圧倒的に少ないこと、疑問点をその場で質問できないこと、エピソードの紹介など「脱線」がないので、話の内容が印象に残りにくいことなどを挙げることができます。同じ内容を学ぶにしても、大多数の学生は、教室での対面型の授業のほうが深く理解できると感じているに違いありません。私のこれまでの経験からいっても、いくら丁寧な資料を作成して配ったところで、授業への出席状況が良好な学生の成績はよく、欠席がちの学生の成績は悪いという傾向がはっきりしています。これは対面型授業の効果・メリットをはっきり反映していると受け止めています。
 いま私たちが直面しているオンライン授業では、出席・欠席が学習成果を左右するわけではありません。2ヶ月の授業経験からまず感じたのは、資料の理解力(読解力)を磨くことの大切さです。すなわち、配付資料をいかに念入りに丁寧に読むかが、決め手になるのではないでしょうか。LUNAから資料をダウンロードし、字づらにさっと目を通すだけでは頭に入りません。ひとつひとつの言葉に注意を払い、話題のストーリーの展開を意識し、完全に頭に定着するまで繰り返すという努力が必要なのではないかと思います。
 次に質問力も非常に重要な能力です。私はLUNAでテキストや資料を読んで疑問に思ったことは質問してほしいと訴えてきました。最初の出足は悪かったものの、最近は連日でかなり的確な質問やコメントが届くようになりました。テレビのインタビュー番組を見ていてわかるように、相手の特徴や考えていることを上手に引き出すインタビュアーと、そのような技術に乏しい人ははっきりしています。つまり的確な質問を行うには、内容をよく理解しツボをおさえ、より丁寧な説明を求めたり、話しの内容が広がるよう誘導する能力が求められるのです。これは前述の理解力(読解力)と表裏一体ともいえますが、私の担当科目の受講生のなかでも、高い質問力を備えた学生が増えてきており、確かな手応えを感じています。
 最後にレポートを読みながら、構想力を鍛えることも大切だと感じました。レポートは単にネット記事を引用して、分量だけ稼げばよいというものではありません。コロナ問題を例にとれば、時間の経過にしたがって出来事と政府の対策を整理するとか、医療現場でどのような問題が起こっており、どのような対策が必要であるか考えてみるとか、感染拡大の状況・封じ込め政策に着眼し、国際比較を行うなど、話しの組み立てを工夫することが重要です。実態や推移をおさえた後は、事実に対して自分なりの解釈やコメントも忘れてはいけません。レポートを提出を求める目的は、以上のような構想力を高めてもらうためです。なおこのような構想力のトレーニングは、少人数で行うゼミでの議論や、論文・レポートを誰かに添削してもらうほかありません。オンライン授業では少し難しいかも知れませんが、対面授業が再開されたとき、是非留意してほしいものです。
 4月はじめ、オンライン授業への切り替えが決まったときは、いったいどうなることかと戸惑いました。不慣れなLUNAを否応なしに使わなければならなくなり、これまで20年以上、チョーク1本だけを頼りに生き延びてきた私に、強烈な衝撃が走りました。しかしこうして2ヶ月経過した今、それなりのよい感触を得ています。何よりも嬉しいのは、比較的多くの受講生が、質問やコメントを送ってくれるようになったことです。様々な制約がある中で、受講生の側も最大限積極的に授業に参加してくれることは、担当者にとって一番の励みになっています。あと1ヶ月あまり、がんばらなければと、決意を新たにしたところです。

大変便利な新聞記事検索システムの紹介

 5月も半ばを過ぎてしまいました。今学期の授業はちょうど折り返し点にさしかかったことになります。
 ところで緊急事態宣言は5月6日に解除できず、今月末まで延長されました。気になるのは、6月から教室で授業が可能かどうかです。その先7月の定期試験はどうなるのでしょうか。
 ありがたいことに、兵庫県の感染者数はかなり減ってきました。それでも大学の教室は「三密」の条件がそろっていることに変わりありません。決して油断できず、学生と教職員が安心して大学生活を送れるという判断は、簡単には下せないように思います。
 さてみなさんは、オンライン授業に慣れてきたでしょうか。対面授業に比べると、何かと不自由なところも多いと思います。そこで私の担当科目では、疑問点は質問するよう求めており、なるべく詳細に回答して、消化不良が起こらないよう配慮するつもりです。
 一方でオンライン授業にはメリットもあります。資料を繰り返し念入りにチェックできるのは当然として、特に遠方から通っている人は、通学時間を節約できるため、自分の関心を持っているテーマを存分に研究できるのが何よりです。
 現在みなさんは様々な授業を履修していると思いますが、基本スタイルは、「教員の説明を聞いて理解する」であり、受け身の色彩が強いといえます。もちろん経済学の基礎固めをする上で授業の理解は非常に重要ですが、大学での学びの本来的な意義は、この基礎のもとに、自分で問題を設定し、種々の分析手法を駆使して問題を解決してゆくことだと考えます。東京の名門校私立武蔵高校のモットーを拝借すると、「自調自考」の姿勢が大切です。
 私は今のオンライン授業期間中を「STAY HOME&自調自考期間」と位置づけ、有意義に過ごしてほしいと願っています。その際、何をテーマに選び、どのように研究を進めてゆけばよいのでしょうか。おすすめしたいのは、関学図書館の新聞記事検索システムです。大変便利な機能で、主要6紙に関し、キーワードを入力するだけで、一挙に記事を拾い出すことができます。私が学生のときは、まだこれほど便利なシステムはなく、新聞をとって手間をかけて切り抜きを行い、スクラップブックに貼り付けていました。気をつけていても、重要な記事を見落としてしまい、もどかしい思いをした経験があります。しかし関学に在籍していれば、新聞をとる必要がなく、自宅にいながらにして、6つの新聞の記事を読み比べることができます。これほど恵まれた研究環境はありません。大いに活用してください。手始めに新型コロナ関連や各自が関心を持っている企業の記事を集めるのがよいと思います。

(新聞記事検索の手順)
 関学図書館のホームページ → QUICK LINK よりデータベース一覧 → 右上 学外から利用する → ログイン → 例えば 日経テレコン → キーワードを入れて検索

 我田引水になりますが、経済史の研究を促進する上で有益な記事もたくさん見受けられます。私の授業を受けているみなさんは早速ですが、『日本経済新聞』(日経テレコン)で次の記事を読み、感想を聞かせてください。

(1) 「忘れられたパンデミック スペインインフルエンザ  銑」『日本経済新聞』2020年4月15〜17日.
(2) 「ウイルスは世界を変える」『日本経済新聞』2020年4月28日.
(3) 「続・忘れられたパンデミック 100年前の問いかけ 上・下」『日本経済新聞』2020年5月5〜6日.
(4) 「疫病のの文明論  銑А廖愼本経済新聞』2020年5月4〜13日.(ただしい榔寨・印刷できません)

担当科目受講生のみなさんへ 定期試験の過去問を参照してください

 オンライン授業がおそるおそるのうちに始まりました。今回のコロナ騒動を契機に、学校の授業だけではなく、飲み会や帰省まで、オンラインで行うよう求められています。ふだんからパソコン操作に慣れている人にとっては問題ないかも知れませんが、苦手な者や高齢者は不安で一杯です。対面でコミュニケーションをとるのは最も人間らしい行為です。しかし今年に入ってからそれがずっと制限されており、困惑するばかりです。
 新学期がスタートしているのに対面授業ができないのは本当に不自由です。学生の反応を見ながら進めることができず、強調したい用語をその都度板書することもできません。教室での授業と同じレベルの理解を得るためには資料をどのように工夫すればよいか、試行錯誤が続いています。
 さて今最も気がかりなのは、緊急事態宣言が5月6日で解除されるのか延長されるのか、また解除や延長が全国一律の実施なのか地域ごとなのかという点です。国の方針が決まらなければ、関学の対応も決められません。さらにオンライン授業では、その場で疑問点を質問することができず、理解不足の受講生の比率も高まることが予想されます。学生の理解度に差がつく問題は、小学校から大学まで、どの教育現場でも発生すると考えられます。補講時間の設定など、文科省は共通の解決策を提示する必要があります。
 今学期私は3種類の講義科目を担当していますが、話し言葉で説明できないのがもどかしく、じかに質問を受けられないのが残念です。時間がかかるかもしれませんが、講義の狙いを明確に示し、要点の理解を深める資料を準備しているところです。あと少しお待ちください。
 だいぶ気が早いですが、成績評価についてふれておきます。例年成績評価は70分間の定期試験で行っています。その際必ず問題を予告し、本試験ではほぼ予告どおりの出題を行っています。これは講義の根幹部分を明示し、しっかり頭に叩き込んでもらうためです。予告および本試験問題はこのブログで公開していますので、各科目日付けを参照し、内容を確認しておいてください。今後テキストや配付資料を勉強するとき、重点を置くべき箇所の参考にしてください。なおコロナの収束が遅れ、定期試験が行えない場合はレポートに代替します。その場合の到達目標も大きくは変わらないと思います。

【各担当科目 定期試験予告および本試験ブログ掲載の日付】
              
日本経済史
2019年  予告 6月25日   本試験 7月23日
2018年  予告 6月27日   本試験 7月24日
2017年  予告 6月21日   本試験 7月24日

医療をめぐる諸問題
2019年  予告 7月4日   本試験 7月18日
2018年  予告 7月5日   本試験 7月19日
2017年  予告 6月26日  本試験 7月27日

経済の歴史と思想
2019年  予告 6月28日   本試験 7月19日
2016年   予告 6月24日   本試験 7月22日
2015年   予告 6月25日   本試験 7月17日

2020年5月6日まで 休講期間中の各担当科目の課題

 新型コロナの感染拡大を防ぐための休講が続いています。連休明けには緊急事態宣言が解除され、教室での授業ができることを願うばかりですが、みなさんにはさしあたり履修登録を行ってもらわなければいけません。履修者が確定しても、ゼミ生以外はまだ顔を合わせたこともない状態で授業が始まることになり、何となく違和感があります。とはいえ、本来は4月6日からスタートしているはずの授業がかなり出遅れており、これ以上何もせず過ごすわけにはゆきません。応急処置として5月6日までの休講期間中、私の担当科目については次の課題に取り組んでほしいと思います。連休明、教室での授業がスムーズに始められるよう、周到なウオーミングアップをお願いします。
 以下各担当科目別にお知らせします。

火曜日

2限 日本経済史
 寺本益英「豊かさ・幸福からみた近代日本」関西学院大学『総研論集』(第20号) ,2009年 をテキストにします。(下記のリンク参照)本講座の目的はひと言でいうなら、「戦前の日本の歩みを正確に把握し、自分なりに評価できるようになること」です。
 この目的を頭に置きながらまずテキストを読み進め、よくわからない用語や概念をチェックしておいてください。例年少人数のクラスなので、教室での授業ができるようになれば、みなさんから出された疑問点に答えながら、なるべくわかりやすくテキストの解説を進めてゆくつもりです。

寺本益英「豊かさ・幸福からみた近代日本」

3限 研究演習
 春休み中に勉強会を行う予定でいましたが、コロナの影響でできなかったのは残念です。すでにお伝えしていますが、なるべく多くの文献を読んで、自由研究を進めておいてください。教室で授業ができるようになれば、各自1時間程度で成果を報告してもらい、意見交換を行います。

