寺本益英の日記

 関西学院大学で日本経済史を担当する寺本益英の身辺雑記です。経済、歴史、お茶、フードシステムの話題を中心に、思い立ったことを綴ります。受講生の質問にも答えます。

2018年度のスケジュール

 2018年度は下記のスケジュールで講義を行います。(ほぼ確定版)
 講義科目は昨年と同じく、日本経済史機↓兇鳩从兒烹臓△修譴乏愃櫂肇團奪ス「医療をめぐる諸問題」です。歴史関係の科目では、経済学の学びの体系の中で、歴史的アプローチの位置づけをしっかり行いたいと思います。すなわち、経済現象を長期的に観察することの重要性や、歴史からの教訓を導く大切さについて考えます。学際トピックスは、実績豊富な先生方のお話しが楽しみです。
 なおここ2年間開講していた大学院の講義は、熱心な社会人大学院生が卒業されたので閉講になります。百貨店の経済史を学びながら、日本近代史を掘り下げる好機でしたから、今年度からとたんに寂しくなります。しかしその分、学部ゼミ生のみなさんには、踏み込んだ研究をしてほしいものです。卒業時には全員質の高い卒業論文を提出できることを目標に、日々の積み重ねを大切に過ごしたいと思います。

火曜日
2限 春   学部・日本経済史機。臓檻隠娃
2限 秋   学部・日本経済史供 瓠‖膤惘 ζ本経済史A B−204
3限 通年 学部・研究演習機 。叩檻械娃粥

水曜日
教授会、研究科委員会など会議日

木曜日
2限  通年 学部 研究演習供。叩檻械娃
4限  春  学部・学際トピックス「医療をめぐる諸問題」 B−204 

金曜日
2限 春 学部・経済史B B−301
2限 秋 学部・研究演習入門  C−304

北朝鮮が「微笑み外交」を展開

 平昌(ピョンチャン)冬季オリンピックに合わせ、北朝鮮が「微笑み外交」を展開しています。特筆すべきは、最高指導者・金正恩(キムジョンウン)氏の妹の金与正(キムヨジョン)氏の訪韓です。そのねらいは、オリンピックを契機に、韓国との友好関係を演出し、対外イメージの改善することです。 北朝鮮は選手のほかに、芸術団や、韓国側と合同応援団も派遣しています。こうした働きかけで、韓国国内の民族意識が高まり、韓国と日本・アメリカの結束に、風穴を開けようとしていることが伝わってきます。
 金与正氏と文在寅(ムンジェイン)大統領の会談は10日午前に行われました。そこで金与正氏は正恩氏の親書を手渡し、文大統領の訪朝を要請しました。これは北朝鮮の焦りのあらわれとみられます。北朝鮮の本音は、韓国を通じ、アメリカに制裁緩和や米韓合同軍事演習の縮小・中止、アメリカが攻撃を思いとどまるよう説得してもらうことでしょう。
 金与正氏の訪朝要請に対し文在寅大統領は条件を整えて実現させよう」と述べたといいます。ただちに訪朝要請を受け入れられなかったのは、北朝鮮が核武装を解除し、繰り返してきた挑発行動をやめて米朝交渉が実現する見通しが立っていないからです。
 以上のような融和ムードに対し、日本政府は警戒感を強めています。これまで日韓両国は、北朝鮮の融和的な政策に乗ってしまい、結果的に北朝鮮に核・ミサイル開発を継続させたという経験があるからです。日本はアメリカと連携し、韓国がこれ以上北朝鮮に傾斜しないよう目を光らせています。
 日米両国は北朝鮮が核放棄に向けて動き出さないかぎり最大限の圧力を継続するという方針です。オリンピック終了後の北朝鮮の出方が注目されます。

2017年度 関西学院大学寺本ゼミ主催見学会(山本金属製作所・クリエイションコア東大阪)のご案内

 4年間の学生生活をデザインする際、色々な業種についての知識を深めたのち、会社や工場に出向いて担当者のお話を聞き、現場を見学することは、極めて重要です。なぜなら「生きた経済」を学ぶ手がかりを得、確かな将来設計の指針となるからです。長期休暇中の限られた時期しか実施できませんが、ゼミ活動になるべく多く組み入れてゆきたいと考えています。
 今回は昨年まで総合コースの講師を務めていただいていた村田哲也先生のご尽力で、山本金属製作所とクリエイションコア東大阪への見学会が実現しました。、山本金属製作所は金属加工のほか、モノづくりにおける様々な材料の評価サービスを行っている優良企業です。
 その後地下鉄中央線の長田駅まで移動し、クリエイションコア東大阪を訪ねます。ここは大阪府下の中小企業のイノベーションを支援する施設で、各社の製品や技術に関する展示が行われています。
 歴史を顧みると、国の繁栄には、モノづくりの強い基盤が不可欠です。日本の経済発展、とりわけ高度経済成長を支えたのは、優れたモノづくりの力といっても過言ではありません。そしてモノづくりファースト(=産業資本主義)から、マネーゲーム(=金融資本主義)に移行したとき、経済は変調をきたします。それは日本のバブル崩壊、アメリカのリーマンショックを見れば明白です。
 私はアベノミクスによる好景気は株高によるところが大きく、日本経済の根本的な体力が底上げされた結果ではないように思います。日経平均株価2万4,000円近辺までの上昇は、スピード違反で走っている車としか見えず、事故(=株価の急落)が心配です。経済の本当の力は、高い技術力です。今回の見学会では、日本経済の着実な発展のため、技術力がいかに重要かを認識する機会にしたいと思います。

〈機啗学会の概要
・日時:2018年2月6日(火)  
・集合場所、時間: 地下鉄谷町線平野駅北改札口 午後1時(時間厳守)
・対象 関西学院大学寺本ゼミの学生およびその他科目の受講生 市民大学など講座を受講していただいた社会人


〈供唸堋
13:30〜15:00 山本金属製作所 見学
谷町線平野駅から中央線長田駅まで移動
16:00〜17:00  クリエイションコア東大阪 見学
18:00〜 船場・ひさ家において懇親会


お申し込み・お問い合わせ
※ 参加希望者は1月27日(土)までにご連絡ください。
〒662-8501 西宮市上ヶ原一番町 1−155
関西学院大学 寺本益英研究室
E-mail: teramoto★@kwansei.ac.jp  ← ★をカットしてください。
Tel  0798−54−6469


山本金属製作所

クリエイションコア東大阪

船場・ひさ家

核の恐怖が支配する世界に逆戻り

 トランプ政権は2018年2月2日、これから5〜10年の新たな核戦略の指針となる「核体制の見直し(NPR・Nuclear Posture Review)」を公表しました。その骨子は第1に、核の使用条件の緩和です。すなわち通常兵器やサイバー攻撃を受けた場合の反撃として、核兵器を使う可能性を排除しません。背景には、領土的な野心を隠さないロシアや中国、核開発をやめない北朝鮮への危機感があり、これらの国々の動きを抑止するには、大統領に核使用の広範囲な選択肢が必要と判断したのです。
 いまひとつは、新たな核兵器の開発です。潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)用に爆発力を抑えた小型の核弾頭や海洋発射型の核巡航ミサイルを新しく開発する方針を明記しました。これは敵国の大都市の破壊を目的とした大型の核兵器に比べて爆発力は小さいのが特徴です。敵国の基地や施設などを破壊する局地的な戦闘に使い、非戦闘員らの被害をできるだけ小さくするねらいです。位置を特定されにくい潜水艦から発射すれば、状況に応じた柔軟な運用も可能となります。
 アメリカの核能力は破壊力が極めて大きな戦略核が中心であり、事実上「使えない核」とされてきました。しかしその威力を小さくすることで「使える核」とし、アメリカがもしかすると核を使うかもしれないと相手国に圧力をかけ、危険な行動を思いとどまらせる効果を狙っています。
 トランプ大統領は声明で、「アメリカはこの10年間で核の保有数や役割を減らした。他の核保有国は備蓄を増やし、他国を脅かす新兵器を開発した」と、中ロや北朝鮮を念頭に置いて批判しました。さらにロシアに対し、「核の脅しや先制使用によって自国に有利な形で紛争をおさめられると誤認している」と、危機感を鮮明にしています。中国には「新たな核能力を獲得し、西太平洋でのアメリカの利益に挑戦しようとしている」と警戒しました。北朝鮮については「あからさまに核使用の意思を示してアメリカを脅している」と非難しています。
 前回8年前にオバマ政権が発表した「核戦略」では、ロシアとの核軍縮が進んでいたことや、通常戦力でアメリカが世界を圧倒しているという強みを背景に、核兵器の役割を減らしていくことが強調されました。しかしその後、陸・海・空・宇宙・サイバーの領域において、アメリカの優位が揺らぎ始めました。そのためトランプ政権は、オバマ政権が訴えた「核なき世界」路線を放棄したのです。
 アメリカの核政策の見直しにより、世界は再び核軍拡の方向に向かいつつあります。そして冷戦時代のように、核の恐怖が支配する世界が到来することになるでしょう。
 河野太郎外相は、NPRについて「高く評価する」との談話を発表したのには驚きました。小型とはいえ通常兵器と比べるとはるかに大きな破壊力を持った核兵器が使用されると、その影響は計り知れません。日本は広島、長崎で核兵器の悲惨さ、非人道性を身をもって体験しているはずです。また2016年5月27日、安倍晋三首相はオバマ前大統領と並んで、核なき世界を訴えたはずではなかったのでしょうか。アメリカの政権がかわっても、世界の先頭に立って核廃絶を訴えるべきであると、強く感じました。

2017年度 経済史B 定期試験を行いました

 本日経済史Bの定期試験を行い、下記のような問題を出しました。
  この講座でみなさんに一番伝えたいのは、覇権国が世界のリーダーとして、どうふるまうべきかということです。それはひと言でいうと、自由、平等、民主主義、法の支配といった普遍的価値を全世界に普及させることです。パックス・ブリターニカを展開したイギリスの歴史を顧みると、今のトランプ政権が打ち出す諸政策(アメリカファースト主義)に疑問を感じざるをえません。
 さて試験の出来はどうだったでしょうか。答案用紙が2枚にわたる学生も見受けられ、比較的多くの学生が時間いっぱいまでがんばっていたので、好結果を期待しています。一番重要な採点基準は、講義内容に即して答案がまとめられ、ある程度詳しく書かれていることです。

【 2017年度 「経済史B」 定期試験問題 】

【1】 本講座ではパックス・ブリターニカの展開を中心に講義を進めてきました。講義内容を念頭に置きながら、次の(1)〜(5)の設問に答えなさい。16点×5=80点

(1) イギリスが世界で最初に産業革命を達成することができたのはなぜか。その経済的(技術的)、社会的背景について論じなさい。
(2) 穀物法をめぐる論争を紹介しつつ、自由貿易体制がパックス・ブリターニカに果たした役割について述べなさい。
(3) パックス・ブリターニカを金融面から支えた金本位制の機能と、基軸通貨ポンドが果たした役割について論じなさい。
(4) 植民地インドはパックス・ブリターニカの重要な支柱であったと言われています。イギリスの対インド投資や、インドの貿易動向に注目し、その理由を説明しなさい。
(5) 1870年代に至ると、イギリスの経済力にかげりが見え始めます。アメリカやドイツの台頭に留意しながら、パックス・ブリターニカの構造がどのように変化していったか述べなさい。

【2】 トランプ大統領誕生の背景について論じ、今後の日米関係がどうあるべきか、あなたの考えを述べなさい。20点

2017年度 日本経済史供…蟯試験を行いました

 秋学期の講義の日程がすべて終了し、今日から定期試験期間に入りました。ずっと以前は講義が終了すると先に入試をやって、そのあと定期試験を行っていました。講義終了から 定期試験開始まで2週間くらい準備期間がありました。しかし最近は講義が終わるとすぐ試験です。講義の最後のほうで扱ったテーマを十分に定着させる余裕がないのが気の毒です。
 春学期の履修を前提とする日本経済史兇旅峙舛蓮⊆講生が少なかったので、毎回全員に発言してもらい、理解度を確認しながら進めることができました。戦前の歩みをたどり、そこから様々な教訓を得る能力を持つことは、医師にたとえれば、数多くの症例を経験し、最善の治療が施せる名医に相当するでしょう。頭が痛い、おなかが痛いという症状が出ても、その原因がどこにあるかを的確に判断するには、全身のことを知り、たくさんの経験を積んでおく必要があります。私は歴史の事例を学ぶことは、経済の「名医」になることだと考えています。
 さて本日日本経済史兇猟蟯試験を行い、下記のような問題を出しました。

【 2017年度 「日本経済史供廖…蟯試験問題 】

【1】 明治・大正期の日本は3つの大きな戦争を経験し、それらは当時の経済に大きな影響を与えたと考えられます。この点をふまえ、次の設問に答えなさい。14点×3=42点
(1) 日清戦争の勝利によって得た賠償金が当時の経済に与えた影響について述べなさい。
(2) 1905年から翌年にかけての日露戦争ブームの特徴について論じなさい。
(3) 第一次世界大戦によって、当時の経済・社会はどのように変貌したか説明しなさい。

【2】 次の(1)、(2)の設問に答えなさい。18点×2=36点
(1) 1897(明治30)年における金本位制導入の理由と、それが後の貿易、物価、賃金に与えた影響について述べなさい。
(2) 1929(昭和4)年に成立した立憲民政党の浜口雄幸内閣の経済政策が昭和恐慌を引き起こした理由を説明しなさい。

【3】 次の(1)〜(4)の事項に関し、2問選択して説明しなさい。11点×2=22点
(1) 義和団事件と北京議定書  (2)軍部大臣現役武官制
(3) 米騒動              (4)資産デフレ 

高得点を出したくなる答案

 いよいよ明日から定期試験が始まります。今年度秋学期の私の担当科目は、日本経済史兇鳩从兒Bでした。両科目とも出席状況は良好で、みなさん熱心に受講してくれました。何名かの学生は、よくまとまった講義ノートとを見せてくれました。一生懸命話したことが学生に伝わっている証拠であり、大変嬉しく思いました。
 さて学生から答案の分量や書き方に関する問い合わせがあったので、簡単にコメントしておきます。まず分量ですが、70分の試験時間で答案の裏表が埋まるようにと言っています。つまり1分1行のペースで書くと、ちょうど答案がいっぱいになります。大学の試験では記述力が求められますので、私はカッコ埋めや記号で答える問題は出さない方針です。
 話は変わりますが、先般大阪大学の入試で出題ミスがあったことが明らかになりました。過去にも正解がなかったり、逆に2つある問題だったことが判明し、採点をやり直したというニュースをたびたび耳にしました。ただこうしたミスで世間から厳しく非難される出題者(大学)も気の毒な面があります。そもそも高校の限られた学習内容から毎年異なる問題を出題するのは限界でしょう。問題にできそうなトピックスは限られており、数年たてば、ネタ切れになるのではと思うのです。そこを無理にひねった問題を出そうとして焦り、解けない問題を出してしまうのではないかと考えます。その点、大学生の試験はやりやすいです。毎年異なるテーマが扱え、ネタに不自由はしません。それに記述式なので、解答がない問題を出す恐れもありません。
 ここで出題・採点者が高得点をつけたくなるような記述力について考えてみます。私が採点するときはまず、その設問に対する核心部分についてふれられているかどうかをみます。例えばパックス・ブリターニカにおける基軸通貨ポンドの役割は、安定的に広く利用され、流動性の偏在が起こらなかったという点が重要です。そしてソウルの決済型の図を思い浮かべ、1910年頃の資金の流れ(イギリスはヨーロッパ大陸とアメリカ合衆国に対して資金流出であったが、それをインドからの資金流入で補っていたこと)、がポイントになります。
 また浜口雄幸内閣の政策では、緊縮財政、旧平価による金解禁、産業合理化政策の指摘は欠かせません。これらの内容を簡潔にまとめた上で、共通の特徴として経済の論理に反する政策であったことを指摘し、不況が一段と深刻になったことを述べるべきでしょう。、
 講演を依頼されたとき、最も悩むのは時間内でどれだけのテーマを扱うかです。同じテーマでも、30分で話すのと2時間で話すのとでは全然違います。30分の講演では骨子しか話せませんが、2時間の講演では、いくつか事例を紹介したり、用語の説明をすることが可能です。与えられたテーマに対し、簡潔にも詳細にも話せなければいけません。答案にも同じことがいえます。私も試行錯誤の繰り返しですが、肉付けの部分に関しては、できるだけ各自の持ち味を出してアピールするほかありません。
 内容ばかりでなく形式も大切です。何よりも答案の字は濃く、大きく、はっきりと書いてください。うすい、小さい、乱雑で読みづらい字は理解するのに苦労します。内容が正しければ減点はしませんが、出題・採点者が受ける印象はよくありません。
 いつも言っていることですが、大学の定期試験は選抜試験ではなく、日頃の取組が真面目かどうかを確認するものです。合格者数を絞らなければならない大学入試は、受験生を惑わすややこしい問題を作成し、出題者まで足元をすくわれることがあります。このような制度では、受験生も大学関係者(出題者)とも不幸になります。予告した出題範囲をしっかり勉強しておけば、確実に高得点がとれ、採点ミスの起こる余地がない大学のシステムのほうが、大学受験のシステムよりずっとやりがいがあり、優れています。
 

2018年 元旦

 ブログをご覧のみなさん、いよいよ平成30年がスタートしました。早速研究室のカレンダーを掛け替え、気分を一新しました。
 振り返ってみろと、私が学部を卒業して大学院に入学したのは、平成2年(1990年)のことです。平成と同じ年数の30年間、研究生活を続けてきたことになります。時間ばかりが徒に経過し、さしたる成果を残せなかったことに忸怩たる思いです。せめて最終年くらいは、後悔のないよう過ごしたいものです。
 今年は新しいことに着手するよりは、30年間の研究生活を顧みて、不十分だったところを補強する年にしたいと考えています。最初に日本経済史ですが、これまで経済面、特に景気循環を軸に戦前期日本の歩みをたどってきました。しかし政治・国際関係・世相といった側面はまだまだ分析が必要です。総理大臣の移り変わりを中心に、あらためて明治維新以降、第二次世界大戦までを整理したいと思います。
 次に経済史は、経済史Bの講義を担当したおかげで、覇権国の推移、とりわけパックス・ブリターニカとパックス・アメリカーナの構造に強い関心がわきました。こうしたテーマを扱うには、経済力はもちろん、貿易、通貨体制、軍事力、国際関係など、幅広い観点が求められます。すなわち日本史を顕微鏡で追跡すると考えると、覇権国の推移は望遠鏡を使わなければよく見えません。今はまだ不慣れですが、望遠鏡がもっと上手に使えるよう、関連文献を当たりたいと思います。
 ライフワークである喫茶文化史研究は最近滞っており、遅れを挽回したいところです、平安時代における伝来から幕末までの喫茶文化史は、2000(平成12)年頃から茶業界や市民大学で何度も講演の機会をいただきました。そのおかげで、茶道や煎茶道の大まかな歴史、発展に貢献した人物の概略は把握しています。しかし両者は日本文化の象徴だけに奥が深く、図録などを読んでいると、次々に新しい発見があります。いくら時間があってもキリがありませんが、できるだけ多くのエピソードを盛り込んで原稿を書きたいと思います。またフィールドワークでは、佐賀県茶業史の研究に力を入れたいと考えています。
 最後に平成史のとりまとめも今年の目標にします。1998(平成10)年以降、毎年尼崎市などの市民大学で直近の政治・経済動向についてお話しする機会をいただいてきました。うまく原稿が書けず、講演日直前まで徹夜の連続で苦しい思いをしましたが、日々の新聞記事を念入りに読む習慣がつきました。毎回の講演記録(配付資料)を読み返してみると、その年、その年に何が起こり、どのような影響が生じたか、鮮明に浮かび上がってきました。多少の加筆修正は必要ですが、市民講座の原稿を繋ぎ合わせると、平成史ができそうです。平成最後の年に、平成とはどのような時代であったかを総括しておくことは極めて時宜にかなったテーマです。この作業はゼミ(研究演習)の学生と一緒に進めてゆきたいと考えています。
 今年は概ね上記のようなことに取り組んでゆきたいと思います。完成度の低い研究にもかかわらず、真剣にお聞きくださる聴衆(学生や市民講座の参加者)の存在が、私の研究生活の原動力になっています。本年もどうぞよろしくご支援くださいますようお願いいたします。

2017年度 経済史B 定期試験対策

今年度はじめて担当する経済史Bの講義もいよいよ終盤を迎えました。受講生のみなさんは、パックス・ブリターニカの構造について、理解してもらえたでしょうか。専門の日本経済史と異なって予習の蓄えがなく、毎回の講義準備に苦労しましたが、以前から取り組みたいテーマでしたので、講義を通じて学ぶことができたのはよかったと思っています。
 さてこの科目の定期試験は、2018年1月16日(火)の第3限に行います。問題作成に手間どり、お知らせが遅くなってしまい申し訳ありません。試験は概ね次の内容で出題します。

テーマ1 パックス・ブリターニカの展開
(1) 産業革命の整理
 この講義は、イギリスがなぜ世界で最初に産業革命を達成できたのかというところから出発しました。前提条件、経済的(技術的)、・社会的背景について簡潔に整理しておいてください。
(2) 自由貿易体制
 TPPや日欧EPAに象徴されるように、 世界の潮流は自由貿易推進でした。しかしトランプ大統領が誕生し、「アメリカ第一主義」を唱え、超大国アメリカが保護主義の方向に動き出しています。現状をみてもわかるように、自由貿易か保護貿易かという議論は、なかなか決着がつかないテーマです。
 さてこの論争は、歴史を顧みると穀物法をめぐる論争にまで遡ります。穀物法をめぐる論争を想起し、パックス・ブリターニカの自由貿易体制について述べられるようにしておいtrください。
(3) 金本位制と基軸通貨ポンド 
 パックス・ブリターニカを金融面から支えた金本位制の機能と、基軸通貨ポンドが果たした役割についてしっかり整理しておいてください。
(4) 植民地インド 
 講義でS.Bソウルが見出した多角的決済システムを紹介した際、植民地インドがパックス・ブリターニカに重要な役割を果たしたことを強調しました。イギリスの対インド投資や、インドの貿易動向に注目し、その理由を説明できるようにしておきましょう。
(5) パックス・ブリターニカの構造変化
 1870年代に至ると、イギリスの経済力にかげりが見え始めます。アメリカやドイツの台頭、イギリスの競争力低下に留意しながら、パックス・ブリターニカの構造がどのように変化していったか取りまとめておいてください。

テーマ2 トランプ大統領誕生と日米関係
 講義期間中にトランプ大統領の訪日、日米首脳会談という大きな出来事がありました。そこで急遽資料を作成し、トランプ大統領誕生の背景や今後の日米関係がどうあるべきか考えました。北朝鮮をめぐる情勢が日ごとに厳しくなる中で、「アメリカ第一主義」を唱えるトランプ大統領のアメリカに対し、日本はどのような外交を展開すればよいのでしょうか。難しい課題ですが、受講生のみなさんの意見を聞きたいと思います。

2017年度 日本経済史供…蟯試験対策

 日本経済史兇旅峙舛呂△硲臆鵑鮖弔垢世韻箸覆蠅泙靴拭D蟯試験は、2018年1月15日(月)の第3限に行います。ずいぶん遅くなりましたが、試験問題の予告を行います。
 さて今回の試験範囲は、時期でいうと、日清戦争から昭和恐慌までになります。出題は概ね次の領域で考えています。狭い範囲ですから周到に準備し、高得点を目指してください。

テーマ1 明治・大正期の3つの戦争が日本経済に与えた影響について
(1) 日清戦争の勝利で特筆すべきは、巨額の賠償金を獲得したことです。これがどのような経済効果をもたらしたか、整理しておきましょう。
(2) 日露戦争は激戦でしたが、ポーツマス条約によって日本は勝利をおさめました。日露戦争ブームの特徴を、日清戦争ブームと比較しながら説明できるようにしておいてください。
(3) 第一次世界大戦は、日本経済の姿を激変させることになります。大戦の結果、経済・社会はどのように変貌しましたか。要点をとりまとめておいてください。

テーマ2 金本位制の導入
 1897(明治30)年、松方正義首相は金本位制を導入します。世界史的にみると、当時はパックス・ブリターニカの時代であり、それを支えた重要な柱が金本位制でした。日本がイギリスと同じ通貨制度を採用することの意義と、採用後の経済に与えた影響について、述べられるようにしておきましょう。

テーマ3 浜口雄幸内閣の経済政策
 1929(昭和4)年成立した立憲民政党の浜口雄幸内閣の経済政策によって、当時の日本経済は戦前の景気循環の中で最も深い谷を経験することになります。私たちが当然のこととして受け入れているケインズ政策が誕生する前に行われ、深刻な不況をもたらした諸政策の内容について論じられるよう、準備しておいてください。

テーマ4 簡単な歴史用語・経済用語の説明
 次の歴史用語・経済用語について、用語辞典程度の簡単な説明ができるようにしておいてください。
 /儻畛変
◆々耽住変
 天津条約
ぁ 義和団事件
ァ 北京議定書
Α 第一次護憲運動
А 第二次護憲運動
─ 軍部大臣現役武官制
  大正デモクラシー
  米騒動
  資産デフレ
  デフレの悪循環

格差・貧困をめぐる論争

 野党はしばしば安倍政権になって格差が拡大したと主張しています。すなわち若者世代を中心とした格差拡大が出産、子育てに対する不安を高めているというわけです。この点に関し11月21日に行われた参院代表質問の際の民進党・大塚耕平代表と安倍晋三首相の論争をもとに考えてみます。
 大塚氏が格差拡大の根拠としている指標は相対的貧困率です。これは国民を所得順に並べたと仮定した場合の真ん中の人の所得(中央値)の半分未満の人の割合を示しています。そこで大塚氏は中央値の悪化を問題視しました。ピークの1997年には297万円であったのが、2015年には245万円に減ったとし、「(国民が)貧しくなっている」と訴えました。そしてその背景には、物価を考慮した実質的な購買力を示す実質賃金の低下があるとも指摘しました。
 これに対し安倍首相は次のように反論しました。パート労働者の増加などで実質賃金は下がったものの、働く人の数は増えており、国民全体の稼ぎを示す「総雇用者所得」も増大していると述べました。中央値の低下の要因は所得水準の低い高齢者が増えたためだと言い、2015年は2012年の244万円)に比べると改善したと説明しました。そして「相対的貧困率は政権交代後、経済が好転する中で改善に転じた」と結論づけました。実際、2012年の相対的貧困率は16.1%であったのが、2015年には15.6%へとやや改善しています。
 ただし長期的にみれば、格差はやはり拡大しています。相対的貧困率は1985年には12.0%であったが、前述のように2012年には16.1%と上昇傾向にあるのです。国際的にみても、経済協力開発機構の2014年時点の調査で、日本は加盟34カ国中で6番目に相対的貧困率が高かったようです。
 経済が好調であれば、企業は人手を確保するため賃金を上げるでしょう。その結果労働者は消費を増やし、経済の体温計である物価が上昇し、デフレ脱却が実現します。経済をこうした好循環に導くことが安倍政権の課題といえます。



トランプ大統領、韓国国会で演説 北朝鮮にアメリカの軍事力を誇示

 アジア歴訪中のトランプ米大統領は11月8日、ソウルの韓国国会において北朝鮮問題に関する演説を行いましたた。北朝鮮が核とミサイルの開発を続けることは絶対に容認できないとし、「アメリカを過小評価するな。我々に挑んではならない」と、強く警告を発しました。また北朝鮮がアメリカ本土を直接攻撃できる核弾頭搭載の大陸間弾道ミサイル(ICBM)の開発を進めるのは世界全体の脅威だと指摘し、その脅威に立ち向かうことは国際社会の責務であることを強調しました。そして北朝鮮が核兵器を放棄しないかぎり、経済、外交、軍事力を駆使し、圧力を加え続ける姿勢を示しました。
 トランプ大統領はアメリカは北朝鮮に対し、これまで何度も核兵器を放棄するよう求めてきたにもかかわらず、ことごとく裏切られてきたとも述べています。そして「北朝鮮は過去のアメリカの抑制を弱さだと理解している。しかし、それは致命的な間違いだ」と語り、アメリカに挑むのは過ちだとというメッセージを発信しました。
 トランプ大統領は北朝鮮と国境を接し、経済的にも強い影響力を持つ中国とロシアを名指した上で、北朝鮮に対する経済的、財政的な様々な支援をやめるよう訴えています。
 朝鮮半島近海に空母3隻を配備し、軍事力を全面に出して北朝鮮を威嚇する一方で、完全かつ検証可能な形で核開発を断念すれば未来への道は開かれているとも語っています。
 以上のトランプ大統領の演説に対し、北朝鮮はどのような反応を示しているのでしょうか。相変わらず強硬姿勢を崩していません。かねてから指摘されているように、北朝鮮の最大の目標は体制の維持です。最近ではとくにアメリカが朝鮮半島近海で空母による軍事演習を行っていることに危機感を示し、自主と正義のために核開発を継続し、アメリカとの力の均衡をとるということです。
 とはいえ、アメリカを本気で怒らせ、激しい攻撃を受ければ、体制維持どころではないことは金正恩委員長もよくわかっているはずです。当面は攻撃されない程度に、ギリギリのところで挑発を続けるものと思われます。

トランプ大統領の初来日と日米首脳会談

 トランプ大統領は就任後はじめて日本を訪問しています。11月5日横田基地に到着し、そのあと安倍首相とゴルフを楽しみました。本日のブログでは、翌日6日に行われた日米首脳会談についてレポートしたいと思います。ポイントは以下の3点です。
(1)北朝鮮問題と防衛装備品の購入拡大
 日本にとって最も重要なテーマは、北朝鮮問題といえます。これに対し安倍首相は、「日米が主導し、あらゆる手段を通じて北朝鮮に対する圧力を最大限まで高めていくことで完全一致した」と述べました。トランプ政権はかねてから「軍事行動を含む「すべての選択肢がテーブルの上にある」という方針をとっており、安倍首相日米が100%ともにあることを再確認したということです。トランプ大統領はオバマ前大統領時代の)「戦略的忍耐」は終わったとの認識を示し、在日・在韓米軍の兵力を挙げて、北朝鮮を牽制することになりそうです。
 北朝鮮による拉致被害者の家族とトランプ大統領の面会も実現しました。安倍首相はトランプ大統領との良好な関係を内外にアピールする好機になったと思いますし、トランプ大統領は、日米が共同歩調をとって北朝鮮に強硬姿勢を示せたと考えているに違いありません。日米協力関係の強調は、対北朝鮮政策をめぐり温度差のあ韓国や中国を説得する上でも有効です。
 予想外だったのは、アメリカ製の防衛装備品の熱心な売り込みでした 「非常に重要なのは、首相は(米国から)膨大な量の兵器を買うことだ。そうすべきだ。我々は世界最高の兵器をつくっている」と述べました。具体的な防衛装備品名まで言及し、日本がこれらを大量購入することで、アメリカに雇用が創出され、日本の防衛力は強化され一石二鳥の効果が期待できると主張しました。安倍首相はこの要請に応じる形で、「日本の防衛力を拡充していかなければならない。アメリカからさらに購入していくことになる」との見解を示しました。トランプ大統領は安保と引き換えに、アメリカ製品を買わせ、貿易赤字が削減はかりたいのかも知れませんが、このままでは日本のアメリカ追従の度合いが一段と高まる予感がします。日本はすでに2013年に閣議決定された防衛計画の大綱や中期防に基づいて最新鋭戦闘機F35Aや輸送機オスプレイの導入を進めています。陸上配備型の迎撃ミサイルシステムイージス・アショアも着実に購入する予定です。財政が危機的状況にある中で、防衛支出を高めてゆくことに違和感を感じますし、アメリカ製品の購入が際立っていることが気がかりです。さらに通常の維持整備費や訓練費にしわ寄せがくることも懸念されます。
 さらに軍事力に頼るばかりの安保政策でよいのかという疑問の声もあがってきています。北朝鮮問題をめぐり日米間では軍事的圧力強化や経済制裁強化の話しが出るばかりで、平和的解決の可能性がさぐられたことはありません。日本がアメリカから次々と高額兵器を購入する姿勢が、かえって北朝鮮を刺激しているという意見もしばしば耳にします。
(2)インド太平洋戦略の推進
 トランプ大統領のアジア歴訪において、日本が最初の訪問国となることにこだわったのは、日米共通のアジア外交戦略を世界にアピールしたかったからと言われています。安倍首相は、昨年「自由で開かれたインド太平洋戦略」を表明していますが、トランプ大統領はこれに賛同してくれたことの意義を強調しました。この考えは今後、日米共同戦略の位置づけで、アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議などで、各国に協力を求めてゆくことになりそうです。
 言うまでもなく日本は、中国のシルクロード経済圏構想「一帯一路」を意識しています。シルクロード経済圏構想を通じ、中国が独自の主張に基づいてアジア太平洋地域で権益拡大をはかることに、日本政府は警戒感を強めているのです。この地域で、日米がともに安全保障、経済の両面において、法の支配やルールづくりを浸透させ、中国の動きを牽制する狙いが読み取れます。
 トランプ大統領はこれまで一貫してオバマ前政権の政策を否定してきました。オバマ前政権はアジアリバランス構想を打ち出してきましたが、代替政策は決まっていませんでした。安倍首相が唱える新政策は、アメリカにとってもメリットがあるといえます。ただしその一方で、トランプ大統領が主張するアメリカ第一主義と合致するかどうかは不透明です。 
(3)通商問題は棚上げ
 通商問題に関しトランプ大統領は従来と同じく「アメリカ第一」の発言を繰り返しました。共同会見では「互恵的な貿易が私にとって、とても大事だ」と述べ、対日貿易赤字の削減に強いこだわりを示しました。しかし首脳会談において通称問題は「棚上げ」にされ、解決の方向性は見い出せていません。周知のようにトランプ政権はTPPから離脱しており、自国に有利な条件を引き出しやすい日米二国間の自由貿易協定(FTA)を重視する立場をとっています。しかしこれは日本の方針とは合致しません。
 前述のように日米両国は北朝鮮問題に関し、強固な協力関係を確認しています。反面、経済関係で対立するのは得策ではありません。共同会見で安倍首相は、「トランプ大統領と二国間の貿易だけではなく、アジア太平洋地域に広がる貿易・投資における高い基準づくりを主導していく」と述べています。
 日米経済関係は現時点で波風は立っていません。ただ将来しトランプ大統領が日本への圧力を高める可能性はあります。トランプ大統領は、「日本との貿易は公平でなく開かれてもいない。(赤字削減のため)我々は交渉をしていく必要がある」と述べています。