4限 研究演習
 春学期はホットな経済問題を取り上げて議論し、秋学期は卒業論文の執筆に専念してもらうつもりです。 当面は次の課題に取り組んでください。

【課題】
 今回のコロナ騒動で、世界経済、日本経済の様々な問題点や脆弱性が浮き彫りになりました。そこで次のテーマに関し、コメントしてください。
1.あなたが深刻に受け止めた課題・問題点を3つ指摘し、その概要を整理してください。
2.1で指摘した課題・問題点はどのように解決してゆくべきですか。解決のための方策を提言してください。
3.A4用紙5〜6枚程度でまとめ、5月31日(日)を目途にルナで提出してください。

木曜日 

4限 学際トピックス「医療をめぐる諸問題」
 この講座のセールスポイントは、医療を総合学ととらえ、第一線で活躍する医師、法律の専門家、経済学者に話題提供をお願いするものです。例年トップバッターは明和病院院長・山中若樹先生で、医療問題の全体像について、丁寧に展望していただいておりました。しかし今年度このままでは山中先生のご担当分がまるまる抜けてしまいます。そこで山中先生には、5月か6月の土曜日に、補講で対応していただく予定です。
 さて教室での授業が始まる前に、次の課題に取り組んでください。

【課題】
 今回のコロナ騒動で、医療現場は混乱し、増加の一途をたどる感染者に、満足のゆく治療が施せるかが懸念されています。いまわが国の医療はどのような危機に直面しているか、またその危機を乗り越えるためにはどのような対策が必要か、意見を述べてください。
 なおその際、次の点に留意すること。
1.ネット記事を参照する場合は、信頼性の高いものを選別すること。出典となったホームページ、著者と論文名、掲載年月日等を明記すること。新聞記事に関しても同様に出典を明らかにしてください。
2.分量はA4用紙5〜6枚程度。
 
金曜日

1限 経済の歴史と思想
 1年生の必修科目です。3クラスあるうちの1クラスが私の担当です。例年テキストには天川潤次郎・寺本益英『社会経済史講義』学文社,2004年 を用い、補足説明を加えながら、丁寧に読み進めてゆく授業方式です。標準的なイギリス経済史を通じて、経済の発展過程においてどのような側面がみられるかを明らかにします。また人類が長年にわたって追求してきた「普遍的価値」の重要性を再確認します。
 当面はシラバスの割り振りに従って、テキストを読み進め、よくわからない用語や概念をチェックしておいてください。教室での授業が始まれば、まず歴史を学ぶ重要性を強調し、受講者から寄せられた質問に答えながら、なるべくわかりやすくテキストの解説を進めてゆくつもりです。

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2020年度のスケジュール

2020年度は下記のスケジュールで講義を行います。(ほぼ確定版)

火曜日
2限 春  学部・日本経済史機B−204
2限 秋  学部・日本経済史供畭膤惘 ζ本経済史A 経済学部−4号
3限 通年  学部・研究演習機。叩檻械娃押(←秋学期より変更になりました)
4限 通年  学部 研究演習供 。叩檻苅娃掘

水曜日
教授会、研究科委員会など会議日

木曜日
1限  秋  大学院(M) 経済史A
3限  通年 大学院(M) 研究演習  個人研究室
4限  春  学部・学際トピックス「医療をめぐる諸問題」 B−204
6限  秋  大学院(M) 社会経済史 大学院棟ー208
7限  秋  大学院(M) 現代経済史 大学院棟ー208  

金曜日
1限 春 学部 経済の歴史と思想  B−301
2限 秋 学部・研究演習入門  C−401 
3限 秋 学部・現代日本経済史 経済学部−6号

 なお上記担当科目の各回の講義内容は、下記のシラバスへのリンクを参照し、確認してください。

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新型コロナの感染拡大が続くなかで迎える年度末

 新型コロナの感染拡大に歯止めがかからない大変な状況のもとで、年度末を迎えました。私たちの関西学院大学は新学期のスタートを遅らせ、4月21日としていますが、予定どおり始められるかどうか微妙です。大学の教室は3つの密(密閉・密集・密接)の条件が最も重なる場所なので、クラスターを作らないよう細心の注意が必要です。かといっていつまでも休講措置を続けるわけにはゆきません。学生・教職員の命を守りつつ、教育機関として役割を果たすにはどのような対応が必要か、極めて難しい判断に迫られています。
 さて今回のコロナ騒動で、世界も日本も経済・社会のあり方を抜本的に見直す必要があると痛感しました。挙げたらキリがありませんが、安倍政権の政策でかねてから疑問に思っていたことを述べてみたいと思います。
 まず戦闘機や迎撃ミサイルなど武器に膨大なお金をつぎこんできたことです。2020(令和2)年度の防衛予算は5兆3,000億円にのぼり、6年連続で過去最高を記録しています。高度な武器の備えは十分なのに、マスク1枚すら手に入らないのは皮肉です。医療機器や医療資材、スタッフの育成と増員など、医療体制の充実にもっと力を注いでいれば、もし感染爆発が生じた場合でも、ある程度衝撃をおさえられるのではないかと思います。軍事力を強化しても尊い人命は救えません。見えない敵であるウイルスとの闘いに勝つためには、ヒト・モノ・カネを最優先で医療につぎ込むべきだと思いました。
 次にこれまでの日本経済がオリンピックと訪日外国人の特需に依存すぎてきたことも大問題です。2018(平成30)年の訪日外国人は確か3,200万人ほどだったと思います。狭い日本に到底収容しきれない人数です。私も経験がありますが、出張の予定が決まり、ホテルや新幹線を予約しようと思ってもいっぱいで予約できなかったという経験が何度もあります。きっと外国人の団体客におさえられていたのです。オリンピックも意識して、インバウンドで景気を盛り上げようと無理に観光バブルを創出したのではないでしょうか。コロナショックで最も深刻なダメージを受けているのは観光業や飲食業といわれますが、その経営基盤は脆弱で、バブルによる繁栄にすぎなかったようです。成長戦略として観光立国を目指す方向性は誤っていませんが、多少のショックにも耐えられるような堅実経営の体制を整えながら、ゆっくりと着実に進めてゆくべきだったと思いました。
 アベノミクス第一の矢である大胆な金融緩和もいよいよ限界です。日銀による強力なリスク資産の買い増しで、昨年末から今年はじめにかけての日経平均株価は概ね2万4,000円程度で推移していたと思います。もちろんこれが日本経済の実力を反映した結果なら問題ありませんが、実体経済がそれほどよくなっていないのに、株価が高水準であることにずいぶん違和感を感じていました。その後全世界てコロナの感染拡大が深刻になり、経済活動の停滞懸念が高まってゆくと、株価の下落は止まらなくなり、3月19日の日経平均株価は1万6,358円まで落ち込みました。山が高かっただけに、恐ろしい下がり方です。これまで株高の恩恵を受けて豪華な生活を楽しんできた富裕層も、大きな打撃を受けているに違いありません。一方株を持つ余裕のない一般庶民は、マイナス金利政策の犠牲で銀行にお金を預けても利子がつかず、政策によって資産を増やす手段を奪われた格好です。賃金水準も上がり、正規雇用で働いて職が安定しているのなら、今回のショックにも耐えられますが、そのような経済状態ではありません。消費税率が10%に高まったことも、景気の足を引っ張っています。アベノミクスによって一般庶民の逆境抵抗力が高まったわけではなく、今回のような急激な経済悪化になすすべがありません。
 私たちは2008(平成20)年にリーマンショック、2011(平成23)年に東日本大震災、そして今年2020(令和2)年にコロナショックを経験しました。これらを顧みると、平穏な経済状態は10年も続かないことがわかります。したがって平時には次の緊急事態に備え、強固な経済基盤を築いておく必要があるのです。過度な金融緩和や大型イベントの実施でバブルをつくると、崩壊後の後遺症は甚大です。無駄な財政支出をなくし、医療や雇用の充実など、セーフティーネットの整備を進めることが重要な課題であると感じました。

2019年度 経済史B 定期試験を行いました

 定期試験は今日でほぼ折り返し点にさしかかった頃ではないでしょうか。14コマ分の講義内容を理解し、問題を想定して、まとまった解答が書けるようにするには、大変な努力が必要だと思います。それでも私の経験からいうと、大学の定期試験は大学入試よりははるかに取り組みやすいと感じています。というのも、大学の試験はその科目の担当者が出題し、講義で扱った内容がズバリ問われるだけだからです。難関大学の入試問題のように、意表をつく問題、難問・奇問が出る心配はなく、しっかり準備して臨めば確実に高得点がつきます。また経済学部で扱う内容は、実際の経済であり、新聞やニュースで取り上げられることも多いと思います。私は受験科目よりもずっと魅力を感じましたので、定期試験の勉強がものすごく苦痛だったわけではありません。
 さて学生時代から30年あまりが経過し、現在は授業を行う立場に変わりました。ずっと経済史系の科目を担当してきましたが、絶えず心掛けているのは、サイエンスコミュニケーターになったつもりで授業を進めることです。サイエンスコミュニケーターは、普通理系の仕事で、専門的な科学をわかりやすく市民に伝えます。国立科学博物館では、その養成・実践講座が行われています。
 私は歴史(経済史)でも同様の役割を果たす人材が必要だと考えています。歴史家というと、特殊なテーマを深く掘り下げるというイメージもありますが、大学生を対象にした授業には向きません。大切なのは一般性の高いテーマや今話題のトピックスを取り上げ、過去と現在を比較したり、歴史からの教訓を導くことです。
 みなさんの経済史Bを担当したのは非常に未熟なサイエンスコミュニケーターでしたが、パックス・ブリターニカの歴史を通し、世界のリーダー国の果たすべき役割、自国第一主義の弊害、人類が追求してきた普遍的価値などについて理解を深めてもらえたのではないかと思います。そして今後は、「良識ある社会」の担い手として、それぞれの持ち場で活躍してほしいと願っています。

【2019年度 経済史B 定期試験問題】 

【1】 穀物法論争から出発し、1860年に英仏通商条約が締結されるまでのパックス・ブリターニカにおける自由貿易推進体制について論じ、それが後の世界経済にどのような影響を与えたか説明しなさい。20点

【2】 戦間期の経済について、次の設問に答えなさい。40点

(1) ドーズ案成立後のアメリカへの資金偏在の影響も考慮し、大恐慌発生の要因と、それが世界経済に与えた影響について説明しなさい。20点
(2) 大恐慌への対策として各国が展開した経済政策について論じ、それが世界経済にどのような影響をもたらしたかを説明しなさい。20点

【3】 次の(1)〜(4)の設問より2問選択して解答しなさい。40点

(1) 基軸通貨ポンドの役割に言及しながら、パックス・ブリターニカにおいて金本位制が果たした役割について論じなさい。20点

(2) 19世紀、インドはパックス・ブリターニカを支える上で重要な役割を果たしました。イギリスがインド経済にどのような形で関わり、それが両国の発展にいかなる影響を与えたかについて述べなさい。20点