生産性向上に向けた取り組みと今後の課題

 景気はGDP統計で見る限り堅調に推移していますが、日本の潜在成長率は1.0%程度で主要国の中では最低レベルです。人口が減っても安定成長を実現するためには、生産性の向上が欠かせません。
 政府は9月8日開催した未来投資会議において、次の7分野に重点を置いて成長戦略を進める方針を打ち出しましした。
 。稗錚圈▲蹈椒奪氾蟷
◆ー動走行
 健康・医療データの活用
ぁ(流・建設・農業などの現場効率化
ァヾ覿箸凌慶賃綣佞梁タ
Α/雄爐琉榮
Аゝ制を実験的に一時停止するサンドボックス制度の早期具体化
 ここでIoT(Internet of Things)について、簡単に説明しておきます。IoTとは、あらゆるモノがインターネットを通じてつながることによって実現するサービスやビジネス、ならびにそれを可能とする技術の総称です。モノをインターネットに接続し、離れた場所から状態を確認したり、操作できるようになります。その結果、管理のための人材やスキルが不要になり、コスト削減に結び付きます。
 次に自動運転について考えます。交通死亡事故は約9割が人間のミスで起きるといわれています。自動運転車の普及は事故の減少につながでしょう。その一方で、自動運転車に時速100kmで目的地までと指示した場合、安全性を考慮して速度制限を緩めることはできません。
 ドローン、フィンテックなど次世代技術の実用化促進として期待がかかるのが、サンドボックス制度です。国家戦略特区の枠組みを利用し、規制を凍結して実証実験に取り組みやすくします。
 AI(artificial intelligence・人工知能)の技術進歩は目覚ましいですが、想定外の現象がネット上で広がる可能性があります。AIの暴走をいかに食い止めるか、法制度をどのように整えるかという課題も残っています。 


第3次安倍第3次改造内閣が発足

 安倍晋三首相は今日3日内閣改造を行い、第3次安倍第3次改造内閣が発足しました。閣僚の国会答弁で不適切な発言が相次いだことや、森友・加計学園をめぐる問題で内閣支持率は急落したため、人心一新を図り、信頼を取り戻すことが何よりの狙いです。ここで今回の人事の特徴をみます。
 まず閣僚人事は、19人の大臣のうち留任は5人にとどまり、刷新のイメージを打ち出しています。とはいえ内閣では、麻生太郎副総理兼財務大臣、菅義偉官房長官を、また党執行部では、高村正彦副総裁、二階俊博幹事長を続投させ、政権の骨格は維持しています。
 問題続きであった防衛省と文部科学省には、ベテランの議員を起用しました。防衛大臣の小野寺五典氏は、第2次安倍内閣で1年9ヶ月防衛大臣を経験しています。、また文部科学大臣の林芳正氏も防衛大臣、内閣府特命担当大臣(経済財政政策)、農林水産大臣を歴任しました。
 それから野田聖子氏の総務大臣起用は、「身内に甘い」という批判をかわす目的があるのでしょう。さらに河野太郎外務大臣(麻生派)は、菅官房長官によれば「将来のリーダー候補」と評価が高く、強い発信力に期待がかかっています。
 岸田派優遇も今回の人事の注目点です。改造直前まで外務大臣を務めていた岸田文雄氏は、しばしば安倍首相の後継を目指す存在と言われてきました。岸田氏は党内基盤を固めるため、政務調査会長を希望し、安倍首相はこれを受け入れました。また岸田派からの入閣は、2人から4人に倍増し、存在感を高めています。安倍首相の狙いは、来年秋の自民党総裁選挙や憲法改正議論において、岸田派の協力を得ることにあるのでしょう。(岸田氏は9条改正に慎重な立場です。)
 ここであらためて安倍内閣の支持率が急落した原因をさぐってみたいと思います。それは第一に隠蔽体質です。南スーダン国連平和維持活動(PKO)で陸上自衛隊の部隊が作成した日報を「廃棄した」としながら陸自内に保管されていた問題の真相はどうなっているのでしょうか。森友学園が大幅値引きで国有地を取得できた理由や、国家戦略特区制度で加計学園に獣医学部新設が認められた経緯がいまひとつ釈然としません。身内に甘く、批判的な勢力の言い分には耳を貸さないという姿勢に、多くの国民が失望したに違いありません。
 いまひとつ、強引な政治手法も懸念されます。「共謀罪」法を多くの問題を残したまま、参議院の委員会採決を省略して成立させたことは問題です。反面野党が再三求めている臨時国会の開催や、文書の公開、関係者の証人喚問には消極的です。
 今回の内閣改造で安倍政権の支持率は多少回復するかも知れませんが、上記のような根本的な政治不信が解消されないかぎり国民の評価は高まらないと思います。

2017年度 学際トピックス「医療をめぐる諸問題」 定期試験を行いました

 新聞・ニュースでは毎日のように加計学園獣医学部新設問題が取り上げられています。安倍首相や側近の関与の度合いも気になるところですが、根本的には、獣医師の需給バランスはどうなっているかという分析から始めなければいけません。ちなみに、獣医学部が最後に設置されたのは実に51年前です。1966(昭和41)年、北里大学と酪農学園大学の獣医学部が創設されて以降、新設は見送られています。 それでも単純に数にだけ注目するなら、人材不足とはいえません。一番一般的な「ペットのお医者さん」は、飽和気味なのです。
 しかし畜産農家をまわり、牛や豚の診療や伝染病の予防に携わる産業動物の獣医師や、動物検疫所などで働く公務員としての獣医師はなり手が少なく、早期に人材を育成することが重要です。
 さて獣医学部の新設に際しては、「石破4条件」が求められています。すなわち、ヾ存の獣医師養成できない構想が具体化すること、▲薀ぅ侫汽ぅ┘鵐垢覆鼻⊇丹綮佞新たに対応すべき分野の具体的な需要が明らかになること、4存の大学・学部では対応が困難なこと、、そ丹綮佞亮要の動向を考慮すること というものです。私はいわゆる「ペットのお医者さん」ではなく、BSEや鳥インフルエンザなど、深刻な社会問題を解決できる専門家の育成が急務と考えます。その点において、「石破4条件」は大変意義のある指針だと思います。
 獣医学部新設の是非は、単純な「数」だけではなく、必要とされる部門は何かという基準で考えなければなりません。
 話は変わりますが、医学部新設も長い間認められてきませんでした。最も歴史が新しいのは、1979(昭和54)年にできた琉球大学医学部です。それが2016年、被災地復興支援の特例として「東北医科薬科大学」(東北薬科大学から改称、仙台市)が認可され、2017年には国家戦略特区事業の枠組みで、国際医療福祉大学(本部は栃木県大田原市)成田キャンパスと2年連続で新しい医学部が新設されています。両大学医学部の新設は、社会のニーズに応じたものなのか、医師会の抵抗なしにすんなり話が進んだのか、また機会をみつけて調べてみたいと思います。
 さて本日第4限、学際トピックス「医療をめぐる諸問題」の定期試験を行い、下記のような問題を出しました

【 2017年度  学際トピックス「医療をめぐる諸問題」 定期試験問題 】

【1】 この講座では、高齢社会化の進行が重要なテーマになりました。各講師の講義内容を念頭に置いて、次の設問に答えなさい。

(1) 日本が世界一の長寿国になった要因について、次の 銑の視点からコメントしなさい。8点×3=24点
 〃从僉Ρ卆鹸超
◆^緡典蚕僉μ品の進歩
 国民皆保険制度

(2) 日本が世界一の長寿国になった結果、医療費の増大に歯止めがかからなくなりました。高齢社会化の進行と、医療費増大の関係について説明しなさい。10点

(3) 高齢者の抱える不安のひとつに認知症があります。アルツハイマー型認知症の高齢ドライバーが事故を起こした場合、本人の責任と監督義務者等の責任はどうなりますか。具体的な事件の経過を紹介しながら、最高裁がどのような判断を示したか、述べなさい。20点

(4) 増大する医療費を削減するため、様々な取組が行われています。医療費削減について、対策を述べなさい。16点

【2】 次の(1)〜(3)の設問から2問選択し解答しなさい。15点×2=30点

(1) 大規模震災に遭遇したとき、その被害を最小限に食い止めるため、日頃からどのような備えをしておくべきですか。さらに実際に災害に直面した場合、どのように対応しますか。小谷先生の講義内容に即し、関学生は一般市民の立場から、兵庫医大生は医療者の立場に立って述べなさい。

(2) あなたにとって「質の高い医療」とはどのようなものですか。鈴木先生の医学教育論の講義に基づいて述べなさい。なおその際、関学生は患者の立場から、兵庫医大生は医療者の立場で論じること。

(3) 阪神間の市立病院が直面する問題を明らかにし、問題点解決のための方策について、提言を行いなさい。

2017年度 日本経済史機…蟯試験を行いました

 関学では15日土曜日から春学期の定期試験期間に入りました。とにかく暑い日が続く中での試験ですから、学生のみなさんは、体調を崩さないよう気をつけてください。
 また活発な前線の影響で、西日本全域で大気が不安定な状態となっています。大分県の日田市や、愛知県の犬山市でも記録的な豪雨となり、大きな被害が出ているようです。日田市は、広瀬淡窓の咸宜園や井上準之助の生家を訪れたことがあり、高校時代は犬山市の隣の江南市に住んでいました。自分がよく知っている地域が大災害に見舞われ、心が痛みます。各地で河川の氾濫や土砂崩れ、家屋の倒壊などが起こっており、1日も早い復旧・復興が望まれます。個人の力ではどうすることもできず、思い切った財政支援が必要です。
 さて本日日本経済史気猟蟯試験を実施し、下記のような問題を出しました。

【 2017年度 日本経済史機…蟯試験問題 】

1.従来の歴史教育に対し、暗記中心という批判が高まり、改革の試みが行われています。そのひとつが、グローバルヒストリーの手法です。そこでグローバルヒストリーの特徴を明らかにし、歴史を学ぶ意義について述べなさい。20点

2.明治政府は次々と言論弾圧法規を出して、民主化の動きを抑制します。これに関連し、次の設問に答えなさい。12点×4=48点
(1) 1875(明治8)年の出来事を述べ、同年、讒謗律、新聞紙条例が出された背景を説明しなさい。
(2) 1880(明治13)年に定められた集会条例の目的について述べなさい。
(3) 1886(明治19)年の大同団結運動、さらに翌年の三大事件建白運動を経て保安条例公布に至るまでの経過を説明しなさい。
(4) 2017年6月に成立した「共謀罪」法には様々な問題点が残り、戦前の弾圧法規との共通性も指摘されています。「共謀罪」法が抱える問題点について述べなさい。

3.明治期におけるわが国の産業発展を考える際、綿紡績業と生糸製糸業が果たした役割を看過できません。両産業の発展のメカニズムについて、詳しく説明しなさい。20点

4.次の(1)、(2)の設問のうち、どちらか一方を選択して解答しなさい。12点

(1) 政府は1890(明治23)年、国会開設を公約します。その引き金となった事件の経過を説明しな さい。
(2) 昭和恐慌時のGNP成長率は、名目では大きなマイナスですが、実質ではプラスとなっています。このような名目と実質の不一致は、どのような場合に起こりますか。簡単な数値例を示して答えなさい。合わせて昭和恐慌の特徴についても論じなさい。

政治・経済と文化研究会の設立から5年が経ちました

 今日7月8日は、政治・経済と文化研究会(旧社会再生学会)設立からちょうど5年目の記念日です。先日会員の西村正美さんから、創立5周年を祝うメールをいただき、大変嬉しく思っているところです。小さな研究会ですが、5年間活動を継続できたのは、会員のみなさんの熱心なご支援のおかげです。
 繰り返しになりますが、私たちの研究会のコンセプトは、個人の人生や社会全体の幸福度を一段と高めるにはどうすればよいか、アイディアを出し合って意見交換することです。その際、専門的で緻密な分析を求めるのではなく、一般市民の目線で、誰もがわかる言葉で語ることをルールとしています。したがって、今の日本や日々の生活をより幸福にしたいという気持ちがある人は、誰もが参加できる会です。
 さて私たちが活動を行ってきた5年間に、日本の幸福度は高まったでしょうか。残念ながら私はそう思いません。最大の理由は政治不信にあります。この間、安倍首相は高い支持率と選挙への強さから、一強(自民一強)体制を築きました。そのため強気一辺倒でずいぶん強引な政治が行われたように思います。とりわけ、集団的自衛権の行使や「共謀罪」法案に関しては、懸念を示す国民や異議を唱える法律の専門家の声を無視し、数の力に物を言わせて決定しました。
 最近の森友学園、加計学園問題にしても、大部分の国民が行政がゆがめられたのではないかと疑問を感じているのに、「一点の曇りもない」と開き直ってみたり、「記憶にございません」ととぼけたりで、誠実さが感じられません。政府の決定に際しては、何よりも透明性と公平性が求められます。政治家は「瓜田(かでん)に履(くつ)を納れ(いれ)ず」、「李下に冠を正さず」の精神で行動すべきです。
 ところで今年3月の自民党大会において、自民党の総裁任期を、従来の連続2期6年から連続3期9年までに延長することが正式決定されました。ということは仮に来年9月の自民党総裁選挙で安倍さんが3選され、来年12月までに行われる次の衆議院選挙で勝利すれば、2021年9月まで総理大臣を続けることが可能になります。そうすると戦後最長であった佐藤栄作政権をこえる超長期政権になります。その可能性が生まれたときから、自民党内で安倍さんと異なる意見は益々言いづらくなったように感じます。安倍さんは選挙のときは経済再生が一番と訴えますが、経済問題は株高以外にはあまり関心がなさそうです。一番関心を持っているのは憲法改正です。しかし憲法改正は国の根本にかかわる問題であり、今までのやり方で強引に拙速に改正されては困ります。丁寧な議論を重ね、幅広い合意形成を行うことが重要なのは言うまでもありません。
 今日は日本の政治についての問題点を述べましたが、政治と幸福については、一般的に次のことがいえそうです。有力政治家に接近しやすいのは、資金力が豊富な企業や団体です、。彼らは票の取りまとめにもたけており、政治家が最も必要とする票とカネを提供します。政治家はその見返りに有力支持者の利益となるよう行動し、要請に応じた立法や政策を実施することになります。反面一般人は資金力がなく、有力者とのパイプも持っていません。自身の要望が政策立案者に届くことはなく、政治的無関心が慢性化し、選挙も棄権しがちになります。
 こうして選挙結果と政策には、富裕層の意向が強く反映されます。つまり金持ちや権力に近い人が様々な点において優遇されるのです。政治的格差拡大は、所得格差拡大にも結びつくでしょう。
 私たちの研究会は、こうした悪循環を何とか断ち切りたいと智恵をしぼっています。普通の市民が求めている政策は何か、どうすればそれを実現できるかを活発に議論することによって、幸福度は高まります。
 この5年間を振り返ると、日本の政治は憂慮すべき点が多くありましたが、私個人の生活においては、幸福度は高まっています。なぜなら研究会のみなさんとの親交を深め、精神的な安らぎを実感できたからです。そういう意味でこの研究会は、私にとっての「幸福度増大装置」なのです。今後ますます充実した活動を展開できることを願っています。

寺本ゼミ・ホームページが復活しました

 春学期の講義も残り1週間になりました。今学期のゼミ以外の講義科目は、学部・日本経済史機医療をめぐる諸問題、大学院は、社会経済史と現代日本経済史でした。
 日本経済史気任鰐声4に焦点を当て、経済面では順調に発展したものの、民主主義の定着は容易ではなかったことを述べました。医療をめぐる諸問題は、直接講義する機会は少なかったのですが、医療にまつわる重要課題とその解決策について学びました。とりわけ高齢社会の到来にともなう財政逼迫により、これまでのような質の高い医療サービス提供システムが持続可能か、大変心配になりました。大学院の2科目では、明治以降今日までの経済の変遷をたどり、豊かで幸福な経済・社会実現の条件は何か考えました。
 担当科目すべてに共通する感想は、歴史から学ぶ姿勢の重要性を再認識したことです。過去の様々な出来事の経過や推移、結果を注意深く吟味することによって、色々教訓を得ることができます。歴史を学び、歴史からの教訓を得る意義は、現代社会が抱える数多くの難問を解決するための手がかりが見い出せることではないでしょうか。今後も折に触れて私の体験に基づく歴史研究の魅力を、講義や講演をお聞きくださるみなさんにお伝えできればと考えています。
 さて今日はひとつ重要なお知らせがあります。それは、寺本ゼミのホームページが復活したことです。およそ半年ほど前、従来のレンタルサーバーに突然不具合が起こり、ずっと閲覧できない状態が続いていました。日々のお知らせや政治・経済問題へのコメントはブログを通じて行ってきましたが、ホームページには使い勝手のよいリンク集がありましたので、結構不便を感じていました。それがこのたび管理者の岡田さん(ゼミの卒業生)のご尽力で、新サーバーへ移行していただくことができました。リンク(アドレス)は下記のとおりです。なおこのブログのホームページの左上にあるリンク集からもアクセスしていただけます。
 パソコンに滅法弱い私がホームページやブログで情報発信できるようになったのは卒業生の岡田さんのおかげです。2005年3月以来、10年以上にわたりこのような恵まれた環境を授けられたことを大変嬉しく思っています。毎日気にかけて見てくださり、励ましの言葉をかけていただく方もあります。なるべく多く更新して新しい情報をお届けできるよう、がんばりたいと思います。

寺本ゼミ・ホームページ

2017年度 学際トピックス「医療をめぐる諸問題」定期試験対策

 学際トピックス「医療をめぐる諸問題」の試験は、7月27日(木)の第4限に実施します。
 講義のはじめにも述べたように、本講座は医療問題を総合学として分析することを目指したものです。医療の最前線でご活躍の医師に加え、法律や経済に精通した専門家にも加わっていただき、多方面からのアプローチを試みました。
 日本が世界一の長寿国になったのは、すぐれた医療制度のおかげです。しかし高齢社会化が進行するなかで、様々な問題が表面化し、制度の持続可能性が問われています。日本の医療のこれまでの歩み、現状、そして将来展望に関し、確実に理解することが到達目標となります。
 この講義で取り上げられたテーマは、数多くの経済問題の中でも、最も緊急性、重要性が高いものです。試験を契機にもう一度各先生のお話のポイントをおさえておいてください。さらにこの講座の受講を出発点に、医療にまつわるニュースや新聞記事のチェックを欠かさない習慣をつけてほしいものです。
 さて今回の定期テストは、下記の点に留意して勉強ししておいてください。

★ 高齢社会化の進行と医療
(1) 日本が世界一の長寿国になった要因について整理しておきましょう。理由を箇条書き方式で列挙するだけでなく、簡単な説明をくわえること。(他の設問に関しても同じ。)
(2) 高齢社会化の進行にともない、医療費の増大も顕著になりました。高齢社会化が進行すると、なぜ医療費が増大するのでしょうか。さらに医療費の増大に歯止めをかけるため、どのような方策を打ち出すべきでしょうか。
(3) 高齢者の抱える不安のひとつに認知症があります。アルツハイマー型認知症の高齢ドライバーが事故を起こした場合、本人の責任と監督義務者等の責任はどうなりますか。水島先生の講義で紹介のあった事件の経過、争点、裁判所の判断について、説明できるようにしておいてください。

★ 災害医療・救急医療
 小谷先生の講義では、映像を多用して災害医療、救急医療の緊迫した場面が紹介されました。小谷先生のお話を聞いて、みなさんは日頃からどのようなことを心がけ、実際に緊急事態に直面した場合は、どのように対応しますか。関学生は一般市民の立場から、兵庫医大生は医療者の立場に立って述べられるようにしておきましょう。

★ 医学教育論
 鈴木先生の医学教育論では、「学びの技法」が余すところなく語られたと思います。もちろん内容は医学部に即したものでしたが、「経済学部における学び」にも応用できる充実度の高いものでした。
 さて鈴木先生のお話の核心は、「質の高い医療の提供」と「良医育成」ということになります。ここで「質の高い医療を提供できる良医」とは、どのような資質を備えた医師でしょうか。講義内容に即し、まとめておきましょう。なお本問も、関学生は患者の立場から、兵庫医大生は医療者の立場に立って見解を述べてもらいます。

★ 阪神間の公立病院の経営実態と改革
 前田先生の2回目の講義では前半で公立病院の多くが経営悪化に陥っていることが紹介されました。 そして後半は、様々な角度から経営改善の方向性が示されました。一般論のポイントを明快にまとめ、私たちになじみの深い阪神間の公立病院に焦点を当てた詳細な分析が行われました。多くの公立病院の経営が悪化している要因を明らかにし、経営改善のためにどのような方策が打ち出せれているか、整理しておいてください。

2017年度 日本経済史機…蟯試験対策

 日本経済史機,猟蟯試験は7月17日(月)の第3限に実施されます。今学期は冒頭で歴史研究の新しい動向や、意義の説明に時間を割き、本論はあまり進めませんでした。日清戦争以降の動向は、秋学期に挽回したいと思います。
 さて今年度の試験対策ですが、極めて限られた範囲からの出題で、準備も進めやすいはずです。以下の点に留意して、あらかじめ解答を作成しておいてください。

★ 経済史研究の新潮流

 従来の大学受験を意識した歴史教育は、年号と事項を結びつけたリ、細かい正誤を問うものが多く、歴史離れを引き起こしてきたといえます。このことに対する反省から、新しいアプローチが模索されています。そのひとつがグローバルヒストリーです。グローバルヒストリーの手法は、どのような点に注目したものでしょうか。日本史、世界史を念頭に置いて、具体的に説明できるようにしておきましょう。さらに歴史を学ぶ意義についても、みなさんの考えを述べてもらう予定です。

★ 明治期における言論弾圧

 戦前の指導者たちは、「下から」発生してきた民主化要求を自らの支配体制を脅かすものとして抑圧してきました。明治期における言論弾圧法規を並べると、次のようになります。
 1875(明治8)年 讒謗律、新聞紙条例
 1880(明治13)年 集会条例
 1887(明治20)年 保安条例
 以上の法令は、どのような背景のもとに出されましたか。契機となった出来事と、その経過を整理しておきましょう。
 加えて、2017年6月に成立した「共謀罪」法は政府の説明に曖昧さが残り、戦前の弾圧法規との共通性も指摘されています。「共謀罪」法が抱える問題点について、配付の新聞記事を手がかりにまとめておいてください。

★ 日本における工業化のはじまり
 日本における本格的な工業化のスタートは、松方デフレ終息後の1880年代後半といえます。工業化の初期局面において重要な役割を果たしたのは、綿紡績業と生糸製糸業です。両産業の発展のメカニズムを説明できるようにしておいてください。

★ その他
(1) 戦前における日本の原型は、国会開設、内閣制度の創設、大日本帝国憲法制定によって、形づくられたといえます。これらの諸制度が出来上がるまでの経過を、まとめておいてください。
(2) 昭和恐慌の特徴について。当時のGNP成長率は、名目でマイナス、実質でプラスでした。このような名目と実質の不一致は、どのような場合に起こるのか、簡単な数値例で説明できるようにしておきましょう。

2017年度 尼崎市公民館市民大学のお知らせ

 今年度も尼崎市の3つの公民館において、4テーマで市民講座を実施します。8月、9月の夏休み期間中に3つの講演がありますので、定期試験の採点が終わり次第、早速資料作成にかからねばなりません。
 第1回目は8月24日、武庫公民館においてトランプ政権についてお話しします。1月20日、アメリカの第45代大統領に、共和党のドナルド・トランプ氏が就任しました。選挙キャンペーンのときから既成政治の打破を訴え、雇用創出、減税、大規模なインフラ投資など、様々な新規政策を打ち出して、アメリカ再建、アメリカ第一主義実現に強い決意を示しています。トランプ大統領の経済・外交政策を検証し、日米関係のあり方を考えたいと思います。
 園田公民館では、今年も2度機会をいただきました。8月29日は、市民大学では珍しいのですが、日本近代史を取り上げます。端的にいうと関学で1年かけて講義している日本経済史のダイジェスト版のお話しです。明治・大正・昭和戦前期の歩みを振り返り、経済面では成功したけれども、民主主義定着には失敗し、悲惨な戦争を招いてしまったことを述べるつもりです。
 さらに9月12日は、アジア、ヨーロッパ、アメリカの政治・経済動向を分析しながら、日本の経済政策と外交政策はどうあるべきかを考えます。中でもトランプ大統領は、強烈な個性を持ち、アメリカ第一主義の政策を次々と打ち出しています。しかしそれは、成果よりも混乱のほうが目立っているのではないでしょうか。アメリカは戦後一貫して国際秩序を安定させる役割を担ってきましたが、トランプ政権においてそれを期待するのは難しそうです。国際社会で日本がどういった貢献ができるのかも、合わせて検討します。
 少し間隔があきますが、年末12月7日は大庄公民館です。このところ年末には必ず大庄公民館にお招きいただき、その年の大きな政治・経済ニュースを振り返り、来年の動向を展望するというテーマでお話しさせていただいています。これまでの経験からいうと、1年365日のうちにビッグニュースのない年はありません。日ごろからしっかり新聞記事を収集しておきたいと思います。。

2017年8月24日(木)
尼崎市立武庫公民館市民大学講座 「トランプ大統領誕生の衝撃 どう変わる?今後の日米関係」
2017年8月29日(火)
尼崎市立園田公民館市民大学講座 「近代日本の歩み 〜豊かさ・幸福の視点からの再検討〜」
2017年9月12日(火)(公開講座(選挙・政治講座)
尼崎市立園田公民館市民大学講座 「不透明さを増す国際情勢と我が国の政治・経済動向 〜トランプ大統領の政策と日本の政治・経済・外交〜」
2017年12月7日(木)(公開講座(選挙・政治講座)
尼崎市立大庄公民館市民大学講座 「2018年 日本経済の展望」


※ 9月12日と12月7日は公開講座ですから、どなたでも聴講していただけます。

武庫市民大学案内
園田市民大学案内
大庄市民大学案内

トランプ大統領の経済政策

 4月19日の経済コラムでは、日米経済対話について取り上げました。貿易交渉を二国間で進め、自国に有利になるようにしたいアメリカと、多国間の公正なルールづくりにこだわる日本の間で、大きなギャップを感じます。具体的な話し合いはこれからですが、日本はアメリカのペースに引き込まれないか、気になるところです。さて今日は、より大きな視点からトランプ大統領の経済政策(トランポノミクス)について整理したいと思います。
 トランプ大統領がまず目指すのは雇用拡大です。とりわけ選挙戦で自らを支持した白人労働者の雇用増を重視し、「今後10年間で2,500万人の雇用を生み出し、経済成長率の目標を年4%としました。ちなみに昨年の値は1.6%にとどまっており、かなり高い目標設定です。
 次に大型減税も重要な政策です。アメリカにおいて、現行の法人税率は35%で、先進国で最も高いとされます。これを、15〜20%に引き下げることを目指します。国内企業の流出が著しいため、歯止めをかける考えです。
 また10年間で1兆ドル(約110兆円)のインフラ投資を行うことも公約しました。
 規制緩和も重要なキーワードです。トランプ氏は政府の規制のため、アメリカ経済に年2兆ドル(約220兆円)の負担が生じていると指摘します。オバマ前政権が進めた「金融規制強化法(ドッド・フランク法)」を見直し、環境規制の撤廃でエネルギー産業の活性化もはかります。
 貿易赤字の削減も重要な課題です。トランプ氏の主張は、安い輸入品が流入したため、国内産業が衰退し、雇用が奪われたというものです。そして標的にしているのは、最大の貿易赤字相手国の中国と、隣国のメキシコです。両国からの輸入品には高い税をかけると主張しています。
 今後の通商交渉の方針は冒頭でも述べたとおり二国間交渉です。多国間協議よりも二国間協議のほうが自国に有利な条件を引き出せるからです。日本など12カ国で合意した環太平洋経済連携協定(TPP)からは離脱を決定し、カナダとメキシコとの北米自由貿易協定(NAFTA)も再交渉になります。
 トランプ大統領の念頭にあるのは、1980年代にアメリカ共和党のレーガン政権が掲げたレーガノミクスかも知れません。その骨子は、減税や規制緩和を通じて経済を刺激することでした。
 ただし上記の政策が成功するかどうかは不透明です。アメリカでは政府に予算案を出す権限がありません。したがって政策の実現には、議会との関係を良好に保ち、予算をスムーズに執行できる環境が重要です。しかし先般トランプ政権は医療保険制度改革(オバマケア)」の代替法案の採決でつまずきました。なおこの法案には、税の財源確保の狙いもありましたので、前述の大型減税の行方は不透明です。
 最後に保護主義強化政策の悪影響が懸念されます。輸入品への課税で商品の値段が上がるということは、アメリカの消費者がモノを買いづらくなり、アメリカ国内における消費や生産の落ち込みを招き、アメリカ経済が減速するでしょう。アメリカ経済の悪化は当然世界経済の悪化に波及してゆくでしょう。トランポノミクスは短期的にアメリカ経済を好転させても、中長期の視点でみれば、アメリカ経済のみならず、世界経済全体の後退を招く可能性があります。