(3) 19世紀後半に至ると、それまで圧倒的優位を誇っていたイギリスの競争力にかげりが見え始めます。イギリスの産業競争力低下の要因について説明しなさい。20点

(4) 2019年12月12日に実施された総選挙の結果、イギリスのEUからの離脱は確定的になりました。そもそもイギリスにおいて、EUから離脱したいという声が起こってきたのはなぜでしょうか。その背景について説明しなさい。また一方で、この決定にはデメリットも伴います。EUからの離脱がイギリスおよびEU経済に与える影響についても論じなさい。20点

2019年度 日本経済史供…蟯試験を行いました

 いよいよ今日から秋学期の定期試験が始まりました。私の担当科目日本経済史兇了邯海睨榮行われ、出席率100%(=欠席者ゼロ)、途中退席もほとんどなく、全員熱心に取り組んでくれたように思います。
 今学期は前半で安倍晋三内閣、後半で桂太郎内閣を取り上げました。つまり、首相在任期間が憲政史上第1位と2位の人物に焦点を当てたわけです。まず安倍首相については、「三本の矢」、「新三本の矢」を中心に経済政策(アベノミクス)の概略を述べ、その効果についても詳しく検討しました。一方桂太郎内閣については、日清戦争後から日露戦争を経て第一次世界大戦開戦前までの国際情勢や経済動向を扱いました。時代は100年以上離れていますが、実際の政治・経済・外交を注意深く研究することにより、今後の望ましい経済・社会のあり方を構想する手がかりを見つけてもらえたのではないかと思っています。

【2019年度 日本経済史供…蟯試験問題】

【1】 第二次安倍政権の経済政策と経済動向に関し、次の設問に答えなさい。

(1) アベノミクス第一の矢である「大胆な金融緩和」の概要を量・質・金利の面から論じなさい。またこの政策の実施から7年近くが経過したにもかかわらず、前年比2%の物価上昇を実現できない要因を述べなさい。
25点

(2) 2019年度の一般会計予算案は次のとおりである。この数値をもとにa、bの問いに答えなさい。15点

収入:税収62.5兆円、税外収入6.3兆円
支出:種々の政策経費77.9兆円、国債の元利払い23.5兆円

a. この年度に必要な公債金収入を計算しなさい。(計算式も示すこと。)5点
b. プライマリーバランスの概念を述べ、当年度の黒字額または赤字額を計算しなさい。(計算式も示すこと。)10点

(3) Society 5.0とはどのような社会か。ロボットが果たす役割に注目して説明しなさい。20点

【2】 日露戦争前後の日本と東アジアを取り巻く国際情勢について、下記より2問選択して解答しなさい。
10点×2=20点

(1) 甲申事変と天津条約について。
(2) 三国干渉とその後の列強による中国分割について。
(3) 日露協商論と日英同盟論について。

【3】 次の(1)〜(3)の設問のうち、1問選択して解答しなさい。20点
    
(1) 日露戦争の戦費調達に当たり、ヤコブ・シフとクーン・ローブ商会がなぜ日本を支援したか論じなさい。
(2) 日露戦後経営の特色と当時の景気動向について述べなさい。 
(3) 経費膨張の法則と戦前期日本の財政動向について説明しなさい。

2019年の研究生活を振り返って

 平成と令和が併存した2019年もやがて終わろうとしています。1年を顧みると、目前の仕事を処理するのに日々全力を尽くしてきたはずですが、結果が伴いませんでした。そこで平身低頭頼み込んで期日を延長してもらい、綱渡りで乗り越えてきたという印象です。しかしそれでもなお年内に片付かず、越年となっている仕事もあり、来年は年始からその遅れを取り戻さなければいけません。
 さて今年は遠方に出かける機会はほとんどなく、授業をベースに研究生活を送ってきました。まず日本経済史に関しては、論文の題材をさがすという意識を持って通史を念入りにたどりました。通史の文献はこれまでにもたくさん目を通してきたつもりですが、新しい研究成果も次々と生み出され、なかなかカバーしきれません。関心に合った研究に出会うと、もっと掘り下げてみたいと思うのですが、オリジナル性のある論文に仕上げるほどの自信が出るほどには構想が固まりません。ある程度テーマを限定し、この壁を突破して1つでも論文を書くことが来年の課題です。
 次にイギリス経済史は、授業の要請があったので随分鍛えられました。封建制社会から近代市民社会への移行、パックス・ブリターニカの時代、戦間期といった具合に、扱う時代が日本経済史よりはるかに長いので、史実をおさえるだけでもかなり大変です。それでもこの作業に挑戦することによって、資本主義経済の本質や、人類が追求してきた普遍的価値など、これまで漠然としかイメージできなかった経済研究の究極のテーマが、鮮明に、具体的に理解できたように思います。それと同時に最近全世界に蔓延している自国第一主義を批判的に評価するようになりました。経済・社会の理想の姿は、本来なら高い志を持った指導者(政治家)が示すべきですが、現状では見当たりません。私たちは理想の姿を歴史の過程から学ぶほかないのです。
 最後に平成史も少し手がけました。平成史は自分史であり、同時代史です。様々な重大事件を自分の目で見て体験しているので、実感があります。平成の30年間を私なりに評価するなら、バブル崩壊の後始末に追われ、発展につながるような積極的な政策を打ち出せず、日本の国際的地位や競争力が著しく低下した時期といえます。まだ研究の途上ですが、日本経済低迷の要因をさぐり、どのような政策手段を用いて立て直せばよいか、処方箋を提示できるようになりたいものです。
 研究の手順は、文献を読み、まとめ、文章化するという単純なものです。同じ作業を30年間続けてきましたが、その成果は平成経済と同様「低成長」にとどまりました。
 来年は2度目の東京オリンピックが開催されます。オリンピック景気で、経済の活性化が期待されます。オリンピック景気にあやかって、これまで鳴かず飛ばずで低迷している私の研究も、少しは前進させたいと思っています。

2019年 研究活動記録

 1年も終わりに近づいていますので、今年の研究成果を整理してみました。下記のとおり論文1つ、書評1つ、講演3つ、主催企画2つという結果です。研究成果は平均して2ヶ月に1回しか出ておらず、自己査定は辛うじて「可」というところでしょうか。来年はワンランク上の「良」を目指さなければと反省しています。
 ただひとつ言い訳をお許しいただくなら、講義期間中はそれぞれの科目で1コマ90分話ができるよう話題を準備し、スムーズに話すためのリハーサルが必要であり、結構時間がかかります。したがって論文、書評、講演資料など、研究成果の文章化に力を入れられるのは、休日と長期休暇中に限られます。この自由に使える時間にどれだけ筆が進むかが成果の目安となりますが、思いどおりに書けず、焦ることがたびたびでした。
 下記のうち、『経済学論究』の論文と市民大学講座の講演資料は、少人数の演習系科目で話したことをもとに組み立てています。それをさらに遡ると、新聞記事にたどり着きます。一般性の高いホットな経済問題の分析は、ゼミでの講義と論文作成に一石二鳥の効果があります。そのためには、平素の新聞記事のチェックが不可欠だと感じています。

論文
2019年9月
「豊かで幸福な現代社会のあり方と経済政策の方向性の検討  −経済成長第一主義再考ー」関西学院大学『経済学論究』第73巻第2号,pp263-292.

書評
2019年12月
粟倉大輔著『日本茶の近代史 −幕末開港から明治後期まで−』 経営史学会『経営史学』第54巻第3号,pp.65-68.

講演
2019年3月28日(木)
阪神シニアカレッジマイスターゼミナール  「近代日本発展における茶の貢献 − 戦前の日本茶の歴史的考察 −」
2019年5月18日(土)
佐賀・茶学会 2019年度 記念講演会 「日本における喫茶史とその文化的広がり 」
2019年8月27日(火)
尼崎市立園田西生涯学習プラザ市民大学講座 「平成経済の総括と新時代の展望」

主催企画

【寺本ゼミ 業界・企業研究セミナー】
2019年 1月 8日(火)
● 講師:赤井恒夫氏(元 住友商事)
● テーマ:「企業紹介:住友商事」

【経済学セミナーと意見交換会 (寺本ゼミ 業界・企業研究セミナー)】
2019年 6月 11日(火) 
● 講師:簑原克彦氏(元 阪急不動産社長・会長)
● テーマ1:「鉄道の歴史および阪急電鉄の社史と経営 − 小林一三の経営理念も踏まえて―」
  テーマ2:「激変する経済情勢と鉄道企業の戦略 −阪急電鉄電鉄を中心にー」
● 主催:関西学院大学経済学部

2019年度 「経済史B」 定期試験対策

 令和元年もあと2週間ほどで終わります。毎週金曜日3限に開講してきた経済史Bの講義は年内いっぱい20日で最終回を迎えることになり、何となく名残惜しい気持ちです。
 今年度はパックス・ブリターニカの分析を通じ、覇権国が果たすべき役割を考えました。その後覇権国が不在となった戦間期の混乱と、経済が縮小してゆく過程を配付資料を通じて勉強してもらいました。さらに講義期間の終盤には、イギリスのEU離脱決定という衝撃的な出来事にも遭遇しました。先人たちが築き上げてきた国際協調体制が崩壊し、自国第一主義の台頭が様々な弊害をもたらしているのも、昨今の見過ごすことのできない傾向です。これから世界はいったいどのような方向に進むのでしょうか。
 将来を占うことは困難ですが、過去から現在に至るまでの複雑な世界情勢の分析力や、歴史からの教訓を導き、世界がこれからどのような方向に進むのが望ましいかを提案する能力は十分身につけてもらえたはずです。
 本講座受講の成果は、2020年1月17日(金)の第3限に実施される定期試験で高得点をとってもらうことによって証明されます。以下のテーマについて完璧に解答できるよう準備しておいてください。

テーマ1 自由貿易体制

 自由貿易体制は人類が長い歴史を通じて築き上げてきた普遍的価値のひとつで、パックス・ブリターニカの重要な基盤でした。穀物法論争、ピール首相の税制改革、1860年の英仏通商条約の締結に焦点を当て、イギリス主導で自由貿易体制が確立される経過、およびその効果について整理しておいてください。

テーマ2 金本位制
 
 自動調整メカニズムや基軸通貨ポンドの果たした役割に注目し、金本位制がパックス・ブリターニカの維持にどのような形で貢献したかについて説明できるようにしておきましょう。

テーマ3 帝国主義

 帝国主義は現在の倫理観に照らし合わせたら決して容認できるものではありません。しかし、パックス・ブリターニカの運営において、植民地インドは重要な役割を果たしました。イギリスのインドに対する投資、貿易動向をふまえ、両国の経済関係について論じられるようにしておいてください。

テーマ4 イギリスの競争力低下

 19世紀後半に至り、イギリスの競争力に衰えの兆しがあらわれてきました。その背景となった要因について述べられるようにしておきましょう。

テーマ5 戦間期における金本位制、自由貿易体制の崩壊

 戦間期に至ると世界経済は変調をきたし、これまで順調に働いてきた金本位制が機能不全に陥り、大恐慌の激震が走りました。大恐慌への対策として各国が打ち出した政策をとりまとめ、それが世界経済に及ぼした影響について説明できるようにしておきましょう。