緊迫する北朝鮮情勢

 北朝鮮の脅威が高まっています。いつ核実験や弾道ミサイル発射を行うかわからず、大変心配な毎日が続いています。この問題に日米はどう対応しようとしているのか、18日に行われた安倍晋三首相とペンス米副大統領との会談から読み取ることができます。両首脳の一致した認識は、北朝鮮は新たな段階の脅威」であり、圧力を強めて対応する必要があるというものです。ペンス氏はさらに、日本など同盟国との連携に加え、北朝鮮に影響力を持つ中国と共に外交と経済の両面で北朝鮮に圧力をかける姿勢を強調しています。
 一方安倍首相の考え方は、平和的解決を望むが、対話のための対話になっては意味がなく、圧力をかけることも必要というものです。軍事行動の可能性も排除しないというトランプ政権を支持しています。
 トランプ大統領はオバマ前政権が採った「戦略的忍耐」の政策を踏襲せず、「平和は力によってのみ初めて達成される」という考え方を持っています。なぜそのような強硬な姿勢をとるかというと、6者協議などの対話路線で北朝鮮の挑発行為を止められなかったからです。そして「すべての選択肢はテーブルの上にある」と、軍事力行使も辞さない強い態度を示しています。
 ところ先般、アメリカ軍はシリアのアサド政権の空軍施設やアフガニスタンにある過激派組織「イスラム国」(IS)の拠点を攻撃しています。より直接的には、原子力空母カールビンソンを朝鮮半島近海に派遣しました。こうした軍事力の誇示も、北朝鮮に暴挙を思いとどまらさせる狙いがあります。そして訪日の前に立ち寄った韓国においてペンス副大統領は、「北朝鮮はこの地域の米軍の力を試すようなことはしない方がよい」と警告しています。
 以上のようにトランプ大統領は軍事行動をほのめかし、北朝鮮をおさえこもうとしていますが、北朝鮮に強い影響力を持つ中国の役割も重視しています。すなわち中国が北朝鮮に対し、援助や取引を行わないように働きかけているのです。そして北朝鮮との取引をやめない中国企業に対しては、アメリカとの取引をできなくする措置も検討中です。
 しかし中国はどこまでそうしたアメリカの要請に応じるかは不透明です。習近平主席は対話と協議による解決を主張しています。
 それにしても挑発を続ける北朝鮮の本音はどこにあるのでしょうか。核戦争も恐れないと強硬な発言を繰り返していますが、体制維持のために何をしてくるかわかりません。反面、アメリカの本格的な攻撃を受ければ、壊滅的な打撃を受けることはわかっているはずです。対話のタイミングをさがしているよう気もします。
 結局国際社会、とくに中国がより強力な経済制裁=経済的圧力をかけ、ます北朝鮮を協議の場につかせることが重要です。(ただしトランプ大統領の手法で、軍事的圧力を高めるのは、偶発的衝突につながる可能性があり、危険だと思います。)そして「対話」を始め、核やミサイル開発を諦めるよう粘り強く説得する以外ありません。

「豊かさ」概念の移り変わり

 今日から新年度の講義が始まりました。春学期は月曜から金曜までのびっしりのスケジュールで忙しくなりそうですが、さしあたり夏休みを迎えるまで、日々の講義に全力投球したいと思います。
 さて毎週金曜日の夜間は、エコノミスト・コースの熱心な社会人2名を対象とした講義です。お2人の専攻が異なるため、何をテーマにするか迷ったのですが、「豊かさ」概念の移り変わりなら、共通性も高いと思い、取り上げることにしました。
 生活水準を高め、より一層豊かさを実感できる社会を築くことは、経済学の重要な課題です。具体的には、次の時期区分に従って、「豊かさ」概念について、検討するつもりです。
 まず戦前期については、日本経済史の講義で再三強調したように、明治以降第二次世界大戦に突入する前までは、実質GDPの成長がマイナスになることはなかったため、着実に豊かになっていったといえます。もっともマクロ経済指標はよくなりましたが、民主主義の浸透は不十分であったため、植民地拡大政策に乗り出し、侵略戦争を展開します。個人の自由や豊かさが制約され、国家の豊かさが優先されたのですが、結局失敗に終わってゆく経過をたどります。
 次に戦後復興期から高度成長が始まる前までは、食料や諸物資の欠乏をいかに克服するかが目標とされました。
 高度成長期は目覚ましい所得水準の上昇に歩調を合わせ、衣食住すべての面で生活水準が大きく上昇した時期です。高度成長のメカニズムは昨年度、現代日本経済史の講義で説明しましたが、さらに踏み込んで検討を加えたいと考えています。
 1970年代以降は経済の成熟期を迎え、物質的豊かさはほぼ達成されたといえます。その一方で環境破壊や長時間労働、人間関係の希薄化など、様々なひずみが目立つようになり、GDP拡大第一主義が疑問視されるようになりました。換言すると、経済データ的に測定できない、生活の質の面に焦点が当たるようになってきました。
 これまで日本経済史、現代日本経済史の講義では、政治・経済・外交の面からバランスよく日本の歩みをたどることに力を入れてきましたが、今年度の大学院の講義では、豊かさ」概念がどう移り変わっていったかに着眼して、近代史を見てゆきたいと思います。

2017年度のスケジュール

 2017年度は下記のスケジュールで講義を行います。(確定版)
 担当科目は大まかに言うと、経済史関係と医療問題です。下記の全科目において、受講生が深い関心を示し、講義を契機としてさらに研究を深めてほしいと願っています。講義内容が、卒業論文やレポート作成の手がかりとなり、質の高い研究成果が生まれることを期待しています。
 講義は単に単位を得るというだけではなく、各自の経済分析力に磨きをかけ、社会をよりよくするための方策を練る場であると考え、積極的に参加してください。

月曜日
2限 通年 学部・研究演習毅荏函。叩檻械娃粥
3限 春   学部・日本経済史機。臓檻隠娃
3限 秋   学部・日本経済史供 瓠‖膤惘 ζ本経済史A F−102
4限 秋   学部・研究演習入門  C−304

火曜日
2限 通年 大学院 研究演習 経済学部−9号
3限 秋  学部・経済史B F−102 
4限 通年 学部 研究演習供13組 C−304

水曜日
教授会、研究科委員会など会議日

木曜日
4限 春 学部・学際トピックス「医療をめぐる諸問題」 C−101 ← 4月20日より変更

金曜日
6・7限 春前半 大学院 社会経済史 院ー203
6・7限 春後半 大学院 現代経済史 院ー203

経済史Bの講義準備

 来年度、秋学期ですが、経済史Bという科目を担当することになりました。関学・経済学部において経済史というと、伝統的に外国史を指し、日本を対象としてきませんでした。そのため、私が担当することはなかったのですが、珍しく、来年度は受け持つことになりました。申し合わせにより、時期の守備範囲は、産業革命〜第二次世界大戦となっています。(ちなみに経済史Aの守備範囲は、封建制社会〜産業革命まで。)この間の世界経済の動きをどう描けばよいのか、知恵をしぼっているところです。
 2月8日の記事でも話題にしたように、外国史の講義でも従来の方法を改める必要があると考えています。すなわち年号と事実を結びつけるのではなく、長期的な変化の要因を明らかにしたり、歴史的意義を検討するなど、「理解」に重点を置くのが大原則です。
 さらに個別の国を分析対象とせず、大英帝国、 大東亜共栄圏といった具合に、より広域の経済構造に注目します。
 また経済のグローバル化が進むにつれ、ヒト、モノ、カネが国境を越えて活発に移動するようになりました。経済活動は一国で完結せず、相互依存を強めました。EU(欧州連合)、ASEAN(東南アジア諸国連合)などはその典型です。こうした経済統合の過程や貿易の動向、技術移転や分業体制、移民・労働力移動なども重要な研究対象となります。
 一時はTPP構想も順調に進展し、経済統合は一段と加速すると思われましたが、イギリスのEU離脱、トランプ大統領誕生によるアメリカ第一主義の提唱など、最近では経済のグローバル化が後退する兆しもあらわれてきました。経済のグローバル化が何をもたらしたのか、そのプラス面とマイナス面を検証し、世界経済が今後どのような方向に進むのかについても考えてみたいと思います。
 加えて覇権国(世界経済のリーダー国)の移り変わりにも注目したいと思います。大航海時代以来、世界の中心国は、ポルトガル、スペイン、オランダ、イギリス、アメリカと推移してきました。1960代まではアメリカの国力は圧倒的でしたが、その後日本やドイツが追い上げ、21世紀に入ってからは、中国の存在感が高まってきました。この先世界秩序はどうなるのでしょうか。未来の方向性をさぐるためにも、歴史の検証は欠かせません。
 根本論になりますが、歴史の講義も他教科と同様、受講生に役立つものでなければなりません。ここで「役立つ」とは、現代社会が直面する課題を明らかにし、解決の方向性をさぐり、望ましい将来展望を描くことです。大学入試までの歴史は、入試において合格者と不合格者をふるい分けるためのものであり、細かい知識を問わざるをえませんでした。しかし大学入学以降の学びは全く性格が異なります。人類が国境を越えて対処し、中長期的に解決すべき課題に挑戦するものです。こうした意識を忘れることなく、講義と研究に力を注ぎたいと思っています。 

2017年度 学際トピックス「医療をめぐる諸問題」 日程表

 経済学部開講の学際トピックス「医療をめぐる諸問題」、2017年度は下記の日程表にしたがって行います。(開講日時は毎週木曜日・4限です。)関学生は全学部・全学年の学生が受講でき、兵庫医科大の1年生20名あまりも加わります。
 本講座は、総合学として医療問題に取り組んでゆこうという取組です。医療界の最前線でご活躍の医師、法律家、経済学者を講師にお迎えします。
 各分野において実績豊富な講師が毎年新しいトピックスを取り入れながら、わかりやすく医療問題を解説してくださいます。医療発展の光と影、医療現場の動向、高齢化の進展にともなう財政的課題、テレビで取り上げられる救急医療、災害医療の実態、医療と法の問題、人材育成など、半年間の受講で医療の全体像が明快に把握できるカリキュラムを組んでいます。
 本講座は何といっても講師がウリです。知名度が抜群で、各分野で優れた実績をあげていらっしゃる方ばかりですが、みなさん快く引き受けてくださいました。有名大学の医学部でさえ、これだけのメンバーは揃いません。「健康で長生きしたい」という人間にとって究極の目標を実現する医療について、本格的に考える好機です。多数の受講を期待しています。

第1回  4 月13日 本講座のねらい 寺本益英 (経済学部教授)
第2回  4 月20日  医療の進歩 −光と影− 山中若樹 (明和病院院長・理事長)
第3回  4 月27日 わが国の医療をめぐる課題と対策   山中若樹
第4回  5月4日  危機管理と災害医療 小谷穣治 (兵庫医科大学教授)
第5回  5月11日  映像で学ぶ救急医療の現況と問題点 小谷穣治
第6回  5月18日  戦後日本経済の歩みと病気の傾向 −疫学調査による分析− 若林一郎 (兵庫医科大学教授)
第7回  5月25日 高齢化の進展と医療の方向性 長尾和宏 (長尾クリニック院長・東京医科大学客員教授)
第8回  6月1日  医療と法 /綸臂此平綸臻[Щ務所弁護士)
第9回  6月8日  良医の育成と医学教育 −兵庫医科大学の取組−  鈴木敬一郎 (兵庫医科大学教授)
第10回  6月15日  医療と法◆/綸臂
第11回  6月22日  公的医療保険制度の現状と課題 前田高志  (経済学部教授)
第12回  6月29日  公立病院の現状と課題  前田高志
第13回  7月6日   親や祖父母の穏やかな最期について考える 長尾和宏
第14回  7月13日  本講座のまとめ 寺本益英

経済学セミナー 「米価問題と鈴木商店」の記載内容と官公庁資料との照合 のご案内

 鈴木商店の経営史は、近代日本経済史研究の重要なテーマであり、私の日本経済史の講義でもかなりの時間を割いて取り上げてきました。さらに昨年12月1日の記事で、鈴木商店にゆかりある企業の方々が「鈴木商店記念館」という立派なインターネット上の博物館をつくっておられることもご紹介しました。
 ところで神戸市主催の神戸開港150年記念事業の一環として、1月25日から12月28日までKIITO(デザイン・クリエイティブセンター神戸)において、様々な催しが行われているのですが、そのひとつに「鈴木商店記念館」が出展しています。このように鈴木商店の再評価は今大きなブームになっています。
 今学期の講義では、日本経済史に強い関心を持つ学生との出会いがあり、熱心で研究意欲旺盛な大学院生や社会人の方とも一緒に研究を進めてきました。自然発生的に、日本経済史の研究を究めようというグループができました。一方で昨年9月、鈴木よねさんの設立した神戸市立神港高校のみなさんに講義し、その機会をお授けくださった島田融先生は、継続して様々な取組を検討されており、私にも声をかけてくださっています。
 以上の経過で、私のまわりの同じ志を持つ人で協力し、鈴木商店の研究を始めようと思います。まず手始めに、下記の要領で経済学セミナー(勉強会)を開催します。講師は「鈴木商店記念館」の運営にも携わっていらっしゃる双日総合研究所・前田勝先生です。演題は「米価問題と鈴木商店」(1919年)の再検証です。鈴木商店の経営が傾き始める1918年の焼き打ち事件について、様々な史料を駆使して、詳細に分析していただきます。

【経済学セミナーのご案内】

● 講師:前田勝氏(双日総合研究所 調査グループ サブリーダー)
● 日時:2017年 2月 27日(月) 16:00〜17:30(予定)
● テーマ:「米価問題と鈴木商店」の記載内容と官公庁資料との照合 ← テーマ変更になりました
● 主催:関西学院大学経済学部
● 会場:関西学院大学経済学部 2F会議室
     
【講演概要】
鈴木商店」及び「鈴木商店記念館」に関する説明と同商店発行の「米価問題と鈴木商店」(1919年)の再検証。

お問い合わせ
〒662-8501
西宮市上ヶ原一番町1-155
関西学院大学経済学部
寺本 益英研究室
e-mail:teramoto★kwansei.ac.jp ★を@に変更してください。
TEL:0798-54-6469(寺本研究室直通)
FAX:0798-51-0944(経済学部事務室)

日米首脳会談 親密ぶりをアピール

 安倍晋三首相とトランプ米大統領の日米首脳会談が、10日、11日と2日間にわたって行われました。およそ11時間時間をともにし、食事を4度と27ホールまわるゴルフを楽しみ、親密ぶりをアピールしました。トランプ大統領がこのように安倍首相を手厚くもてなしたのは、安倍首相が自身のよき理解者であることを誇示するとともに、仕手を取り込みやすくする狙いがあったと思われます。
 この会談で両首脳の信頼関係が深まったのは、望ましいことです。しかし山積するグローバルな課題とその解決策について、有意義な話し合いが行われたのかが気になります。とりわけ、これまで世界が共有していたj民主主義・自由・法の支配といった普遍的価値は、トランプ氏が強調する「アメリカ第一主義」と対立し、維持できるのかが心配です。
 中でもTPPは、多国間の枠組みでヒト、モノ、カネの自由な移動を促進し、貿易を拡大し、各国の産業発展を実現しようとするものでした。しかしトランプ氏は、アメリカのTPP離脱を表明し、二国間のディール(取引)に持ち込み、自国に有利に交渉を進めようという考えです。これに対し日本は何も抗議しませんでした。
 さらに1月27日の大統領令において、シリア、イラク、イラン、リビア、ソマリア、スーダン、イエメンの中東・アフリカ7カ国の国民に入国禁止令を発しました。しかしこれは正当な理由に基づくものではなく、差別と偏見からであることは明らかです。特定の国や宗教を標的にすることは、かえって反発を招き、世界の分断と憎悪の連鎖に拍車をかけるでしょう。国際社会がそろって非難の声をあげる中、安倍首相は「入国管理はその国の内政問題なのでコメントを差し控える」と述べました。違和感を感じずにはいられません。
 安倍首相が成果を強調するのは日米同盟です。その背景にあるのは、中国の海洋進出に対する危機感です。安倍首相は日米同盟の強化こそが、東アジアの安定につながると確信し、そのためには、日本のアメリカに対する貢献(=防衛力強化)が必要と考えています。しかしこうした対米一辺倒の姿勢は、かえって中国や韓国を刺激しているのではないかと思います。
 反面、アメリカは絶えず日本と歩調を合わせ、中国に対抗してくれるかというと、疑問が残ります。トランプ大統領は、存外中国との関係を重視しているかも知れません。日本ももう少しうまく中国と付き合う方法を模索すべきだと思います。
 言うまでもありませんが、日米関係は対等の関係でなければなりません。両国は協力し、前述のような普遍的価値を追求する責任があります。そしてアメリカの考え方が誤っていると気づけば、それを指摘し、軌道修正を求めるべきです。トランプ大統領の打ち出す政策が、長期の視点でみた場合、アメリカの国益ばかりではなく、世界経済の利益にもならないことをしっかり説明しなければなりません。