テーマ6 イギリスのEU離脱問題

 イギリスのEU離脱をめぐっては、国論を二分して激しい論争が行われてきました。結局2019年12月12日実施の総選挙で一応の決着がつき、イギリス国民が選んだのは離脱の道でした。そもそもイギリスにおいて、EUから離脱したいという声が上がってきたのはなぜでしょうか。その背景について説明できるようにしておきましょう。
 2020年1月、イギリスのEUからの離脱は確実視されていますが、離脱にともなう様々なリスクも想定されています。具体的にどのような事態が懸念されているか、論じられるようにしておいてください。

2019年度 「日本経済史供廖…蟯試験対策

 日本経済史兇旅峙舛眤腟佑瓩砲覆蠅泙靴拭受講生は少数ですが、春学期から継続受講の学部生、大学院生、以前より私の講義を熱心に聞いてくださっている社会人聴講生と、多彩なメンバーが揃い、大いにやり甲斐を感ながら講義を進めてきました。扱った内容は憲政史上最も長い在任期間を更新中の安倍晋三政権と、安倍さんに首位を譲るまで100年以上トップの座にいた桂太郎政権に関してです。
 まず安倍政権が長続きした一番の理由は、選挙に強いことです。何といっても国政選挙6戦6勝を実現したのは驚きです。ただこの高得票率(自民党への強い支持)が、景気の改善を反映しているとは思えません。講義で詳述したので省略しますが、デフレからの脱却は果たせておらず、アベノミクスは道半ばと評価せざるをえません。自公政権の独走を許したのは、野党のインパクトがあまりにも弱かったからだと感じています。また選挙を勝ち進む過程で、党内の支持基盤も盤石なものとなり、対抗勢力がいなかったことも看過できません。普通は党内に強力なライバルがいるものですが、いまだにポスト安倍が出現していない状態です。次期首相はいったい誰になるのでしょうか?安倍さんの任期が切れる2021年9月に注目したいと思います。
 一方安倍さんに抜かれるまで首相在任期間トップであったのは桂太郎です。桂太郎には日本史の教科書で定番となっているレガシーがたくさんあります。そのなかでも、日英同盟を締結し、日露戦争を勝利に導いたこと、関税自主権の回復で、日本の国際的地位を著しく向上させたことは特筆すべきです。
 では2人の政治手法はどうだったでしょうか。桂太郎の時代を生きたわけではありませんので、文献からの知識となりますが、彼はニコニコ笑って相手の背中をポンとたたき、相手を説得・納得させる能力にたけていたようです。意見対立があった場合は相手の意向も考慮する協調型の政治家だったと言われています。
 これに対して安倍さんはどうでしょうか。特定秘密保護法の制定、集団的自衛権の行使容認、普天間基地の辺野古移設などに象徴されるように、反対意見(野党の意見)には一切耳を貸さず、数の力にモノを言わせる強引な政治手法をとってきました。反対意見や少数意見の軽視は、そういった意見を持つ人の反発を招き、やがては国の分断につながってゆきます。異なる意見を調整し折り合いをつけて着地点を見出すことこそが、政治家に求められる最も重要な能力ではないでしょうか。
 さて大変遅くなりましたが今回の定期試験の出題のポイントを下記のとおりお知らせします。試験実施の日時は2020年1月14日(火)の第2限です。

テーマ1 アベノミクス
 配付資料に準じ、アベノミクス「三本の矢」について問います。
(1) 大胆な金融緩和
 この政策は非伝統的金融政策と呼ぶ人もいます。従来の伝統的な金融政策と異なるところはどこですか。またこの政策では、量・質・金利に働きかけることを強調していますが、具体的にどのような手法が用いられたのかを説明できるようにしておいてください。(細かい数値までは問いません。)
 政策の内容を把握したのちは、効果の検証を行ってください。残念ながら「大胆な金融緩和」によってデフレからの脱却は実現していません。なぜでしょうか。この政策の限界についても説明できるようにしておきましょう。
(2) 機動的な財政政策
 金融政策に比べると尋ねることは少ないです。日本財政の現状やプライマリーバランスの概念について十分おさえておきましょう。
(3) 成長戦略
 本ブログ2019年6月22日の記事を参照し、Society 5.0とはどのような社会かについて、イメージできるようにしておいてください。またSociety 5.0社会において、ロボットが果たす役割に関しても説明できるようにしておきましょう。

テーマ2 日露戦争期を中心とした桂太郎内閣の時代(配付資料参照)

(1) 日清戦争〜日露戦争の頃の東アジア情勢および日本外交
 次の出来事につい、要領よく説明できるようにしておきましよう。
a.壬午事変と済物浦条約
b.甲申事変と天津条約
c.三国干渉とその後の列強による中国大陸の分割
d.義和団事件と北京議定書
e.日露協商論と日英同盟論
f.ポーツマス条約と日比谷焼打事件
g.日露戦争後の国際関係(韓国の植民地化、関東都督府設置など)

(2) 日露戦争期を中心とした経済動向
a.日露戦争の戦費調達はどのように行われたか。
b.日露戦後経営の特徴と当時の景気動向について。
c.経費膨張の法則について。

2019年度 卒業論文作成のフォーマットについて

 11月も今日までで、今年もあと1ヶ月となりました。秋学期の講義は終盤にさしかかり、そろそろ定期試験問題の作成を意識しなければいけない時期です。同時に翌2020年度のシラバスの検討も必要です。来年度はしばらく担当していなかった科目や大学院科目の追加担当もあり、今年度よりさらにコマ数が増える予定です。各科目それぞれ異なる内容で14コマの組み立てを考えるのはなかなか大変です。シラバスの内容(各回の講義の題目)は1行だけですが、その1行の題目で90分話ができる中身を準備しなければいけません。たくさんの文献を参照し、かなりのエネルギーを割いて講義のストーリーを考えることになりそうでうです。
 各担当科目の到達目標は、講義形式のものは、基本的な史実および歴史の流れの正確な把握に力点を置き、歴史からの教訓を導けるようになることです。一方少人数の演習系科目では、意見交換に時間を割き、自分でよく考え、考えたことをわかりやすく整理し、すぐれた論文に仕上げたり、説得力ある報告ができる能力を身につけてもらうことです。
 さて研究演習兇鮗講していいる4年生は、卒業論文完成に向けて追い込みのシーズンです。卒論が必修でなくなって以降、学部全体の傾向として、卒論を書かずに卒業する学生が多くなったのは残念です。しかし4年間の学びの総決算としての研究を残すのはとても意義深く、作成の過程で教員やゼミ生と議論を重ねながら、内容に磨きをかけてゆく過程を経験するなかで、「人生100年時代」、「第四次産業革命」のもとで要請される「社会人基礎力」を培うのに役立つことは確実です。各自の関心と分析視角を大切に、立派な研究成果が出ることを期待しています。
 卒論作成に際してはいくつかの注意事項が決められていますので、下記のとおりお知らせします。

【卒論作成にあたっての注意事項】

 1.提出期限
 2020年1月10日(金) 午後4時50分まで ← ゼミで配付する受領書に必要事項を記入し、必ず事務室へ提出してください。1分でも遅れると受け取ってもらえません。できれば1日か2日余裕をもって出してください。

 2.フォーマット
 (1) A4用紙を使用。
 (2) 1行あたりの字数 35〜40字 左端余白35mm以上、右端余白30mm以上
     1ページあたりの行数 28〜30行 上下余白30mm以上
 (3) 分量 規程では1万2,000字ですが、なるべく2万字以上書いてください。(個人的には1章あたり5〜6ページ、5〜6章構成 + はじめがき、おわりがき が適当かと思います。)
 (4) 提出に際しては、生協で販売している表紙・裏表紙をつけてください。

2019年度 経済史B 授業協力のお願い

 経済史Bの講義は全体の3分の2くらいまで進みました。最も繁栄していた時期のイギリス経済を取り上げ、世界のリーダー国(覇権国)が果たす役割を考えるのがこの講義の大きな目的です。
 当時のイギリスの主たる貢献としてまず挙げられるのは、自由貿易体制を普及させたことです。今日まで世界経済が順調に発展してきた背景には、各国が自国産業の保護にこだわることなく、相互に自由貿易の重要性を認めてきたからだといえます。
 しかし歴史を顧みると、正反対の現象も起こっています。大恐慌のあと1930年代、関税引き上げの応酬、ブロック経済の進展によって、経済規模は著しく縮小し、第二次世界大戦へとつながってゆくことになります。その経過を配付資料渡邊頼純「1930年代の歴史検証 大恐慌、報復関税、ブロック経済 …… 第2次大戦前の保護主義とは」『エコノミスト』(2009年3月24日)で確認しておいてください。そして1930年代の歴史を教訓とするならば、最近激化している米中経済摩擦は、世界経済に大きなショックを与える可能性があります。トランプ大統領の世界共通の利益よりも、自国(アメリカ)の利益を優先する姿勢をみなさんはどう思いますか?
 パッックス・ブリターニカの時代を学んでいる私たちにとっては、EU離脱をめぐるイギリスの混乱も気がかりです。この問題は、多様な歴史、民族を抱え、経済レベルも様々な30ヶ国近い国々がひとつにまとまることがいかに難しいかを表しています。もちろんヒト、モノ、カネが域内をスムーズに動くことができるメリットもありますが、EUからの離脱を求める人々は、イギリスはもはや経済・財政状況が悪い国々の面倒までみきれない、たくさんのEU共通のルールに縛られず、自由にやってゆきたいという気持ちのほうが強くなっているのだと考えられます。2016年6月、キャメロン首相のときに、EUからの離脱の賛否を問う国民投票が行われ、離脱賛成51.9%、残留48.1%という結果が出ました。微妙なところですが、離脱という民意が示されたのです。しかしいまだにイギリスの国論は二分されたままで、離脱に踏み切れていません。これまでの経過をふまえ、イギリスは最終的にどのような決断をくだすのか、EUは今後どうなるのかといった点を下記のリンク「1からわかる「ブレグジット」を参照しながら考えてみてください。また2つめのリンク「どうなる?イギリスEU離脱」も是非参照してください。理解が深まるはずです。
 なおイギリスでは12月12日に総選挙が行われます。その結果次第で、離脱、離脱の撤回、EUと再交渉、再び国民投票という可能性が考えられます。授業内でどこまで結果の分析ができるかわかりませんが、とにかく選挙結果から目が離せません。
 さて上記2つのテーマをめぐり、本講座の受講生のみなさんに次の課題(アンケート)に取り組んでもらいたいと思います。

【課題】
1.学生番号が偶数の受講生対象 
 配付資料渡邊頼純「1930年代の歴史検証 大恐慌、報復関税、ブロック経済 …… 第2次大戦前の保護主義とは」『エコノミスト』(2009年3月24日)を読み、1930年代に報復関税、ブロック経済化がどのように進み、世界経済にどういった悪影響を及ぼしたか、概要をまとめてください。また資料を読んで、より詳しい解説が必要な概念、用語があれば教えてください。 