日本近代史研究の意義と講義の進め方

 来年度も経済史関係の科目を中心に担当することになります。経済学部の科目の中で理論や統計系列の科目は、大学に入ってからはじめて接することになりますが、私が担当している日本経済史(近代史)は、高等学校で学んだ日本史の上に成り立っています。したがって高校と大学の接続をうまく行うことが大切な目標になります。
 すでに言い尽くされたことですが、高等学校で学んだ歴史は暗記中心で年号と事項を結びつけるだけのものでした。しかし私の講義では、様々な事象がなぜ起きたのか、その結果どうなったのかと問い、それに対する解答をさがすというスタイルで進めてゆきます。
 次に強調したいのは、日本史と世界史の融合です。高校までは日本史と世界史は別々の科目として取り扱われてきました。しかし明治以降の日本は、必然的にグローバル経済の中に組み込まれ、近代化を促進するために貿易を行い、欧米列強と対等の地位を獲得するため、侵略戦争や植民地化政策を展開してゆきました。
 こうした過去から目をそむけてはならず、世界史の大きな流れに対し、日本はどのような行動をとり、どのような結果を招いたのか明らかにしなければならないと思います。とりわけ明治・大正・昭和戦前期に日本が関わった戦争については、看過できません。ほぼ50年のうちに、日清戦争、日露戦争、第一次世界大戦、第二次世界大戦と、4つもの大戦争を経験したのですから。
 いまひとつ、理論系の経済学は一般性・法則性を導こうとするのに対し、歴史(日本史)の場合は、日本の特殊性に強い関心を寄せています。例えば日本はアジアの他の後進国と異なり、なぜ急速な近代化に成功したのかというテーマは、定番の研究課題といえます。この課題を解明するため、日本特有の経済政策や制度、政治家や企業家の役割、国民性、文化など、多様な観点からのアプローチが行われてきました。
 あらためて歴史とは何でしょうか?よかったことも悪かったことも含め、「人類の経験の蓄積」といえます。よい結論が得られたことは、次の機会にはよりよくなるよう改善を加え、失敗は教訓として同じ誤りを繰り返さないよう努めなければなりません。こうして考えてみると、過去を知らず、現在起こっている問題、あるいは将来起こるであろう問題に対処することは不可能でしょう。
 以上の意味で、歴史的思考力や分析力を鍛えるのは、大学教育における優先順位の高い仕事です。日本経済史の講義では、こうした重要性を念頭に置いて、進めてゆきたいと思います。

マティス国防長官が来日

 4日、アメリカのマティス米国防長官が韓国に続いて日本を訪れ、安倍首相や稲田防衛相らと会談しました。会談内容でまず驚いたのは、アメリカが駐留経費の負担増を要求しなかったことです。振り返るとトランプ氏は大統領選中、日本が駐留経費を全額負担しなければ米軍撤退もありうると示唆。しました新政権がどんな要求を突きつけるのか、日本政府内には懸念していたので、ひと安心というところでしょう。
 それどころかマティス氏は、「経費と負担の分担について、日本はお手本になってきた」と称賛しました。実際、国防総省の2004年報告書によると、米軍の駐留経費負担は9カ国中、日本が最高の74.5%。ドイツの32.6%や韓国の40.0%と比べると、ずば抜けて高い値です。なおこの称賛は、日本以外の同盟国も日本並みに引き上げてほしいというメッセージにもなっているようです。
 稲田朋美防衛相は、安倍政権になって日本の防衛費は毎年伸びていることを強調しました。具体的には日米防衛協力のための指針(ガイドライン)を改定し、集団的自衛権行使を容認した安全保障関連法を制定した実績を指摘しました。これに対しマティス氏も日本は正しい路線を進んでいると評価しました。
 なおマティス氏は、同盟関係において現状に満足してはいけないとも言っています。日米両国は、安全保障環境の変化に対応しなければならないとも述べ、日本側に一層の努力を求めました。
 安倍首相はマティス氏の意向に沿うよう今後も自主的に防衛費を増やし、自衛隊の役割を拡大させていく見込みです。アメリカからの圧力が強まれば強まるほど、自衛隊を強化する予算は増額されるでしょう。
 中国の東シナ海や南シナ海での海洋進出について懸念を共有し、尖閣諸島は「日本の施政下にあり、日米安保条約第5条の適用範囲だ」と明言しました。そしてマティス氏は、日本のような長年の同盟国が最優先とも語っています。従来の立場は基本的に継続するというアメリカの意思は確認できたといえます。
 やや気がかりなのは、上記のマティス氏の姿勢がトランプ政権全体で共有されているかどうかという点です。トランプ氏が通商と安全保障をからめる「ディール(取引)外交」を打ち出し、政権の方針が大きく変わる可能性も否定できません。
 さて、国際社会が心配しているのは、アメリカと中国との関係が不透明なことです。トランプ氏は昨年12月、台湾の蔡英文(ツァイインウェン)総統との電話会談に続き、中国と台湾の「一つの中国」の原則を疑問視する発言を行っています。米中間には潜在的に対立関係にありますが、貿易や投資では強い補完関係をとっています。両国はこれまで慎重に行動し安定を図ってきました。トランプ氏はその伝統を引き継ぐことができるでしょうか。
 最後に沖縄の問題を取り上げておきます。稲田防衛相とマティス長官は、沖縄県宜野湾市米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設を「唯一の解決策」であると確認しました。こてに対し翁長雄志知事は、大変失礼なやり方であると不快感を示しました。沖縄県には、選挙期間中日米同盟の見直しに言及したトランプ氏にむしろ期待感を持っており、この決定は納得しがたいようです。
 あらためて述べるまでもありませんが、良好な日米関係はアジア太平洋地域の、ひいては世界の平和と安定に重要な役割を果たします。トランプ大統領は選挙期間中の同盟軽視発言を撤回し、北朝鮮の脅威を抑え、中国が東シナ海や南シナ海で暴走しないよう目を光らせてほしいものです。

2016年度 成績評価が完了しました

1月も今日で終わりです。学生のみなさんは、正月休み明けからすぐにテスト期間に入り、大変だったと思います。お疲れさまでした。
 言うまでもありませんが、試験があれば必ず採点し、成績評価を行わなければなりません。私のあまり得意な作業ではありませんが、今回は枚数が少なかったこともあり、ずいぶん早く片付きました。結果を簡単にコメントしておきます。
 まず現代日本経済史ですが、ふだんきちんと出席している人とそうでない人ではっきり明暗が分かれました。高得点の人は政治・外交の問題は要点を簡潔に整理し、経済の問題はある程度詳しく述べてありました。反面欠席がちだった人は、答案のツボがおさえられておらず、白紙部分が目立ち、得点の与えようがありませんでした。
 次に総合コース「仕事のやりがいと幸福」は、経済学部と国際学部の数名の学生が、非の打ちどころがない見事な答案を書いてくれました。【1】の経営の提案は、講義内容を反映しつつ、オリジナルの発想を取り入れたものが見受けられました。【2】の業界動向を問う問題についても、資料内容を要領よくまとめてありました。
 一方C評価や不合格の答案は、当たり前すぎる主張で分量が少ないという特徴があります。例えばJRの赤字路線の再建に関しては、「人がたくさん集まるようにする」、高齢者の多い地域での病院経営に関しては、「高齢者が喜ぶ医療サービスを提供する」といった調子です。答案では具体的な事例を挙げながら、なぜその結論に至ったのか、過程を筋道を立てて説明することが求められます。そのトレーニングができているか、いないかで、評価に差がついたと考えられます。
 最後に日本経済史兇蓮⊂人数でしたが出席率が高く、講義中に質問をしながら進めてゆきましたので、よくできていました。特に金融恐慌の経過は、それほど詳しい説明を求めたつもりではなかったのですが、片面びっしり書かれ、1枚では足りず、2枚にわたる力作もありました。年、人物、事実関係が正確で、私の講義ノートや板書を正確に把握したものがほとんどだったので、嬉しかったです。
 これで2016年度の仕事がすべて終わり、肩の荷がおりた気持ちです。新学期まで少し余裕ができますので、シラバスを練りつつ、来年度の講義準備を進めてゆきたいと思います。今学期は学部生の中にも、かなり熱心に経済史研究に取り組んでくれた人がいました。大学院生や社会人とも交流し、関学・経済史の研究者の層が一気に厚くなりました。関学・経済史の存在感を高める好機到来です。来年度はさらなる発展を目指します。

2016年度 日本経済史供…蟯試験を行いました

 厳しい寒さが続いています。今日も晴れていたかと思ったら急に暗くなり、みぞれが降ってきました。テスト期間は一番コンディションを整えておきたい時期なのに、春学期は真夏、秋学期は真冬と重なるのがつらいです。
 さて本日日本経済史兇猟蟯試験を行い、下記のような問題を出しました。重量級の問題で、途中退席者はゼロでした。2枚目の答案用紙を要求した学生もおり、よくできているのではと期待しています。
 今学期は戦間期の経済に重点を置いて講義を進めてきました。金本位制のメカニズム、バブル経済の発生と崩壊、不況期の経済政策など、経済の論理と実体経済の関係を詳しく解説しました。しかし現実の経済は、経済の論理だけで動くのではなく、そのときどきの国際環境、予期せぬショック、政治的な駆け引きなど、様々な非経済的要因に左右されることも強調しました。
 激動の戦間期を経済、政治、外交に注目してたどる作業を通じ、いつの時代にも通用する「社会情勢を分析する眼」が鍛えられたと思います。

【 2016年度 「日本経済史供廖…蟯試験問題 】

【1】 大正期から昭和初期にかけての日本経済をめぐり、以下の設問に答えなさい。

(1) 第一次世界大戦により、当時の経済はどのように変化したか。要点をとりまとめなさい。15点
(2) 1920年恐慌の発生と、それが後の経済に与えた影響について、資産デフレとデフレの悪循環をキーワードに論じなさい。10点
(3) 1927年の金融恐慌の発生から終息までの経過を次の論点に留意して述べなさい。25点
 【論点】
 /椋匱蠏舛僚萢問題
◆‖耋儷箙圓販詭攵ε垢隆愀
 片岡直温蔵相の失言事件
ぁ〃政会と政友会の対立
ァ々盒鏡Ю饗∩蠅砲茲觧態の収拾
(4) 1929年から30年にかけて展開された浜口雄幸内閣の政策は昭和恐慌を引き起こした。金本位制の行き詰まりと、経済の論理に反する諸政策に焦点を当て、その展開を論じなさい。20点
(5) 犬養毅内閣の高橋是清蔵相は、(4)で論じた昭和恐慌から日本経済をどのように立て直したか。「高橋財政」に注目して説明しなさい。20点

【2】 次の(1)〜(3)の設問より1問選択して答えなさい。10点

(1) 第1次山本権兵衛内閣の政治改革
(2) 原敬内閣の経済政策
(3) 加藤高明内閣の政治・外交政策

2016年度 総合コース528 「仕事のやりがいと幸福」 定期試験を行いました

 本日、総合コース528 「仕事のやりがいと幸福」の定期試験を実施し、下記の出題を行いました。私以外の講師は全員学外からお招きしたため、他の講義とはやや異なる雰囲気だったと思います。
 各先生が携わっていらっしゃる業界の動向を、日本経済、世界経済の動きと重ね合わせ、明快にお話しいただきました。加えてそれぞれの先生の経営哲学や仕事に対する情熱を語っていただき、鼓舞されるシーンも多かったのではないかと思います。
 この講義を受講したみなさんは、納得のゆく進路を決定し、その仕事に対して自身がやりがいを感じると同時に、社会の幸福につなげてほしいと思います。それが私たち関西学院大学のスクールモットーである“Mastery for Service ”の実践だと考えています。

【 2016年度 総合コース528 「仕事のやりがいと幸福」 定期試験問題 】

【1】 あなたが次の(1)〜(3)の仕事に携わることになった場合、どのような目標を設定し、具体的にどういった手段を用いてそれを達成しようとしますか。講義内容に即して述べなさい。なお解答は、3つのテーマから2つ選択して作成してください。30×2=60点

(1) JRで赤字の地方路線の存廃を検討することになった場合。
(2) 飲食施設をともなった遊園地を運営することになった場合。
(3) 高齢者の多い地域で病院経営を任された場合。

【2】 次の設問から2問選択し、10行程度で説明しなさい。20×2=40点

(1) 原油価格はどのような要因によって変動しますか。最近の国際情勢をまじえて説明しなさい。
(2) 中小企業が抱える課題を指摘し、その解決策について述べなさい。
(3) 日本の鉄鋼業の現状と今後の発展戦略について論じなさい。
(4) 景気の現状と消費者信用産業の果たす役割について述べなさい。

2016年度 「現代日本経済史」 定期試験を行いました

 本日現代日本経済史の定期試験を行い、下記のような問題を出しました。経済、政治、外交とバランスよく出題したつもりです。
 講義では、終戦直後の復興期から、高度成長期までを扱いました。現代社会のホットなテーマを考える上でも、有意義なトピックスが多かったと思います。例えば高度成長期の経済からは、経済の好循環のメカニズムを学ぶことができました。経済の現状に照らし合わせると、デフレ脱却に向けてどのような政策が必要か、様々なヒントが得られます。 
 日米関係についてもある程度詳しく見てきました。トランプ大統領の誕生により、日米同盟はこれまでどおり機能するのでしょうか。
 日露関係にも時間を割きました。昨年末の安倍・プーチン会談が注目を集めましたが、北方領土問題の解決は容易ではありません。北方領土をめぐり、日露両国の主張の違いも明らかにしました。
 私たちは政治・経済の現状を正確に把握しなければいけません。しかしそのためには、歴史的な経過の理解が不可欠です。いつまで遡るかは様々な意見があると思いますが、最低限、戦後70年の歩みはしっかりおさえておきたいところです。

【 2016年度 「現代日本経済史」 定期試験問題 】

【1】 終戦直後に行われた民主化政策のうち、財閥解体・独占禁止政策の概要と意義について述べなさい。15点

【2】 自由民主党成立の経緯と、1955年体制の概要について述べなさい。10点

【3】 日ソ共同宣言について、次の設問に答えなさい。20点

(1) その意義について、1〜2行で説明しなさい。5点
(2) 現在に至るまで、なぜ日ソ平和条約が結ばれていないのか。両国の主張の違いを明らかにしなさい。15点

【4】 日米安全保障条約について、次の設問に答えなさい。25点

(1) 調印時の時代背景に関し、アメリカの対日政策にどのような変化がみられたか説明しなさい。10点
(2) この条約で問題視された片務性・不平等性について述べなさい。15点

【5】 次の設問のうち、どちらか一方を選択して解答しなさい。30点

(1) 岩戸景気の特徴を当時の消費生活の変化にも留意しながら説明しなさい。
(2) 「転型期論」克服によるいざなぎ景気の展開を、当時の社会・生活の変貌を交えて述べなさい。

2017年 元旦

 みなさん明けましておめでとうございます。本年もどうかよろしくお願いいたします。
 お正月の楽しみは、何といっても年賀状をみることです。ふだんなかなかお会いできない人の近況がわかり、いつもお会いしている人から激励の言葉をかけていただけるのは嬉しいことです。
 さて今年も「研究ファースト」で、後悔のない1年を過ごしたいと思います。まずメインの日本経済史ですが、昨年からの継続研究に力を入れたいと思います。特に第一次世界大戦ブームとその崩壊、関東大震災、金融恐慌、昭和恐慌、そして高橋財政による目覚ましい回復の過程を、様々な文献を再吟味しながら検証したいと思います。ちなみに私の祖父母は大正生まれで、私が小さい頃、激動の時代であった戦間期の話をよくしていました。日本経済史の研究を始め、ようやくその時代背景などがわかってきましたが、できるだけ多くの文献に当たりながら、祖父母の生きた時代を再現できればと考えています。
 いまひとつ、百貨店の経済史も重要なテーマです。私の大学院のゼミで学ばれている方が、修士論文を書かれますので、とても緊張しています。もっとも昨年1年熱心に研究を進められ、基本的なストーリーは出来上がっています。そこに史料やデータをうまく組み込んで、完成度を高めることが目標です。
 さらに佐賀の産業史の研究も、多少は前進させたいところです。農業全体の中のお茶の位置づけ、工業や商業と比較した場合の農業の地位の変遷などを明らかにしたいと思います。
 それから来年度は久しぶりで経済史を担当します。これまでたまに担当したことがありましたが、天川先生との共著書をもとに、封建制社会から産業革命期を取り上げました。しかし来年度はイギリス産業革命以降に初チャレンジです。産業革命の展開を簡単に復習して、アダムスミス流の自由主義経済、帝国主義、現代資本主義の成立、第一次世界大戦、世界恐慌と経済のブロック化などを話題にしようと考えています。ここ数年のうちに、世界経済史のすぐれた文献がたくさん出版されていますので、それらを参考にしながら、世界史の視点から近代経済成長の経過をたどりたいと思います。
 最後に講演活動もできる限りがんばるつもりです。拙い話でも、熱心に聞いてくださる方がいるのは嬉しいことです。研究生活の励みになり、研究の守備範囲も広がります。対外的な講演の成果は、関学生対象の講義にも反映できればと思います。

2016年の研究生活をふりかえって

 今年2016年は関学へ勤めて20年目(学部入学から30年目)の節目の年になります。現在の経済学部のスタッフをみると、私が習っていた頃の先生はほとんど退職され、顔ぶれが大きく変わっています。その事実ひとつをとってみても、ずいぶん時間が経過したのだと思わざるをえません。関学生活の残り期間も20年を切り、あれもこれもしなければという焦りばかりが先行しています。いつまで経っても満足のゆく実績が残せず、忸怩たる思いで越年します。
 私の努力不足で漫然と過ぎてしまった1年でしたが、いくつかの小さな前進はありました。まず第一は、近代史研究の幅が広がったことです。4月以降、社会人大学院生とともに、百貨店の経済史を学び、流通史の理解が深まりました。呉服店をルーツとする三越と、電鉄系の阪急百貨店の社史を読み、付随して、都市化の進展や生活水準の向上といった日本経済史研究の重要テーマにも取り組むことになり、貴重な体験ができました。
 また秋に神戸市立神港高校のみなさんに戦間期の経済についてお話しする機会をいただけたのも幸運でした。鈴木商店と金融恐慌、昭和恐慌、高橋財政による景気回復などは近代史で最もドラマチックなテーマと言っても過言ではなく、高校時代から興味を持っていました。もちろん大学に入ってからも、色々調べてきましたが、『日本銀行百年史』や高橋亀吉の著作をあらためて読み直すと、当時は気付かなかった新たな発見がありました。今度文章化する機会があれば、叙述の密度を高めることができそうです。
 戦後史に目を向けると、阪神シニアカレッジの講演を機に、これまで未開拓だった国際政治にチャレンジすることができました。外交史や内閣・首相に関する文献を数多く読み、経済と政治・外交は表裏一体の関係にあることを再確認しました。最近の経済学は抽象化され過ぎて、経済の本質が見えなくなってきています。しかし経済を動かしているのは人間であり、その時々の時代背景を抜きに語ることはできません。政策担当者や企業経営者の決断、市民の思いが経済に反映されていることを見過ごしてはいけません。その意味で、経済と政治・外交を一体として捉えることが重要だと考えます。戦後70年の歩みを、脚本家になったつもりで経済と政治・外交の要素を取り入つつドラマ化してみました。まだまだ完成度を高めねばなりませんが、私なりの下書き(構想)はある程度固まったかも知れません。
 尼崎市の市民大学では、4回も講演の機会をいただき、経済の現状把握を継続できたのもよかったと思います。そのおかげで、閑があれば新聞記事検索システムを活用し、記事を拾う習慣がつきました。新聞記事多読の効用は、色々な考え方が身につくばかりではなく、言葉の使い方や表現力が高まることです。これはという表現にはどんどん赤線を引いて、文章の書き方を訓練しました。
 最後に政治・経済と文化研究会は、会員のみなさんのおかげで、年6回研究会を開催することができました。今年の特記事項は、私の担当科目の熱心な受講生が3名、メンバーに加わってくれたことです。これまで会員全員が社会人だったのですが、若い学生メンバーの参加により、会が一段と活気づきました。最近は報告者を1名とし、すべての参加者に発言していただくよう運営方式を改めました。その結果、時間を気にせず踏み込んだ意見交換が可能になり、充実度が高まった気がしています。
 年末に後悔しなくて済むよう、来年こそはがんばりたいと思います。みなさんのご支援、どうかよろしくお願いいたします。

2016年 講演の記録

 2016年は3月から12月まで、全部で9件、講演の機会をいただきました。関学の講義の休講を避けるため、夏休み期間に集中させたので大変でしたが、やりがいがあり、私の研究生活の重要な原動力になっています。
 今年も尼崎市の各公民館ではお世話になりました。準備段階ではなかなか原稿が進まず、苦労しましたが、必死で新聞記事を読み、視野が広がったのはありがたいことです。そのほかレストランひさ家と立花公民館「ひかり学級」ではライフワークのお茶、神戸市立神港高校では金融恐慌を中心とした戦間期の日本経済史、阪神シニアカレッジでは、私にとって初チャレンジとなる、日米関係を中心とした国際政治について学ぶ機会を作っていただき、感謝しています。
 来年も校務と重ならないかぎり、講演活動を続けたいと思います。いつも直前にしんどい思いをしますので、引き出しにふだんから原稿を蓄積しておくのが、来年の目標です。

2016年に行った講演一覧

2016年3月26日(土)
明和病院レストラン「無糖派ダイニング ひさ家」 第1回 いきいき・ワクワク雑学講座 「日本人の心と緑茶文化」
2016年4月28日(木)
阪神シニアカレッジマイスターゼミナール 「戦後日米関係史」
2016年8月25日(木)
尼崎市立武庫公民館市民大学講座 「豊かさを求めて バブルとその崩壊 「失われた20 年」何が起きていたのか?」
2016年8月30日(火)
尼崎市立園田公民館市民大学講座 「世界経済の動向と黒田・日銀の金融政策 〜マイナス金利導入の衝撃〜」
2016年9月8日(木)
神戸市立神港高校市民専門講師 「大正・昭和初期の日本経済の特色」
2016年9月13日(火)
尼崎市立園田公民館市民大学講座 (公開講座(選挙・政治講座)「経済・社会の幸福の条件について考える 〜GDP至上主義の再検討〜」
2016年9月23日(金)
阪神シニアカレッジマイスターゼミナール 「冷戦終結後の日米関係」
2016年9月30日(金)
尼崎市立立花公民館「ひかり学級」 「お茶の魅力と健康文化」
2016年12月16日(金)
尼崎市立大庄公民館市民大学講座  (公開講座(選挙・政治講座)
「2017年 日本経済の展望」

2017年 日本経済の展望 (尼崎市立大庄公民館市民大学講座)

 今日は尼崎市立大庄公民館に出かけ、「2017年 日本経済の展望」というテーマで講演を行いました。今年最後の講演になります。一年の経済を振り返り、来年の展望を述べました。
  講演は概ね次の組み立てで行いました。まずGDP統計による景気の現状の確認です。内閣府が2016年12月8日発表した2016年7−9月期のGDP改定値によれば、物価の変動の影響を除いた実質で前期比0.3%増、年率換算で1.3%増となりました。11月14日発表された速報値では、年率2.2%増であったので、下方修正です。住宅投資と輸出頼み景気はゆるやかに回復していることを述べました。さらにアメリカ大統領選後の予期せぬ円安・株高で景気浮揚に弾みがつきつつあることにもふれました。
 続いて異次元緩和について、ここ1年の動向を詳述しました。とくにマイナス金利と長短金利操作付き量的・質的金融緩和の導入に焦点を当てました。金融政策は様々な手法が打ち出されたものの、デフレ脱却は容易ではないことも明らかにしました。
 最後に今年最大のニュースといっても過言ではないトランプ大統領誕生の背景を検証しました。そして今回の選挙結果から、アメリカ社会の分断がこれまで想像していた以上に進み、深刻なことを述べました。超大国アメリカがひとつにまとまるのは決して容易ではないことを指摘しました。
 トランプ次期米大統領の掲げる政策はインフラ投資や大規模減税です。アメリカの景気拡大への期待から、投資マネーが株式などリスク資産に流れ込み、世界景気の追い風になっています。
 トランプ政策のリスクについても論じました。トランプ氏の唱える「アメリカ第一主義」により、世界経済に様々な懸念が生じています。とりわけアメリカのTPPからの離脱は、巨大な自由貿易圏創設を消滅に導きます。アメリカが保護貿易の道を進めば、いずれ世界経済は低迷するに違いありません。
 ヨーロッパでは2017年春にフランスで大統領選、続いて秋にはドイツで総選挙と注目の時期を迎えます。トランプ現象が波及し、保護主義色の強いポピュリスト政党が勢いづくと、世界経済は一気に不安定さを増すのではないかと気がかりです。
 日本経済は先行きにも明るさが出ています。想定外の円安で輸出に弾みがつくでしょう。年明けからは事業規模28兆円の経済対策の効果が表れ、公共投資が成長を牽引しそうです。さらなる成長促進には個人消費の増加が不可欠と思われます。重要なカギは、実質賃金がどこまで上昇するか、注目したいところです。

2016年度 日本経済史供…蟯試験対策

 日本経済史兇旅峙舛發曚椽了です。今学期は第一次世界大戦から高橋財政までの短い期間を経済面を重視して取り上げました。パックブリターニカからアメリカーナへの過渡期の激動の時代であり、伝えたいことがたくさんありました。
 講義は少人数でしたが、ほとんどが春学期からの継続受講生です。経済の論理や政策の難しさ、歴史からの教訓などを、時代背景とともに理解してもらえたと思います。
 さてこの講義の定期試験は、2017年1月24日(火)の第3限に行います。学習のポイントは下記のとおりです。高得点を目指し、十分な準備をして臨んでください。

テーマ機‘本経済史 第一次世界大戦から高橋財政までの経済状況を問います。 
(1) 第一次世界大戦により、当時の経済はどのように変化したか。
(2) 1920年恐慌の経過。またそれが後の経済に与えた影響は? 資産デフレ、デフレの悪循環。
(3)  1927年の金融恐慌の発生から終息までの経過。 留意すべき事項は、震災手形の処理問題、台湾銀行と鈴木商店の関係、片岡直温蔵相の失言事件、憲政会と政友会の対立、高橋是清蔵相による事態の収拾 など。
(4) 浜口雄幸内閣の経済政策の内容。なぜ深刻な不況を引き起こしたか。金本位制のしくみ、限界にも注意。
(5) 高橋財政期の景気回復メカニズム。

テーマ供‘盂佞砲弔い
 それぞれの内閣のときの重要な出来事を取りまとめておいてください。(用語集レベルの簡単な説明でよい。)
(1) 第1次山本権兵衛内閣
(2) 第2次大隈重信内閣
(3) 原敬内閣
(4) 寺内正毅内閣
(5) 加藤高明内閣
(6) 田中義一内閣 (金融恐慌を除く)

2016年度 現代日本経済史 定期試験対策

 現代日本経済史の講義では終戦直後の復興期から高度成長期までを取り上げました。分野的には政治・外交史と経済史のウエイトがちょうど半々だったと思います。前者に関しては、日米安保や日ソ共同宣言、1955年体制など、日頃からニュースで頻繁に耳にするテーマのルーツをさぐり、後者については、高度成長のメカニズムを詳しく説明しました。
  さて本講義の定期試験は、2017年1月16日(月)の第3限に行います。概ね次の事項について、配付資料と補足の板書を参考に、重要ポイントをまとめておいてください。

テーマ1 戦後復興期
(1) 寄生地主制と農地改革
(2) 傾斜生産方式
(3) 財閥解体・独占禁止政策・過度経済力集中排除法
(4) 金融緊急措置令

テーマ2 日米安全保障条約
(1) 冷戦の展開、アメリカの対日政策の変化について
(2) サンフランシスコ平和条約の意義
(3) 日米安全保障条約の片務性・不平等性と新安保条約

テーマ3 日ソ共同宣言について
(1) その意義は?
(2) 現在まで日ソ平和条約が結ばれていない理由は?。両国の主張の違いは?

テーマ4 自由民主党成立の経緯と、1955年体制の概要について

テーマ5 高度成長
(1) 神武景気
(2) 岩戸景気
(3) オリンピック景気・40年不況・転型期論
(4) いざなぎ景気

関西学院大学 政治・経済と文化研究会第9回研究会 のご案内

 関西学院大学 政治・経済と文化研究会第9回研究会を12月11日(日)、午後1時半より、関西学院大学上ヶ原キャンパス池内記念館第2研究会室で行います。すでに10月31日の記事で予告しましたように、今回は牧瀬充幸さんが「我が国における観光立国の役割」と題して話題提供してくださいます。
  牧瀬さんは2015年10月17日に実施された第2回の本研究会において、「本当のゆたかさ」について 〜私たちの未来からみえるもの〜」と題し、「足ることの大切さ」を力説されました。今回も牧瀬さんの「豊かさ追求」研究の続編として、観光振興について述べてくださいます。
 さて牧瀬さんは、地域活性化こそが日本経済再生 に最も有効な手段というお考えで、「観光立国化」をいかに進めるかについて様々な角度から検討していただきます。図表や事例を多用しながら、綿密に議論を進めてくださる予定です。また後半では、観光立国の必要性を牧瀬さんが各地へ出向いて感じられた体験をもとに語っていただけるそうです。
 なお議論の視点として次の3点を提示してくださっています。
  「観光立国」の必要性はあるか?或は観光立国と同等に日本の経済を成長させる施策は他にあるか?
◆ 〇簔に、外国人を受け入れる態勢(感情面を含む)はあると思われるか?またそのために、インフラの充実や国民の語学力向上などのほか何が必要か?
  来日観光客についての直すべき行動・問題点は何か?
 以上に関し、参加者のみなさんのご意見をいただきたいと思います。さらに時間に余裕があれば、観光にこだわらず、より広範な見地から、日本経済の活性化策についてご議論いただきたいということです。今回も実り多い研究会になりそうです。

【プログラム】

13:30〜17:00   牧瀬充幸氏 「我が国における観光立国の役割」 
総合討論

※ 途中適宜休憩をはさみます。
.