2.学生番号が奇数の受講生対象 
 「1からわかる「ブレグジット」を読んで、イギリスでなぜEU離脱問題が持ち上がってきたのか、さらにキャメロン、メイ、ジョンソン首相の時期に起こった主要な出来事を整理してくださうい。加えてあなたがイギリス国民であれば、離脱に賛成か反対か、理由とともに教えてください。

【レポートの分量、その他注意事項】
 A4用紙2〜3枚程度。1枚目の一番上に、学生番号と名前を書き、左上を必ずホッチキスどめしてください。
 
【提出日】
22019年12月6日(金) 授業時間内

1からわかるブレグジット

どうなる?イギリスEU離脱

時事問題に強くなりましょう

 私は少人数の演習系のクラスでは、できるだけホットな政治・経済・外交問題を扱うようにしています。経済学部での学びでは、難しい経済理論や数量分析のテクニックを身につけることは重要ですが、最も優先順位が高いのは、今新聞やニュースで話題になっているテーマだと思います。
 新聞やニュースで話題になっているテーマは、就職の面接の際にも取り上げられることが多いと思います。就職対策としては、まずどのようなテーマが問題になっているか把握しておく必要があり、そのテーマについてある程度論点を整理して説明し、自分の意見も述べられるようにしておく必要があります。一例を挙げると、イギリスのEU離脱問題です。そもそもなぜイギリスはEUを離脱しようとしているのでしょうか。EUにとどまっているとどのような不都合があるのでしょうか。また仮にEU離脱が実現した場合、EUから離れることのデメリットはないのでしょうか。もしあなたがイギリス人なら、離脱か残留かどちらの立場をとりますか?
 イギリスのEU離脱問題ひとつをとってみても、上記の質問にスラスラ回答できる学生は少ないと思います。スラスラ解答できるためには、平素からニュースを追い、理解を深め、ゼミなどで意見を発表する訓練をしておくことが大切です。経済学部生なら、より専門的な知識が求められるかも知れません。
 ホットな政治・経済・外交問題は講義やゼミで扱うのがベストですが、時間制約から取り上げることができるのはごく一部だけです。そこで役立つのが下記のいくつかのリンクです。ポイントをおさえ、かなり要領よくまとめられており、私閑があれば、チェックするようにしています。(リンクは今後増えてゆくと思います。)
 気になることがあれば下記のリンクを参照し、「時事問題に強い関学生」を目指してください。

NHKニュースWeb

NHK解説委員室

大学生とつくる就活応援ニュースゼミ

日経ビジュアルデータ

日経まなぼう

東洋経済オンライン

朝日新聞コトバンク

日本の大学・学問分野

 みなさんは日本の北海道から沖縄までにどのような大学があり、どういった研究が行われているか把握しているでしょうか。私は30年以上前の受験生時代にはある程度敏感でしたが、自分の受験が終わると関心が薄くなり、特に新設大学や新設学部の動向は断片的にしかとらえていませんでした。しかし下記のリンク「日本の大学」をリサーチしてみて、大学の数がずいぶん増え、新領域の学部も次々とつくられていることに驚きました。また既存の学部でも学科が細分化され、初耳のものもたくさん創設されていました。聞き慣れない学部・学科は時代のニーズを反映しているのかも知れませんが、研究内容や入学後の進路がいまひとつイメージしづらい面があるような気もしました。
 推薦入学の面接を行ってみると、昔からある経済学部でさえも、学びの内容が十分伝わっていないようです。高校時代から英語や数学と同様に政治・経済の授業を強化し、内外の経済情勢や簡単な経済のメカニズムについては教えておくべきだと思いました。加えて政治・経済で受験できる大学が増えれば、もっと経済学部への興味が高まり、大学入学後の基礎学力の底上げにもつながるのではと感じています。関学を含め、私立文系の経済学部では、大学に入ってはじめて経済学に接します。高校の政治・経済の教科書をみると、結構高度な内容が体系的に説明されており、受験で政治・経済を経験している国立大学の学生と入学時から差がついてしまうのは残念なことです。
 今の入試制度を全面的に変更するのは困難ですが、日々の講義体験を通じ、高校の政治・経済の学びから経済学部(大学)での学びへの接続が不十分であることを実感しています。そこで私の担当科目では、基本的な経済用語と概念を徹底させた上で、高校では扱わないやや専門的な内容に進むよう留意しています。
 さて下記のホームページで経済学部に注目すると、117大学で設置されており、看護学部(121大学)に次いでオーソドックスな学部になっています。オーソドックスで数が多いということはそれだけ大学間の競争が激しいことを意味しており、各大学が知恵をしぼり、様々な取組を行っているはずです。全国の大学の経済学部の教員の専門分野はどうなっているか、どのような科目が開講されているのかなど、少し研究してみたいと思います。経済学部→概要→関係校→何々大学 とたどると調べたい大学のホームページに行き着きます。なお「日本の大学」へのリンクは、画面左側のリンク集のコーナーへも置きました。
 大学で売る商品は「授業」です。その商品の質が悪ければお客さん(=学生)を失望させることになります。今学期は経済史Bの受講生が多く、演習科目も合わせると総計450名程度の学生と接することになります。授業を通じ、これだけ多くの学生に影響を与えるので責任は重大です。最後に「この授業を受けてためになった」と喜んでもらえるよう、1回1回の講義に全力投球で臨みたいと考えています。

日本の大学

吉野彰先生の所属企業旭化成のルーツ −野口遵と日窒コンツェルンー

 昨日9日、今年のノーベル化学賞が発表され、リチウムイオン電池を開発した旭化成名誉フェロー吉野彰先生ほか2名のアメリカ人研究者の共同受賞となりました。リチウムイオン電池は、小型で高性能、繰り返し充電して使える点に特徴があります。1990年代半ばからポータブルCDプレーヤーやノートパソコン、スマートフォンなどへの搭載が広がり、電子機器を持ち運ぶモバイル文化浸透に重要な役割を果たしました。近年は電気自動車や航空機、国際宇宙ステーションでも使われ、需要は拡大しています。加えて太陽光など再生可能エネルギーを蓄えることができるため、化石燃料に頼らない社会の実現に不可欠の技術として、高く評価されています。吉野先生は柔軟な発想と壁にぶつかっても絶対にあきらめない執着心を信条に地道に研究を続けられ、この夢の電池の開発にたどりついたのです。尊敬すべき研究姿勢です。
 さて本日のブログでこのテーマを取り上げたのは、日本人のノーベル賞受賞者が出たことに加え、吉野先生が所属されている旭化成のルーツである日窒コンツェルンと野口遵(したがう)についてご紹介しておきたかったからです。このトピックスは、実は私の日本経済史の講義で扱う定番のテーマで、1930年代の高橋財政期の景気回復メカニズムを論じる際、低金利環境における新興財閥発展の事例として、毎年お話ししてきたからです。
 以下は拙著『景気循環でみる戦前の日本経済』晃洋書房,2000年,p.50からの引用で、野口遵と日窒コンツェルンについて述べたものです。

 野口遵(1873〜1944)は金沢市に生まれ、東京大学電気工学科を卒業後、福島県の電灯会社に就職してカーバイト(炭化カルシウム)を研究した。1906(明治39)年鹿児島県に水力発電所を建設した頃から実業家としての頭角をあらわし、1908(明治41)年、日本窒素肥料を設立して熊本県水俣村でカーバイトの生産を開始した。1921(大正10)年、イタリアからアンモニア合成法の特許を獲得し、これは1923(大正12)年宮崎県延岡市に建設した新工場で硫安生産に実用化された。ほかにも合成ゴム、火薬、油脂、アセテート、レーヨンなど、様々な化学製品を手がけている。1925(大正14)年、朝鮮の電力資源に着目して進出を決意し、翌年朝鮮水電を設立、鴨緑江支流の発電施設建設も開始した。さらに1927(昭和2)年には朝鮮窒素肥料を創設している。日窒コンツェルンは戦後解体を余儀なくされたが、その事業はチッソ、旭化成、日本工営、積水化学などに受け継がれている。

 さて私は自身の講義の中ではなるべく企業の歴史や動向についてふれるよう心掛けています。その理由は、企業は家計、政府とともに経済を動かす重要なプレーヤーであり、企業研究=経済の学びといっても過言ではないからです。さらにみなさんに企業活動に関心を持ってもらい、進路決定にあたり、少しでも参考になればという思いもあります。
 なお現在の旭化成の事業領域は、合成繊維のほか、合成樹脂、合成ゴム、医薬品、医療機器、住宅、建材など大変広範囲にわたっていますが、化学の知識がないと、ピンときません。誰もが知っているのはサランラップとヘーベルハウス(住宅)くらいでしょうか。企業の詳細は下記のリンクでホームページをご参照ください。

旭化成

経済成長第一主義の根本的な問題と経済史の目標

 今日から秋学期の講義がスタートしました。今年の夏休みはどうしても仕上げなければならない原稿があり、必死で取り組んでいました。原稿で扱いたかったのは次の2つのテーマです。まず第一は、これまでの経済政策は成長すなわちGDPの規模拡大に主眼が置かれてきました。しかし地球の持続的発展のために、この考え方は正しいのだろうかということです。そしてこれに関連しますが、地球の持続的発展というのは、私が経済史関係の講義で強調してきた人類が追求してきた普遍的価値の筆頭に挙げられるのではないかということです。
 さて経済成長第一主義の根本的な問題は、飽和状態の市場に商品を投入し続け、大量生産・大量消費・大量廃棄社会がつくられ、やがて資源枯渇や環境破壊を引き起こす点にあります。
 みなさんは何らかの機会にSDGsという言葉を聞いたことがあるはずです。SDGs:Sustainable Development Goalsは、持続可能な開発目標と訳されます。2001年に策定されたミレニアム開発目標(MDGs)の後継で、2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」て記載された2016年から2030年までの国際目標です。世界中の国が共通して解決しなければいけない経済・社会・環境の課題を提示し、持続可能な世界を実現するために17のゴール、169のターゲットが掲げられています。詳しくは下記の国連開発計画駐日代表事務所のリンクをご参照ください。(画面のだいぶ下のほうです。)
 日本は国際社会の一員として、SDGs達成の観点からも地球環境問題の放任は許されません。特に石炭や石油などの燃料は、資源が枯渇する恐れがあり、発電時には二酸化炭素を排出して地球温暖化につながります。政府は2030年までに主力電源を太陽光や風力発電など、再生可能エネルギーに転換することを目指しているのは望ましいことです。その結果太陽光パネルの量産や風車の大型化が進み、発電コストの低減も実現しました。ただし日照時間や風の量で発電量が左右され、安定供給できる体制には至っていません。
 さらに先進国を中心に大量に排出されるプラスチックごみが河川や海洋に流出し、深刻な環境破壊を引き起こしています。日本ではサーマルリサイクルと称し、プラスチックごみを焼却し、発電や給湯に有効活用しているといいます。ところがプラスチックごみを焼却する際必ず二酸化炭素が発生し、温室効果ガスの増大に結び付きます。そこで求められるのはリデュース(削減)、リユース(再使用)、リサイクル(再利用)の3Rです。中でも出発点であるリデュースは特に重要で、消費者のプラスチック製品に頼らないライフスタイルへの転換と、生物資源由来のバイオマスプラスチックの利用など、製品開発における工夫が求められます。
 私は科学技術の知識に乏しく、地球環境問題を正面から論じるだけの力量はありません。しかし経済史Bの受講生のみなさんに何度も繰り返したように、「人類が追求してきた普遍的価値」を絶えず念頭において、それを覆すような自国第一主義や無秩序な開発は慎むべきだと考えています。人類が誤った方向に進まないためには何が重要か、地球を破滅させないためにはどのような心掛けが必要かといったことを考えるのは、細かい知識や計算のテクニックを覚えるよりずっと大切ではないでしょうか。経済史の存在価値はここにあります。