2016年度 総合コース528「仕事のやりがいと幸福」定期試験対策

 総合コース528「仕事のやりがいと幸福」の定期試験は2017年1月19日(木)の第4限に実施します。
 定期試験の目的は、講義内容をきちんと理解しているかどうかの確認です。休まず講義に出席し、各講師の話をきちんと聞いていたら、確実に高得点をとってもらえます。
 なお今回の試験は、最終回にまとめを行う余裕がありません。予告どおりの問題を出しますので、あらかじめ詳しい解答を準備して臨んでください。

テーマ1 経営課題の洗い出し・目標の設定・実現のための方策
 あなたが講義で紹介のあった仕事を任せられた場合、どのように対応するかという問題です。私(寺本)の講義では鉄道事業を取り上げ、少子・高齢化が進む中、鉄道の地方路線が抱える課題を明らかにしました。具体的にどのような問題に直面しているでしょうか。また地方経済活性化のため、どのような政策が考えられるでしょうか。
 次に金銅先生(ワイン)、谷本先生(お茶)、山田先生(遊園地)が経営されている企業は、私たちの生活にゆとり・潤いを与えるという性質のものです。どのようなポリシーで、どのような取組をされているか、しっかり復習しておいてください。
 明和病院の山中先生のお話しは、超高齢化社会と病院の役割についてです。年々高齢者の比率が高まる社会を前提に、あなたが病院経営を行うとしたら、どのような点に注意しますか。超高齢社会の特徴を整理し、経営の方向性を打ち出せるようにしておいてください。

テーマ2 経済情勢と産業の動向
 本講座では、テーマ1で取り上げた産業のほか、石油、鉄鋼、消費者信用、中小企業を取り上げました。いずれの産業も、国内、海外の経済情勢の影響を受けて、事業を展開しています。そこでまず、最近の経済動向を把握し、それぞれの産業が抱える課題解決のため、どのような取組を行っているかまとめておいてください。
 石油産業に関しては、OPECの減産合意のニュースを新聞記事検索システムで確認しておきましょう。

 14コマの講義で取り上げることができたのは、ほんの一部の産業、仕事にすぎません。しかし共通していえるのは、すべての産業・仕事は経済・社会のマクロ的な動向に影響を受け、人々のニーズを反映した事業展開が求められているということです。 
 また本講座の講師を務めてくださった先生方は、その道のプロフェッショナルばかりです。プロの仕事ぶり、仕事にかける情熱、生き方、考え方を学び、みなさんの今後の指針となることを願っています。
 最後になりますが、本講座の受講を契機に、各自が 関西学院大学のスクールモットーは“Mastery for Service ”の具体的な形を見出すことができれば、開講責任者としてこれに勝る喜びはありません。

鈴木商店の研究

 今年もいよいよ12月を迎えました。ついこの間新年度が始まったばかりと思っていましたが、慌ただしく毎日を過ごしているうちに、どの科目も残り4回ほどで全日程が終了です。あっという間です。
 さて9月の記事で取り上げましたように、鈴木よねさんが設立した神戸市立神港高校の生徒に、鈴木商店の話をさせていただく機会がありました。その後関学の日本経済史の講義でも詳しく取り上げました。こうした体験を通じて鈴木商店への関心が一段と深まり、折をみて関連文献を読んでいます。桂芳男『関西系総合商社の原像』啓文社,1987年、高橋亀吉・森垣淑『昭和金融恐慌史』講談社,1993年 はすぐれた文献です。また鈴木商店にゆかりある企業の方々が「鈴木商店記念館」という立派なインターネット上の博物館をつくっておられます。
 鈴木商店の研究はこれまで私が関心を持って進めてきた戦前の景気循環の研究につながります。第一次世界大戦の好況と、1920年恐慌を引き金とする戦間期の停滞は、鈴木商店の業況とぴったり重なります。どのような取引を行って業績を拡大し、なぜつまずいたのか、明らかにする必要があります。
 いまひとつ、鈴木商店といえば昭和金融恐慌を想起します。歴史を振り返ると、バブルとバブル崩壊・金融システム不安は何度も繰り返されています。歴史からの教訓を得、同じ失敗を繰り返さないことも重要です。
 手がかりとなる文献が限られているのが難点ですが、ねばり強く研究を継続してゆきたいと思っています。 

鈴木商店記念館

オプジーボ50%値下げ

 みなさんは小野薬品が開発したがん免疫薬「オプジーボ」をご存知でしょうか。これはがん細胞が持つ特殊な免疫抑制機能を解除し、がんへの攻撃力を高める画期的な新薬です。日本では、皮膚がんの治療薬として2014年7月に発売されました。その後2015年12月には、肺がんの約8割を占める小細胞がんへの適用も認められました。
 オプジーボの最大の問題点は、その高価な薬価です。患者一人年間約3,500万円もかかるのです。もっともこの薬価は年470名程度の皮膚がんの患者で採算がとれるよう定めたものですが、肺がんにも適用されるようになり、対象者が1万5,000人に拡大したため、薬価が高すぎるという批判が出てきたのです。
 患者一人当たり年間3,500万円かかる薬剤費も、自己負担額で見たら少額です。一般的所得のある70歳以上の上限は約4万4,000円にとどまります。ようするにこの差額が公費や保険料でまかなわれていますので、現状が続けば、医療財政は破綻しかねません。
 そこで厚生労働相の諮問機関中央社会保険医療協議会(中医協)は、オプジーボの薬価を2017年2月より、半額に引き下げることを決めました。
 ところで薬価は2年に1度見直され、次の見直しは2018年4月のはずですが、オプジーボはそれを待たずに緊急的に引き下げられます。 厚労省は市場規模拡大に応じて随時薬価を引き下げるルールを作ろうとしています。年間1,000億〜1,500億円の販売額増大であれば、最大25%、1,500億円以上なら最大50%といった具合です。オプジーボの場合メーカーの見込み出荷額は1,260億円ですが、厚労省は流通経費などを上乗せすると1,500億円を超えると判断したようです。
 高額薬価の値下げは、医療費節減や医療保険制度維持の観点からは望ましいことです。その一方で、企業かの立場に立つと、新薬から十分な収益が得られないと、次の新薬開発に支障をきたすことになります。副作用が見つかった場合の訴訟リスクや、他社との激しい競合を考えると、製薬会社は強固な経営基盤を整えておく必要があります。
 難しい課題ですが、医療サービスの需要側(患者)と供給側(製薬会社)双方が納得できる薬価をどのように設定すればよいか、適切な制度設計が要請されています。

北方領土問題はどうなるか 

 現代日本経済史の講義では、鳩山一郎内閣と1955年体制の成立について述べたところです。さて鳩山一郎内閣といえば、1956(昭和31)年10月19日、ソビエトのブルガーニン首相との間で日ソ共同宣言に調印したことを忘れてはなりません。この条約によって日本とソビエトの戦争状態は終結し、国交回復を果たしたのです。しかしそのとき日ソ両国間の領土問題は解決されませんでした。
 さて日ソ共同宣言の第9項には、領土問題が取り上げられています。、そこでは、\犠錣奮宛魎愀犬回復された後、平和条約の交渉を継続すること、∧刃他鯡鵑猟結後に歯舞と色丹の2島を日本に引き渡すことなどが明記されているのです。
 ところが当時日ソ平和条約が結ばれなかったのは、領土の解釈をめぐり、日ソ間に食い違いがあったからです。まず日本の立場は北方4島(歯舞・色丹・国後・択捉)は日本固有の領土であり、ロシアの不法占拠が続いているというものです。とういうのも1945年8月9日、ソ連は1941年に署名され、当時有効であった日ソ中立条約を破り、4島を占領したからです。
 これに対しロシアは北方4島は第二次世界大戦で合法的に自国の領土の一部になったと言って譲りません。1945年2月、ソビエトのクリミア半島のヤルタでアメリカのルーズベルト、ソビエトのスターリン、イギリスのチャーチルが会談し、戦後の世界秩序が話し合われました。その席で米ソは、ドイツ降伏後、ソビエトは日本に参戦し、その代償として千島列島などをソビエトに引き渡すという密約を結んでいたのです。そして4島の日本帰属を認めると、日本が主張する「不法占拠」を受け入れることになるので返還には応じられないとしてきました。もし日本がヤルタからソビエト参戦の前までに戦争を終わらせていたら、北方領土問題は生じなかったかも知れません。
 このように領土問題を含む平和条約交渉は、平行線のまま今日に至っています。しかし冷戦終結後の1991年4月、やや前進の兆しが見えました。冷戦時代日本は4島一括即時返還を求めていたのですが、当時の海部首相とゴルバチョフ大統領との間で、北方四島が平和条約において解決されるべき領土問題の対象であることを、初めて文書で明記した「日ソ共同声明」に署名しました。そして「北方4島の日本の主権が確認されれば、返還の実際の時期や態様については柔軟に対処する」という姿勢を示すようになりました。
 ソ連崩壊後の1993年、当時の細川首相とロシアのエリツィン大統領が、「東京宣言」を発表しています。ロシアは日ソ共同宣言の有効性を認め、「北方四島の帰属の問題を法と正義の原則を基礎として解決し平和条約を早期に締結する」という交渉指針を確認しました。
 1997年には、橋本首相とエリツィン大統領は、ロシアのクラスノヤルスクで会談しました。そこでは「東京宣言に基づき2000年までに平和条約を締結するよう全力を尽くす」ことで合意しました。この合意の重要な意義は、北方領土問題解決の具体的な期限を定めた点です。日本政府には、エリツィン大統領との間で領土交渉が加速するという期待が高まりました。

トランプ大統領が誕生

 アメリカ大統領選挙は、共和党のドナルド・トランプ氏が、民主党のヒラリー・クリントン前国務長官を破り、当選しました。メキシコからの不法移民を強制送還するとか、イスラム教徒の一時入国を禁止するといった具合に差別的な発言が目立ち、女性蔑視の姿勢に対する批判も絶えなかったので、「資質」が問題視され、事前調査ではヒラリー・クリントン氏の優位が伝えられていました。ところがふたを開けてみると、全く想定外の結果が出たので、世界中に衝撃が走りました。さらに驚いたのは、政治家経験がない人が超大国アメリカの頂点に立ったことです。
 それにしても、トランプ氏を勝利に導いた背景は何だったのでしょうか。それは現政権あるいは既成の政治が、多くのアメリカ国民が抱く不満や憤りを解消できなかったことだと思います。グローバル化の進展に起因する格差が拡大し、中南米からの移民増加のために、白人の低所得層の人々の地位が脅かされているにもかかわらず、政策担当者は有効な処方箋を示すことができませんでした。
 そうした中、偉大なアメリカの復活、アメリカ第一主義(=国を閉ざすこと)を訴え、一貫して既成勢力を批判するトランプ氏の姿勢に共感し、変化を求めたに違いありません。
 今後のことで気になるのは、トランプ氏が公約どおりの政策をどこまで本気で実行しようとしているかです。自由貿易が格差を生み出してきたので保護貿易が好ましいというのなら、輸入品に高率の関税をかけて、自国産業を保護するはずです。その結果世界貿易は縮小均衡に向かわざるをえません。TPPも振り出しに戻ります。ただしTPPに関しては、理念は正しいですが、交渉の過程や日本に十分なメリットがあるのかどうかの説明が不十分だったので、慌てて成立させる必要もないかと感じました。また減税と財政支出拡大の同時実施は、いかにも大衆迎合的だと思いました。財政危機の引き金を引き、世界経済に混乱をもたらす懸念があります。
 ここで国防に目を向けます。在日米軍の費用を全額負担せよと言われたら日本政府はどうするつもりでしょうか。北朝鮮に対抗するため、自前で核兵器を持てとも言っており、日米同盟の再考が求められています。 
 今回の選挙結果から明らかになったのは、アメリカ社会の分断がこれまで想像していた以上に進み、深刻であるということです。超大国アメリカがひとつにまとまるのは決して容易ではありません。これまで日本はアメリカ流のやり方を手本としてきましたが、それが豊かで幸福な社会の実現には結びつかなかったということです。それならばアメリカとある程度の距離をおき、協調を重視する日本独自の経済・社会システムを開拓すべきです。トランプ大統領の誕生を、新しい日本の姿を描き、実現する好機ととらえたいものです。

訪日外国人、2,000万人を突破

 12月11日(日)実施予定の政治経済と文化研究会では、牧瀬充幸さんが「我が国における観光立国の役割」と題してご報告くださることになっています。そうした折、今日の『朝日新聞・夕刊』に、10月30日までの速報値ですが、2016年日本を訪れた外国人が、年間ではじめて2,000万人を突破したという記事がありました。年末までには2,400万人に達する見込みです。
 顧みると、ビジット・ジャパンキャンペーンを始めた2003年は512万人にすぎなかったのが、観光庁が発足した2008年には835万人に増え、2013年には1,000万人の大台を突破しました。その後3年足らずのうちにさらに倍増して、今年2,000万人を超えたのは驚きです。政府は一段と高い目標を掲げ、2020年には4,000万人を目指すといいます。
 しかしこの目標を達成するには、いくつかの課題を解決しなければいけません。まず第一は、幅を広げることです。現状では訪日客の約4分の3が中国・韓国・台湾・香港からの訪問者です。これはアジア諸国の所得水準の上昇を反映しています。ただし、アジア諸国への高依存は、リスクもともないます。アジア景気の減速や、反日感情を高める事件が起これば、訪日客は大幅に落ち込むでしょう。欧米からの観光客も、もっと呼び込む必要があります。
 次に重要なのは、外国人にあまり知られていない観光地のPRです。京都や富士山など有名な観光地を除き、まだまだ外国人の認知度が低い名所は数多くあります。外国人が美しい自然や、日本独特の歴史や文化に触れることができるスポットを洗い出し、より積極的にその魅力を発信する努力も大切です。
 三番目に留意しなければならないのは、「爆買い」に依存した観光振興はそろそろ限界にさしかかっていることです。大型クルーズ船に乗ってやってくる外国人観光客は、ランドオペレーターと呼ばれる仲介業者が選んだ免税店によって「爆買い」するのですが、仲介業者の店舗選定基準は、自分たちに高額の手数料を払ってくれるかどうかだといいます。仲介業者に高額の手数料を求められるので、立ち寄り先となる店舗では、割高な商品を売りつけられるというトラブルも多発しているようです。また地域の商店街では買い物をしないため、地域消費拡大効果はあまり見られないのが現状です。今後は研修や体験、治療といった特定の目的を持った滞在型の旅行を増やしてゆくべきです。、
 日本経済は今、少子高齢化、人口減少、地域経済の衰退など、数多くの難問に直面しています。この苦境を、訪日外国人の増加によってどこまで打開できるでしょうか。牧瀬さんのご報告をベースに、みなさんと活発な議論ができるのを楽しみにしています。

関西学院大学 政治・経済と文化研究会第8回研究会 を行いました 

 日本とアメリカは同盟関係にあるといいますが、本当にそうでしょうか。実際はアメリカの従属国というのが適当かも知れません。というのも、日本の戦後は敗戦国、被占領国とし始まったからです。終戦後間もなくの頃は、対米従属の姿勢を示し、まず国際社会に復帰し、その後徐々に自立してゆこうという国家戦略だったと思われます。1951(昭和26)年吉田茂内閣のときのサンフランシスコ平和条約で占領政策を終わらせた意義は大きかったといえます。しかしこれと同時に結ばれた日米安全保障条約は、日本国内にアメリカ軍の駐留を認める一方で、アメリカの日本防衛義務は定められておらず、片務的なものでした。
 その後も冷戦の中で、日本はアジアにおける共産主義陣営進出に対抗するための拠点として、重要な役割を果たしました。1972(昭和47)年の沖縄返還は、その見返りといえます。ところが沖縄返還以降は、日本の負担は増えるばかりで、日本にとってのメリットは見当たりません。政治家は対米自立の精神を忘れ、経済、軍事、外交などすべての面で自己判断を行わず、アメリカの意向を重視してきたように感じます。沖縄の基地はもちろん、横田や厚木基地の返還の話は出てきません。
 さて中国は経済規模が世界2位の大国となり、軍事的にも大きな存在感を示しています。日本やアメリカとは政治体制が異なって共産党一党独裁であり、国防費も継続的に増大させているところです。日本の尖閣諸島周辺には中国の船や航空機が頻繁に侵入してきており、警戒が必要です。また北朝鮮は核兵器開発を進めており、日本にとっては脅威です。
 以上のような国際情勢に照らし合わせてみると、日米同盟がなくなれば、東アジアの安定と平和は崩壊するかもを知れません。アジアの経済成長は日米両国にメリットがあり、平和と安定の維持は不可欠です。
 とはいえ同盟強化のために日本の負担は急速に拡大して「平和国家」のイメージがなくなりつつあり、自衛隊のあり方も根本から変わることに危惧を覚えます。日米同盟の強化が、アメリカの世界戦略に沿って、海外での軍事行動も辞さないという日本の政策変更の表明になっていないでしょうか。
 安倍政権は「中国の脅威」や「安全保障環境の変化」を強調するあまり、中国との関係改善をはかる努力をしていないように感じられます。これはロシアのプーチン大統領とは良好な関係であるのに、習近平・中国国家主席との日中首脳会談は緊密ではないことにも反映されています。中国との対決姿勢を示すことで、支持率を高め、政権基盤の安定をはかっている感もあります。
 私は米中2大国で国際政治が動いている現在、アメリカ一辺倒になるのは好ましくないと思います。中国とも様々な分野で対話を進めていくことが重要です。
人気ブログランキングへ
最新記事
訪問者数

    人気ブログランキングへ
    Archives
    QRコード
    QRコード
    • ライブドアブログ