国連開発計画駐日代表事務所:SDGs

平成経済の総括と新時代の展望 (尼崎市立園田西生涯学習プラザ市民大学講座)

 今日は尼崎市の園田西生涯学習プラザ(旧園田公民館)市民大学講座で「平成経済の総括と新時代の展望」というテーマで講演をしてきました。関学の春学期の講義は7月上旬で終わっており、多くの聴衆を前にお話しする機会から遠ざかっていたため、いささか緊張しましたが、会場いっぱい60名を超える市民のみなさんが熱心に耳を傾けてくださり、大変やりがいがありました。
 1989年1月7日昭和天皇が崩御し、翌1月8日から「平成」を迎えました。「平成」は『史記』の「内平らかに外成る」、『書経』の「地平らかに天成る」から名付けられたもので、「国の内外、天地とも平和が達成されるように」という願いが込められていました。その後平成は、2019年4月30日まで、1万1,069日続くことになります。私はこの1万1,069日を関西学院大学の生活の中で経験しました。演習系の講義で扱った内容を振り返ってみると、つい先日まで、バブル崩壊、失われた20年、デフレ経済、金融システム不安、リーマンショックといった具合に、ネガティブな話題ばかりを取り上げていたように思います。結局平成の30年間はバブル崩壊の後始末に追われ、経済を大きく前進させるような取り組みはほとんどみられなかったように思います。その一方で、アメリカ経済は順調に発展し、中国の台頭は目を見張るものがありました。象徴的なのはIT巨人、すなわちアメリカのGAFA(グーグル・アップル・フェイスブック・アマゾン)とマイクロソフト、中国のバイドゥ、アリババ、ファーウエイなどの出現です。これらの企業は優れたIT技術を基礎に、電子商取引、情報、物流、金融、自動走行など様々な分野に新事業を展開し、世界経済の主導権を握ったのです。しかし残念ながら平成年間の日本にIT巨人は出現せず、少子高齢化の影響も相まって、経済は極めて停滞的であったような気がします。
 当日の講演内容は次のとおりです。

 はじめに
 1.平成経済の概観
 (1)平成年間のGDP成長率
 (2)大きく低下した日本の地位
 2.失われた20年
 (1)バブル経済の発生
 (2)バブル経済の展開
 (3)バブル経済の崩壊
 3.資本集約型経済から知識集約型経済に
 4.競争と格差問題
 おわりに

 さて「令和」がスタートして4ヶ月になります。「令和」は『万葉集』「梅花の歌」の「初春の令月にして、 気淑(よ)く風和ぎ、 梅は鏡前の粉(こ)を披(ひら)き、 蘭は珮後(はいご)の香を薫(かをら)す」に由来しているそうです。首相官邸の発表によれば、この元号には、「春の訪れを告げ、見事に咲き誇る梅の花のように、一人ひとりが明日への希望とともに、それぞれの花を大きく咲かせることができる、そうした日本でありたい」との思いが込められているということです。
 私が令和の日本に期待したいのは、まず何よりも、民主主義、人権尊重、法の支配、多国間による国際協調主義など、人類が長年にわたって追求してきた普遍的価値の重要性を全世界に向けて発信することです。自国第一主義、差別や偏見、偏狭ナショナリズム、自身と異なる思想の排除、保護貿易など逆行する思想が広がるのを先頭に立って防ぐのが日本の大きな使命ではないでしょうか。この役割を果たすことによって、再度日本の存在感を高めたいところです。

ロボットの活用によって変わる日本の経済・社会

 本日第101回全国高等学校野球選手権大会の決勝が行われ、大阪代表の履正社が石川代表の星稜を5対3で破り、優勝を決めました。履正社といえば私の郷里三重代表・桑名市の津田学園が8月13日、2回戦で戦って7対3で敗れた相手です。少し悔しい思いがしましたが、今振り返ってみると、準優勝の星稜の実力と遜色なく、よく頑張ったと思います。毎年高校野球が終ったころから、秋へと季節が移り変わってゆくのを感じます。
 さて今日は、ロボットの活用によって、日本の経済・社会が大きく変わりつつあるという話題を取り上げます。政府は2015(平成27)年3月から本格的なロボット振興に乗り出し、「ロボット新戦略」をとりまとめました。その背景にあった事情は、日本はかつてロボット大国であったのが、近年欧米先進国と中国など新興国双方の激しい追い上げを受け、危機感を持ったことです。加えて少子高齢、人口減少社会に直面し、社会保障費の増大も重なり、ロボットの活用により、生産性の向上や介護負担軽減をはかることが不可欠となった点も見逃せません。
 ではロボットはどのような場面での活用が期待できるのでしょうか。まず一般的なのはモノづくりや物流の現場です。部品の加工、組立、商品の仕分け、出荷、点検などの作業が効率的に行えるようになります。労働する能力と意思を持つ労働力人口の減少が確実視されるなかでGDPの水準を維持するには、生産性の向上が急務です。そのためには、ロボットの積極的活用による効率化をはかってゆく必要があります。
 また高齢社会を迎え、介護ロボットが重要な役割を果たすことになるでしょう。現時点では要介護者の移動、排泄、入浴の負担を軽減し、見守りが行っています。ただし複数の動作を同時にできないため、介護スタッフと同様の働きをするには至っていません。
 次に医療分野では、手術支援ロボットが注目されています。手術支援ロボットの普及で開腹手術から腹腔鏡手術への移行が進んでいます。この技術により、患者の負担は小さくて済み、回復が早く、術後の経過もよいということです。また機能の温存につながることもあります。
 農林水産業は担い手不足と担い手の高齢化が深刻な問題になっており、ロボットの導入が急がれます。収穫物の積みおろし、耕耘、除草、植林など一連の作業は重労働であり、機械への転換が望ましいと思います。
 わが国の社会資本ストックは高度成長期に集中的に整備されたものであり、建築後50年以上が経過して老朽化が進んでいます。道路、橋、トンネル、水道管、港湾や河川の堤防などは我々の生活と密接に関わっており、欠陥があれば早めに補修しなければ、大きな事故や災害につながりかねません。惨事を未然に防ぐには、まず老朽化したインフラの点検から始めなければならないでしょう。ロボットの活用は人間による目視や打音より精度が高く、高所や地下など作業が難しい場所でも威力を発揮します。
 AI(人工知能)の発展にともない、ロボットもますます賢くなり、人間の知能を追い抜いてゆきそうです。ただ私が定年退職を迎える前に、日本経済史の授業をしたりすぐれた論文が書けるロボットは開発してほしくありません。

2019年度 日本経済史機…蟯試験を行いました

 本日、日本経済史気猟蟯試験を実施しました。私の担当科目の3つめ(最後)のテストになります。しかしすでに終わっている2科目の採点が片付いていないため、頭が痛いです。真面目に講義に出席していたことがわかり、詳しく丁寧な答案がある一方で、文意不明、うすい字、小さい字、乱雑な字の答案も見受けられ、目を通すのに手間取っている状況です。
 さて今回の試験問題は下記のとおりですが、高校日本史との接続も意識し、極めて基本的な設問にしたつもりです。この科目の目的は、「近代」という時間の世界を、各自自前のナビを利用し、自由自在に往来できることです。旅行に出かけるとき、まずみなさんは、ガイドブックに紹介されている定番のスポットを訪ねるでしょう。 日本経済史気旅峙舛任蓮近代史の旅において、最も有名な名所を案内したつもりです。阪急不動産の簑原社長の講演会のみ、「意外と知られていない絶景」だったかも知れません。
 歴史は時間の旅であり、旅行と同じように、もっともっと楽しんでほしいと思います。日本経済史気全国の名所を要領よくまわるバスツアーとすれば、秋学期開講の兇蓮⇔垢離廛蹐推薦する特別の場所をゆっくり満喫するプログラムです。気涼碓未取れた人は、是非兇盞兮海靴銅講してください。歴史の旅において「自分で探すす喜び」を経験してもらえると思います。

【2019年度 日本経済史機…蟯試験問題】

1. 下記の(1)〜(5)の事項について3問選択し、5行程度で簡潔に説明しなさい。 8×3=24点

(1) 五箇条の御誓文
(2) 秩禄処分
(3) 明治維新期における鉄道建設推進派と反対派の意見対立について
(4) 自由民権運動と国会開設
(5) 不平等条約改正

2. 大正〜昭和初期の経済・社会動向について、次の(1)〜(4)の設問に答えなさい。60点

(1) 第一次世界大戦は当時の日本経済の様相を大きく変えることになります。具体的にどのような変化が起こったか、説明しなさい。15点

(2) 第一次世界大戦ブームの反動は深刻で、1920年代の日本経済は慢性的な停滞に見舞われます。その要因を講義内容に即して述べなさい。10点

(3) 昭和恐慌においてわが国が未曽有の不況を経験したのは、当時の民政党内閣が経済の論理に反する政策を展開したためと考えられます。一連の政策の内容を論じ、その問題点を指摘しなさい。20点

(4) 市民生活に目を向けるとこの時期、新しい傾向がみられるようになります。どのような傾向が生まれたか、説明しなさい。15点

3. 阪急電鉄の創業者小林一三は、様々なアイディアを打ち出し、斬新な鉄道経営のモデルを考案しました。その内容について論じなさい。16点

そろそろ卒業論文の準備を始めましょう

 寝ても覚めても採点、採点の毎日です。しっかり事前準備をして臨んだという学生と、全く勉強せずに受けた学生の差が歴然と出ています。出来不出来は当然得点に反映されます。ミスのないよう、1枚1枚丁寧に見ているつもりです。
 さて研究演習兇亮講生は、以前から伝えてありましたように、夏休み以降年明けまでの間、卒業論文の作成に注力してほしいと思います。もっとも卒業論文を提出しなくても卒業資格が得られる制度になっていますので、下記の注意事項を参照して個別的に意思表示をお願いします。

1.卒業論文作成のための条件
 極めて根本的なことですが、卒業論文の作成にふさわしいのは、調べたいテーマを明確に持っている人です。テーマ、構想が全くなく、不足した単位を卒論で稼ぐという考え方であれば、講義科目で単位を満たしてください。
 いつも強調しているように卒業論文は4年間の学びの集大成です。パズルにたとえると、これまでとってきた単位はピース(小片)です。それらを組み立て、1枚の絵に仕上げる作業が卒論の執筆です。

2.テーマ、構想に関して
 次に重要なのは、どのようなテーマを研究するかです。何よりも、研究の意義づけがきちんと説明できるかどうかがポイントです。
 ここでこれまで私が経験した悪い事例を紹介します。「サッカーが好きなので、Jリーグについて調べたい」、「ルミナリエに感動したのでルミナリエについて調べたい」といった具合です。好きだから調べたいという気持ちはわかりますが、Jリーグやルミナリエの何をどう研究するのかと質問した時点で会話が続かなくなります。研究テーマの選定には熟考が大切で、思いつきや直感で決めるのは望ましくありません。
 ところでテーマを選定する際に最も重視すべきは、文献や先行研究が豊富かどうかです。スポーツやイベントの経済効果は学生の好むテーマですが、調べる手掛かりがほとんどありません。個人的には研究の蓄積や文献が豊富なオーソドックスなテーマを手堅く研究するのがよいと考えます。

3.作業の進め方
 分量の目安は1,000字×20枚程度です。それだけの論文を来年の正月休み明け早々に提出しなければいけませんので、計画的な準備が必要です。すなわち図書館へ出向いて文献を調べたり、パソコンに向かって原稿を書く時間が確保できるか否かが重要です。ネットを有効に利用するのは好ましいことです。しかし出どころがはっきりしない記事で字数を稼ぐのは避けてください。またたとえ正式な論文であっても、切り貼りは認められません。自分の頭でよく考え、文章を練る姿勢が求められます。したがって、他用が立て込んでいて十分な時間を確保するのが困難な人は、卒論執筆には向きません。
 秋学期、中間で2〜3回途中経過を報告してもらいます。原則正規のゼミの時間を利用しますが、臨機応変に個別対応もします。担当教員が進捗状況を把握できるよう、緊密なコミュニケーションをとれることを重視します。

4.論文の構成
 ゼミ内普段から強調してきた論文の基本スタイルは次のとおりです。
 まず「はじめ書き」で、テーマ選定の理由を明示してください。無数のテーマの中からなぜそのテーマを選んだのかに関し、アピールが大切です。そして従来の研究でどこまでが明らかになっているかを示し、その研究を行うことによって、自分がどのような貢献ができるのか考えましょう。
 次に本論でしっかり分析を行います。要するに課題を設定し、証拠を示しながらなぜそうなったのか、理論的・実証的に解明してゆくのです。形式的には4〜5章に分けるのが適当です。各章はさらに節に分け、適切な見出しをつけてください。切れ目のない長い文章は読みづらいので、必ず節を作るようお願いします。
 最後は全体を通じて何が明らかになったのか、締めくくりを(まとめ)をしっかり書いてください。

5.卒論計画書の提出
 卒論を書く予定のゼミ生は、定期試験が片付き次第、準備を始めましょう。まずテーマを設定し、A4用紙1枚程度で「はじめ書き」をまとめてください。その後章立て(可能なら節も)決定してください。また同時に図書館に出向いて文献を収集し、参考文献リストを添えてください。文献の利用は必須で、ネットの利用のみでの作成は認められません。
 卒論執筆希望者は、さしあたり上記の卒論計画書を下記のアドレスに、8月31日(土)までに送付してください。連絡がない場合は、卒論作成の意思がないものと判断します。

関西学院大学経済学部
寺本 益英研究室
e-mail:teramoto★kwansei.ac.jp ★を@に変更してください。

2019年度 「経済の歴史と思想」2組 定期試験を行いました

 本日1時間目、「経済の歴史と思想」2組の定期試験を行いました。私が監督に行った教室では途中退席者が少なく、熱心に取り組んでいる様子だったので、好成績を期待しています。何名かの学生に、「選択問題を全問書いてしまったのだけれどもどうしょう」と心配そうに尋ねられました。減点するつもりはなく、よくできている解答を2つ選んで加点しておきます。しかしそれほどたくさん書く時間があったのか、気になるところです。いくら何でも、70分で全問に答えなさいというほど無茶な出題はしません。
 さて1年生のみなさんは、今回はじめて大学の定期試験を経験しました。試験の形式は、細かい知識を問う問題、穴埋め、計算、選択肢など、様々なタイプだったに違いありません。ここで本科目についてのスタイル(出題意図)について述べておくと、テクニカルな知識や手法のチェックが狙いではありません。目指すのは、人類が長い年月をかけて追求してきた普遍的価値観、望ましいとしてきた経済・社会の姿がイメージできているかという点の確認です。具体的キーワードとしては、民主主義、人権尊重、法による支配、多国間による国際協調主義、市場経済等々が挙げられます。先人たちはこれらを実現するため、どれだけの困難に立ち向かい、犠牲を払ってきたことでしょう。封建制社会から近代市民社会への移行を追うことで、そのプロセスを深く心に刻んでほしいと思いました。そして現在に目を向け、上記の価値観に逆行する思想や行動が広がりつつあることに危機意識を持たなければいけません。すなわち、自国第一主義、差別や偏見、偏狭ナショナリズム、自身と異なる思想の排除、保護貿易などです。しかもこうした動きを超大国アメリカが主導し、日本は「強固な日米同盟」を理由に、アメリカに対しては完全追従という構図ができています。リーダーの「不羈独立」の」精神はどこへ行ってしまったのでしょうか。私たちは今こそ歴史を冷静に顧みることによって、経済・社会が誤った方向に進むのを阻止しなければならないと痛切に感じます。
 以下に本日の試験問題を公開します。

【 2019年度 「経済の歴史と思想」2組 定期試験問題 】

1. 18世紀後半イギリスにおいて産業革命が展開しますが、それに先立って経済状況に変化が起こります。このことをふまえ次の設問に答えなさい。20×3=60点
  
(1) 16〜18世紀にみられた手工業生産の展開(プロト工業化)について説明しなさい。

(2)  17世紀半ばからほぼ1世紀にわたる農業部門の発展(農業革命)について述べなさい。

(3) 1640年代から1770年代にかけてのイギリスの輸出入動向はどのように変化し、どういった新産業が出現したか論じなさい。

2. 次の(1)、(2)の設問のうち、どちらか一方を選択して解答しなさい。20点

(1) スペインの繁栄は16世紀後半のほんの短期間にとどまりました。ネーデルラント独立戦争の経過を中心に、その背景となった要因を述べなさい。 

(2) クロムウエル没後の政治状況に留意し、名誉革命の経過を説明しなさい。さらに名誉革命がその後の経済・社会の発展に与えた影響についても述べなさい。

3. 次の(1)〜(4)の設問より2問選択し、各問5〜10行程度で解答しなさい。10×2=20点

(1) 中世における東方貿易と北海・バルト海貿易について述べなさい。 
(2) 価格革命が当時のヨーロッパ経済に与えた影響について述べなさい。
(3) 毛織物産業を念頭において、重商主義と呼ばれる経済政策の特徴について論じなさい。 
(4) プロテスタンティズムの倫理について言及し、それがイギリスの経済発展に与えた影響について説明しなさい。

2019年度 学際トピックス「医療をめぐる諸問題」 定期試験を行いました

 私の担当科目の最初となる「医療をめぐる諸問題」の定期試験が本日実施されました。本講座は関学と兵庫医大の連携講座という性格ですが、それぞれの先生が持ち味を生かし、素晴らしい講義をしてくださいました。医療は、人間にとって最も重要な「命」の問題であり、本当は全学部の全学生が受講し、広く深く考えてほしいテーマです。試験勉強は大変だったかもしれませんが、日本の医療制度とそのすぐれた点、持続可能なものにするための条件、少子・高齢化、人口減少社会における医療のあり方といった本質的な課題に加え、医療を法的にルールに則って処理することの難しさ、病院経営や医療サービスの質に象徴される身近な話題に至るまで、あらゆる角度から関心を持ってもらえたのではないかと感じています。関学生は良識ある市民として、兵庫医大生は患者に信頼される医師として、本講座の受講を契機に、これからも学びと研鑽を継続してください。
 さて本日みなさんに解答してもらったのは、次の問題です。

【2019年度 医療をめぐる諸問題 定期試験問題】

1. わが国の医療をめぐる現状と課題について、次の(1)〜(3)の設問に答えなさい。40点

(1) わが国の医療制度にはどのような特徴がみられますか。講義内容に即して説明しなさい。10点
(2) わが国の医療費は経済成長を上回るスピードで増大しており、その節減が緊急の課題になっています。医療費節減の方策について、政策面と未病期間を長くするという観点から論じなさい。20点 
(3) わが国は深刻な高齢化・人口減少社会に突入しています。その結果、どのような問題が起こっていますか。社会保障(医療)に焦点を当てて述べなさい。10点

2. 次の(1)〜(3)の設問について、2問選択して答えなさい。20×2=40点

(1) 戦後日本の疾病構造の変遷について、人口構成、社会経済状況、生活習慣等の動向をふまえ、説明しなさい。
(2) 高齢化の進行にともない、わが国の公的医療保険制度の持続可能性が危ぶまれています。講義内容をふまえ、今後この制度を維持してゆくためには、どのような改革が必要か論じなさい。
(3) 自治体病院が直面している課題について指摘し、それらの問題点を解決するための方策について論じなさい。

3. 次の(1)〜(5)の設問について、2問選択して答えなさい。10×2=20点

(1) 医療改革を考える際、今後規制を強化すべき事項は何か、逆に規制緩和を進めるべき項目は何か論じなさい。
(2) 神戸医療産業都市の目的、および展開されている事業について論じなさい。
(3) 福島県立大野病院事件の経過について言及し、医療の安全を確保するためにどのような取組が行われているか述べなさい。
(4) 講義内容を参考にし、災害医療の特徴と課題について述べなさい。
(5) 医療サービスの質を高めるためにどのような対応が必要か。接遇、医療コミュニケーションの観点から論じなさい。

答案作成に際して注意してほしいこと

 いよいよ春学期の定期試験が始まります。講義終了の翌週から試験というのは気の毒に思いますが、よい結果を残せるよう全力を尽くしてもらいたいです。大学の定期試験は、あくまでも講義内容の理解を確認するためのものです。大学入試のように難問奇問はありません。平素どれだけ熱心に講義に参加したかが評価のポイントになります。
 さて私の担当科目に関しては、次の点に留意して、最終の準備をお願いします。
(1) 採点基準
 一番重要なことは、講義内容を忠実に再現できるかどうかです。そのためには、講義期間内で再三強調したように、コンスタントな出席が条件です。いかなる理由にせよ、欠席が多いと話がつながらず、書くべきことがわからないでしょう。答案には講義で話した以上のことは求めていません。講義で説明したとおり答案を作成してください。ネットからの丸写しなどは採点対象外です。
 その前提で予告問題を確実に勉強しておいてください。「どのような問題を出されるのか」という学生の不安を取り除くため、私は14回の講義の中心テーマをあらかじめ伝えておく方針をとっています。ただしいくら問題内容がわかっていても、準備なしでは答案は書けません。あらかじめルーズリーフに答案を書いてみて、当日同じ内容が書けるようにしておくのがベストです。なお他人のコピー等で覚えようとしても、まずうまくゆかないと思います。わかったつもりになるだけで、いざ解答用紙を配られても、不正確な内容しか書けていません。自身の努力が肝心で、自身の頭に定着するような勉強法を開拓してください。

(2) 形式・分量
 私の担当科目の試験はすべて記述式です。何よりも読みやすい答案を書いてください。字は丁寧に、なぐり書きは困ります。小さい字、うすい字も読むのに苦労するので避けてください。芯の濃さはB以上が望ましいです。話題が変わるときは改行も必要です。
 分量についてよく尋ねられますが、簡潔に述べる場合は5行程度、詳細に述べるときは10行以上が目安です。制限時間は70分なので、1行書くのに1分使えば、ちょうど裏表がいっぱいになります。答案用紙が2枚必要なほどよく書いてくれる学生もます。

(3) 内容
 形式・分量だけでなく内容が重要なことはいうまでもありません。繰り返しになって恐縮ですが、大切なのは講義内容に即しているかどうかです。教科書、板書、配付資料をもとに、予告問題の解答を準備しておきましょう。
 なお答案の書き方にはコツがあります。出題の意図を理解し、核心的な説明から始めることです。その後色々工夫して肉付けをしてください。細かい知識を尋ねるのではなく、問題の本質を理解してほしいというのが出題者のホンネです。
 加えて要請されるのは正確な知識です。事実と異なる内容には、点数が与えられません。

(4) 最後に 定期試験の位置づけ
 講義をしながらいつも感じていることですが、90分授業を14コマしてもわずか21時間にすぎず、1日=24時間にもなりません。つまり講義で扱えるのは、その科目のほんの導入部分だけです。定期試験はそこから特に重要な部分をピックアップしているので、最も基本的な知識の確認ということです。
 そこでみなさんにお願いしたいのは、講義を出発点に、関連文献をさがし、より深い研究に進んでほしということです。またそれぞれのご専門の先生に、個別的にアドバイスを受けるのも有意義です。
 卒業論文が4年間の学びの集大成と考えれば、各科目はそのパーツです。自動車の部品をいくらあつめても、それらを組み立てて走るようにしなければ意味がありません。経済学の研究も同様で、各科目で学んだ内容を自身でうまく再構築し、オリジナル性の強い卒業論文に結び付けてください。 

2019年度 学際トピックス「医療をめぐる諸問題」 定期試験対策

 大変遅くなりましたが、学際トピックス「医療をめぐる諸問題」の定期試験準備が整いました。
 はじめに本講座のコンセプトを再確認しておくと、医療の専門家を中心に、法律と経済の研究者も加わり、医療問題に様々な角度からアプローチし、過去・現在・未来の姿を描き、望ましいあり方を考えることです。あらためて述べるまでもなく、医療は、「健康で長生きしたい」という人類共通の願いを実現するものです。日本の医療レベルは極めて高く、そのおかげで世界屈指の長寿国になっています。しかし立ち止まって現状をみると、高齢化が進み、人口が減少してゆくなかで、医療費の増大に歯止めがかかりません。今大学生のみなさんが定年退職を迎えるとき、現在と同様に恵まれた医療を受けるためには、早期に様々な改革が必要です。
 さて本日(7月4日)、参院選が公示されました。有権者の最大の関心事は社会保障ということです。もちろん社会保障は医療だけではありませんが、多くの国民が豊かな老後が送れるよう、少ない自己負担で満足のゆく医療サービスが受けられる基盤整備を求めているのです。私たちは今後活発になる討論会に注意を払い、社会保障や医療の持続可能性について真剣に考えている政党や候補者に投票したいものです。有権者として賢明な判断ができるよう、今回の試験勉強を通じて医療問題に精通しておきましょう。
 なお定期試験は、2019年7月18日(木)の第4限に実施します。次のテーマに関し、よく勉強しておいてください。

 テーマ1 日本の医療制度の概要、現状と課題
(1) 日本の医療制度はどのような特徴がありますか。その恵まれた制度のおかげで、日本は世界屈指の長寿国を実現できたともいえます。
(2) 高齢化の進展を背景に、医療費の増大が顕著になっており、その節減が緊急の課題です。医療費節減の方策について、政策面と未病期間を長くするという観点から説明できるようにしておきましょう。
(3) この講座では、何人もの先生が高齢社会、人口減少社会の到来に危機感を示されました。そもそも高齢化や人口の減少は経済にどのような影響を与えるのでしょうか。色々な影響が考えられますが、社会保障や医療との関連を指摘できるようにしておいてください。

 テーマ2 医療と経済・財政
(1) 戦後日本の疾病構造の変遷について、人口構成、社会経済状況、生活習慣等の動向をふまえ論じられるようにしておきましょう。
(2) わが国の公的医療保険制度の種類や概要を整理し、今後も持続可能であるためには、どのような改革が求められているか考えておいてください。
(3) 民間病院と比較して、自治体病院はどのような特徴を持っているかを明らかにしておいてください。また直面している課題を挙げ、改革の方向性を述べられるよう準備しておきましょう。
(4) 医療改革において、今後規制強化が求められている項目と、規制緩和が要請されている項目についてとりまとめておきましょう。
(5) 神戸医療産業都市の目的、および展開されている事業についてよく復習しておいてください。

 テーマ3 災害医療 
 小谷先生の講義では、2005年(平成17年)4月25日、JR西日本福知山線(JR宝塚線)塚口駅 ― 尼崎駅間で発生した大規模な列車脱線事故への対応が取り上げられました。講義内容を参考にし、災害医療の特徴と課題について述べられるようにしておいてください。

 テーマ4 医療と法
 福島県立大野病院事件の経過、争点、裁判所の判断についてとりまとめ、医療の安全を確保するためにどのような取組が行われているか説明できるようにしておきましょう。

 テーマ5 医療サービスの質をめぐって
 医療サービスの質をめぐり、山中先生は接遇の重要性を、鈴木先生は医療コミュニケーションの大切さを強調されました。お2人の先生の講義内容に基づき、あなたが理想とする病院の条件について論じられるようにしておおいてください。

2019年度 「経済の歴史と思想」2組 定期試験対策

 授業中たびたび強調してきましたが、「経済の歴史と思想」は経済学部開講科目の中では少数の高校で学んだ科目(世界史)を前提とする科目です。取り上げた内容は、封建制社会、大航海時代、絶対主義時代、農業革命、商業革命を経て近代市民国家が成立するまでの経過です。高等学校で学んだ基本事項をおさえつつ、大学(経済学部)に入ってはじめて扱う概念も加えて説明してきたつもりです。競争回避的な経済はなぜ停滞するのか、経済発展のためにはなぜ民主主義の定着が必要なのか、プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神等のテーマは、大学入試で要請される暗記型の知識ではなく、望ましい経済・社会の姿を描く上で、普遍的に重要な観点だと考えています。
 、さて私が担当する2組の定期試験は、2019年7月17日(金)の第1限に実施します。範囲はテキスト天川潤次郎・寺本益英『社会経済史講義』学文社,2004年 の第1章〜第5章とします。歴史の試験ですから、最低限の史実の把握は不可欠です。しかしそれ以上に注意を払ってほしいのは、史実を解釈して、幸福な経済・社会のあり方を考えてもらうことです。以下のテーマ(予告問題)を参考に、本質にまで踏み込んで勉強しておいてください。

テーマ1 中世社会(封建制社会)の特徴
(1)  農村における荘園制
(2)  都市における手工業の展開と貿易の動向

テーマ2 スペインの興亡
 スペインの繁栄は16世紀後半のほんの短期間にとどまりました。その要因をテキストの内容に即してとりまとめておきましょう。

テーマ3  絶対主義時代
(1) ヨーロッパ史において絶対主義時代はどのように位置づけられるか?イギリスにおける絶対主義の形成過程は?
(2) 経済政策にはどのような特徴があったか?また、自由主義経済の政策と比較してどのような問題があったか?

テーマ4 産業革命の前提
(1)  16〜18世紀にみられたプロト工業化の展開
(2)  17世紀半ばからほぼ1世紀にわたる農業部門の発展(農業革命)
(3)   1640年代から1770年代にかけてのイギリスの輸出入構造に起こった変化(商業革命)

テーマ5 市民革命の経過 
 イギリス経済史の定番ですが、ピューリタン革命からクロムウエルの独裁の時期を経て名誉革命に至るまでの経過を整理しておきましょう。さらに名誉革命で確立された近代市民国家はどのような特徴を持っていますか?

テーマ6 経済発展と倫理
 経済の発展のためには経済政策が重要なことはいうまでもありませんが、国民の倫理観の影響も看過できません。イギリスの経済発展において、プロテスタンティズムの倫理が果たした役割についてまとめておきましょう。

2019年度 「日本経済史機廖…蟯試験対策

 令和時代を迎えて最初の日本経済史気亮業も終盤にさしかかりました。近代日本の歩みを振り返ってみると、明治維新以降150年以上が経過しました。
 さて私たちはどこかに出かけるとき何らかのナビゲーションシステム(位置情報)を頼りにします。道路や鉄道での移動には高性能のナビが出回り、苦労しません。しかし、時間軸における移動は決して容易ではないというのが私の率直な感想です。というのも、私が大学受験を経験した昭和の終わり頃は、日本史の選択が一般的で、どこの高等学校でもかなりの時間を割いていました。ところがその後日本史は単なる暗記科目という批判が高まり、数学など他の科目が重視され、どんどん日本史離れが進んでいったように感じます。その結果日本史を学ばなくても大学に合格でき、これまでに日本がどのような道を歩んできたか、その基本的事実を知らない若者が増えてきました。つまり時間軸の感覚がなく、明治、大正、昭和、平成を正確な位置を確認しながら移動できないのです。道に迷ったとき、時間のロスが生じて目的を果たせなかったり、余分なお金がかかったりします。それと同様に、時間軸での歩みに手間どると、望ましい経済・社会の実現が困難になります。
 そこでこの授業では、明治維新から昭和戦前期における重要な史実をおさえ、時間軸のナビを提供し、スムーズな移動ができるよう心掛けたつもりです。今日の日本経済の原型がどのように形作られたか、何に成功し、何に失敗したかを吟味し、令和の日本が進むべき方向性を考える素材を提供できたとすれば、これ以上の喜びはありません。
 さてこの科目の定期試験は、2019年7月23日(火)の第2限に行います。下記のテーマに留意して、十分な準備をして臨んでください。

 テーマ1 明治時代
 明治時代に関しては、下記の事項の概要や意義について、コンパクトにまとめ説明できるようにしておいてください。
(1) 戊辰戦争
(2) 五箇条の御誓文
(3) 版籍奉還
(4) 廃藩置県
(5) 地租改正
(6) 秩禄処分
(7) 明治維新期における鉄道建設推進派と反対派の意見対立について
(8) 文明開化
(9) 自由民権運動と国会開設
(10) 不平等条約改正
(11) 日本の産業革命
(12) 日本の帝国主義

テーマ2 大正〜昭和初期の経済・社会動向について、ある程度詳しく説明できるようにしておきましょう。
(1) 第一次世界大戦の経済的帰結
(2) 1920年代の日本経済停滞の要因(資産デフレ、デフレの悪循環のメカニズム)
(3) 昭和恐慌を引き起こした民政党内閣の経済政策の内容と問題点について。
(4) 大正期における市民生活の傾向について

テーマ3 阪急電鉄の歴史と小林一三の経営理念 
 阪急電鉄の創業者小林一三が開発した鉄道経営のモデルについて整理し、彼の経営理念およびその評価に関しても述べられるようにしておいてください。
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